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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第二部 賢者と砦のドノヴァッテン魔法王国編

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星見の人喰い②





酸っぱい匂いに包まれ

手にきゅうりを握り

魔女を視界に捉えた時

その視界は急激な重力に叩きつけられ

ミケラは、またたく間に暗闇に閉ざされた。


目が暗闇に慣れると何かが自分にぶつかった。

透明な壁ー。

『瓶に入れられたんか!?』

そこから見え、感じたのは

何かの小袋や、タオル、

ー?甘い匂い?何かがこすれる音に

『酸っぱい、のはワイや!』

混乱するミケラのいる所に

大地震が起きたように揺れた。


『わっわ、わわ、どしたん!?』


ミケラは周りを見渡した。

上を見上げれば

大きな揺れの中の隙間に気付いたのはすぐだった。


かすかに見えるのは

白く浮かぶ、誰かの手

大きく吐いた息 ー、

『(魔女が何しとるん!?

  こ、ここはどこや?!)』


魔女の肩掛けかばんの中だ。ー


瓶に押し込まれた体は

ピクルス溶液でベトベトで

酸っぱい匂い。

『なっなんやねんっ

 くそ〜〜っっ』

なんとか瓶から出たものの

『ぐえっ』

荷物の間に挟まって、うまく身動きが取れない。

何より、先ほどから激しい揺れが起きている。

中の荷物はぎゅうぎゅうで、満員電車のそれより酷い。

何せ、自分の頭にすらその荷物は乗っている。

もがいて足で何か蹴って上へ行こうとするたびに

上下する荷物にさらに足を取られ、沈みそうだ。

『(くそっ!外、出たいのに!

  なんや!? 何が起きてんねん!)』

腹立ち紛れに、至る所を蹴り散らかせば

頭に草の束が乗っかった。

ミケラは痛いのに、周囲は

ノーダメージっぽくて余計腹立つ。


『魔女、魔女はんっ!!』

声を荒げるも声は届かない。

自分の声はおろか、外の音も何かが弾けるような音と

ぶつかるような音がするだけで、他に聞き取れない。


大きく揺れる、が

揺れは背中が引っ張られるような力に変わった。


『〜〜?!な゛っ』

遠心力に目が回る。

『(回ってんのか!?)』

引っ張られながら

自分の頭を覆う草のような何かが

飛び出るのを見たのを最後に ー


「(わ、げ、ゲーで、出そ、)」

ミケラはその 遠心力の凄まじさに

意識を失った ー








人間はこの世界で、妖精の助けを得ることもあれば

その恵みを享受し

人間が妖精の存在に繁栄を約束すべく

時に恩恵を返す。


だがその境界線に

互いに踏み入り、立ち入ることは

ー ほぼない。


それは互いの不文律であり 

侵すことがあってはならない ー

互いの世界に繋がれた命の鎖、でもあった。


では、その境界線を越えることは

何を 意味するのか ー。


昇降機を降り

星図室へ走るアグリッパは思い出していた。

「(ミケラ!魔女さまっ

  無事でいて!!)」


こんなに焦る気持ちはあの日以来だ。

ミケラと契約した日。


『ーええって、

 わいのことなんてほっといてんか。』

「ダメだよ、このままだと死んじゃうよ」

『っけっっ!ガキがっ!

 ー ええねん、騙されたわいが阿呆やねん。

 このまま死ぬんがお似合いや』

「ダメだって死んじゃやだよ、

 妖精さん。光も弱くなってるよ!?

 あ〜どうしよう、ねえ、どうすればいいの。

 羽がほら、こんなに破れちゃってるよ、綺麗なのに」


泣き出しそうなアグリッパ少年(5)の手には

妖精が横たわっていた。

力は無いし光も萎んでいるが

口だけは達者だった、ていうか

口だけすごく悪かった、

とアグリッパ少年の脳内に刻まれている。


ピ〜〜ぃプゥ〜〜ぅポ〜〜


その日もずれた音をものともせず

たて笛を吹きながら、野菜畑を歩くのが

アグリッパ少年の朝のルーティン。

だがその日は違った。


野犬が出た。

黒い野犬だった。

「(あいつ〜!!

  野菜盗み食いするつもりだな〜!!

  今日は許さん!!)」


アグリッパは、畑の見回りだってしていた。

毎度、実の大事な部分だけ

くっきり歯形だけ残し放置していく。

それを畑ランダムにされるものだから

八百屋としては商売あがったりだ。

見れば

自分よりも大きな野犬は

何かを咥えて畑を横切ろうとしていた。


「(?何か持って行こうとしてんのか?)」


アグリッパはたて笛を片手に持ち

まるで魔法の杖のように振る。


たて笛から、抜ける音は風を巻き起こし

野犬の胴体に綺麗に当たった。

なんとアグリッパ少年は

風魔法を操っていたのだ。

ギャンっ

短く鳴き、野犬は尻尾を縮こませ

口に挟まれた何かは畑の中に落ちた。


だが野犬はアグリッパに牙を剥き

向かってきた。

「へんだっっ!

 かかって来い!!野菜泥棒!!」

アグリッパは魔法を詠唱した。


小さな魔法、手のひらに起こされた風。

ぐるぐる風は螺旋を描いて、

「えいっっ!」

野犬に向かってドリルのように突き進む。


野犬に命中し、地面を転がりながら

畑の外へ飛ぶように逃げて行った。


「二度と来んなよ!!

 次来たら、お尻叩くぞ〜!」

野犬が畑から完全にいなくなるのを見送って

何かが落ちた辺りを探した。

「(何、盗んで食べようとしてたー?)」

畑に落ちていたもの ー。


「あ、妖精だ!」

羽がボロボロに引き裂かれた無惨な姿の、

妖精だった。



息を切らしながら

アグリッパはあの頃を思い出して

少しだけ笑う。

「(思えばあの頃から

  ミケラの口の悪さはちっとも

  変わってないなぁ。)」

星図室のドアを開き辺りを見渡す。

「えっと・・・」

広すぎる部屋に

規則正しく放射状に配置された机と椅子。

真ん中には、ドームの屋根と望遠鏡。


「(あれ・・・そういえば

  星見の弓って確か・・・)」

アグリッパは望遠鏡を見上げた。

副鏡ふくきょうのそばに備え付けられていた

星見の弓が、目に入った。


「あ、あれ、取りに行くの・・・?」

高さ五メートルはありそうだ。

「(ミケラみたいに羽が付いてればなぁ・・・)」

しかもこの望遠鏡に無許可で登ったら

絶対、怒られる案件だし

そもそもうまく登れるか微妙だ。

でも

「(・・・星見塔の鍵をなくした時点で

  ()()()()()処分だし、今更か)」

アグリッパは、前向きだ。



『いいかい?アグリッパ。

 ・・・妖精はね・・・』

「(おばあちゃんが言ってた通りの

  小さくって、光ってて

  羽がとっても綺麗で

  意地悪だけど、良いこともしてくれるって。

  だから、僕ー、したかったこと、あるんだ。)」

アグリッパ少年は胸が高鳴った。


「ねえ、君の名前はなんていうの?

 妖精さん??」

『ーっちっ!ほっとけ言うたろが』

妖精は舌打ちした。

ガラが悪い。

自分と違うイントネーションのしゃべり方に

ピンク色の髪。

やっぱりガラが悪い。

だが、アグリッパ少年はめげない。

「だってー、ぼ、僕、アグリッパって言うんだ。

 おばあちゃんがね、妖精さんは“隣人”だから

 大事にしろって、

 大変な時はお互い様だって」

『はあ?ーーー、なんて??』

「だから友達になろうよ!!

 名前、教えてよ!!」


森の女神ディアナは微笑んだ。

『ー、アグリッパ、ふふ、良い子ね。

 妖精は、その羽をもがれると

 死を迎え、次を迎える準備に入るの。

 ー 本当はね。

 けど、アグリッパ?あなたは

 自分の“核”を与えるなんて言うのね?

 ー 本当?

 

 それは妖精に()()()を与えるのと同じこと。

 そうすればこの妖精ミケラは、あなたの守護妖精となり

 あなたと一緒にずぅっっと生きるわ。

 ううん、あなたの子供やその子孫まで

 この妖精ミケラはそばにいる。

 そしてあなたの一族は

 この先、守護妖精ミケラの恩恵を受けるでしょう。

 ー その代わり ー』


「(あ、あとすこ、しっ)」

二度、望遠鏡に登れず尻餅をついて落ちた。

だが

「とっっ!取れた!!

 あ、あとは

 弓矢はどこっ・・・あ」

アグリッパは星見の弓本体を手に入れた。

だが

弓矢は、部屋の壁に

美しい額装に一本一本、ご丁寧に入れられ

ひとつひとつ、飾られている。


「(バレたら)()()退()()だぁ・・・)」

アグリッパは完全に、諦めて

額に手をかけた。


「はぁ〜・・・

 六本分も額から取り出すのか〜。

 アルファイルス君だったら

 泥棒みたいな真似しないんだろうなあ」

アグリッパはアルファイがどうやって

装備を手に入れたか、知る由もない。









ー そのとき魔女に 

マンイーターに 

何が 起こったか ー。



魔女はミケラが飛び立った直後

ポケットに忍ばせていた

アグリッパの食べかけのきゅうりをかじった。

ボリっっっ!!


「(ほんっっと〜〜に

  ごめん!ごめんごめん

  なんかもぉ

  ごめんっっっ!ゲロッパくん!)」

二つの意味で謝った。

ひとつ ー

ピクルスを食べさせるようにしむけ

アグリッパの手からきゅうりをかすめとっていた。

「(命の次くらいに大事そうにしてたのに

  食べますっっごめんっ)」

ふたつ ー

何故なら

「(見た目だけで判断して

  ごめんっでも

  絶対童貞(チェリーボーイ)だよね?!)」

て決め込んでた。お前だって喪女のくせに。


魔女にはこのマンイーター戦が

長引くと知っていた。

「(たとえ星見の弓を手に入れても

  倒すのは時間がかかっちゃうんだよ・・・

  それに ー)」

ボリっっ!


準備は整った。


「行くか ー」


魔女はミケラが

マンイーターに握り潰されそうになっているのを

見る前には、すでにマンイーターの前に立っていた。

立っていた、というと語弊がある。


飛んでいた。ー 魔女は飛んでいたのだ。


ミケラの使った魔法を自分も出していた。

そしてその風に乗り、

上昇しマンイーターをはるか上に飛びながら

ポケットから“大力の実”を取り出し

ガリっ

「(ドーピングして体力解放しとく。)」

飲み込み ー

肩掛けかばんからとある物を取り出した。


「(ドーピングしてたとしても

  マンイーターを素手で殴ると

  こっちの手が怪我するから・・・)」

ピクルスの瓶を握りしめた。


ミケラが空高く飛んだ時

その背にはすでにマンイーターがいた。

マンイーターは

ミケラの光に誘われるように黒い手を伸ばし

魔女の存在すら気づかなかった。

気付いたとき

マンイーターは

風と瓶を顔面に 受けたときだった。


バゴォオォォォォ!!!!

っっっギャッッッ!!!!


ピクルス瓶ごと、右ストレート。

思いっっきり振り抜いた。


魔女は振り返り、空いた瓶に

ぎゅっとミケラを詰め込んで ー

肩掛けかばんにポイっと放り込む。

「(ごめんごめんごめんっっ

  今だけっ今だけそこにいてくれえ!)」


と、そこまでが

魔女視点のマンイーターへの一撃だ。


「(早く、倒さなきゃ)」

アグリッパのきゅうりを食べたことが

どの程度の間接接吻(チュウ)効果があるのか

わからない上

「(三分で勝負つけたい)」

星見の弓が来るまで

出来るだけマンイーターのHPを削っておきたかった。


「(マンイーターって魔法属性攻撃よりも

  炎属性の方が良く効くんだけど

  今の私には武器がない・・・

  だとしたら ー)」


ミケラのように手の中に強い風を巻き起こした。


()()()()()

魔女はすぐに作戦に移行した。


手のひらの中の風は

ミケラのそれよりもなお強く

洗濯機の渦のようにぐるぐると

混ぜていく。


マンイーターは顔を反らせながら

両手で顔を掻きむしり

割れた仮面がボロボロと落ちていく。

「(今は飛行モード・・・

  逃がしてたまるか!)」

プレイヤー時の思いは忘れていない。

ここで遠くに逃げられても困る。

「(絶対ここで何とかする。)」


できればマンイーターを巻き込んで

歩行モードに落とし込みたい。

そう思ったら、魔女は肩掛けかばんを肩から下ろし

手の中の風とまとわせ、ぶん回し始めた。

中にミケラいるよ。・・・


「(風よ、起きろ〜ぉ、起きろ〜ぉ!

 もっと、もっと、

 竜巻になれ〜ぇ!!!!)」

魔女がぶん回す肩掛けかばんは

魔女の周りに風を巻き起こし

嵐のような音を立て始める。

塔の中は静かなのに、

回廊の中は竜巻の嵐が起きている。

かばんの中に、ミケラがいるよ?


マンイーターは黒い翼を広げたまま

魔女の暴風に

耐えながら滞空飛行している。

だが、回転数が増えていくにつれ

その凄まじさは

回廊中のすべてを巻き上げ、

あらゆる回廊の装飾をも巻き込んだ。


マンイーターはなおもその風に負けんと

黒い翼を大きく動かし、反抗していたが

とうとうその風に負け

急な失速と同時に

竜巻の外側を爆速でその身ごと回り出す。


ぐるぐる回る、マンイーター。


巻き起こった風と強くなる風に

魔女の肩掛けかばんから溢れた触媒が

パラパラとこぼれた。

魔女はぶんまわしに夢中で気付いていない。

中にミケラがいるのも忘れてる。


触媒はその風の魔法に反応し

バリバリっっと紫の雷をまとわせた。

竜巻は今、雷を付与(エンチャント)した。


今、肩掛けかばんは武器と化す。

中に(省略)。


竜巻の風に飲まれたマンイーターは奇しくも

雷の攻撃すら同時に受け、

何回転も竜巻の中を回る。


ぶんまわされる、マンイーター。


回るうちに

目が回り平行感覚をも失い ー

塔の回廊の壁に

その体を激しく打ちつけた。


「!?やった?!」

そのとき

魔女の頭上から

風を切る翼の音がした。


「?!ま、間に合わなかった・・・?

 (やばいやばいやばいやばいっっ)」

魔女は焦っていた。



何故なら ー

マンイーターは二体、いる。







ミケラ情報:え?瓶詰めの妖精って

      結構メジャーなん?

      へ〜。


アグリッパ情報:弓矢を一本一本

        別個に額に入れたのは

        きっとオラフィス様だ。

        ・・・殺される。


ラース情報:翔煙隊のヤツが話しかけてきたから

      しゃべってたら、寒いからって

      上着くれた。いいやつだな〜。

      おにぎりをあげた。物々交換。


ゾイ情報:お忘れかもしれませんが

     魔女宅メンバーは修行中です。









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