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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第二部 賢者と砦のドノヴァッテン魔法王国編

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師と弟子








漏れ聞こえる長い、長いため息、ー 


『はぁ〜〜〜ぁ〜ぁ〜あ〜〜

 バカ弟子がよぉ〜 』

「?!(こっこの声はー)」


それはいつかに働いた不義理。

理由も告げずに

助けも求めることなく

唐突なまでに自分が断ち切った関係の声だった。

振り返るも、周りを見渡せど、誰もいない。


「(ー 師、()()()()() ー)」

雷光が影をうつす。

姿はないが、

影が地面にうつり

音だけがその姿を震わせた。


アルファイはその懐かしい声に

誰もいないはずの暗闇を見た。


まだため息ついてるよ。

『はああ〜ぁ〜あ〜〜〜っ

 お前、何してくれちゃってんだよぉ〜。

 あのさあ〜〜ぁ〜

 あのさあ!おま、え?ちょ、待ち、やばくね?

 え、“核”ねーじゃん、あ、“ミリ”あんの。

 奇跡じゃん、“ミリ”って奇跡じゃん。

 そんなんてあり得る〜?あるか〜

 まじか〜ぁ〜、しょっぺえ〜なぁ〜

 え、まさかとは思うけどやられた?

 うわ、まじかよ。

 魔女にやられてんじゃん。 

 紐つけられてんじゃ〜〜んっ

 魔女に“核”持ってかれてんじゃん。

 うわ〜、まじで?

 も〜情けねえなあー、はあ〜

 まじか〜、まじでか〜、

 あの魔女にか〜ぁ!なんだよもぉおおお

 お前さあ〜、もーちょっと人選べよ〜。

 俺っていう偉大な先生がいるのにさあ、

 まじ魔力萎えるわ〜。

 あ〜だり〜。う〜ぅわぁあ〜

 大体さぁ〜ラースと言い、お前と言い

 なんで俺んとこは野郎しか来ねーんだよ。

 あ〜、魔法少女だったらなぁ〜。

 “核”なくてもさあ〜

 魔法のステッキとか〜?

 魔法の変身ブローチとかあげんのにな〜あ

 ほうきだって付けてやんよ〜ぉ。

 フリフリのピンクの服着せたいわあ〜。』

最後の方は確実に願望だよね。



「っし、師よ!ーっ」

アルファイは見えない声に向かって

師を呼ぶが、言葉の次が続かない。

そりゃそうよな。

フリフリ似合わな、じゃなくて

アルファイ、鎌ってちゃん持ってるしね。


どうやらこの声の主は、アルファイの師匠であるらしい。

魔法少女を欲するような師匠であることから

わかるのは、

本当に、アルファイ、人、選べ。


気配の声を聞いてみようか。


『アルファイ。

 俺はねえ、ラースにも言ったんだけど〜。

 手段は選ぶなって言ったよ?

 言ったよ、確かに言ったんだけどさあ、

 お前・・・まぁ秘術師(マグス)はいいよ。

 魔法使いじゃねえけど百歩譲るよ。

 オラフィスのジジイはまじうぜえけど

 予言の力は使えるし

 金属編成の技術もある。

 それはいいけどお前、呪われてんじゃん。

 それはねえよ〜。呪いって何だよ。

 秘術師のいっちゃんダメなとこじゃん。

 わけわかんねえよ、何、呪い返しって

 “影の混沌”の餌にされてんじゃん。

 何それ、お前腕ないじゃん。

 まじ穏やかじゃねーよ。

 しかも腕、切ってもらってんじゃん。

 も〜、何だよそれ〜ぇ

 意味わかんねえよ〜〜ぉ

 俺が割り込む隙ねえじゃ〜〜ん

 詰んでんじゃ〜ん。』

アルファイの()()()()

参加できなくて愚痴ってるように聞こえる。

「ーっも、申し訳ありません、でした」

告知できてたらしてる不幸祭り。


『・・・っはぁあああああ〜!

 まじかあ〜!

 俺のスローライフは

 ここで終わりだああ〜っっっ。

 あ〜ぁ〜ぁ〜

 魔女にこき使われるんだぁ〜〜』

「(魔女に?・・・なぜ)」

アルファイはじんわり、と汗をかいている。

何も言い返せるはずもない。

この場に居るのが針のむしろのようで

逃げ出したくなった。 

あえて、以前のように話をしてくれるのも

師の優しさからくると知っているから尚更。

「(逃げたのは、私なのに・・・)」

あの時師に言えたら、きっと助けてくれただろう。

だけどあの時の自分は

この師である人にいうことはなかった。


なのに声は、優しい。


『しゃーねえーか〜〜。

 お前ら二人は俺の弟子なんだもんな〜。

 ・・・てか

 お前、勇者になったんだろ?』

「!」

アルファイびっくり。

「・・・はい。

 (きっと何もかもバレている。

  師はすべてを知りながらも

  私が教えて欲しいことも

  望むことも全部・・・

  回答をくれるような人じゃなかった。)」


かすかに鎌ってちゃんは光った。

『そのとおり』

キラリ、鎌ってちゃん。

金色のリボンだってちょっと揺れる。

『その背中のやつ

 お前は認められたんだな。

 そっか〜、う〜ん、そっか〜。

 そうなんだよなあ〜。

 そりゃ、俺も悪いわな〜

 俺は悪い先生だったなぁ。』

「そんなっ・・・」


アルファイはわかってる。

答えは自分で見つけるもんで

助けも自分から求めるもんで

待ってるだけじゃ、何も進まないこと。


「(意固地になってたのは

  私だった。

  師は、私から動くことを

  待っていたんだ・・・

  なのにー、私は)」

アルファイの頭をふわっと何かが触れた。

「?!」

『俺はお前の気持ちを

 聞いてやれなかった。

 辛かったな。ー すまん。』

「っーっ師よ」

あのとき耳を塞いでいた自分に声が届いた。

「(あのとき、欲しかったのは ー

  いなくなった

  “ラースを探す方法”で ー)」


真っ暗な床に雫が落ちた。


「(あのとき、自分の気持ちは ー

  “助けて 欲しい”、だった)」

それを言えなくて、ここまできた。


「っー、し、師よ、私は罪を犯しっ」

『あー、うん、まぁそれはさあ

 知ってるし、もーいいんじゃね?』

あれ、誰かとおんなじ事言ってる。

「師よ、私はっ!貴方に不義理を働き

 あまつさえも呪いを受けた身で」

声が詰まった。

上げる顔なんてない。ー 

「(今ならわかるんだ。

  自分は手を差し伸べられていた。

  自分だけの世界で

  自分だけしかいない世界で

  自分を不幸だと決めつけて

  誰にもこの気持ちなど

  わかってもらえないと決め込んで

  見えないフリをして、

  見たくないままに

  その手を振り払った愚かな自分を。)」

『アルファイ』

「!」

あたたかな声がアルファイに降る。

『お前はもう苦しんだんだろ。

 腕まで無くしてよぉ〜。

 魔女に借りを作ったのはしゃーねえ。

 俺の監督不行き届きだ。

 この際だ。俺もお前も腹、括ろうぜ。

 お前は勇者になった。それが真実なんだ。

 そんで俺はお前の師匠だからな。

 ー 目的を往け。』

顔は上げられないが

アルファイは何度も何度もうなずいた。


『ふぅ〜〜・・・

 じゃ、そういうことで

 俺はすぐには行けねえけど、

 行くまでお前、何とかしろ。』

影が動いた。

「っは、はい」

ようやく出た声は、鼻声で

自分でも驚くほど情けなかった。


あれ〜?

なんかしんみり。

お涙頂戴の物語じゃねえんだわ。

魔女どこ行ったのよ。

『なあアルファイ』

おや?・・・

え〜?まだ続くの〜?

「?」

『そっち行ったらさ・・・

 あ〜、なんつーか。

 ー 女の子、紹介して(ハート)』

アルファイの全涙が引っ込んだ。

「・・・」


うわ〜。感動返してほしい。

紹介して、の後にハートとか

まじきもい、まじうざい。


アルファイは真顔で顔をあげ

鎌ってちゃんに手をかけた。

いいぞ、やっちまえ!!


『っお、おい!嘘だって!

 “写し身”だからって

 それでやられりゃ無傷じゃねえって!

 っんだよ〜、

 それぐらいいーじゃんよ〜ぉ。

 俺、復帰すんの百年ぶりよ〜?

 お前、腕ねえけど顔だけはいいじゃん。

 どうせこの学校入るんだろ?

 一人ぐらい、なんか』

「鎌ってちゃん、(煩悩を)祓うぞ」

『是非も無し』

振り上げた鎌ってちゃんが光ると同時に

『やべっじゃっ!またな!!』

影はスイーっといなくなった。


階段を降り、

ふと、風が自分の顔を抜けるのを感じて

風を追いかけるように顔を向けた。

「?」

降りてきた階段のひとつに、何か光った。

「これは」

手に取った。

古代魔法が手書きされた魔術書だった。

「(ー、師か。)」

貴石が付いた美しい紐で丸められていた。

「・・・ふ、」

アルファイは気付いていた。

師はそういう人だってこと。

感謝した。

前まで思うことのなかったこの気持ちを

師に、感謝していた。

「(・・・婦女子を紹介はしないが、

  感謝はする。

  ありがとうございます、師よ。)」


魔術書にくくりつけられた紐には

メモ書きが添付されていた。

アルファイはそのメモ書きをみた。

「(なんだ?)・・・!」


『 遣い魔の悪戯オナラ

 これは“核”がなくても使える魔法だ。

 何ができるかっていうと

 離れた場所に大きな音を発生させる。

 直接的な効果は特にない。音がすげえ。

 有効に使用するためには、創意工夫が求められる。

 ー うまく使えよ。

 !追伸!

 ラースに会ったら言っとけ。

 女、紹介しろ(最重要案件)』


「(やっぱり祓っておくべきだった。)」

アルファイ、やっぱり人選べよ。


だが

アルファイの心に

絶え間なく湧き出る強い気持ちは

「・・・目的を、往く」

握り拳を作っていた。

走るでなく大股で、歩き出した。






ラースは思案している。

チョコレートは全部食べた。

クッキーも全部食べたし

もうこの牢屋に来て余裕で三時間は過ぎた。


なぜあのラースが逃げもせず

無駄に牢屋で時間を過ごしていたのか。


問題は ー


「(私が今、人間の姿になっていることだ)」

ひょ〜。

まじで?

おネズミさま、人間だったの?

へ〜。

そして、全裸マッパ

堂々としたものだ。

おネズミさまの頃の名残か

隠そうともしてない野生味溢れた姿は

見習いたいものである。


ラースが考えていることは ー、

自分が居る、この場所の意味と

自分が居る、理由だ。


「(ここから出ようと思えば、

  出られることはわかっていた。)」

ネズミの姿であれば

すぐにでも脱走可能であるが

今は人間だから、多少工夫が必要だ。

捕えられている、とは言え

手錠もされておらず

扉を閉めるのは魔法錠ではなく、

普通の銀製の鍵の錠である。ー

それを考慮してもこの待遇は、罪人とは言い難い。


「(禁書(スクロール)を使った身とは

  思えない処遇だな)」

これでは、出入りが自由です、

と言われているようなもので

何のために捕えられたのか分からない。

だが、物理的に捕えられているだけであって

魔力自体は封じられている。

むしろ、それに意味があるように思われた。


「(別の目的があると考えられる。

  何のために、私は “血脈零番”にいるのか)」


この研究棟は主に

魔法の再現による仮説と検証が行われていて

元素別の属性による詳細な実験を行う場所だ。


だが、それは“地上階”で行われることだ。

この地下階は、違う。


「(・・・()()()()()・・・)」


ラースは一度だけ

連れてこられたことがあった。

だが、地下への階段を降りることはなかった。

王国の建国に成る書物の一文が

地下へ続く階段横の石碑に彫ってあったことを思い出す。


地のものを天上に 天のものを下なるものに

宇宙そらとその区別の ないように

互いが 調和し 融合せしめる

“四”は 天を “七”は 星を ー


「(グラマティア(数秘術)か?

  この王国の各塔はその“四”を表し

  扉を起源とし()()()()()()を意味してる。

  つまり4 = 1 + 2 + 3 + 4 = 10 ・・・

  減算法だと数字は変わるが  

  “七”は星・・・?

  なんだ?数が合わないな・・・

  この“星”は確か惑星を表したはずだが

  “最初の門”・・・?)」


ラースは自分用肩掛けかばんをひっくり返した。


「(魔女が何か入れたはずだ。ー

 自分がここに入れられると分かって

 ー 何を入れた・・・?)」



バラバラと地面に散らばる詰め込まれたものたちを

ラースははやる気持を抑えながらも広げ、見渡した。


見れば ー


タオル(大小二枚)、未使用

クッキーの袋(大)食べ終わった。

チョコレート(十個)、食べた。

おにぎり(二個)まだある。

水筒(小)まだある。

ピクルス瓶(中)酸っぱい。

消毒用スプレー(小)意味不明。

何かが詰め込まれた袋 見たくない。

それから

ギーズルから手渡された小さな袋

ゾイにもらったお守り

ディオの薬壺

ケトルの青い小袋

ー 以上。


「・・・。

 (魔女アレがそんな気利くわけないか)」

特に何もなかった。

わかってたけど、がっかり。


かばんの容量を大幅に食っているのは

魔女からの差し入れの食糧。


「何でこんなものを

 たくさん入れる必要があるんだ・・・」

思わず声に出ていることに驚いた。

今まで思うことがあっても

それを口に出すことはなかった。

魔女のやることにいつも口に出しているからか

愚痴っぽくなっている。


頭をかいた。

「(ー、毒されているな、これはまずい。)」


反省ついでに

ケトルにもらった青い小袋に手が伸び

手のひらに乗せてしばし見た。


「(コレはまだ・・・)」

一番先にかばんにしまい込んだ。

整理しながら他のものも入れていった。

入れながら、

魔女宅で彼らから手渡された“お守り”を

手にするたび不思議な気持ちになった。

確か、その昔自分が旅立つとき

周りはそうしてくれたか、そうだったろうか。

周りは、自分に何をしてくれたのか ー。

ー 『期待』、だったように 思う。



『世界を救えよ!!』

『お前ならやれる』

『お前は1人でもできるよ。』

そんな空気だったように記憶していた。

実際、自分にはその資格もあったように感じていたし

誰かに何かを頼まねばならない立場にもなかった。


すべからく、一人で片付けてきた。

ただ一人、

旅立つときにこの身を案じたのはー、

アルファイだった。


『ラース!!

 ドノヴァッテンに着いたら

 すぐに手紙を書いてくれ、待ってるから』

『ああ』

『そのっ、怪我するなよ!』

『わかってる』

『僕もドノヴァッテンへ行くから!』

『わかった』

不安そうな目をして、

歩き出した自分を見送りかと思いきや

後ろを一定の距離を保ったまま付いてきて

国境まで付いてきそうな勢いで

魔法で自分の姿を隠さねばならぬほど

その場に居続けていた。


 ッッバアァァッッーーーン!!!!!

「?!」


空気も思い出も打ち消すような

爆発音だった。







「オーゲルさん、ちょっと!

 おにぎりは

 一口で食べるもんじゃないですよ!?」

「もぐもぐっ!ーゴクンッッ!!

 ーっっはあっ!うんめーぇなぁ〜!これ!!

 もう一個くれよ!」

食いしん坊。

似たようなのが魔女宅にいると思いながら

魔女は水筒の水をオーゲルに手渡した。

オーゲルは一気飲み。

「(しょ、食道が強靭すぎる。

  喉に詰まらないのかな?)」

魔女はじっと見て

思い出したように言った。

「そういえばオーゲルさん。

 私とした約束って、何ですか?」

「?」

付け合わせの

大根のピクルスが入った瓶の蓋を開けると

オーゲルはすぐに口に放り込む。

「これ何」

「ピクルスです。

 ちょっと酸っぱいけど美味しいですよ?」

美味しいとか味わっている風ではないが

ボリボリと食べ頷いていた。

まだ口に入っているのに、

またオーゲルはピクルスに手を伸ばし

ポリポリかじりながら、魔女をじっと見た。


「ー、お前、本当に覚えてないの?」

「?(転生したって言えば納得すんの?

 そもそもあの魔女じゃないし)

 覚えてないですね」

手についたピクルスの汁を

マントで軽く拭いて

あぐらをかいた膝の上に置いた。

オーゲルの顔は少しだけニヤついたように見えた。

「へへ、お前さあ

 ホントは思い出してんだろ。全部」

「は?」

「王子と結婚すんだろ」

「え???

 だだだ、だっ、え、お、王子ってなに」

「だから ー」

「どっっどどどどこのお、王子と?!

 え?わ、私が?」

「玉の輿じゃねえか」

「そ、そーいうんじゃなくって!」

「じゃ、俺のとこに来い。猫もいるぞ」

「!猫!それはなんか、触らせてほし、違うっ!

 おっ王子って誰?!」

ニヤニヤしていたオーゲルは

いきなり真顔になった。

「ー 魔女、お前、あの魔女じゃないだろ」

「?!(どっっきーーーん)」


オーゲルは微笑んだ。

「お前は魔女だが、“あの”魔女ではないな?」

「ー!」

眼前、オーゲルが壁のように感じた。

なお優しく微笑むオーゲルは腕を組みながら

首を傾げた。


「魔女。ー 俺との約束だろ?忘れるわけねえだろ。」

「なっ何が」

「いいから、ー 出てこいよ。」

「っっーっ?」

急激に意識が遠のく。

魔女は目の前のオーゲルをにらむ。

『 誰がお前のところになんか

 嫁に行くかい。死んでも行かないね』

「おー、お前だ、魔女、お前だ。

 見た目も随分変わったが

 どうした、婿探しじゃないのか?」

『っけっ、バカ言うんじゃないよ。

 婿探しなんてする暇あったら、

 あたしゃ家帰って寝るさ。』

「相変わらずの減らず口だな、

 ふ、ー 魔女、どういうことだ」

『ふん』

魔女はオーゲルの肩を軽く押し退けた。


『お前もわかっているだろう。』

「“影の混沌”か」

『それだけじゃない。

 シーガピオンの結界も解かれた』

「?!何だと?」

『あぁそうさ。護符(ペンタクル)は残り二枚。』

「んなっ!は、早すぎるだろう!」

魔女はオーゲルを振り返った。

『だからお前はバカだって言ってるんだ。

 オーゲル、火鑽(ひきり)は失敗したんだ。

 “封印”なんてもんに、意味はないのさ。』

「俺たちがしたことは無駄だと言うのか!!」


風の切れ間に、魔女は嗤う。

『だからこの娘が来たんだ。』

「っ!」

オーゲルは剣に手をかけた。

ーが、次にはオーゲルの背は大地に着いていた。

「!!ぐっ」

魔女の瞳の色が変化していた。

『繰り返しを抜けるために

 必要な死だと言っただろう!』

胸を魔女に踏まれる。。

『いいかい、よくお聞き。

 この単細胞の頭筋肉バカめ。

 あたしが何でお前を生かしたと思う。

 死んでたはずの人間を

 お前が望んだから

 英雄として生かした。ああ。そうさ。

 お前は奴らの屍の上で

 のうのうと生きてきたじゃないか ー

 ひひひ。死ぬこともできないでね。』


雨を遮るように魔女はオーゲルを足蹴にしたまま

暗闇で顔も見えない。


「ー、そうだ。

 俺はあのとき、死んでたはずだった ー、」


起きあがろうと上半身に力を入れるも、魔女はなお

オーゲルの胸を足で軽く踏みつけた。

軽く踏み付けられたはずだが

オーゲルの体はまるで

地面に縫い付けられたように動かせなかった。

『わかったら、さっさと次へ行きな。

 時間は待っちゃくれないよ。

 報いたいって針の先でも思うなら

 お前みたいな死に損ないでも

 まだやれることがあるだろう?』

「ーっ」

『あの子の邪魔するんじゃないよ。

 ときを動かすにはこれしかないんだ。

 ー あぁ、この魔女バカ

 ティル・ナ・ノーグにも

 首を突っ込んだんだ。

 はあ、仕方ないよ。手伝っておやり。

 アンタにも縁があるだろ、ひっひっひっ

 お前のお望みの

 火鑽女フィリアノールのことは後でもいいさね。

 なあに、それぐらいの時間はくれてやろう。

 アンタにはその理由はわかってるんだろう?

 “核”なしの ()()さん。』


鋭い稲光が魔女に降りかかる。

オーゲルは深淵の瞳を覗く。

「 ーーーっ 」



魔女は嗤っていた、

喜ぶようにこの呪いを 

この ほつれていく 世界を ー


『さあ 始めようじゃないか。

 世界の()()()()()()()()を ー』


暗闇に沈む霧は

この王国に留まり続け

稲光だけが青白く

魔女の嗤う声に共鳴していた。








ラース情報:おにぎりはまだ出番じゃない。


アルファイ情報:師は天才だが

        おそろしく性格がアレだ。


シャルラッハロート情報:む。そろそろか。







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