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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第二部 賢者と砦のドノヴァッテン魔法王国編

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瓦解の音





「・・・おい、魔女はまだか?」

「はい、・・・

 この辺りにはいるはずなんですが」


オーゲルの舌打ちとつぶやいた声に

アルファイは魔女の“核”をたどる。

ーとは言っても、自分の“核”の頼りなさに

そのわかりやす過ぎる魔女の“核”を

正確に判断できてるのか不安だ。


「せっかく迎えに来てやったのによ〜ぉ」

オーゲルはそう言ったが

本音はそうじゃないことを

アルファイはなんとなく感じていた。

「(・・・オーゲル様は

  魔女を気遣ってる、だから

  わざわざ東塔に来たんだ。

  理由はわからないが・・・。

  騎士を殴ったり蹴ったりはしたが

  誰一人殺すようなことも

  剣すら抜くことはなかった・・・

  なのに城壁と王城はまるで

  オーゲル様自身が望んだみたいに

  破壊して回ってた・・・。)」

だから引っかかっていた。

「(北門にだって私一人で行っても

  良かったはずだ・・・それに・・・)」

聞きたいけど聞けないのは当然だ。普通そう。


「(オーゲル様はラースのことを知っている。

  なのに何も聞いてこない・・・なぜだ)」


オーゲルは両腕を大きく上げ背中を伸ばした。

「あ〜、腹減ったな〜。

 アムラン、お前飴以外持ってねえのか」

あんだけ暴れりゃ、そりゃ腹も空くだろう。

オーゲルは東塔を見上げる。


「ほんとに魔女(あいつ)東塔いんのかよ〜?」


まさか魔女が

まだ塔の中にいるとは 

これっぽっちも、思わない。


すぐだよ!壁一枚向こうにいるよ〜!

ほんの百五十メートルぐらい上にいるよ〜?

羅針盤ラーナビ使いなよ、

魔女の声で答えてくれるよ?


オーゲルは空を見上げる。

「そろそろ日没だ。

 早いところ西の星見塔に入りたいところだ」

オーゲルは空に浮かぶ霧に目をやりながら

塔の壁に背を付けた。

「ヘムズワスも、北門(あそこ)

 “薬壺の欠片”があるって知ってたなら

 取って来てくれてもいいもんなんだが ー」

“わざわざ英雄(オレさま)が行くまでもねえよな”と

付け加えるつもりが

『私がなんだと?』


塔から出てきたのは、

白馬アンヴァルに乗る女王ニアヴと

魔法隊長 ヘムズワス。


「おわっっ!?おまっ、なんでここに居んだ?」

『それはこちらの台詞(セリフ)だ。 

 オーゲル、控えろ。

 ティル・ナ・ノーグ国 女王陛下の御前だ。』


オーゲルとアルファイは、存在感バッチリの美女

ニアヴ女王にびっくりだ。

美女だから驚いたんじゃない。

いや、半分くらいは美女だからと言っておこう。

しかも女王陛下だって。

だが正味な話

“白馬に乗ってるから”、驚いてる。

「(塔から白馬に乗って出てくるか?)」

と、思いつつも礼を執り、頭を下げた。


ニアヴは口元だけ微笑んでみせる。

『英雄騎士 オーゲル様と・・・

 そして、そちらはふふ、

 ()()()()さまね?』


「!!(なぜご存知なのか)」

頭を下げたままのアルファイは

まさか目の前の女王が

城門前に迎えにきてくれた女性だとは露にも思わない。

だが、その波間を抜けるような涼やかな声で

“新米勇者”と呼ばれたことは

アルファイを胸のすく思いにさせた。


『お顔をお上げくださいな、

 馬上のご挨拶をどうかお許し願います。

 私は ティル・ナ・ノーグ国

 女王 ニアヴ・ナ・ノーグ。

 魔女に助けを乞うて、ここにおります。』


「!!!」

先に顔を上げたオーゲルは

馬上の美女ニアヴを見て驚く。

「?!(魔女に??)」

アルファイはイタズラがバレたような感覚になる。

悪いことしてないのに()()()の気分だ。

オーゲルは珍しく緊張したような声だ。

「っ、あなた様は、あのー、オシーンの・・・」

『うふふ、ええ、そうです。

 いつぞやは夫がお世話になりましたね。

 今は訳あって、

 このドノヴァッテンにお世話になっております』

『ゲコっ』

にこやかに微笑んで、

ニアヴは助手ゲッコーを鳴らした。

女王の持つそのヘンテコなカエルに誰も突っ込まない。

突っ込めるわけがない。女王自ずから鳴らしてるし。

それが、例え魔女の持ち物だったとしても。

聞き覚えのあるカエルの鳴き声が

アルファイに魔女が塔に未だいることを知らせた。

「(あいつ・・・女王に何渡してるんだ)」


ヘムズワスは気にすることなく馬上のニアヴに微笑み返し

すぐにオーゲルに振り返った。

『オーゲル、ローリはどうした』

ヘムズワスがオーゲルに声をかけた。

「ローリ?ー、あぁ、知らん。

 はは、あいつのことだ。その辺で

 うまいこと俺を捕まえる算段くらいはしてるんじゃないか」

『相変わらずだな・・・、

 お前の計画性の無しには呆れるが

 城門の城壁が正門から北門までなくなってることは

 聞かなきゃいけない。

 ー そこの()()にも』

「!(この方は魔法隊長 ヘムズワス様・・・

 王国内の魔法使いを統べる方だ・・・)」

アルファイはヘムズワスを見て、背筋を正した。


ヘムズワスはアルファイの姿を見て、

目を細め小首を傾げたものの

『そうか、その装備はお前が・・・

 その装備は翔煙隊 隊長ヘンドリッジのものだ。

 名を“煙巻ケムニマク”という。 

 エフェラルには私から持ち主の変更を申請しておこう。

 その名に恥じぬ素晴らしき装備であることは

 私が保証しよう。なにせそれは

 北塔の主の、ー・・・』

そこまでいうと、ヘムズワスはわざと

オーゲルの方を見た。


『・・・まだ見つからないのか?』

「知らねえよ」

オーゲル、プイっ。

『まったく、・・・』

ヘムズワスはため息に近い息を吐き

アルファイに視線を戻した。

『その装備は、特別なのだ。

 この王国でもその名を知らぬ者はいない名品だ。

 片腕であっても問題ない。

 心して使うがいいだろう。』


アルファイはただ、頭を下げた。

この装備の特別さは

戦闘中、ずっと感じていた。

魔力が底をついたように感じても

何か別の力が働いている感覚があった。

その力をうまく説明できないが

今の自分をずっと助けてくれている。

そんな感覚だ。


ヘムズワスはひときわ大きなため息をつき

アルファイに近づき、耳元で言った。 

『呪い返しは断ち切れたようだな。

 ()()()()()()

 だが、お前がそれを免れたとて

 秘術師(マグス)は“影の混沌”を

 放っておくだろうか?』

「!」

『魔女から話は聞いている。

 腕を治療するまでこちらが時間稼ぎをしよう。

 奴らはすでに動き出している。

 ・・・覚悟して臨めよ』

思わず顔を上げた。


だがすでにヘムズワスはニアヴの馬の横にいた。

相変わらず、馬上のニアヴはにこやかで

助手ゲッコーシャーペンを

まるでしゃくを持つように

誇らしく持っている。

『ゲコっ〜〜っゲッゲッゲッゲコ〜〜』

そんな音してたっけ。

女王、シャーペン動かしてないのに

ゲッコー、お目めパチクリ、瞬きしてるよ?

そんな機能、ついてたっけ。九百円だよ。


アルファイだけが

「(ヘムズワス様はすべてご存知か・・・

  魔女のやつ、腕のことまで言ったのか。

  ・・・時間稼ぎ・・・

  “影の混沌”の封印が解けるのは

  もうすぐだ。それまでにラースを・・・

  ?なんだ?あれは・・・私の知っている

  魔女の筆記用具の域を超えている)」

情報過多で思考も視点も定まらない。


オーゲルは小声のつもりだが

みんなに聞こえる大きさでヘムズワスに聞く。

「おい、ヘムズワス、

 この塔に魔女が行ったと思うんだが

 会わなかったか?」

『ーあぁ、魔女なら』


っドッッッゴォッォォーーーー!!!!


「!!なっ!!」

「ぅわっっんだよ!?」

「あら?ほほほ」

『ゲコ〜〜っゲゲゲっっ』


塔から何かが大きくぶつかるような衝撃音がした。

地面まで響く塔の揺れが彼らの足に伝わった。


ヘムズワスは表情ひとつ変えず、上を見上げ ー


『あそこにいる』

と、涼しげな紳士顔だ。









「なんだ!?」

「な、何かー?(何が起きて・・・)」

塔を見上げた。

大きな衝撃音の後、

パラパラと小さな石壁のかけらが落ちてきた。

頭にその小さなかけらが当たったのは気付かなかった、

と、いうより


「!!!っっ」


ズッガァッドォォォォォッッーーー!!!

シュっーーーーっっっっ

シュゴォオオオオオーーー!!!

塔から、空気の大きな筋が

一気に噴き出した。

「え、 塔に穴?ー」

ゴォォォ...

空気が抜けるような音と一緒に

頭上、落ちる石のかけらはだんだん大きくなり

「(蒸気か?!ー?よく見えない)」

アルファイは目を細めた。

「?(なんだ?塔が揺れー?)」

二度目の轟音に

「崩れるぞぉっっ!!」

オーゲルが叫ぶが

振り向くような時間はなかったー、


ゴゴゴゴ・・・ッゴゴゴッゴゴゴゴーーー


霧に混じった蒸気の中から

影が揺れ降る ー


蒸気を押し退けて

巨大な石の塊が ー


「(石?違う、!っっ

  塔だ、塔が落ちて、)」

「!!!」

「ヘムズワス!!」

『我らに気を回す前に

 新米をなんとかしろ、英雄』

「ッチィっ!」


ヘムズワスと馬上の女王は

静かにその場に立っている。

まるで何事も起きてないかのように。

オーゲルは

アルファイの立つ場に向かって走り出していた。


崩れ落ちようとする塔を通じて地響きがした。

塔は積み木崩しで倒れるように上部分が

轟音を立てながら落ちてきていた。


砕け落ちてくる塊より先に

何か、ーが

「アムランっっ!!!!!」

オーゲルの声は 聞こえなかった。


見えたものが、アルファイを留める。


「(あれは ー、)」

アルファイは目をそらせなかった、

ー 落ちてくる塔に 

自分目掛けて落ちてくる、

真っ暗な闇の中から

光が、見えた。


「(蜘蛛と同化して

  意識を失う前に見た光と同じ ー)」


目をそらせば、

その光を見失うようで怖かった

その瞬間を


絶対に”見逃したく” なかった

それは ー


「魔女ぉっっっ!!!」

アルファイは叫ぶ。



「おっっ落ちるぅっ〜〜〜〜ぅ!!!!」

塔と一緒に落ちてきたのは、

ロブズレーに乗った魔女。


「アムラン!!」「?!っ」

オーゲルにその場から連れ出される。

ドォオオオッッンンンーー・・・バラバラっ

折れた塔の塊が轟音の中に落ちた。


倒壊した塔から吹き出し続ける蒸気は

埃と薬品の匂いが混じったような香りが漂った。


「っひぃ〜〜〜っっどぅわっっ!」

魔女はロブズレーに必死にしがみついていた。

ロブズレーはその柔らかい体を丸め

瞬時に着地の衝撃を逃しながら


ゴロゴロ〜〜っくるり〜〜んっ


器用にもすでに

臨戦態勢に入っていた。

「よ〜しよし!いいよ!!」

魔女は起き上がり、

ロブズレーの頭部分にまたがり

しっかり触覚を握りしめ、片方の手で撫で回した。

「怪我してないね!!」

ロブズレーにまたがるボロ切れの小汚い魔女だ。


「魔女!!」

アルファイは走り出していた。

魔女はアルファイとオーゲルに気付いて手を振った。

「お、遅くなって、ごめんなさあ〜っい!!」

ロブズレーの真ん前に息を切らしつつも

アルファイは立った。

「はぁっーっ魔女っおまえ」

情けなさそうに笑う魔女の顔を見たアルファイは

なんでか泣きそうな気持ちになる。


「ご、ごめんなさいっ

 ちょ、ちょ〜っと遅刻っていうか〜

 立て込んでて〜」

「はぁっ、はぁっま魔女っはっ」

「あ、でもまだ」

魔女が言いかけた声を打ち消すように

オーゲルの大号令。


「まだだっっ!!まだ何か来るぞ!!!」


黒く大きな何かが霧の中から落ちてくる ー


「アルファイさんっ乗って!!!」

魔女は身を乗り出し手を伸ばしたが届かない。

ロブズレーの触手が

アルファイを掴んで宙に放り出した。

「!?っ」

走り出したロブズレーの

ちょうど魔女の後ろにアルファイは落ちた。

ボユン、とした感触だった。

「はっ?っなっなん」


次の瞬間


ドォッッッンンッッ

溶朽の毒蛇エンヴィが落ちてきた。

砂煙を立ち上げ、

赤黒く長い舌を左右に振りながら

尻尾をくねらせている。



ロブズレーは溶朽の毒蛇エンヴィの周りを回る。

溶朽の毒蛇エンヴィもまた

ロブズレーの動きを警戒し、舌を出す。

シューっ、シューっと小刻みな威嚇音を立てている。

アルファイは姿勢を取り直し

魔女の背から問うた。

「魔女、なんだ、これは、何が起きたんだ」

「えぇっとー、あのぉ〜」


魔女はここにきてもなお、

自分が説明するのが下手だから

どう言えばいいのかわからずに言い淀む。


アルファイは察しの悪い男ではない。

「(聞くことをひとつに絞ればいい)

  わかった、教えてくれ。

  コレは?」

アルファイは聞きたいことを先に聞くために

軽くロブズレーの体に触れた。

ムッチムチだった。

「ロブズレーっていう生き物なんですけど」

「倒したんじゃないのか?」

「えっと〜そのつもりだったんですけど〜」


いかん、いかん。

その流れは話が長くなるやつ。

アルファイは軌道修正をはかった。

「後でその話は聞こう。

 よし、次だ。

 アレはなんだ」

アルファイの指は

溶朽の毒蛇エンヴィを指した。

「あれは、溶朽の毒蛇エンヴィっていう敵です。」

「敵?・・・コレは敵じゃないのか?」

魔女は溶朽の毒蛇エンヴィの動きを気にしつつ

アルファイに振り返った。


「コレじゃありません!

 ()()()()()()()です!」


「・・・じょ・・・」


ロブズレーじゃなかった。

“ジョセフィーヌ”という高貴なお名前だった。

「(また変な名前をつけたのか・・・)」

魔女は()()()()()()の名付け親だ。

このブヨブヨにジョセフィーヌだろうが

チョッチョリーナだろうがついたところで

アルファイは特に突っ込む気にもならない。


溶朽の毒蛇エンヴィが、毒を吐く初動に入ったのを

魔女は横目で見逃さなかった。

「!ジョセフィーヌ!!くるよ!

 毒蛇エンヴィの後ろに移動して!!!」

言うと、ロブズレー・・・

じょ、・・・ジョセフィーヌは

高速に足を連動させ長い体を少しずつ縮め始めた。


溶朽の毒蛇エンヴィの口が裂けんばかりに大きく開く。

剥き出しの両牙から黒緑の毒が滴り落ちている。


喉奥が見えそうになるその瞬間に

ジョセフィーヌは高速移動していた。

直線上に、ではない。その躯体を収縮させつつも

一階部分だけ残った塔の壁とその瓦礫を縦横無尽に伝っていく。


「!っ」

アルファイは急に重力に逆らった姿勢を崩しそうになったが

魔女がアルファイの腕を自分の腹に回し込んでいた。

「体を屈めてっ!!」

そう言いながら身をかがめた。

アルファイも同様に屈めて

魔女の体にしがみついていた。

恥ずかしいとか嫌いだとか言ってる場合じゃない。

離せば落下。


ドス黒い緑の毒が

溶朽の毒蛇エンヴィの口から吐き出された。

放射線状に伸びる毒は、

塔の外壁に吹き付けられると

まるで肉を焼くような音を立てた。


「どっ毒か!?」

アルファイは体を起こして

外壁がみるみるうちに

変色して溶ける。


移動しながら、高速に足を連動したまま

ジョセフィーヌは溶朽の毒蛇エンヴィの周りを回る。

触覚が、機敏に揺れている。

毒蛇エンヴィは開いた口を閉じて

また、舌をチロチロと動かした。



魔女の視線はずっと溶朽の毒蛇エンヴィを見ている。

「あの毒に当たると痛いどころじゃなくて、死にます。」


アルファイはゾッとしたが

魔女の前掛けエプロンの上に置かれたものに目が行った。

「魔女、それはなんだ、その、丸い」

「?これですか?

 これは“ロートスの実”で、

 溶朽の毒蛇エンヴィの毒を

 解毒できるんです。」


それを聞いたアルファイは

すでに背の鎌ってちゃんに手をかけた。

「アルファイさん、ダメです、

 ー この実は四つしかないんです。

 けど、溶朽の毒蛇エンヴィは切っても

 再生能力が凄まじくって、えっとー、だから

 だから ー」


「俺たちの出番ってことだろ」


アルファイの後ろから声がした。

魔女は振り返った。


いつのまにか、ジョセフィーヌの背には

魔女とアルファイと、

それからオーゲル、ヘムズワスが乗っていた。


「おっ乗り心地は悪くねえなっ!

 な?ヘムズワス!!」

「・・・コレに乗るとは・・・」


魔女は嬉しそうに訂正だ。

「コレじゃありません!!

 ()()()()()()()ですッッッ!!!」










ジョセフィーヌ情報:名前だけ貴婦人みたい。

          よろしくね。むにょ〜ん。


ニアヴ情報:塔が落ちてきても

      みんなが戦闘中でも

      なんかドタバタしてても、笑顔で馬上。

      大防御と祝福で無傷。

      むしろ、楽しんで観戦中。

      ゲコゲコゲッコー!!      


シャーペンゲッコー情報:・・・おや?

            ゲッコーのようすが・・・





            



お読みくださって、ありがとうございます。

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