最上階
*
四階へいざ!
魔女の胸はドキドキ、でも、今は1人じゃない。
「さあっ!行くぞー!!」
大手を振り、階段を上りはじめた、
ーが、あれれ〜?
おっかしいなぁ〜?
「(あれ?ー、気配がない?)」
魔女は振り返った。
振り返ると、
ニアヴは小さく手を振っている。
その少し後ろで、
ヘムズワスは魔女の視線を外して後ろ手に手を組み
居心地が非常に悪そうな顔をしている。
「・・・?」
魔女は立ち止まる。
三段ほど登った階段の上から二人を見下ろした。
「(ニアヴさんはまぁ、女王さまだし、
うん、待機、かな。でも)
ヘムズワスさん、どうしたんですか?
一緒に四階、行かないんですか?」
『・・・私は、行けない』
「へ?なんで?なんだっけ
ちぎったんじゃないんですか?」
“千切る”な、“契り”だぞ。
『それは、確かにそうなんだが
あぁ、本来は四階にて・・・
現れる予定だった。』
「?」
魔女はヘムズワスのその非常に
居心地の悪そうな態度に
オンラインゲームでの助っ人の役割と
ルールを思い出していた。
「(・・・オンラインの助っ人機能のうち
紋章旗に触れると出てくる助っ人。
オンライン繋げたことないから
知らなかったけど、(機能は)思い出した。
助っ人は、入った場所以外に
エリアチェンジできないんだ。そもそも
ボス前の部屋にある紋章旗に触れないと
助っ人は侵入できないはず。
あれ?私、紋章旗に触ったっけ・・・)」
てことは何だ。
三階に来る前に、二階で紋章旗に触れたってこと?
「ヘムズワスさん、私紋章旗触ってないですけど」
『・・・知ってる』
「じゃあどうして来たんですか?」
『魔女が東の塔に現れたと報告を受けた』
「・・・それで来たんですか?」
『・・・そうだ』
「なんで」
魔女のジト目。
『っそ、それはさっき言ったとおり
魔女との契約で ー』
「でも、肝心の戦闘してないですよ」
『っー』(One Hit)
「魔法隊長なのに」
『っ!』(Two Hit !)
「何もしないでこのまま帰るんですね?」
『ーっっ!!』(Critical!!)
ヘムズワス、なんもしてないやんけ。
心に刃受けて、血みどろやん。
魔女は小さく息を吐いた。
「(ヘムズワスさん、
ここに何しにきたんだよ・・・)」
タイミングの悪い 男 ヘムズワス。
一生の不覚。
生身の体だったら四階へ上がれるが
なにせ、今は“写し身”だから
移動に制限がある。
三階でかっこよく魔女を魔法から守ったつもりだが
よくよく考えたら、魔女に援護射撃なんて必要ない。
丸太みたいな槍の魔法を片手でぶっ潰すくらいには
余裕だったようだし、あの魔女だ。
「(もう少し様子を見ればよかったか・・・)」
ちょび〜っと早く、来すぎちゃった。
え?ここに来た意味?
時間無いって言ってんのに
四十三分かけて魔女とアルファイの話も聞けたし
あぁそうそう、エラム宰相の話もしたし
合計二時間の魔女の説明のうち
五分以外は無駄話だったけど
魔女の意味不明な説明でも
ブチギレないという精神力は鍛えられた。
(すごく疲れるだけ)
『(私はここで何をしてたというんだ・・・)』
お茶だよ、紳士。
ティル・ナ・ノーグのニアヴ女王と
お茶をしたんだ。
それはとても栄誉あることだし
何より、女王との時間は
かけがえのないものだったよ。
泣くなよ、紳士。魔法隊長だけど
颯爽と現れた割には、
お茶を飲む以外何もしていなかったっていうのは事実。
かっこいいところとか見せ場とか全然なくて
多分、モテることとかもないし
上階に行かないのに
ニアヴを護衛するだけで
大防御の祝福付きの魔法をかけてもらって
魔法隊長の立つ瀬はないだろうけど
お前は紳士だ。それは間違いない。
ー だって、魔女に苛立っても
切れなかったじゃん、お前。
ー アルファイとは大違い。
男の器がっていうか人間の格?みたいなのが違うよね、
タイミングだけ悪いけど。
「じゃあ、行ってきま〜す。
ヘムズワスさん、ニアヴさんのこと
お願いしますね〜」
『・・・ああ・・・』
魔法隊長 ヘムズワス、戦線離脱。
(不本意ながら)
ニアヴは何とも言えない複雑な顔で
笑顔を見せた。
女王の鋼鉄の精神をもってしても、
魔法隊長の肩書きを持つヘムズワスに
いかばかりかの同情が垣間見えた。
「(不憫なお方ね・・・)」
『(女王から憐憫の眼差しを感じる・・・)』
ヘムズワスは魔女の言葉を聞き
静かに黒銀色のマントの裾を持ち、礼を執った。
肩をガックリ落としたと思いきや
魔女は二人に手を振って、走り出した。
かと思うとー
バタバタと帰ってくる。
「?」
『どうした』
「たっ大変っ忘れものっ
忘れ物した!!」
そう言いながら、三階の部屋に戻っていく。
ニアヴとヘムズワスはしばし待つ。
「何かしら?」
『かばんを整理していたので
何か入れ忘れがあったのかもしれません。』
「・・・薬草を九十九個持っているって
魔女は言っていたのだけれど
この魔法王国ではその数に
何か意味があるのかしら?」
『・・・聞いたことがありませんが
魔女には意味があるのかもしれません』
「ふふ、そういえば
先ほどまで外が騒がしいようでしたけれど
騎士団の方々は無事戻られたのかしら?」
『・・・はい、良い訓練だったと思います』
「それもあなたの計画通りなのね」
『・・・』
「ひゃ〜〜っ!忘れるところだったぁ!!」
魔女が二人の横を抜けた。
『!魔女っ』
「!!」
思わずヘムズワスは声をかけた。
「はい?」
『な、なんでそんな格好を』
「え?なんか変ですか〜?」
変っていうか・・・
『魔女・・・お前さっきまで
(サイズ感は合ってないけど)
ローブ着てたじゃないか・・・
(なんでそんなボロ布着てるんだ)』
「ああ、それね〜。
えっと〜、着替えたんですよ〜。
老賢者装備の方が強いんで〜。」
「???強い?」
『(どこが?ローブより酷いのに!?)』
ボロボロの袖もなく膝小僧丸出しで
腰には縄がベルト代わりに巻かれている。
ノースリーブワンピースというとかっこいいが
『(原始の人か?・・・)』
ヘムズワスは思う。
汚れきって黒ずんだ麻の布切れを
着て(?)いる魔女は
今にも破れそうな布を少し持ち上げた。
「はい、これ強いんですよ〜!
着替える時、ちょっと破いちゃったけど
ローブみたいに長くないんで〜
つまずいたりしないし〜
動きやすい感じです〜」
『(つ、つよい・・・
それを着る精神力が)』
なんかわからんが、ニアヴもヘムズワスも
納得した。
「破れないか心配だわ、魔女」
ニアヴが言う。
『その、着ていたローブでは駄目なのか?』
ヘムズワスもなんだか心配。
「?大丈夫だと思うんですけど〜
この強さがわかりません?」
どう見てもぼろ切れだが何故か自信満々だ。
「強いと言うか、きょ強靭ね・・・
(その心が・・・)」
「やっぱりわかります〜?
強いんです!!」
『(つよい・・・その心が・・・)』
これ以上、何も言うまじ。
「急がないとなんで〜
行って来ますね〜」
魔女は階段を上がる。
「(っぱ、ひとりか〜!
でも、基本ソロプレイ楽だし!
まあ、いけるでしょ)」
魔女の足取りは軽くはないが、重くもない。
後ろから声がする。
『魔女っ!知ってるとは思うが
ロブズレーは、ー』
ヘムズワスが何か言っている。
「魔女、あなた布がっー」
ニアヴも何か言っている。
魔女は振り返って、笑う。
「(はいはい、知ってますよ〜だ!!)
行ってきまぁ〜〜っす!!!」
四階へと向かう。
*
「大丈夫でしょうか、」
『ー、魔女は最強だ。
問題ないかと。』
「私たちが現れたことで、
魔女の“とき”は変えられたのでしょうか」
ヘムズワスは魔女がいなくなった階段を見てた。
『・・・』
「あれが魔女だとは
思いもしませんでしたけれど ーふふ。
やっぱり魔女だわ。
ーねえ、そう思いませんこと?
ヘムズワス様、・・・
あなたがここへ現れたのは
わざとでしょう?」
ニアヴもまだ階段を見上げていた。
『・・・ニアヴ女王。
それは陛下も同様では?』
ニアヴが向ける鋭い眼差しを
ヘムズワスはまっすぐ受け止める。
「・・・ふふふ。やっぱり。
アイスクラピウス様が仰った通りでしたわ。」
『?』
「あの魔女なら、変えられる。
ー 変えるために、ここへ来る、と」
『勇者を引き連れて』
『えぇ。ふふふ、三人もいるなんて
愉快だわ。』
少女のように目を輝かせ、ニアヴは笑う。
ヘムズワスはそんなニアヴにエスコートを申し出る。
『では、参りましょうか、ニアヴ女王陛下。』
ニアヴは上階へ消えた魔女へ向けて小さく祈る。
ー 我は 沈黙を 破る
聖なるかな、汝 宇宙の主よ
聖なるかな、汝 自然の造らざる者よ
聖なるかな、汝 広大にして強大なる者よ。
光と闇の主よ 我の声を 聞け ー
紫のローブが揺れた。
ヘムズワスに、ニアヴは微笑んでいた。
『?いかがなさいましたか、女王陛下』
「ふふふっ、あなた気付きまして?
魔女ったら、紅い薔薇を耳にかけてましてよ」
『あぁ・・・
紅い薔薇の意味を知らない様子だった』
「最後の質問はヘムズワス様、覚えてて?」
『っーあ、あれは・・・』
「うふふ、こんなに楽しい気持ちになったのは
オシーンがいた時以来だわ。
待っていてよかった・・・。」
『・・・』
ヘムズワスの目の前にニアヴがまわりこんだ。
見上げる瞳は澄み切った空のようだった。
『?どうされましたか』
「ヘムズワス様、あなたもこの国の人間なら
ご存知でしょう?
魔女のタル・ロだなんて、
お告げではないわ。
これは決まったものだもの。
ー ふふ、あなたもね、ヘムズワス様』
言うと、ニアヴはシャーペンを取り出し
助手ゲッコーの頭を
『ゲコッ』
と、押し込んだ。
ボテっとしたカエルの
帽子のタッセルが揺れた。
『アンヴァル!!おいで!』
*
魔女は深呼吸だ。
自覚はある。
「(おしゃべりしすぎた〜。
一人だったから寂しかったっていう
そういう言い訳もあるけど
楽しかったからな〜・・・
確か夕方までに集合の予定だった。
今は・・・あ〜・・・
三時間オーバーかぁ〜。
やっちまったな。
焦ったって仕方ない。
多分ていうか、もう遅刻は決定だ。
なら、堂々としよう。大丈夫。
アルファイさんは絶対怒るけど
紅茶飲ませればなんとかなる。
飴もいっぱいあげたし。
ラースもきっとクッキーとか
チョコレート食べて待ってるはず。
みんなもきっと、きっと来る。
オーゲルさんには、おにぎりあげよう。)」
おしゃべりしすぎで
本来の目的からだいぶオーバーしている。
「(確実に、丁寧に・・・
素早くゆっくり急げ)」
魔女は両扉に、両手をついた。
中へ吸い込まれるように、魔女は部屋へと入った。
もわっとした水蒸気に
一瞬、位置感覚を失うも
魔女はボスがいると思われるあたりを見て
「やっぱり・・・こ、こっちかぁ・・・」
赤騎士が召喚するって言うから
九分九厘、そうだろうな〜とは思ってた。
だけど
残りの1パーセントのマグレがあるかもと
魔女は思ってた。
思ってたけど、
「・・・こ、これか〜
(通常この階で出現するのは、
溶朽の毒蛇なんだけど
ロブズレーやっぱり召喚されてたか〜)」
そう、魔女がその可能性を考え
わざわざボロ切れを着替えたのも
第一重要アイテムとした理由も
何を隠そう、“老賢者のローブ”の取得。
老賢者のローブを取得し、着替え
さらには“ロートスの実”を
ひとつ残らず回収していることを条件に
出現するボスが変わることを考慮してのことだ。
出現するボスは “ロブズレー”である。
逆に老賢者のローブをめんどくさがって取得せずに
“ロートスの実”も回収していなかったら
(もしくは取得しても着用しなかった場合)
“溶朽の毒蛇”が出現する。
魔女は保険のために着替えていた。
その“保険”が効力を発揮した。
今の目の前には ー
吹き抜けの天井をうねうねと蠢くその姿を見て
魔女は、全身の毛が逆立つほどのキモさを感じた。
「(やっぱりだけど)まじか」
出現条件を満たしたボスキャラ、ロブズレー。
(もしくは召喚されたロブズレー)
見た目全長:10メートルくらいある。
イモムシに似た無脊椎動物で、長い触覚。
有爪で、
長く柔らかい体にたくさんの短い足。
触覚のすぐ下には対になった粘液の分泌腺があり
そこからベットベトの乳白色の粘液が
ビュルビュルと勢いよく飛び出す。
粘液は放射線状の網となって
相手の視界を遮り覆う。
その網に覆われた相手の身動きが取れなくなったら
ゆっくり捕食する、キモさ倍増仕様だ。
ヌチュアァ・・・という
効果音までついてくるのだから
多分、製作側の思い入れがあるかと思われる。
無駄に作り込まれた感がある。
「(溶朽の毒蛇の方が良かった)」
リアルだとただただキモいだけだ。
今現在、ロブズレーは
魔女の部屋侵入に気付いていないのか
壁伝いにヌメヌメと早くも遅くもなく
蠢いていらっしゃる。
その姿 ー
魔女から言わせれば ー、
「(そのバトルフォルムは
ミミズとムカデの中間に位置し、
そこそこどころか
全開でキモさのエッジを利かせている。
でかい。ーすっごく、ゾワゾワする。
全身の毛が逆立ったまま元に戻らない。)」
見た目のグロさは、現実を目の当たりにしたところ
ナマコみたいだ。
ドンちゃんの方が、
まだ少し可愛げがあるやもしれん。
でもドンちゃんは蛇だし・・・。
だが、キモいのにじっと見ちゃう。
じっと見ちゃうからキモいのか、
もうちょっとわかんなくなってきた。
動いたり、止まったり、ー その反復を ー、
観察中の魔女はふと気付いてしまう。
「(正直、キモさ すんごいある。)」
なのにどうだ、
ココアパウダーをまぶしたかのような
全体に丸いその魅惑のムチムチボディ。
薄目で見れば、
そのナメクジのような触覚は
ツインテールに見えなくもない。
四方八方に揺れる触覚が風に揺れているようだ。
足の先端には爪と思しきものがあるが
よく見ると移動する時、これを丸めて歩き
走ると・・・
ゾワゾワゾワワワワ〜ん。
「うっわぁ〜!めっちゃキモいね!!!
すんごい足動いてるよ!!
“速さ=怖さ”に変化する〜ぅ!!
やだぁ〜!すんごい動くぅ〜!!
うわぁぁ、速いよぉ、怖いよぉ、
キモいよぉぉぉっ〜〜!」
ゾワゾワ、ゾワゾワ。
でも〜、ゆっくり歩くと・・・
あらら、あんよが上手。
トテトテという効果音が
聞こえてきそうなほど可愛らし、くはないが
その歩き方に覚えがある、
どこかの猫型バスだ。
ホワホワ、ホワ〜ァ・・・
「(歩き方、笑っちゃうんすよ
・・・なんなん、その歩き方。)」
不思議だ。
何度見ても“キモさ”が色褪せないのすごい。
このキモさと
愛らしさみたいなのがセットになってるのって
何。反比例の数学マジック。
そして魔女は思い出す。
ロブズレーの動きを観察しながら
Dr.ドーブッツの言葉を思い出した。
『ミミズだって オケラだって
何やかんやあって 生きています。
だから、見た目がキモいとか
動きが変だとか
何となく嫌だからという色眼鏡で
彼らを判別しないでください。
よ〜ぉく見たら!よぉ〜く観察、知ったら!
あなたも“とりこ”になるどーっぶっつ!!』
締めの言葉は
“あなたも、“とりこ”に なるどーっぶっつ!!”。
魔女もとりこになるどー・・・っぶっつ?
いつのまにか、ロブズレーに見入ってた。
魔女、ズッキューンビーム(キモさで半減)
ロブズレーから食らう。
「かわー・・・いくはないけど、
なんかおもろい・・・かも。」
だが、忘れてはならない。
奴はキモさほど突き抜けてはいないが
強さという点では少々厄介な存在だ。
魔女は転生前のゲームで、
キモいから、という一点のみで
ここでのボスキャラをあえて、
溶朽の毒蛇にしたが
だがしかし今は縁あって、ロブズレーだ。
倒すという点に、魔女は呼吸を整えた。
ーだがはて?
「(どうやって倒したっけ・・・
魔法、効くのかな・・・。
ヘムズワスさんの話聞いとけば良かった)」
何百回とこの塔に来たことがあるのに
そのうち九割強を
溶朽の毒蛇との戦いに費やした弊害が
ここで現れた。
そもそも、この塔自体は
イベント全回収、
アイテム全回収、
武器、防具全回収の目的以外で
寄る必要のない場所だ。
「(う〜ん、見た目的には
火?火、効くかな・・・?
でもなあ、私プレイヤーだった時は
魔法戦士で聖魔法の剣使って・・・あ。)」
魔女は肩掛けかばんをゴソゴソしだした。
手にしたのは触媒だった。
そしてキョロキョロと周りを見回すと、
水面に落ちている
木箱の残骸を発見する。
「(これなら、いけそう、かも)」
手にした木片(全長40センチメートルほど)に
触媒を擦る。
擦った瞬間、魔女気付く。
「(!やばっっ!この触媒、
属性なんだったっけ!)」
付与する触媒をよく見てなかった。
木片に乳白色の雷がバチバチッと、発生した。
「わっわわっ(やばっ!したっ下、水!)」
魔女、ここで感電死するつもりだろうか。
その音と雷に反応した、ロブズレーは
触覚を伸ばし魔女へと急速発進し始めた。
ウゾウゾとキモい。
(どうか諸君には
猫型バスの足並みでご想像いただきたい)
さあここで思い出していただこう。
『 速さ = 怖さ 』
ー それが、高速で
ウニョウニョだか
ビロビロビロ〜だかわからないが
足音はまったくしない。
足音はないが、
勝手に脳内再生される擬音語を発しながら
凄まじく連動した足を
高速で動かしてこちらに向かってくる。
ー 壁を伝って。
「っっっひゃ、き、き、きゃああっっ!!!」
バチバチと音を立てながら
付与した木片を片手に
魔女は水面をバシャバシャと駆けずり回る。
水は魔女の足首まである。
「こっっ、こっち、
こなっこないでええええ〜っっ」
だが、ロブズレーは魔女に
言葉通り音もなく走り寄る。
その長く伸ばした触覚が伸びる先 ー、
「 あっ 」
っっバシャーッッン!!
足がもつれた魔女は、こけた。
ローブじゃないのに、つまずいた。
ボロ切れが、破けた。
もはやお家芸。
もし、彼女を励ます
その場しのぎの言葉を与えるならば
唯一の幸運は、エンチャントされた雷が
消えていたから
感電死しなくてよかったね、ということだろう。
「ー!っ(ど、どどどっどうしようっ)」
今、ロブズレーを目の前に
魔女は完全に頭から水浸しで、対峙した。
ロブズレーは、魔女の目の前にその長い触覚を下ろし
何かを探るように宙を蠢いた。
*
ニアヴ情報:白馬に乗って、階段を降りてる。
手には助手ゲッコー。階段を降りるたび
『ゲコっ』と言わせて楽しんでいる。
ヘムズワス情報:オーゲルにぶっ飛ばされた
騎士たちからの連絡が
続々寄せられ衝撃の事実。
王城ぶっ壊せとは言ってない。
オーゲル・・・あの脳筋野朗。
ロブズレー情報:リチャード・フォーティ氏によれば
ミシュランタイヤの
マスコット人形みたいだ、とのこと。
ご興味のある方は『カギムシ』で検索、どうぞ。
歩く姿を見て、和んでください。




