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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第二部 賢者と砦のドノヴァッテン魔法王国編

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東の塔 ④







「あの〜、じゃあ、えっと〜

 私、何したらいいんですか?」

こんがらがった頭で考えるより

聞いた方が早いと察知。

魔女はクッキー片手に気軽なものだ。


『魔女・・・

 お前はニアヴ女王陛下の願いを

 叶える必要がある。』

「それって〜

 すぐやらなきゃいけないですか〜?

 私ぃ〜、色々やらなきゃいけないこと

 多くって〜。」

『・・・』

そんなもん知らんがな、と言いたいのを

グッとこらえて、ヘムズワスは紅い薔薇を見た。

「さぁ? 約束したのは魔女だ。

 お前がニアヴ女王陛下に直接交渉したらどうだ?」


おずおずっとニアヴを見れば、静かに微笑みを讃える。

その静けさすらまこと美しいものであったが

ヘムズワスはその微笑みに得も言われぬ恐れを感じた。

彼女の顔をじっと見ることが、怖くなった。


「ニアヴさ〜ん、えっと〜

 とりあえずなんですけど〜

 オシーン、さんってどんな人ですか〜?」

約束をどうの、というより

まずはオシーンなる人物がどんな人だったか

魔女は聞くべきだと思った。


「(モブですらないサブイベントの

  テキストのみ出演の名前の人だもんな。

  お婿の王さまでしょ・・・。

  えー?どこで出てきたかわかんないな〜

  敵対者?だったら覚えてる。

  友好関係?それも違うな・・・、

  アイテム?人がアイテムじゃないし。

  う〜ん・・・せめて関係するキャラが

  わかればなんとかなりそうなんだけど・・・)」

記憶の糸をたぐる。


ニアヴは宙を見つめて、思い出しながら

語り出した。

「あれはいつだったかしら。

 ー オシーンは騎士団の者で

 彼が狩りをしている所を見てから、

 ふふ、私、恋に落ちましたの。」

「おー!!」

恋バナです。

ニアヴの頬がうっすら赤く染まったのを

魔女は見逃さずに突っ込んだ。

「わあっ、ズッキューンビームですね!!」

『(ズッキューンビーム?)っ』

紳士ヘムズワスの脱力感、いかに。

『(自国ではないが女王陛下の御前だぞ、

  と言いかけて三回目だ)』

ハラハラする紳士。

「ズッキューンビームとは何かしら?」

キラキラする女王。

「!!」

ニアヴは怪訝な怒りを見せず、

朗らかに問いかけた。

魔女なんて浮かれた。

人に何かを教えて欲しいなんて

言われたことがないから

ちょっと鼻が高くなった気がした。

胸も張ってみた。

ヘムズワスはニアヴの慈悲深さに

心底感謝しつつ、女王の器を感じていた。


良きに計らえ。


「一目惚れのことです!!

 えっと〜ぉ天使の矢が胸にこう、

 ズッキュ〜ンって刺さるっていうか〜

 ビビビ〜ぃってビーム!って

 突き抜けるみたいな〜?」


良きに計らいすぎ。


経験ないくせに言う。しかも

片手で拳銃の形を模して

撃つようなポーズを取った。

それは天使キューピッドではない。

どちらかと狙い撃ちしてるガンマンが

ビーム撃ってる摩訶不思議状態。


魔女の雑な擬音語会話に、

ニアヴは即時対応できたらしい。

「まあ、素敵な言葉だわ、

 そうね、ズッキューンビームでしたわ。

 うふふ、もう彼に夢中でしたの。オシーンの

 荒々しく盛り上がる上腕二頭筋、広背筋の美しさ。

 引き締まった大臀筋。ー 何より、彼ったら」

ケツ筋までチェックする女王。

女王も筋肉がお好きらしいぞ、諸君。

ニアヴの想いが羽付けて飛んでった。

「?(ニアヴさん、

 めっちゃ恋する()()だぁ。

 いいなぁ、綺麗だなぁ。

 ホワホワしてるな。空気)」

魔女もなんだか幸せな気分だ。


魔女、忘れてるよ。

お前、ここに何しにきてるか覚えてる?


ハッと我に帰って、ニアヴは小さな咳払いをした。

「コホン、えぇ、それに彼は、

 美しき旋律の言の葉を紡ぐのです。」

「言の葉?」

『詩人だ』

ヘムズワスは短く説明した。

「あ〜、ポエマーなんですね。」

「ポエマー?」

「え、えっと〜、

 素敵な詩を作るのが上手な人ですね、

 ってことです(本当はちょっと違うけど)」

「はい。私はすぐさま、彼に愛を乞いました。

 我が国で一緒に生きることを夢見て、ー 」

「ほ〜ぉ、すご〜い。」

「?」

「ニアヴさんて情熱的ですね〜、素敵です。

 ニアヴさんに好きビーム撃たれたら、

 みんなイチコロですよね!!ムフー!」

魔女は嬉しくなって鼻息が声になる。

ムフーって言っちゃった。

両手を握りしめて身を乗り出していた。

「まあっ、そうかしら。ふふ、私の想いに彼は応え

 その後の生活も彼は了解してくれました。

 我が国に行きすがら、巨人族に出くわしまして」

「うんうん、それで?」

国に行きすがら巨人族に出くわすっていうドラマ。

「彼は、逃げることなく、

 勇敢にも向かっていき倒したのです。」

「お〜!!!」

魔女は拍手していた。

「それからは、ええ、二人仲良く・・・」

おとぎ話の締め言葉のように言いかけて

しばらく静かになった。

「?・・・(何かあったの?)」

魔女は不安になった。

ニアヴは顔を上げ、小さく息を吐いた。


「ですが、幸せな時間、というのは

 長くは続きませんでした。

 彼はいつしか、故郷を恋しがり

 おかんの作ったポトフシチューが食いたいとか

 おとんの焼いた仔牛の丸焼きで

 サンドイッチ食いたいとか

 騎士団のニールにエロい本返すの忘れてたとか

 けど、私の方がエロいからもういいやとか

 騎士団のメルゥインは

 実はお尻に問題を抱えているとか

 この話は自分じゃないことを

 しきりにアピールしてきたりとか

 見張り小屋に忘れてきたペンじゃないと

 本気の字が書けないとか

 ただ単に字が汚いだけなのに気にしてるところとか

 実家に置いてきた犬にお別れ言うの忘れただとか

 けど、白馬アンヴァルの方が

 言うこと聞くからもういいやとか

 いとこのヴェルシュと釣り行く約束してたとか

 でもどうせ行ったって

 ヴェルシュの嫁の文句しか聞けないからいいかとか

 近所にあるでっけー蜂の巣で

 作った蜂蜜酒が飲みてーだとか

 私の作るりんご酒の方が甘くて美味しいとか

 閨のベッドのスプリングが体に合わないとか

 本当はスプリングが壊れたのは

 自分が飛び跳ねたせいなのに

 靴下が片方ないのは

 小人ちいさいオッサンの仕業に違いないとか

 毎日私の顔を見ると

 靴下なくてもまあいいかって思うとか

 パンツの紐切れたから不吉だとか

 夜だったし脱いじゃえば一緒だしもういいやとか

 たまには騎士団のみんなと飲み会したいだとか

 自分の考えたライムをぶちかましたいだとか

 女房酔わせてどうする気、と私に言わせたりとか

 夕食に食べたポテサラに入ってたりんごが邪道だとか」


魔女はわかっていた。

“故郷に帰りたい”と言われたのが

非常にショックだった、と言うだけなのに

時折関係ないのも含まれていることも、

それは全部のろけだということも

わかっている。

「(ニアヴさんも辛かったよね。

  帰りたいって言われるの、辛いよ。

  靴下片方無くなるのって、何でかな。

  小さいオッサンってなんだろ。

  ライム?レモンじゃなくて?あと私は

  ポテサラにりんごは入っててもいい派だし。)」

お前の言ってることもたいがい関係ないよな。

きっと酢豚のパイナップルも許しちゃう。


「眠っているときですら、

 帰りたい、と。」

シン、と空気が静まり返ったように感じた。

魔女にはかけられる言葉がなかった。

ニアヴの気持ちを代弁できるほど

恋も愛も知っていない。

けど、オシーンの言うことも何だかわかる。

故郷に友達がいたら

久しぶりに会いたいって思う気持ちも

実家の犬や両親に会って

元気かどうか顔が見たい、とか。


けど

ー 魔女には そういう 経験も

家族も いない。 ー

転生前の、孤独だった頃を

なぜか思い出す。


口火を切ったのはヘムズワスだった。

『女王陛下、

 あなたはオシーン殿下をどうされたのだ』

それは、ヘムズワスの優しさだ。

あえて彼女らの問題には触れない。

それは彼女らがどうにかすることだし

意識を感情で飲み込まれないようにした。

紳士の()()()()だ。


それに。


(ヘムズワス)は知っている。

オシーンがその後どうなったのか。

敢えて聞く必要があると判断した。


“魔女が知るためには”


「彼が故郷を訪ねることを

 了解いたしました。

 ー ですが、約束をしました。

 我らの国は、

 “常若とこわかの国”と呼ばれ

 こちらの世界とは大きな

 “とき”の隔たりがございます。

 我らの国には厳格なルールがあり

 こちらの世界に足を着けてはならない、」


ヘムズワスは下を向きながら目を閉じた。


「そのとき、私はこの白馬アンヴァルを彼に託し・・・」


白馬アンヴァルが顔をブルブルっと振った。

ニアヴの閉じた目に映るすべて、

あの日の彼の声が ー。

今も鮮明に聞こえてきた。


『アンヴァルから決して降りてはなりませぬぞ!』

『おう!便所は()()()()か?』

『〜〜っアンヴァルに立ってなさいませ!

 男子おのこでございましょう!』

『ハハハっ!違いねえっ行ってくる!!』


後悔してる、

あの日のことが、あの言葉が ー

見送った背中が最後だったのだ。

それで、終わり。


そして

そこから始まったのだ。

ニアヴは目を開け、静かに語りだす。


「無事、こちらの世界に戻ったと

 聞いておりました。

 しかし、二人の男が大きな石を退かすために

 道中で苦慮していたそうなのです。

 そしてオシーンは

 ふふ、彼らしい・・・

 馬から飛び降り、大地に足をつけ

 手伝ったと。」


「え 」


「私たちの国では 時間が早く進みます。

 ですから我らの世界にいたらば

 気付かぬうちに、

 数百年は過ぎるでしょう。

 オシーンは大地に足をつけた瞬間

 三百年の月日を瞬時に迎えたのです。」


魔女はニアヴの手をぎゅうっと握った。

「(そんなっ三百年もー)」

伝わったのだろうか。

ニアヴもぎゅううっと握り返した。


ヘムズワスは咳払いした。

『では、このドノヴァッテンに

 女王陛下が自らいらっしゃったのは 』

「“時戻し”、の、呪いでございます。」


このとき

はじめて魔女は、()()()()の名に

思い至る。

「(”時戻し”の?ー ()()か?)」


『フィアーナ騎士団の名高き騎士にして

 敬虔な白の信徒である()()()()

 古竜の武器たる、無名の剣を

 “時戻し”で異界より持ち帰る際

 父が七年かけて獲った

 “知恵の鮭”をたったの二日で

 捕獲した。』


「シャケの人だ!」


魔女は声をあげていた。






「シャケ?」

ニアヴが不思議そうな顔をする。


「あ!ごめんなさいっ

 こっちのっ独り言です!」

魔女は納得する。

「(シャケだ。・・・確か

  貴重品に分類されるアイテムで

  あれを食べると魔法の割り当て(スロット)

  増えて、攻撃系の魔法の威力が

  高くなるんだった。

  あんま使ったことないんだよな。)」

そのテキストの中に出てきたのが

オシーンだ。

「(オシーンさんが持ってきたのか。

  シャケ・・・。

  おにぎりの具にしたいかも)」

魔女が一所懸命に思い出している頃


『“時戻し”?そのような呪いなど聞いたことがない。』

ヘムズワスは顎に握り拳をあて、考えているようだった。


魔女はある。知ってる。

「(“銀枝”のことだ。)」

魔女は握ったニアヴの手を持ち上げていた。

「ニアヴさん、

 ニアヴさんはその呪いをかけられたんですか?」

「いいえ、“時”と引き換えにございます。」

『引き換え?』

ヘムズワスの眉間にしわが寄る。


ニアヴは静かに立った。


「愚かな願いにございました。

 ドノヴァッテンの魔法をもってして

 無くしたオシーンの“時”を戻すがため

 私は我が王権(レガリア)を、手渡したのです。」


「え?王権(レガリア)?」


ヘムズワスの奥歯を噛み締めたのは気付いていた。

気付いていたが、魔女は尋ねなければならなかった。

その王権(レガリア)を、手渡した相手の名を。


自分の中に、嫌な心臓の音が聞こえる。

ゾクゾクと背筋に緊張が走った。


“魔女、注意しろ ー”


王権(レガリア)を“誰”に手渡したんですか」

魔女の血が騒ぎだす。


警告音(アラート)が聞こえる。


口の中が渇きだす。


警告音(アラート)が 大きくなる。


手の先が 冷たくなる。


ニアヴの口から、溢れ落ちるその名前は

「 ()() ()()() 」


“魔女 “エラム”という男には気をつけろ。”


ヘムズワスはその名を聞いて、地面を叩く。

鈍い音が響いた。



「エラム・・・」

魔女にはその名に何の覚えもないのに、

つぶやいただけで

全身の鳥肌が立っている。


「(ー?なんで、体が震えてる)」

背中がひきつるみたいに痛くなった。

耳の中に心臓の音が鳴り響き

頭のてっぺんから突き抜けそうだ。


「(これ、は、まずいかも・・・)」 

抑えきれない力が暴走しそうで

思わず、

両頬を両手で挟むように 勢いよく叩いた。

バチンっ!


「まっ魔女?!」

「っへへ、ごめんなさい

 びっくりしましたよね。」

鳥肌もおさまっていた。

「(危ない、意識がなくなりそうだった。

  二回目の黒竜に変化するときみたいに・・・)」



ニアヴは魔女のそばにしゃがみ込み

魔女の両頬を包むように撫でる。

泣きそうな顔をして小首を傾げた。

「ごめんなさい、魔女ー。

 あなたに甘えることではないのです。ー

 これは私の問題なのです」

『違う。我々の 問題だと、今理解した』

ヘムズワスはすでに立ち上がっていた。

「ヘムズワスさん、問題って何ですか、何が」

話を言いかける魔女に片膝をついて頭を垂れた。


『魔女、我らドノヴァッテン魔法王国

 この魔法隊長が

 エウェイン・デジェ・ヘムズワス

 今より即刻この場を辞去する。

 ご容赦いただく ー』


言うと、消えかかー、「待って!」

魔女がヘムズワスの手を引っ張った。

『?!っ(またか!)』

ヘムズワスは不思議でたまらない。

魔法を解除されるのも

途中で止められるのもはじめてだ。

『(魔女の魔力か?無効化される・・・)』


魔女はヘムズワスをじっと見た。

「ダメです。」

魔女はこんなことを言うつもりはなかった。

だけど、今 ー

ここでヘムズワスを行かせれば、

きっとよくない事が起こる気がした。


それは、魔女の 直感。


()()になって呪いを解け』

聞こえなかったはずの声は

魔女に届いていないはずの声は

『 ー 解放 を』

今、届く。


体中の神経が敏感になっていた。

同時に、

「(あの時、王さまの横にいたのは誰だ?

  ゲームでは王さまは魔法を使っていた。

  どうして代々魔法を使えない、って

  設定になってる?)」

魔女はそれら情報のピースをより集めて、

考えている。

まだ、足りない。

知らないことが多すぎる。

けどこれで判断しなきゃいけない。

未確認で未確定だけど ー

ゲームの中の世界でも()()()()()ように


「(多分、すべてがつながってるんだ)」

魔女の心には確信がある。

情報の少なさも行き当たりばったりの困難も


全部、どこかでつながる。 



「(私は自分の直感を信じる。

  ここで、この二人に会ったのは

  何か、何か意味がある。

  考えろ、考えるんだ、

  小さなとっかかりだ。

  ゲームの物語はあくまで表層で

  この世界で起きてる事実が真相なら

  その理由と原因が、あるはずだから

  ケトルさんはなんでニアヴさんに

  薔薇を渡していたんだろ。

  なんで私がここに来るって知ってた?

  てことは、あの手紙がはじまり?

  ・・・ラースはなんで捕まった?)」


出た答えは、明白だ。


「(魔女()がどの話にも

  関わってるってことだ。つまり ー 

  呪いを解けってことだ)」

早々に、腹を括った。


「ヘムズワスさん、

 みんなで対処していきましょう。

 この国で何か、起きている。

 もう、起きてると思う。

 ニアヴさん、白馬アンヴァル

 安全なところへ移動しましょう。

 王権(レガリア)は必ず取り戻します。

 あとオシーンさんも絶対戻します。

 呪いも 解きます。ー

 第一物質(プリマ・マテリアル)も回収するし

 ゴリ()さんにも会わなきゃいけないし

 アルファイさんの腕も治すし

 ラースを助けにも行くし

 呪いも解きます。

 ヘムズワスさん、

 “エラム”という人について

 知っていることを教えてください。

 何もかも、全部です。」

『!の、呪いを解くだと?』

ヘムズワスは、魔女がそれまでの魔女と、

どこかが違うのを感じた。

何が違うかは わからない。


気迫?気合い?

ただ、その魔女の魔力が

強くなったような、気がした。


「あ、ちょっと待っててください」

魔女は肩掛けかばんをゴソゴソしだして

大学ノートを取り出した。

シャーペンは、魔女のお気に入りの

D()r().()()()()()()の助手、()()()()だ。

転生前によく見ていた動物番組のキャラで

シャーペンは九百円(税抜き)もしたが

奮発して買った。


「かわいい・・・」

小さな声で女王がシャーペンを

ガン見してた。


シャーペンの頭についた助手、

ゲッコーを2回ほど押し込んだ。

『ゲコッ、ゲコッ』

という、奇怪な音を鳴らしながら

魔女は大学ノートに目を落としたまま

言った。


「オシーンさんて、死んでないですよね?」


殺すな、殺すな。

ニアヴ、泣いちゃう。










「おい、本当に大丈夫か、お前」

オーゲルはアルファイ(勇者アムラン)を覗き込む。

めっちゃいい汗かいてる英雄と

別の意味で死にそうな勇者がいる。


あんだけいた聖魔法騎士らは

みんな一様に吹っ飛ばされ

気付けば誰もいなくなり

王城前は瓦礫だらけで見るも無惨だ。


城壁が半分なくなっていた。


アルファイは真っ青な顔をして

答えた。

「だ、大丈夫です」

本当は、あんまり大丈夫じゃない。


傍観してたはずだが

時折聖魔法騎士が何人か定期的に

アルファイのところにやってきては

喧嘩をふっかけてきたから

アルファイはその度に

死にそうになりながら戦った。


ようやく呼吸が整ったけど

貧血が起きてるみたいだ。

鎌ってちゃんを背に背負いなおし

腕を振り下ろした時、腰袋のひとつに手の先が当たった。

「?(なんで腰袋が

 こんなにはち切れそうなんだ・・・?)」

袋を取り外して、開けてみた。


「?!」

袋目一杯に、飴玉が詰め込まれている。

「(そういえば)」

魔女と別れる時、自分に寄ってきて

無理やり腰袋に何かしてた。


『この金色の飴玉は、

 アルファイさん専用ですよ!

 疲れたら必ず食べてください。

 ガリガリって噛んで食べても大丈夫です。

 こっちの緑の飴は、普通の飴です。』


アルファイは試しにひとつ、取り出して口に運ぶ。

「何食ってんだ」

オーゲルも覗き込んでいたものだから

緑の飴玉を差し出した。

「魔女から持たされました」

「お、気が利くじゃねーか。

 俺、飴ちゃん好きなんだよな。

 一個くれよ。」


オーゲルは緑の飴玉を親指の爪に乗せ

コイントスするように

空へ投げ、口でうまくキャッチした。

口の中へ入るカコっ、

という小気味の良い音がした。


アルファイは金色の飴玉を口に含んだ。

「(私専用?、どういう意味が)」

口の中で転がる飴が、

蜂蜜とレモンのような味とそれから

「(?、なんだ?

 ーち、力が湧くようだ)」

「あれ、アムラン

 お前顔色良くなったな。

 どうした、飴ちゃんのおかげか?

 うまいな、これ。もう一個もらい!」

オーゲルはまだ口に飴が入っているのに

追加で口に放り込み

鼻歌を歌いながら歩き出した。


その下手くそ具合といったら・・・

音程が音階を雪崩起こして滑り落ちる。


アルファイは飴玉をガリガリっと

噛み砕いて飲み込んだ。

口の中に広がる味は何かわからないけど

ハーブらしき何かが

絶妙にマッチしていた。


オーゲルの真似して

もうひとつ、口にしていた。


「(悔しい。・・・

  魔女アレが大嫌いなのに、

  魔女アレが作るもの

  いちいち、好ましい。)」

だからって、わけではない。


「(魔女あいつ

  うまくやってるんだろうか)」

アルファイが霧の向こうを見やったとき


『まもなく

 北門、ヘムズワスの像、下 

 で〜す』

羅針盤ラーナビが告げた。









ヘムズワス情報:魔法隊長だが、

        召喚魔法が得意。

        

オーゲル情報:初戦はこんなもんだ。

       まだまだ暴れるからな。


アルファイ情報:ヘムズワス像の下に行くまで

        飴玉四個食べてた。


ラース情報:ゲフっ。





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