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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第二部 賢者と砦のドノヴァッテン魔法王国編

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壁に一穴、風雲児





ラースはどうなったのか。

お忘れか?

魔女の使い魔、おネズミさまだよ。

ちょっと時間を戻してみよう。


透明な檻に入れられる瞬間に

『ラース、エラムが来る。これは罠だぞ』

という声を聞いていた。

その聞き覚えのある声に

慚愧(ざんき)に堪えないまま答えることなく

どこかに転送されたところで

ラースの意識は不自然にも切れた。


禁書(スクロール)を盗んだだけでなく

 使役した罪は重い ー』


ラースは檻に入れられて

心の底で、安堵した。


記憶の底に沈められた真実が

『(耳の奥にこびりつく悲鳴を

  もう二度と聞きたくない)』

有無を言わさず引っ張り上げられる感覚に

『(いつまでも逃げられるわけじゃない)』

叫びたい衝動とともに思い出す、

『(誰ひとり救えなかった)』


「(捕まったとして、後悔などー)」

思った先に

「ラース!!絶対助けるからね!!」

ラースはその瞬間を忘れられない。

騒がしいことこの上ない、迷惑なあの声を

忘れることなんてできるはずがないことを。

目を瞑れば、拾い食いしてるんじゃないかとか

つんのめってこけてるとか

誰かの名前を適当に言うとか

なのに、


『魔女はくる。相克の力を携えて


 そのすべてを 超越し

 そのすべてを従えて

 私のもとへ

 魔女が くる、()()の差異を手にして


 彼女が私に向かうこの道を 

 何人(なんぴと)も防いではならない ー』


そんな強大な力を持つとは思えない

あの魔女の顔が浮かぶと同時に

昔読んだ本の、一編の詩を思わずにはいられない。



ピチョン・・・

鼻先に落ちる冷たい雫で、目が覚める。

冷たい石畳の上に、放り出された自分の体が冷え切って

どれぐらいの時間、こうしていたか物語る。


起き上がれば、光の一筋もない牢の中。

「(あぁ、捕まったんだった・・・)」

頭が痛い。


半透明の檻に入れられた時に

無理やり寝かされたようだった。

牢には時間の経過を伝えるようなものは存在しない。

鉄柵の向こうで一本だけ蝋燭が

か細く燃え立っている。


ありがたいとは言い難いが

牢には入れられていても、手錠はされていない。

冷たい牢の地面に寝かされていたからか

体も冷え切ってあちこち痛かった。


「(どれぐらい、寝てたのか。

  二、いや、三時間は経過しているか?)」

二時間半だ。おネズミさまの腹時計は

そこそこ正しい。

なぜなら、同時刻魔女とアルファイが

新たなメンバー、英雄オーゲルと

また小書庫に戻ってきたタイミングだからだ。


「(魔女たち・・・うまくやってるんだろうか)」

ラースは立ち上がり、牢の中を見回る。

見回りながら謁見でのことを思い起こし

無意識に呟いていた。

「アルファイ、もう少しだけ耐えろ ー」


自分が囚われる瞬間、アルファイは泣きそうな顔をした。

その顔は自分が国を出る時に

何か言いかけたときと同じ表情だったことを ー


なんでか思い出す。ー

振り切るようにして頭を振ったら、魔女を思い出した。


『ラース!!絶対 迎えに行くから!

 近くに行ったら呼んでね!!』

声に出さずに、口をぱくぱくさせ言っていた。

何回も言うものだから

「(陸に上げられた魚かと思った)」

イラっとするかと思ったが、それよりもー、

ラースは額を少しだけかいた。

「呼べって、呼ぶのは逆だろう。

 これではどちらが主かわからないな。ーっふ。」

そう呟いて、地下水の滲み出る壁をなぞった。





一方、魔女らはというと・・・


「ん?なんだ、また逃げるのか?」

オーゲルは特段驚きもせず、冷静だが

この逃走を楽しんでいるようだ。

「結界が破られたんですっっ!

 早くここからでなきゃ!」

アルファイと魔女は同時に天井を見上げる。


だが


「よし、ならば ー」

その場に立ったオーゲルは

両手をまた組み、両足を左右に開いた。

大きく息を吸い

「(何をしようとしてるの?)」

腰を落とし片足を高く上げ

「!!(それってお相撲さんのっっ)」


「ふんっっっっ!!!!」

力士の()()のように

力強く地面を踏み締めー、

ズドォオオオーーーーっっンン

「きゃっ」

踏み抜いた。


小書庫の部屋一面の床が全部抜けた。

当然、魔女も

「!!ひえっっ」

アルファイも

「ーっっ!」

オーゲルは笑いながら

「わはははははっっっ!!」

落ちていく。


けたたましい音と一緒に部屋が一つ

なくなったことを、騎士らは扉を開いて

はじめて気づく。

後から来た男は愕然とする。

「な、何事だ・・・」

「(オーゲル様だ、絶対オーゲル様だよ)」

「ローリはまだか!?」

「報せは行っていますが

 どこに居られるかまだ掴めません。」

「(オーゲル様ならやりかねん)」

「ここにあいつらの形跡もないのか!!!」

「(絶対オーゲル様がやったな。)」

「(オーゲル様のせいだよな、これ・・・)

 部屋がなくなってますから・・・」

「(っていうか不自然すぎだろ。

  これがオーゲル様の仕業じゃなきゃ

  魔女しかいねえだろ、普通)」

「(あの人こういうの好きだもんな・・・)」

みんな、思ってるけど口に出さなかった。

口に出したところで

オーゲルに対抗できる力は

今のところ、ない。ー ローリ以外。


「ローリを至急呼べっっ!!!

 あいつは副団長だろう!

 この事態をなんと心得るか!

 赤騎士と青騎士は二手に分かれ

 東と南を張れぃっ!!

 ええいっっ!翔煙隊はまだか!!

 あいつらにオーゲルを追わせ

 黒騎士は西だっっ!!」

最後に舌打ちを残し、偉そうな男はその場を去った。



「ごほっっ!べっっ砂噛んだっべっ」

瓦礫の上で魔女は埃をかぶり

アルファイも同様だが、煙る辺りを見回した。

「(?・・・オーゲル様は

  小書庫の下がこうなっていることを

  すでにご存知だったのか?)」

薄暗くてよく見えないが地下の通路のようだ。

オーゲルだけがピンピン。

むしろイキイキしてる。

「お〜、こっちだぞ〜」

瓦礫も埃もなんのその、気にもせずに超えていく。


オーゲルは岩肌が剥き出しになった通路の壁に

「ん〜・・・ここだったか?」

耳をピタ、っとつけて

()()でいいか」

不穏な言葉を言って


「ふんっっ!!」

今度は回し蹴りした。

低い地鳴りと同時に岩が崩れる。

「な、なんつー・・・(怪力)」

魔女もそこそこ計算しないタイプだが

オーゲルのそれは、

もう()(みそが)()(肉)の類いだ。

考えなしで脊髄反射ある。

「お、合ってた。こっちだ」

オーゲルはずずい、と進んでいく。


魔女もアルファイも

ただ、オーゲルについていくばかりだ。

そこはもう少し綺麗な通路だが

(今やその綺麗な通路の壁はボッコボコだ)

さらに地下へと続く階段に出た。

「こんなの作ってやがったんだな、あいつら」

オーゲルはキョロキョロ見ていた。

「おっオーゲルさんっ

 ちょっとだけ!ちょっと休憩しましょう!」


騎士に追いかけられたかと思えば

床を踏み抜き、壁をぶち抜き

立て続けの衝撃に、魔女は休みたい。

「お、そうだな」

オーゲルは魔女を振り返りながらも

通路の床に両手をつけた。

少し考えるような顔つきをしたものだから

魔女は

「もっもう!床も壁も殴らないでください!

 穴だらけになっちゃう!!」

必死に言えば、オーゲルはポカン、としたが

口角をあげ、満足そうな顔をした。

そして

「では、作戦会議でもするか!!」

また笑った。


「(“()()”って何よ・・・

  不穏すぎる。オーゲルさんて英雄ってか

  暴れん坊じゃん。)」

すこ〜しだけ、黒竜になって暴れた時の

ラースの気持ちがわかった魔女だった。







「はぁ〜、どうしよっ」

とりあえず、階段に皆、座り込んだ。

魔女が一番前に座り、その上の段にオーゲルが座り

その二段上にアルファイが座った。


「距離感だけの話だが、北門へはまだ行ける。」

アルファイは魔女に声をかけた。

「?北門?何がある」

オーゲルは前に座る魔女に覗き込む。

「あ、あの〜、えっと、

 ちょっと欲しいものがあって」


距離の近いオーゲルの手錠が

魔女の肩付近に来て目に入った。


「あ、オーゲルさん、手錠ソレ邪魔ですよね」

魔女は立ち上がり

振り返るとオーゲルの手錠に両手をかざした。

「(オーゲルさんの手錠、とけろ〜っ

  解ける方だよ〜、溶かしちゃダメよ〜)」

かざした両手のうち、人差し指だけが手錠をなぞった。


青白く光る半透明の手錠は魔女の人差し指の先から消えていく。


「ー?!おい、お前が最強なのは知っているが

 これは ー!」

「?」

オーゲルの両手は自由になった。

神託(オラクル)か・・・」

両手をさすりながら

オーゲルは感心しているようだ。

「あいつらにハンデくらいは、と思ったが

 早々に開錠してしまったな。

 ふ、さすがは魔女だ。」

「オラクルってなんですか?」

「む?お前、オラクルを知らんのか?」

「知らないですね(キッパリ)」

「俺もよく知らないが、バ〜っと来て

 グワ〜っとなって、シュンってなるんだろ」


英雄、全然わかんないよ。

擬音語で言われて、ーおいっ魔女!

「なるほどですね〜」

“なるほど”じゃねえんだわ。

お前こそ、全然わかってないだろ。

なんだ、その雰囲気伝わってます、みたいな顔。

「(〜〜っ)」

英雄の、魔女以来の言語化のできなさ具合に

とうとう(学級委員長である)

アルファイが立ち上がった。


神託(オラクル)は本来、“神の意” だ。

 お前の持つ力は、“神々の()()()()()()()力”として

 使役されているというのに、知らないだと?」

「え、そうなんですか?」

魔女、驚き。

「おー、すげえな、新米。

 お前、物知りだな〜。」

オーゲルは感心する。

アルファイは(少し照れたが)続けた。

「魔女、お前の力は

 秘する部分が多いのは事実だとしても

 お前がその力を掌握してないのはおかしい。」

「(え、ジャミジャミじゃんが

  神託とは考えにくいんですが・・・

  これ思いついただけだし・・・)」

「それに、魔法が使えたり使えなかったりするのは

 どういうわけだ?

 今、こうしてオーゲル様の手錠を外しただろ?

 なのに、」

「まー、まー、いいじゃねえか。

 理屈じゃ説明できねえこともあるんだよ、新米。

 な?」

オーゲルはアルファイを見上げて眉を下げる。

「ーっ・・・はい」

アルファイはオーゲルに言われて

静かになった。


魔女だって、説明できるならしてる。

ただわからんことが多すぎて

知ってること言っても

うまく説明できないし

多分、みんなを混乱させるだけだ。

「(だから極力魔法使わないようにしてるのに〜。

  バーンって、ドーンってやれるなら

  私だって派手にやりたいよ。

  なんで魔法使えるのか、わかんないんだもん)」

魔女も擬音語表現者だった。


「(それに・・・)」

魔女はアルファイをちら、と見る。

「(接吻(キス)しないと、魔法使えないんだ〜

  なんて言ったらアルファイさん・・・

  頭の血管切れちゃうよ・・・。

  あれ、でもドノヴァッテンに来る前に

  ラース言ってたな、えっとなんだっけ。

  誓約がどうのこうので、ビヨーンってなるから

  呪いを解呪したらなんかがシュワ〜ってあれ

  ・・・なんだったっけ。)」

大丈夫だ、安心しろ。

みんなわかってない。ぼえ〜(理解不能)、だ。


アルファイが魔女に振り返る。

「魔女、私が北門へ行く。

 お前は東塔の溶解室へ行って

 第一物質プリマ・マテリアルを取得しろ。

 その後西の星見塔で合流だ。

 場所はもうわかっていると思うが

 “星見塔横の研究棟”、“地下坑道東南東”、

 “血脈零番 第弐列” にラースがいるはずだ。

 いいな?」

似たもの同士なのだろうか。

ラースが言うようなことを、アルファイが言う。

「ん?ラースだと?」

オーゲルを見下ろしながら話すのを失礼と思ったか

わざわざオーゲルの下の段まで降りてきて言った。


オーゲルは、もう一度アルファイに聞いた。

「ラースと言ったな」

アルファイは頷き、はっきりと言った。

「彼は、私の友です」

「(!アルファイさんっ!)」

魔女はその言葉に口元がゆるんだ。

つい口が出る。

「私の相棒でもあります!!」


「なんと」

オーゲルは驚いた顔をする。

そして、頭をくしゃくしゃ、としながらも ー

「あいつがね・・・。

 魔女、この新米は“何”だ?」

「え・・・ゆ、」

魔女は言いかける。

「魔女っ待てっそれは ー!」

アルファイはまだ心の準備ができてない、が


「アルファイさんは()()です!!」

英雄の前で(のたま)う魔女の晴れがましさよ。

自分じゃないのに、自分のことのように胸を張る。

アルファイは

「(翔煙隊の装備を厚かましく身につけ

  盗人猛々しいだけでなく、勇者とはー、

  穴があれば入るから埋めてほしいほどだ。)」

顔から火が出るんじゃないかという羞恥で

オーゲルの顔を見ることができないでいた。


だがオーゲルはアルファイをじっと見て

膝を小気味よく叩いた。

「そうか!あいわかった。

 魔女、お前が勇者を連れてきたのは

 初めてだな。

 なんたる必然と偶然の重なりだ。」

「あ!勇者はアルファイさんだけじゃないです!」

「は?」

「あと、二人います!」

魔女はオーゲルに自慢したい。

「あの〜、ディオっていう勇者もいて〜

 今、ここにいないんですけど〜

 あ、ドノヴァッテンにいないって意味ですよ。

 私んちでなんか〜、修行?

 修行で合ってる?」

アルファイを見る。アルファイは頷く。

「そう、ディオのおじいちゃんと〜

 ケトルさんに〜、なんか強くしてもらってて〜」

「!!ちょっと待て!」

「はい?」

「ケトルはアイスクラピウスのことだったな。

 あいつが強くするだと?誰を?」

「えっと〜、だから〜

 ディオです。あ、勇者のディオです。

 あっでもでも〜、ケトルさんは〜

 ギーズルさんを〜、あ、ギーズルさんは

 祭祀王なんですけど〜、ゾイさんっていう

 従者の人も一緒に強くしてるんですよ〜

 だから〜

 ディオは〜、ディオのおじいちゃんが

 農家なのになんかめっちゃ強くって〜

 斧持ってるんですけど〜、その斧で

 アルファイさんの腕も斬ったし〜

 でも唐揚げ作るの上手で〜あ、そうそう

 もう一人の勇者っていうか〜

 聖獣バロンがいて〜 

 シャルって言うんですけど〜」


次々出てくる新情報に英雄は ー


「????待ってくれ」

英雄の理解を超えた。脳筋、限界。


見かねたアルファイが短く言う

「勇者は合計三名です。

 勇者ディオ、勇者シャルラッハロート

 そして・・・、私です」

決めたことだ。

恥ずかしくても、アルファイは顔を上げた。

オーゲルは腕を組んだ。

「新米、お前に聞いた方が良さそうだ。」


正解。脳筋だがわかってる。

魔女はちょっと悔しそうだ。

(勇者自慢ができなくて)


アルファイは背筋を正して

オーゲルの質問を待った。

「まず、勇者ディオのじいちゃんてのは

 斧を持っていたと言ったな。」

「はい」

「じいちゃんの名をなんと言った。」

「イリアス殿と、・・・あ、

 アイスクラピウス様は()()()()と。」

「!!ー、では

 聖獣バロンが勇者って何だ?」

「それは、ー 経緯は知り得ませんが

 人間の姿になって、魔女と行動を共にしています」

魔女はめちゃくちゃ頭を小刻みに振る。

「そうそうそう!!」

「聖獣だぞ・・・?」

「私も驚きました〜!!」

「敵じゃなかったか?」

「そのはずなんですけど〜

 なんかついてきちゃって〜。

 ケトルさん的にはいいらしいですよ〜」

 

その瞬間、オーゲルは凝固し

次には手を叩き、喜んだように見えた。

「!?マジか!!やべえなっ!!

 こりゃやべえ!とうとう来たか!」

「?(何が?)」

魔女もそう思うし

「?(“とうとう来た?”)」

アルファイはオーゲルの言葉の意味を考える。


オーゲルは満面の笑みを浮かべ

アルファイの無い方の肩を力強く叩いた。

「おいっ!」

「(痛っっ)はいっ」

「今一度、聞こう、勇者よ。

 お前、名前は何という」

「アルファイルスです。」

「違う。聞きたいのはお前の()()だ」

「!・・・アムラン、です、」

「ならば、アムラン、お前は俺と一緒に北門へ」

「は?」

オーゲルは立ち上がり

階段を降り始め

魔女のさらに下の段へ行き

アルファイと目線を合わせた。


「何、翔煙隊(あいつら)に言われたろ?

 導きが〜、とかって。

 お前には“教え”が必要だ。

 俺が行く道すがら鍛えてやろう、勇者よ。」

「!!!」

アルファイは目を丸くした。

「?」

魔女はポカン、だ。


「え、わ、私は?

 ひ、一人、デスカ?

 (私にもお導きがほしいな〜なんて)」

なんとも心細い。が

「あぁそうだ。ー 魔女、お前は最強だろう。

 先に行っててくれ。」

「で、でも!北門へ行っても

 何を取ってくるかってわかりますか?!」

オーゲルは、剃り残しの顎を撫で上げる。

ジャリ、と小さな音を立てた。

「知ってるさ、魔女。薬壺の欠片だろ?」

その場で肩を伸ばし始めた。


「?!(なぜ知っている!)」

魔女のアホ顔を横目で見て

オーゲルはまた笑った。

「なんで知ってるのかって顔だな。

 ー お前が俺に言ったんだよ。

 その日が来たら、取って来いってな。

 その日が“今日”ってことだ。」


首を左右にゆっくりストレッチしつつ

階段を降りていく。



「?!(言ってませんけど?!?!)」

魔女は驚いた。すんごく驚いてるし

何言われてるのかわからない。

階段を降りていたオーゲルは振り返って

「ああ、そうだ」

魔女にちゃんと、突っ込んだ。


「あとなぁ魔女、お前のあの説明じゃぁ

 わからんことだらけだ。

 ドノヴァッテンの秘術師マグス

 マングースと言うのもお前だけだ。

 なんたらゴリ()ってやつは

 ()()()()()()()のことだろ?

 アイスクラピウスの一番弟子だ。」

「弟子?ーえ、ケトルさんの??」

魔女はほんの一瞬だが

魔女宅でガスコンロにかけた白いケトルが

ゴリ()だったらどうしようと思った。


「(私の説明ってそんなにわかりにくいかな〜。

  結構わかりやすいと思うのに・・・ね?)」

魔女はずっと持ち続けていた鎌を

今さら見上げた。

「(オーゲルさんとアルファイさん

  二人で北門行くんだって。いいな〜。

  アルファイさんにこれ渡すのは・・・

  う〜ん、大丈夫?

  オーゲルさんがいるなら大丈夫そう?)」


鎌は黒炎を吹き上げつつ、光に混ざって溶けていく。


曲がった枝に

長く細い刃は所々刃こぼれしている。

刃と枝の間に嵌め込まれてた石は

すごく邪魔だったし魔女センサー的に

『これはだめなやつ』

と判断しアルファイから

取り上げたときエンガチョして

黒竜の手で粉々に握りつぶしておいた。

「(あとは ー。)」


魔女は鎌に向かって微笑んだ。

「お願いね、ー ね?」






ラースは牢の中をぐるぐる回って

人の気配や

それからこの牢の構造をじっくり観察し

推察した。

自分がどのあたりにいるか、とか

この牢からどうやって出よう、とか

それはもう、綿密に考えて

多分、その辺の泥棒さんよりは上手に抜けられそうだ。



牢の出入り口は一箇所。

鉄柵でできた重い扉が一枚。

その先の牢は

しばらく同じような部屋が続いているはずだ。


問題は自分が()()()()されていることだったが

これは当初から想定内だったから

対処法はもう、わかっていた。

そのための用意だってしてきた。

だが

ラースはその牢の()に気付いた。

「・・・(これは、どう、する、)」

穴の向こう側から、冷たい風が吹き込んでいた。


「困った・・・」


ラースははじめて、その思いを声に出していた。







オーゲル情報:楽しくなってきたなあ!!


ラース情報:自分用の肩掛けかばん、ある。

      開けたら負けな気がする。


ディオ情報:じいちゃん!!

      ずっりぃーよ!!イッテェ!!


ディオじいちゃん情報:何を言うか。

           実戦でずるいも

           クソもないわ!

           アチョー!


ギーズル情報:休憩の時に一服してると

       アイスクラピウスも来る。

       え?一本くれって、吸うの?

       百年禁煙してたのに?

       ま、いいけど。


ゾイ情報:シャルさんは

     僕にはつれないです。

     餌付けは無理ですが

     魔女様の話をすると寄ってきます。


シャル情報:修行?

      誰にもの言ってんだ。







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