行きつ戻りつ
*
「お、ちょっと待ってろ」
オーゲルは何か思い出したようで
すぐさま振り返りヒースの元へ戻って行った。
「お、オーゲル様?え?・・・はい、
・・・?あ、はい。」
おまけの騎士その1と何やら話をしてる。
ー?
魔女もアルファイも
互いに何のことかと目を合わせるも
現状が飲み込めないまま、その場に立ち尽くしている。
「(?な、何してんの、英雄)」
オーゲルに隠れて、背中しか
魔女たちは見えない。
オーゲルは
魔女とアルファイの元へ戻ってきた。
「すまん、これを忘れてはならんのだった」
オーゲルは両手を魔女とアルファイに見せる。
「?」
持ち上げられた両手の手首には
青白い半透明の ー、手錠。
「え(ラースが入れられた檻と同じだ)」
「何で・・・」
「はっはっはっ!
俺はどうやら罪人らしいからな!」
高らかに笑った。
わざわざ手錠嵌めてもらいに行ったらしい。
英雄って馬鹿なの?
ここで注意を促したい。
英雄は“えいゆう”である。
“ひでお”ではない、念の為。
「え、え、え??」
魔女がアタフタし始めると
王城内に鐘の音が鳴り渡る。
「さあ鳴ったぞ!!」
回廊中が反響するような鐘の音の中 ー、
オーゲルは嬉しそうだ。
「行くか!!」
「へ」
言うとすぐにオーゲルは走り始めた。
「(行く?どこに??
え、なんで?)」
魔女もアルファイも
何のことだかわからないままだったが
振り返ったオーゲルは笑いながら言う。
「ははははっっ急げっ!
後ろから追っ手が来るぞ〜!」
鳴り続ける鐘の音と
どこからともなく聞こえる地鳴りのような音。
「ちょっ?」
「魔女!走れっ ー」
アルファイが短く言い、後ろを振り返った。
回廊の向こうから
王国内の聖魔法騎士団ご一行さまが
鎧の轟音ひしめかせて
こちらへ向かってらっしゃる。
この短時間に二回ほど
似たような状況に陥っている。
回廊は聖魔法騎士団で埋め尽くされている。
「?ひッ、〜〜〜っっっ!」
魔女だって走り出す、が、早速つんのめった。
つま先でローブを踏んづけた。
「っっあっ!」
コケて な〜い
「っとっとっと〜ぉ!」
魔女はバランスを取り直す。
「(あの二人、めっちゃ速いっ
もうポケットの緑花芽草は
さっきの戦闘で飲んじゃったし
かばんの中にまだ入ってるけど
取り出すために
ここで止まったら捕まっちゃう!)」
魔女も付いていくが、追いつけない。
緑花芽草の効果はもう切れている。
けど、そりゃもう、精一杯走ってるし
鎌だって持ったまま走ってる。
しまえばいいのにね。
走りながら、一旦どこかへ隠れることを思った。
「(せっかく屋根歩いてきたのに
こっこれは戻ってるっ・・・っ)」
もう少し、あの回廊のカーブを曲がり切ったら
さっきいた部屋(小書庫)にたどり着ける。
「(そこに行くしかないっ!)」
鐘の音は響き渡る。
回廊を、王城を、ー そのすべてを。
音は膨らんで飽和して、また跳ね返る。
オーゲルはすでにカーブを曲がり切ろうとしてる。
背中が見えるうちに叫んだ。
「お、オーゲルさぁぁあっっん!」
鐘の音に紛れて聞こえていないようだ。
魔女はそれほど離れていないアルファイを呼ぶ。
「あ、アルファイさぁっん!」
後ろを振り返らないが、多分聞こえているはずだ。
「さっきの部屋、ー!行って〜!
オーゲルさんをよんっはぁっっでえ〜!」
走りながら大声を出すのが
こんなにもしんどいとは思わなかった。
少しして、アルファイもカーブを曲がり切った。
「(無情だあ〜〜っ置いてかれる〜っ)」
魔女はまだ、カーブまで辿り着けない。
「しんど〜〜いっ」
後ろから、重い金属が擦りあうような鎧の音が聞こえる。
だんだん近付いているような気がしたが
怖くて後ろが見れなかった。
大きな鐘の音が渦になって回廊の中をまわっていた。
「(こわいっ!ー 何で追われる羽目にっ
なんで英雄までついてくるんだっ
アルファイさんだって
さっき助けてくれたけどっ)」
一度目は単なる偶然だがー
「(もうっ無理っ)」
二度起きれば運命で ー
魔女の足はもつれて
回廊のピッカピカな床の上を
つるん。
「っっあっ!」
「ーっまたコケるのか」
アルファイに抱き止められる。
三度起きたらそれは天命だ ー
同時に
「まだまだだな』
オーゲルがニコニコして
先頭を走ってきた騎士に
「周りをよく見ろ」
「?!っおーげr」
ラリアットを決め込んだ。
正確には(手錠をしてるから)両手を組んで
勢いよく騎士の胸めがけて叩き込んだ。
「お゛わ゛っっ」
勢いよく押し込められた騎士は
その後ろを追いかけてきた騎士団に
背中から突っ込み、そのあとは
ドミノ式に皆、倒れていく。
ラリアットとは:片腕を横に突き出し
相手の首や胸板に自身の体重を乗せて叩きつける打撃技
(プロレス技。クロス・ラインともいう)
「前しか見てねえから
簡単に引っかかるんだ。」
そう言って倒れ行く騎士らを眺めてから
アルファイの脇に抱えられてる魔女を見た。
「大丈夫か、お前」
上から降る声に見上げればオーゲルだ。
「(え・・・助けられたの?)」
ポカンとする魔女を、見て笑う。
「相変わらずだな、魔女。」
「?!(な?!相変わらず?!
私のこと知ってるの?!)」
「さ、行くか」
またしてもまたしても
通算三回目の出戻り、小書庫に
魔女とアルファイ、そして新メンバー
英雄オーゲルは入った。
「〜〜っはあ〜〜」
大きく息を吐くも
魔女たちのいる部屋、壁一枚向こう側を
聖魔法騎士団が走る音が聞こえる。
魔女は大きく息を吐いた口を
両手で押さえる。
「(聞こえちゃう!!)」
息を飲んで、音が通り過ぎるのを待った。
アルファイは壁に背中をつけたまま天井を見ている。
聖魔法騎士団の足音は次第に小さくなって
いつしか消えた。
そして気付けば、鐘の音も止んでいた。
し〜ん・・・
「ーっっはっ、はぁぁ〜っっ!」
魔女は膝からゆるゆると地面にへたり込んだ。
オーゲルは愉快そうに笑った。
「はっはっはっはっ!うまくいったな!」
そんなオーゲルを見上げ、
魔女は漠然と、思った。
「(う、うまくは
いってない、よ?)」
だって、戻ってきちゃったじゃん。
何回目よ、小書庫スタート。
ふりだしに 戻された。
四回目ならもうそれは
逃げられない宿命だ ー
*
先ほど埃の上に書いた王城地図のまわりを
魔女、アルファイ、なんと
今度はオーゲルが取り囲むように座る。
「おっ?なんだ?
こんなところで作戦会議してたのか?!
お前たち、なかなか頭脳派だな」
薄暗い部屋の中でオーゲルの周りだけ
カラッカラの晴天だ。
この人のそばなら、幽霊だって蒸発しそうだ。
「(オーゲルって、こんな人だったんだ。
ゲームの中じゃ
一言も喋らなかったのに。)」
魔女はオーゲルを見る。
「(実際見ると雰囲気的に
なんか気のいい頼れる兄貴って感じ。
この人、鬼のように強いんだよね。
敵対してる感じじゃなさそうだけど。
なんで逃げる必要があったんだろ。
誰かに追われてるのかな・・・。)」
オーゲルと目が合った。
「そろそろいいんじゃないか?」
「へ?何がですか?」
オーゲルは手錠した両手で
目の前を振り払うようにした。
「お前たちの顔が見えないんだ。」
「ー、あ
(解除とかできる、かな?
魔法、使えないのに・・・)」
魔女は急いでオーゲルに向けて
自分たちの顔が見えるように
「(解除っっ!頼むっ)」
念じてみた。
「おぉ、ー 完璧だったな。
ここまで上手に阻害されたのは初めてだ。
なんて魔法だ?」
「じゃ、ジャミジャミじゃん・・・」
「は?」
「ジャミジャミ?」
「じゃっジャミジャミじゃん?」
「だからジャミジャミだろ?」
ああ、魔法に名前をつけるなら
ややこしいのはやめるか
言って恥ずかしくなるような名前は
つけるべきじゃない。
「“ジャミジャミじゃん”です!!」
「・・・」
ほら、英雄も言葉を失った。
だが阻害は解除されたらしい。
「(理屈がわかんないな〜!!
魔法使えないのに〜?)」
アルファイもまた不思議そうな顔をした。
オーゲルは満足そうな顔をして魔女を覗き込んだ。
「?ーお前」
魔女は何だか気恥ずかしくて
ちょっとだけ目を逸らしつつも
オーゲルをチラッと見る。
オーゲルはじ〜ぃっと魔女を見る。
魔女もつられてオーゲルを見た。
「?な、んですか?」
「お前、あの魔女だな?」
「はい?」
オーゲルが近付くのと反対に、
「(近いって!英雄っちかいっ)」
魔女は体をのけぞらせた。
「やっぱりあの魔女じゃねえか!!」
「?」
あぐらをかいているオーゲルは
魔女に思いっきり笑顔になった。
「〜〜〜〜!!ほおっ!
ここで会ったが百年目とは
まさしくこのことよ!!」
「?(え、何言ってんの?
会ったことあるの?記憶にございませんが)」
オーゲルは座り込んだ地面から
立ち上がり
魔女の前に片膝をついた。
「え・・・まさか・・・」
これもうテンプレだな。
腰の剣を抜き、自身の前に置き
上げる顔には
大河の水面が動かぬ如きの自信に満ち溢れていた。
「このときを待っていた」
大河に落とされる言葉。
「魔女、唯一無二の魔女。
この命、義勇に賭するつもりであったが
ようやく運がめぐってきたと見える。
このラル・アン・オーゲル、
これより 其方に仕えよう」
「ー は?(何が?) ー」
魔女は完全に固まった。
「(会ってまだ10分も経ってませんけど)」
ニカっと笑うオーゲルは続けて言う。
「だがなぁ・・・ちと遅かったな。
俺はもう王国に忠義を誓った身だ。
ん?待てよ、
罪人になったらもう王国の騎士じゃないのか?
エフェラルなら知ってるか?いや
あいつの石頭に聞いたところで
難癖つけられるのが関の山か。
わからんな、おい、お前、知ってるか?」
オーゲルはアルファイに向かって聞いた。
アルファイは先程からオーゲルを見続けていたが
一言も喋らない、喋れないのだ。
聖魔法騎士団にとって雲の上の存在であるように
アルファイだって同じ思いだ。
緊張している。
王国の“誇り”、“誉れ”、“要”、“英雄”
彼を評する賛辞の言葉は言い尽くせない。
そんな男がアルファイに話しかけていた。
「お前、見ない顔だな。
こんな色男が
我ら王国の騎士団にいたか?
その装備は、翔煙隊だな?
あそこは確か
五人編成の少数精鋭の部隊だ。
あぁ、ヘンドリッジがいるところだ。
そうだろう?
新米、ヘンドリッジはどうした」
「え、ーあの」
言い淀むアルファイは
気まずそうにオーゲルを見れない。
「ふはっ、すまんな。
質問が多かった。
だがお前には答えられぬ。なぜなら
お前に翔煙隊の席はない。
翔煙隊に新米など
配属されるはずがないのだ。
あそこはな、俺の直轄だ。
今は五人編成の
精鋭ベテランばかりだからな。
例えお前がいかほどに優秀であっても
配属はないんだ。」
「へ〜ぇ、そうだったんだぁ〜
アルファイさん!やっぱり五人ですよ!
六人じゃなかったんですよ〜!
アルファイさんが話したのは幽霊ですって!!」
魔女はオーゲルの説明ですごく納得した。
残り一人をお前が幽霊認定してどうする。
「(オーゲルさんの直轄なんだ・・・
どおりで強いはずだわ)」
翔煙隊を思い出すだけでもゾッとする。
何せ強いだけじゃなく
とにかく一斉に連携プレーが炸裂するので
魔女はステルスミッション(隠れながら)で
一体ずつ丁寧に倒したのだ。
「(敵ながらあっぱれ、って感じ。)」
でも戦いたくない。
リアルなら、余計に。
オーゲルが言うように
新人が入れないと言うのは
彼なりの思いやりがあるのかもしれない。
彼ら翔煙隊の冠する名の意味するは
死に向かい飛翔し、乾く煙となる部隊 ー
つまり
一番、死にやすい部隊である、ということだ。
アルファイの肩当てにはその煙のマークがある。
「(温泉マークみたいなんだよな。
さっきはそれで助けられたし・・・
なんだっけ、ケムニマクだっけ。)」
魔女にオーゲルの言う言葉の理解は届いてない。
「で、お前。
お前は何者なんだ?」
言われたアルファイは知らぬ間に背筋が伸びる。
オーゲルの目つきは、
それまでの穏やかさから
黒い雲の中の稲光みたいに鋭くなった。
*
薄暗い部屋の中に、張り付く緊張が走った。
緊張はアルファイの呼吸を浅くした。
「ーっ」
重い、重い空気が部屋を降り立つ。
その重さは、オーゲルの放つ気のようなもの。
気圧されていた。
「その装備は、ヘンドリッジのもので
固有魔法が付与されている。
なぜ、その装備をお前がつけている」
騎士が装備を外すのは、戦いが終わる時か
死ぬ時と、王国内では定めがある。
ローブの擦れる音がした。
「あのっっ!!」
魔女が立ち上がっていた。
「私です!」
「どういうことだ。」
オーゲルに嘘をつく必要は、ない。
と言うより、
自分たちはもう追われてる身になったのだ。
洗いざらい話をして
その後の反応を見た方がいいと判断した。
ー さて 吉と出るか、凶と出るか
「せっ説明しま〜すっ!!」
え?まじで?お前がすんの?
魔女。説明、大丈夫?
「えっと〜、あの〜、この人、
あ、アルファイさんて言うんですけど
預言とかしてたんですけど〜
マングースじゃないですよ。
勇者なんですよ。
腕はないけど、なんだっけ、
なんたらゴリ男っていう人が
いるんですけど〜、その人すごくて〜
腕治せるらしくって〜
治してもらおうって思って〜、それで〜
アルファイさんは勇者だから〜
装備ないと〜、なんかカッコ悪いし〜ぃ
良い装備ないかな〜って考えたら〜
回廊の裏の詰め所を思いついて〜
あ、そう、私があの・・・。」
そこまで言って、魔女は深呼吸だ。
一番重要な説明箇所だ。
「ごめんなさい、私が装備を
もらえるようにしたんです。」
「どうやって?
タダでくれてやるほど
あいつらも馬鹿じゃない。」
紋章を見せながら ー
「オーゲルさんに変身したっていうか
変化したんですけど」
オーゲルは紋章に目もくれない。
「変化だと?!俺に変化したのか!?」
「!っえ、えぇ、まあ、はい。」
オーゲルは立ち上がった。
「やって見せろ」
魔女に近づく。
圧がすごい。ていうか、近い。
「え?やですよ〜ぉ。
私、今魔法使えないし
ご本人を前にやるって
結構勇気いるんですよ〜」
「なんで魔法が使えない?」
「え、わかんないです。」
「どうすれば使えるようになるのかも
わからんのか?」
ドキッ。
「(そ、それは知ってる、けど)」
ちら、とアルファイをみる。
「(頼みづれ〜〜・・・
無理だろ、接吻。)」
だが魔女は秘策を思いついた。
「あ、ちょ、ちょっと
待っててくださいね〜」
肩掛けかばんをゴソゴソ。
水筒を取り出し蓋を開けた。
はたから見たら
“喉渇いてたんだね〜”、だ。
魔女視点からすると
「(ディオで証明済みの
”間接接吻方式”で
アルファイさんが飲んだ水筒に・・・)」
この事実を知る者がここにいたならば
魔女はきっと変態認定。
「(の、喉が渇くわあ〜)」
間接ドロボー、がぶ飲み。
動かなかった力が
ふわ、と体をめぐる。
キタキタキター!
「笑わないでくださいね〜」
魔女は両手を広げ、目を閉じる。
「(オーゲルさんに、なあれ〜)」
いや、まじでこんなことを
心で思ってるだけなんだが
これこそ知られたら
威厳がないどころの話ではない。
広げた両手の先から魔女の姿は、オーゲルへと変化した。
「おぉっっ!!」
驚いた野太い声が上がる。
「えへっ、へへ、
どーでしょうか〜。
ジャジャ、ジャーン。」
自分で効果音、言う。
先ほどの張り詰めた重い空気は
吹っ飛んだ。
魔女の素っ頓狂な声と
挙動の女っぽい英雄騎士オーゲル(偽物)は
オーゲル本人の圧を消していた。
「すごいな、間違いない、俺だ。
・・・?
ん、ちょっと魔女、こっちへ来い」
「?はい?」
魔女はオーゲルに近付いた。
「もうちょっとこっちだ」
「?」
「ダメだ、あと2歩前だ。
俺の真ん前に立て」
「え、ここですか?
ち、近くないですか?」
ニコニコするオーゲルに敵意は感じられない。
魔女は言われるがまま、オーゲルに従った。
「もう半歩前へ。」
「ー」
「これなら良く見える。ー 」
近い。
オーゲルは魔女を前にした。
横から縦からじろじろと見るオーゲルの
息がかかりそうな距離に
魔女はたじろいで、
体を後ろへのけぞらせようとした。
「視線はまっすぐだ。動くな」
「ふぁ、ふぁい!」
2人の間に挟まれるアルファイは
オーゲル(偽物)と
オーゲル(本物)を
不安な気持ちで見ていた。
「あ」
魔女が声を上げた時にはもう ー
オーゲルは手錠のついた両手で
頭からすっぽりと
頭ごと引き寄せ、頭を掴んだ。
警戒心、というのを
魔女は持ち合わせていないらしい。
「?!っ(近いっっこわっっっ)」
やだ、チュウされちゃう〜。
美形の部類ではないが、
意志の強さを思わせるくっきりした眉、
整った鼻筋、情の厚そうな唇、
そして
力強い眼差し。
魔女は間近でオーゲルを見ることになる。
「(!〜〜〜っっっ
ちかいっちかっ!ギブギブ!)」
なんかわからんが
とりあえずオーゲル(偽物)は
オーゲル(本物)の腕をタップした。
「まだだ。根を上げるには早い」
オーゲル(本物)は
オーゲル(偽物)に問いただす。
目力の強い、その瞳を見たまま
魔女は視線を逸らせない。
「つまり、お前は俺になりすまし
詰め所へ行きその紋章を見せ
翔煙隊から、装備を
丸々持って行ったのだな?」
「は、は、はいっそうです
ごめんなさいっ」
「その時、他の誰かがいたか?」
「いっいませんっ」
「俺に変化した姿を
翔煙隊以外に見せたか?」
「見せてませんっ!」
「ー、そうか。
では最後だ。
装備は王国所轄における
魔法規約条項10箇条うち
3条条文で、
北塔エフェラルの押印無き騎士には
賃借または譲渡は禁止しているはずだ。
うちの装備は特別だからな
簡単には手渡さん手強い奴らだ。
その紋章はどこから手に入れた?」
「ケトルさんから」
「ケトル?誰だ」
「あ、アイなんとかピースさんです!」
「?」
「えっと、えっと〜」
魔法の名前も
恥ずかしくないのを付け
人の名前もちゃんと覚える必要がある。
オーゲル(本物と偽物)が
顔近づけて今にも何か起こりそうな
「(見てられない・・・)」
そんな状況に
焦ったくなったアルファイが口を開く。
「アイスクラピウス様だ」
オーゲル(本物)の動きが止まった。
「それは ー そう、か
あいつ、生きてたのか・・・」
「?家にいますよ?」
「は?お前の家にいるのか?」
「え、はい。」
「いつから?」
「ん〜・・・なんかずっと?」
「まじか〜〜〜・・・」
オーゲルは魔女の頭から両手を抜いた。
「知り合い、なんですか?」
魔女は変化を解いた。
「知り合いなんてもんじゃねえよ。
あいつはこの王国の“医術神”だ。」
「え?」
魔女の家では
ケトルだよ??
ー パリン ー
魔女は察知する。
「!結界が破られた音だ!!
はっ早くこの部屋から出ましょう!!」
「どうやって」
「天井!!天井から屋根に出て!!」
え〜?また、あれやんの〜?
*
ケトル(アイスクラピウス)
情報:誰かが私の噂をしたな。
くしゃみしたせいで
ヘッドロック中の
腕に変な力が入って
華麗にキマった。
ギーズル、落ちる。
(五度目)やれやれ。
笑顔で回復。
ギーズル情報:意識を取り戻す度に
笑顔のアイスクラピウスが
目の前にいる。
トラウマになる。
ゾイ情報:魔女さま・・・。
洗濯物を畳んでいたら
とある発見・・・。
大丈夫かなぁ?
ディオ情報:腕立て伏せを
一時間やっても疲れない。
骨もくっついた気がする。
腕立ての時いつのまにか
背中にゾイが乗ってた。
シャルラッハロート情報:ラドの実を
魔女に百個あげた。




