英雄オーゲル
*
「部屋の外は騎士がうろついてる、魔女・・・
お前転移魔法を ー」
言いかけたのに
「無理っぽいです」
かぶせ気味に魔女は答える。
「は?な、なんで」
「変化で全部使っちゃったみたいですぅ〜」
ラースがしてくれたほっぺにチュウは
確かに効き目はあったけれども
それがずっと続くわけでもなく
ましてや、アルファイに
「チュウして〜ん」
などと、言えるわけでもない魔女は
何度か転移魔法を試みては
ビタっと動かない石のような力を感じていた。
確かに“そこにある”のに、“動かせない”、ようだ。
「かくなる上は ー」
魔女は小書庫の天井を見上げる。
「まさか屋根を渡る気か?!」
アルファイは思い出す。
「(こいつ、言っていたな・・・
“この部屋の天井から屋根に出ると
毒トカゲが二匹いてそのさらに上にいる
石像に化けたガーゴイルがいる・・・)」
正直、わかってても行きたくない。
外部からの侵入を防ぐために
それらが配置・用意されてると
知っていればなおのこそ、内側から行くことに
アルファイは渋る。
「(この体で戦えるのか?
・・・走っただけで息切れする
この、ー)」
「あの、アルファイさん?聞こえました?」
はっとする。
魔女は肩掛けかばんをゴソゴソしつつ
アルファイに向かって次々手渡す。
「アルファイさ〜ん、これと〜
あと、これとこれ
飲んでくださいね。
あと、指輪って持ってますよね。
すぐに着けてください。」
「?なんだ、これは ー」
持ちきれずこぼれた。
「天井から屋根に出たらすぐ左手にある
壁に身を隠しててください。」
「隠れる?だが、毒トカゲとガーゴイルは
どうするんだ」
魔女は天井板を外す。
「私が倒します」
「お前、魔法が使えないんじゃ・・・
ど、どうやって」
「先に行ってるので
外に出たらすぐに壁に行ってくださいね〜」
「まっ待て!私も一緒に、ー」
魔女はそそくさと天井をのぼって行ってしまった。
「・・・」
急な静けさに、アルファイは呆気に取られる。
と
天井からぬるっと魔女が首だけ出した。
怨霊みたいでビックリする。
「!」
「渡したやつ、ちゃんと飲んでくださいよ〜!」
「あ、ああ・・・」
アルファイは手渡された緑花芽草と
月の薬香草、それから何かの実を手に取り
味わう暇もなく、口に入れ飲み込んだ。
「ゔっ・・・
(あいつ、なんのためにこんな・・・)」
もはや限界値を超えた味覚は
回復茶を飲んだアルファイの前には
なんの問題もなかった。
アルファイは急いで魔女の後を追う。
「あそこか」
屋根への板が外されている。
首からかけた紐をちぎり、指輪を手にした。
「(兄さん・・・行ってくる。)」
祈る。
*
霧の中に黒いゴキ、じゃない魔女が
見たことのない動きをしているのを
アルファイは ー
まるで現実じゃないように思う。
とにかく、速い。速くて、動きに無駄がない。
「(あの、ー すぐコケる魔女が
なんで、あんな動きを・・・?)」
何より驚いたのは
「(あれはーっ!!)」
魔女が振りかざしていたのは
アルファイが持っていた、黒炎の鎌だ。
「(まさか魔女が)」
次の瞬間には、毒トカゲが
鎌の影に隠れ、トカゲごと消えていた。
「ーっふぅ!」
魔女は鎌を両手に持って、ひと息ついた。
アルファイに気づくと
「あ、アルファイさ〜ん」
こちらに手を振った。
その表情はいつもの魔女で
体に合ってないローブに風が泳ぐのも
アルファイの知る、あの ー
束の間、アルファイは上空の風の動きに気づく。
「魔女っ上だっ!!ガーゴイルだっっ!!」
空から降ってきた巨大なガーゴイルの影に
魔女が覆われる。
「魔女っ!」
魔女へ向かって走ろうとしたが
ガーゴイルは宙で動きを止めた。
「?!」
黒い筋が、ガーゴイルを割る。
真っ二つになったガーゴイルの
黒の霧が大気に混じって開かれると
魔女はすでに鎌に触媒を擦る姿が見えた。
「あれは炎の魔法触媒か?・・・」
黒炎の鎌が赤い炎をまとった。
もう一体のガーゴイルが羽を広げ
飛行している。
「(飛んでるガーゴイルに
浮遊魔法も使えない魔女が
どうやって攻撃を仕掛けるんだ、)」
魔女は瞬く間に屋根と壁を爪先で飛び上がり
「(?どこだ、魔女はどこに ーっあ!)」
見失ったと思った魔女の姿は
ガーゴイルの頭上 ー
霧に紛れたその魔女の表情は見えない。
ただ、赤い炎が一閃、空を斬る。
後を追うように黒炎が短く立ち上がると
ガーゴイルの首が落ち、黒い霧が空をのぼる。
一瞬の緊張感に間の抜けた声。
「わっっおっっおち
落ちる〜〜っっ」
魔女の声に、アルファイは走り出す。
鎌を持つ魔女が黒い霧の中から降ってくるのを
「魔女!!!!」
ヒュルルル〜〜っ
アルファイは片腕ながらも
その身、全部で受け止める。
ドンっっ!
「ぐっ」
「あ、ありがと〜ございま〜す」
空にいた魔女は
いつもの魔女じゃなかったように見えたが
こうして
また圧死させようとしてる魔女は
いつもの魔女だ。
「へへ、倒しました〜」
魔女は情けなさそうに笑った。
アルファイはなぜだか、ほっとした。
*
霧の中、屋根をテクテク歩く。
歩きながら、雑談だ。
「じゃあ、アルファイさんは
ラースと同い年ってことですか〜?」
「?いや、お前、私の話を聞いていたか?」
「え、だから4年飛び級したって。」
「ラースは学年が2つ上だ。
本当なら、私はこの秋
このアカデメイアに入学予定だ。」
「は?」
「?ー 変なやつだな。」
「だって幼馴染だっていうから」
「幼馴染だから同い年というわけではない。」
「え、それは、その通り、ですけど
じゃあアルファイさんて、今、年は」
「私か?十七だ。」
どーん。
「(ひえ。)」
魔女、衝撃を受ける。
「(私(喪女28歳)より
だいぶ年上かと思いきや ー、
すんごい年下。
苦労か?苦労が人を老いさせるのか?)」
やだ〜。
学級委員長ってヤングじゃん。
百五十三歳の魔女は
この世の不条理を見た。
「(どう見ても老け顔・・・。
いや、そう作ったのは私だけど
キャラメイクで年齢までは
指定できなかったし
私の中では二十代だった・・・)」
世の中、ままならないこともあるよね。
アルファイは突然、歩みを止める。
「?」
「魔女、私はお前が嫌いだ。
だが今ここに私が生きているのは
お前のおかげなのは否定しない。
これらは事実だ。」
「そ、そんなことは」
「魔女、聞いてほしい。
現に、お前への復讐だって誓った。
だがこれとは別に、お前に誓う。」
アルファイは一歩下がり
魔女の前に片膝をついた。
「え(ま、まさかこいつも・・・)」
魔女、嫌な既視感を思い出す。
「救われた分の恩は 返す 」
「〜〜っ!!
(なんなの!?こっちの人は
助けられたらなんか誓うのが
ルールとか決まってんの??
あれなんだっけ、アコーディオン
じゃなくってアコ・・・
アコなんとか
あれやらないといけないの?)
そ、そんな!アルファイさん、
そんなのいいですって!」
それより嫌われてるっていう事実を
なんとかしてほしい。
「良くない、“けじめ”だ」
「!(学級委員ちょ〜〜っ)」
アルファイは
魔女を見上げて、ニヤッと笑った。
それはまるで悪いこと考えてる顔のようで
何かしらの企みを思わせた。
魔女は心臓がドッッキーン、だ。
「(い、イケメンだった。
この人、イケメンだったっ!
死にそうじゃないし、
腕は無いけど
私、嫌われてるけど!!
十七歳の老け顔イケメンで
融通利かないくせに
悪い顔のイケメン、罪深し!!
初めての笑顔の破壊力よ!)」
とか思ってたら
アルファイは魔女の手をとる。
「?え」
あれだ。
王子様とかが
お姫さまの手を握ってさ
ちゅってしたり、しなかったりするアレ。
けど
魔女はそんなこと知らないもんね。
「(アコヤガイ、絶対違う。
アコー・・・スティック?
近い、そんな感じの、あれだ)」
このよく似た状況が
どのような意味があるかを思い出させた。
「(アコー・・・ジョ、ジュ?ジャ・・・
アコーディオンだっ!
五月の薔薇あげるやつ!!)」
辞書式で“アコ”の後を追うが
全部違う、叙任だ。
「そうそう!あのっ
アルファイさん、ちょっと待って!」
せっかくイケメンに
手を持たれたのに速攻振りほどく。
や〜ね〜、空気読めないやつって。
魔女は肩掛けかばんをゴソゴソしだした。
片膝をついたまま
アルファイは魔女の動作を見守った。
屋根だぜ。
「え、ええと、こ、これ」
取り出したるは、いつかの
5月の薔薇で編まれた王冠。
アルファイは静かに頭を下げ、
目を閉じた。
魔女はアルファイの頭に
ちょっと震える手で王冠をそっと載せた。
「あと、アルファイさん、あのー」
魔女は一歩踏みだす。
「あ、そこは」
アルファイが手を伸ばした。
「え?」
バリバリバリバリっっっ
魔女、屋根を突き破り、ー 落ちる。
「あっっ(またかよ!!!)」
「魔女!!」
アルファイは、初めて
人が落ちる瞬間の顔を見た、
*
ドシーンっ「いだっっ」
幸いなことに、誰もいない。
すぐにアルファイも降りてきた。
「無事か?!」
「はぁ、なんとか・・・
いたた・・・」
言いながら魔女は立ち上がった。
腰じゃなく、ケツをぶった。
「(もう!
屋根の落ちるとこ知ってたのに
まんまと、しっかり落ちた〜!
知ってたのに!!)」
魔女はなんとなく負けた気がした。
ゲームでもちゃんと落ちる仕様。
けど、アルファイは落ちない仕様。
気付いてたから一歩下がったと見てよし。
「魔女、さっき言いかけたことは
なんだ?」
アルファイは頭上の花冠を手に取り
見ながら言う。
「あ、ああ、それ!
えっとアルファイさんて
今、武器ないですよね?」
そう言って、魔女は
肩掛けかばんをゴソゴ・・・
ズズズズズズッッ
物々しい音を出した。
「!!な、お前そのかばん
何を入れて、ー!?」
魔女が取り出したのは
ー 黒炎の鎌 ー
まがまがしい黒炎に包まれた鎌が出てきた。
鎌は黒い炎を上げながら
魔女の両手の中にいる ー。
「それはさっきお前が・・・」
「あ、そうなんです〜。
試しに使ってみたんですけど〜
結構、使い勝手いいですよね〜。
リーチが長いし、扱いやすいし」
「は?」
魔女はニコニコしながら
鎌を両手で丁寧に持つ。
不思議なことに、魔女の両手が光ってる。
光の手の中で、鎌はまがまがしいまま黒い炎を立てる。
そのコントラストと言ったら
聖なる光なのか、邪悪な炎なのかもう判別が難しい。
混ざり合う境界線が雷のように弾けてる。
黒炎は光とぶつかりながら
昇天しているようにも見えた。
「?!」
「へへっ、アルファイさん
これ使ってたじゃないですか。
あの、お仕置きで預かってたんですけど〜、
あ。
“核”はまだ返せないんですけど〜
なかなか良い武器見つからなくって〜
やっぱりこれしかないな〜って思って。」
アルファイは戦慄する。
なぜなら、その鎌は ー。
命を喰らいながら、強さを増す
命を屠る鎌だからだ。
一振りすれば、めまいを起こし
二振りすれば、全身の力が抜け出ていく。
その代わり、敵を斬れば 敵の命を喰らうのだ。
「(そんな、武器を)」
「ま、待て、魔女、
そういえばお前、平気なのか?」
持つだけでも精神力と
魔力が吸われていく代物だ。
「え?なにが?」
「だから、その鎌を持って平気かと」
「?ん〜?平気ですよ。
なんかピリピリしますけど
でもほら、これ見てて?」
魔女は鎌を笑顔のままギュウッッッと握った。
魔女の笑顔はアルファイに向いたままだ。
握りしめられた鎌は黒炎の勢いを急激に弱めた。
「?!(黒炎が弱くなった??)」
「これね〜、すんごい癖があるんですよ。
だから、“めっっ!!”ってすると〜
言うこと聞きます。」
「 は?(め?) 」
「だから〜、“めっっ”って」
「その鎌は、神をも屠るのだ、ぞ?」
この武器を持つに至った経緯を思い出していた。
秘術師の長である男に
この武器の凄惨さ、強さ、そのリスクを聞き及びながらも
その手に取った。
持った瞬間から、自分の命は喰われ続けた。
その代わりに得た力は、ラースと同格かそれ以上になった。
「あー、そうかもしれないですけど
でも、この鎌って」
魔女は鎌を見上げた。
ボロボロの刃をそっと撫でる。
「アルファイさん、この鎌はね」
後ろから声がした。
「おい、ー その鎌はなんだ」
低く、警戒心を持つ声が回廊に響いた。
*
警戒心を発する気配。
魔女は振り返った。
「ーっあ」
その姿を見て、魔女は驚く。
なぜなら、その姿は ー。
英雄騎士 オーゲル その人だ。
と、おまけの騎士が二人。
オーゲルは警戒しつつ
眉間にしわを寄せ目を細め
魔女らを見ている。
「どこの隊の所属だ。」
おまけの騎士1が
魔女たちに向けて声を発した。
「ー!」
この場ではアルファイに聞いているのだろう。
アルファイは今、翔煙隊の装備をしている。
だが、アルファイは答えられない。
「ー?」
重そうな鎧のガシャン、という音が
近付いてくると同時に回廊に響いた。
おまけの騎士2が寄ってきた。
魔女は冷や汗ものだ。
「(どっどっ、どうしよ、
あの人って
まだ出てこないはず、
いや、ソレはもうこの際どうでもいい。
強いんだよ、この人。
戦いたくないんだけど〜。)」
「おい、ー?」
おまけの騎士2は
魔女とアルファイの間に近寄って
アルファイを見上げたーが
「?!?!」
混乱したような顔つきになった。
目をぱちくりさせながら
おまけの騎士2は魔女を向き
またアルファイを見上げる。
何だか眉間にしわを寄せ、苛立っている。
声を荒げた。
「おいっ!
お前はどこの隊だと聞いているんだ。
そしてお前は魔女か?名を名乗れっ!
なんだ、ここで何をしてる
俺に何をした?!」
「え?ーなにって、何も」
「しただろう!
なんかこう、阻害、か?
これはなんだっ!?」
おまけの騎士2は両手で目を押さえ
こすりはじめた。
「あぁもう!め、目が 目がもう!
ジャミジャミするっっ!!」
両手を自分の前でバタバタと振った。
「へ?ーあ
(ジャミジャミがまだ効いてる?!)」
魔女は自分のかけた阻害がすごく効いたことに
ちょっと嬉しくなった。
より重い鎧の金属がぶつかる音が近付いてくる。
「ー 珍しい魔法を使うな。」
オーゲルが口を開いた。
「?」
魔女は鎌を持ったまま、緊張した。
オーゲルは魔女を見た後、眉を少し上げた。
「その鎌・・・。」
「?」
魔女はポカーンだ。
半開きの口に関しての口上は今更感だが
緊張感のない魔女に
オーゲルは静かだが張り詰めた声だ。
「その鎌 ー、どうした」
「?え、これですか?」
魔女は両手に持った鎌を持ったまま
その手に力がこもった。
下手なことは言えない、が
特段思い付きもしない、でも困った時は ー。
とりあえず、笑っとけ。
「へ、へへ・・・」
時間稼ぎをしたい。
相手はあの英雄オーゲルだ。
できることなら穏便にこの場をやり過ごしたい。
「(第一印象は大事。ー 戦闘回避の心得。
私には攻撃の意思はございませんよ〜。)
そんな顔付きをしているが
英雄オーゲルに
ジャミジャミは効いてないのだろうか。
黒い炎は光に昇華されて消えていく。
耳をすませば、おどろおどろしい叫びの声が
うめきのように聞こえる。
黒炎の燃える音に紛れてはいるが
ちゃんと聞こえる。
『ゔぉあ゛ぁぁ〜〜っ』とか『ぐぁぁ〜っ』とか
立ち上る炎が光と混ざる瞬間に
バチバチっと雷のように弾けたかと見れば
シャラ〜ン、と光の粒となって消えていくのだ。
正直、鎌を持つ魔女の微笑みの方が 恐ろしい。
「・・・ふむ」
シュールな画だが
オーゲルはじっとその鎌の様子を見ていた。
「ひっ、まっまさか」
おまけの騎士2は魔女の手に握られた鎌を見て
慄きながら、上擦った声を上げた。
「ーそ、そその鎌は!!」
おまけの騎士2がワナワナと震え出し耳を押さえ
少しずつ後退りしている。
「?ーだ、大丈夫ですか?」
魔女が近寄ろうとしたー、と同時に
「う、うわぁっああ!!
じゃ、ジャミジャミする〜ぅぅっ!
ま、魔女がっ目がっっ
黒炎の鎌を持ってこっち来っっ!!」
混乱しているようだ。
「こっっこっちくんなっ
じゃっジャミジャミがっ
み、みみが、耳が〜〜っっ」
そこまで言っておまけの騎士2はそのまま
バターン!
後ろに倒れた。
口から泡を吹いているがご臨終ではない。
ジャミジャミが彼を睡眠に誘っただけだ。
鎌は見ただけで命を吸い取るわけではない。
精神力はゴリッゴリ削り取る作用があるから
それでちょっとアッチへ行っただけさ、お嬢さん。
きっと快眠だ。
「!!」
それを見たおまけの騎士1は
オーゲルの斜め後ろに隠れつつ
声だけ虚勢を張る。
「なぜだ!なんで黒炎の鎌なんか持ってる!」
「え、な、なんかマズイですか?」
おまけの騎士1は、魔女に向かって指さした。
ちなみにジャミジャミが嫌なのか目をつむっている。
だが両耳に両人差し指を突っ込んでいるから
懸命なようで、ばかである。
質問してんのに答えが聞こえないじゃん。
聞こえてないから、大声で
勝手にしゃべりだす。
「それは “影の呪い鎌”だっっ!!
神をも屠るほどの
禁じられた恐ろしい武器だっ
本来ならば“影の混沌”の墓場に
封じられているはずだっっ!!」
「(?ーえ、そんなすごい武器なのこれ。
まずく、ない?
え、まずいよ、色々まずいよ
このタイミングは最悪だ。)
魔女は、そろりと、アルファイを見るー、
アルファイこそ、額に冷や汗かいている。
「どうしてそれを持っている!!」
オーゲルの後ろに隠れている割には
声だけは血気盛んなようだ。
声色が強くなる。
おまけの騎士1で耳塞いでるくせに。
「えっとあの、え、ーと」
魔女はアルファイに目を向けたが
アルファイは握り拳を作っていた。
その手に力がこもり、ー
「私が」
「あ!!あの!!!私がぁ〜!」
魔女は腹から声を出してアルファイの声を遮った。
「何だ、お前がどうした」
オーゲルはじっと魔女を見る。
威圧感がシャルと同じくらいある。
ー どうする、魔女!?
魔女は考えた。
考えたのは一瞬だが
少しも思いつかない。
だから、精一杯、誠心誠意で
答えることにした。
「えっと、あの、拾った〜、みたいな?」
信じるわけないじゃ〜ん、みたいな?
真顔だったオーゲルは
「くはっっはっはっはっ!!」
豪快な笑い声を上げた。
「?!」
魔女はその大きくて
嬉しそうに笑う声に驚いて
その声の主を見た。
「オーゲル様!、わ、笑い事ではありません!
あれはこの王国だけではなく世界のっ」
「ああ、うるせーうるせー」
おまけの騎士1は黙った。
オーゲルは息を大きく吸い込み ー
あたりを見回し
大きく息を吐いて、また深呼吸した。
「はあっ、ようやくかよ」
「?」
「さぁて、」
オーゲルは魔女らに大股で近付いてくる。
魔女は相変わらず両手に持つ鎌を持ったまま
緊張し手汗をかいていた。
「(やばい、何か仕掛けられたら
私、アルファイさんを守りながら
ここを移動できるか?)」
オーゲルの動きを見ている。
アルファイは何やら思案しているようだ。
あっという間にオーゲルは魔女とアルファイの間にいた。
魔女の体がこわばった。
グイッっっ!!!
「?!」
「うぎっ!」
魔女とアルファイは
オーゲルの腕に引き寄せられ
両脇に抱えられる。
おまけの騎士1はオーゲルの背を見守りつつ
ハラハラしていた。
オーゲルは笑顔になる。
次の瞬間
魔女もアルファイもオーゲルの口元に頭を寄せられて
滑舌の良い太い声が、くぐもったように聞こえた。
「安心しろ、鎌の件は不問にしてやるよ。
だが、俺を一緒に連れて行け」
「?」
「え?」
魔女はアルファイを見た。
アルファイも魔女を見た。
後ろからおまけの騎士1が声を上げた。
「っオーゲル様!!!!」
その声を聞いた魔女は、オーゲルが
眉を下げて申し訳なさそうにしたように、見えた。
「(?どうしてそんな顔)」
オーゲルはすぐに顔を上げ
後ろを振り向かないまま
回廊を見上げ天井へ向かい
指笛を五回、鳴らした。
回廊に響き渡る、尖った音だ。
ひとしきり吹いた後、オーゲルは
大声でいう。
「緊急事態だ!オメーら!!!
ヒース!鐘が鳴るぞ!!
俺が逃げるぞーーっっ!
お前はこの後、一刻の猶予もならぬ中
ローリ上級騎士に事態を告げ ー
騎士団一丸となり
ドノヴァッテン魔法王国を
護る盾となり剣となれ!!
そして ー、
“罪人 オーゲル” を捕らえ、処刑せよ!!」
魔女はその声の大きさと
言ってる内容に、心臓が止まりそうだ。
「!!!!!」
「(なんですとー?!)」
「?!」
なのに、オーゲルはまた
魔女とアルファイに小声だ。
「な? だから 俺も連れて行ってくれ」
人懐っこい目で、
二人を交互に見て笑った。
*
おまけの騎士1(ヒース)
情報:オーゲル崇拝者。
オーゲルが罪人だなんて信じないぞ。
ジャミジャミが怖い。
おまけの騎士2(ランドール)
情報:ジャミジャミのせいで急激に眠くなった。
魔女の鎌の恐怖とジャミジャミのコンボで
気持ち良くスッコーンと気絶した。
起きた時、王城の医務室にいた。
すんごく良く寝た。ちょっと癖になりそう。




