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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第二部 賢者と砦のドノヴァッテン魔法王国編

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導かれなかった男







アルファイは魔女から視線を外し

小書庫の扉へ向かおうとする。


「ま、まっ待って!アルファイさん!!」

「お前と話をしている暇などない、

 ラースを迎えに行かなくては」


それは魔女だってわかっている。

そもそも、今この場所が無事なだけで

一歩外へ出たら、ゲームと進行が違えども

どんな危険が潜んでいるかわかったもんではない。

「(何が起きるかわからないし・・・)」

早くラースと合流したいところだ。


だが。


魔女はアルファイの服を掴んだ。

「不満なのはわかってますけど

 ラースを助けたいなら

 今は私の話を聞いてください!!」

ドノヴァッテンへ行くことが決まってから

色々考えた。

肩掛けかばんに色々突っ込みながら。


「(とにかくアルファイさんの

  怪我を治すのが先 ー)」


だから、今自分が魔法を使えることを

最大限に利用しようと思った。


「アルファイさん!ここっ

 ここに座ってくださいっ」

アルファイはもんのすご〜く嫌そうな顔をして

その場所から離れようとしない。


魔女だって時間が惜しい。


「(あぁもう!嫌いなのは分かってるから)

 ここに ー」

魔女は人差し指で掬うような仕草をした。

アルファイを魔法で呼び寄せた。

「!!」

宙を浮いたアルファイはなすすべなく

魔女の目の前に持ってこられた。


「・・・」

明らかな批判の眼差しで魔女を見下ろす。

「ごめんなさい、アルファイさん。

 急ぐ理由もわかってはいるんです。

 けどその〜、怪我を治したくって。

 あ、それだけじゃなくて〜

 えと、色々作戦をお話ししたいと思っています。」

「お前と話すことなどない」

頑固者って、ほんと困るよね。

“うるせえ”ってチョップしたれ。


「私はあります」

意外にも大人な対応の魔女だ。

「アルファイさんは私のこと嫌いでしょうけど

 私は、アルファイさんを嫌うだけの理由がないし

 あの、仲良くしたいなぁって思うっていうか

 えっと〜、ラース助けに行くなら

 今は停戦っていうか〜

 今だけ手を組んだ方がいいと思うっていうか」

魔女は困ったような顔をしながらいうと

「ラースを助けるまでだ」


アルファイは座った。


その姿に、魔女は少しだけ微笑んだ。





魔女は全ステージの部屋の見取り図は

もう頭に入ってる。


「この部屋は“小書庫” なんですけど

 王城の一番端っこなんですよね・・・。

 で、ここを出たら ー」

魔女の指は、埃の上に描かれた王城地図。


さあ諸君、用意はいいか。

説明するぞ。


ドノヴァッテン魔法王国の王城は

王の住む王城以外は全て塔で成り立っている。

王城を囲うように塔は大きく4つ、そびえ立つ。


各塔は東西南北で分かれ、各塔への通路は同様に

王城を取り囲むように円形を成している。

東西南北に立つ塔の間には魔法の種別、属性によって

塔が所狭しと立っている。


まだちょっと続くから、茶でも飲みたまえ。


各塔の入り口地点にはゲートと呼ばれる瞬間移動型装置がついている。

ゲートは()()()()()()()

使()()()()()()()()が利用するもので

大抵の者はよほどのことがない限り利用もしない。


王城内の移動はもっぱら、魔法による転移魔法だから

必然的に用のない部屋は行くこともなければ

知ることもない。


だから魔女たちのいる、今この部屋 ー。


この部屋は、各塔へと“徒歩”で行くための

言わば通路前にある書庫専用の小部屋だ。


通常、誰も来ない。ーと、言うより

誰もこの部屋に明確な目的を持って来ようと思わないので

この部屋は忘れられた部屋のひとつだ。


と、いうのがドノヴァッテン魔法王国の

大雑把な情報だが、ついてこれたかな?

では、魔女のヘッタクソな説明を聞くアルファイは ー


「(だめだ、何を言いたのかわからん。

  ()()()()()()()を手にいれる苦労と

  “緑花芽草” を三つ手にいれるために

  この部屋の天井から屋根に出ると

  毒トカゲが二匹いてそのさらに上にいる

  石像に化けたガーゴイルには

  遠くからちまちま火弓矢を撃つのが

  一番効率的だとしか言ってない・・・。

  何を言いたいんだ、こいつは・・・)」


魔女、話したいことしか話してない。

アルファイは黙って聞いていたが

イライラは募るばかりで、

「西の星見塔へ行くための話じゃないのか?」

時折、軌道修正を試みる。

「あっ!そうでした〜。

 お茶も飲んでくださいね〜。

 で、こっちに行くと〜」

魔女はアルファイに三杯目の茶を勧めた。


「!っ(・・・なんだこれは・・・)」

ここまで色々衝撃的な出来事が多かったが

アルファイは、人生史上飲んだことのない味の

茶を飲むことになる。


回復茶だ。

(性懲りも無くアイスクラピウス作成後

 魔女がそっとハチミツを足したもの)


アルファイの動きが止まった。

「(口の中を蹂躙されているような感覚だが

  これは急激な薬効に

  細胞レベルで刺激されているからだろう。

  ・・・味覚としては・・・

  希望のない味だが、かすかに甘い・・・。)」

薬効と味を分析していた。


だが魔女はアルファイの怪我が

回復茶を飲むたびに薄くなって

ついには、顔色も血の気を帯びてきた。

「(よかった、回復茶は薬草と違って

  時間かかるんだよね。

  私のゲーム知識も・・・

  ()()()も役に立つじゃん)」

ホッとして別の水筒と

クッキーを出した。


「えっと〜、次は紅茶でもどうですか?」


アルファイのお腹は、もうタプタプよ。







ラースに言われていたことだ。


「ここは魔法の本場だ。

 ないとは思うが何か仕掛けてこないこともない。

 もし仕掛けられたら・・・」


魔女は察知できるように集中している。

不思議なことに感覚が研ぎ澄まされてる。

「(でも保険かけとこ。)」

この部屋に着いて、すぐにやったこと。


転移すると同時に、静かに息を吸い込んだ。

「(“聖職士”の使う“姿隠し” の魔法って

  ()()()()()()()()()()()()()

  気付かれたら一瞬で攻撃対象になるし・・・)」

なら、もっといいヤツ作ればいいじゃん。


「(だって私、最強の魔女なんでしょ)」

アルファイの顔と自分の顔に向けて

片手を振るような仕草をとった。

「?」

「へへっここって埃っぽいですよね」

それとな〜く誤魔化しながら。


「(うしし。うまくできたはず。

  これならバレても大丈夫。

  ・・・ゲームになかったけど

  勝手に作っちゃったけど

  私が魔女だからってことで ー)」

とうとうゲームにもない魔法を作りやがった。


その名も ー

『ジャミジャミじゃん』

ネーミングセンスも壊滅的。


魔女創作魔法:ジャミジャミじゃん

       テレビのブロックノイズから

       発想を得る。

       存在に四角いモザイク状の

       画面乱れをかけ、見る人を

       とてつもなく嫌な気分にさせる。


ー 音付き。

※ジャミジャミとは:テレビ画面の砂嵐状態。

         (福井県方便)


魔女のいう“ジャミジャミ砂嵐” と

実際の“モザイク状態” には

大きな隔たりがあるものの

阻害する、という意味では

どちらも理になかっている。

“ザーーー”

という不快指数を上げる音付きである。

だが人によっては

砂嵐の()()()()()()()で安眠できるという。

眠ってもらえれば、御の字だ。


「(これなら見つかっても

  正体がバレる前に逃げられるかも)」

もっとあると思うの。

半透明じゃなくて完全に姿を消す方法とか。

なんでジャミジャミさせて

さらに不快にさせてんだ。

ヘイト稼ぐ気?



アルファイの状態が程良くなってきたのを

確認した魔女は、腰をあげ

部屋内をウロウロしだした。

「ん〜、こっちかな・・・」

積み重なった本のうち

「あった、これだ」

大きな黒い本を取り出した。

茶色い革表紙のどこにでもありそうな本だ。


「?」

アルファイは魔女の手に持たれた本を見る。

「これ、これあると便利なんですよ〜。

 ここの()()

「ー?攻略?」

「!ああの、攻略っていうのは〜、

 近道っていうか〜」

「もういい、それはなんだと聞いている」


魔女は苛立つアルファイに遮られて

ちょっとだけホッとしつつ、本を開く。


「!」

本の真ん中はくり抜かれていて

そこに嵌め込まれていたのは

“羅針盤”のようなもの。

「これです〜」

魔女は本を両開きのままアルファイに見せた。


「羅針盤?」

「お、そうなんです〜、正解で〜っす。

 この国って霧だらけじゃないですか。

 森を抜ける時とか

 真っ直ぐ進んでると思いきや

 まったく別のとこに

 連れてかれちゃうんですよね。

 でもこれ持ってると、

 いく先を必ず指し示してくれるんです〜。

 お助けアイテムなんです〜。」


魔女は本から羅針盤を手に取り

またアルファイに見せた。

羅針盤は銀製で所々木で作られているようで

魔女の手には少々大きなものだった。


「こんなものが、ここに・・・」

まじまじと見るアルファイに

魔女は羅針盤を手渡した。

「これ、とりあえず持っててくださいね」

「?」

「そのうち使うので」

羅針盤を取り出した本を元に戻し

魔女はアルファイの前に座り直した。 


「(・・・この部屋から出た後を

  考えなきゃ・・・)」

魔女は紅茶をすすった。

ミルクを入れたから、飲みやすい。





「魔女、作戦を」

「あ、そうです、あの

 西の星見の塔へ行くのはいいんですけど

 先に北門へ行こうかと思って」

「なぜ」

「(ここで薬壺の欠片があるからって言ったら

  めっちゃキレられる。)えと〜

 あの〜」


言い淀んでしまった。

ここまで来て、城門北へ行きたい理由も言えなければ

その目的さえうまく言えない。

だが、アルファイは意外にも許諾した。

「北門へはここからならすぐだ。

 行くならばさっさと行くぞ」

立ちあがろうとした。

「(怒ってない?あれ?

  なんで?嫌われてるとは思うけど)

 待ってください!作戦が先です!」

「それが作戦じゃないのか?」

「あ〜、(直接は関係ないけど)

 作戦に必要になりますね〜。」


埃まみれの地面に描かれた

王城の全体図を見る。


「ー、私たちがいるのは、この部屋。

 ラースが檻に入れられた謁見の間からは

 すんごい離れてるんですけど〜」

言いながら、四つの塔に二重丸をつけた。

「さっき私たちを追ってきた人は

 この四つの塔を確実に守ってるはずです」

「・・・ラースのいる研究棟にも通じるからな。

 王城の人間は、魔法ですべて行動を行っているから

 生身の人間は大体塔にいる。 ー」

アルファイも答えた。

「へぇ、でも王様、生身でいましたよね。」

お出迎えしてくれた女性は途中で消えたのに

王は玉座に座っていたのを魔女は思い出す。


「王は代々、魔法を使役しない。」

「え」

魔女の指が止まる。

「?なんだ、魔女のくせに知らないのか」

「え、だって

(ゲームの中の王様って

 確か魔法使いだったはずですけど)」

魔女の思案する顔には気付いたが

アルファイは続けた。

「ドノヴァッテンの王は

 魔法を使役しない代わりに

 “精霊王”と契約を交わしている。」

「・・・精霊王・・・?」

またしても初聞きだ。


アルファイは茶を飲み干し

地面に静かに置いて、言った。


()()()()()()()()()()()


魔女は喉元まで出かかった言葉を

空気と一緒に飲みこんだ。

「(古代竜(それ)、寝てませんよ)」

(ゲームでは)バッチリ起きてるし

なんなら、とある場所へ行けば

(即死不回避の)戦闘だ。

(なんとなくそれっぽく言う)アルファイを

傷つけたくないが

「(しかも・・・エレーミナルスで

  私が二回ほど変身した黒竜(ヤツ)です・・・)」

複雑な顔して全肯定(おっしゃる通りです)で、ヘラっと笑う。


「?・・・魔女、無駄話は終わりだ。

 城門北へ行ったらすぐに西の星見塔だ。

 すぐに向かうぞ。」

HPが超回復したアルファイは立ち上がった。

(HP3.75→18に回復。時間経過で回復)

だが魔女は座ったままだ。

多少、言葉を選んだ(つもり)。

「は、はい、そうなんですけど〜

 えと、すぐには行けないんですよ。

 西の塔に。敵がいるとか、じゃなくって

 今は西の星見塔には、行けないって意味です」

「?」

アルファイの眉間にしわが寄る。

魔女はクッキーのアーモンドだけ取り出した。


「アルファイさんはまだ

 完璧じゃないので、腕が治るまでは」

言いかけた魔女にかぶせてきた。

「では“核”を返せ」

「?!(そう来る?)

 だ、駄目です!」

「なぜだ、もういいだろう」

HPがちょっとずつ回復し

今や短距離ダッシュぐらいはできそうなアルファイは

口もエンジンかかってきたらしい。


「(良いっちゃ良いけど、

  でも どうしよう・・・。

  ラースにはまだ返しちゃだめだって

  言われてるし、それに

  核返して見つかったら殺されちゃうよ。

  “ラース()言ってた”って言えば

  今度はへこんじゃうよね・・・。う〜ん。)」


魔女は、思いついたことを口にした。


「ま、まだ仲良くないから駄目です!!」

幼稚園児みたいなことを言った。

その瞬間のアルファイときたら ー

「は?」(真顔)

そうなるよね。

「はい!わ、()()()()()()()()()()()()です!!」

変なオプションつけるなよ。

「!!?(そんな約束だったか?!)」


魔女、核を返すと言えないから

オメーなんか大っっっ嫌いだと

(のたま)われたお相手に向かって

自分とも仲良くしてくれなきゃ

お前の核、返さね〜よ、へ〜んっだ。

っていう

魔女の謎理論発動。



「〜〜っっみ、身勝手なやつだ!」

「言われたことはありませんけど

 貴重なご意見ありがとうございます!」

みんな思ってても言わない品性ってあるよね。

「ーっど鈍臭い上に、

 精神まで図太いなっ!」

包み隠さず言うことで気づきがある。

「鈍臭いっていうか慎重なだけですけど

 図太さには結構自信があります!」

面接で問われるネガティブをポジティブ変換力だ。

「褒めてない!!!だいたい

 私はお前と一緒なだけでも虫唾が走る!」

嫌いオーラ、ついに言語化。

「私は割と平気です!!

 ラースが言ってましたっ

 “お前は嫌われてるけど

 アルファイさんはみんなに優しい” って!」

お前、ハブられてんじゃん。

「(ラースが?!)〜〜!勝手にしろ!」

口ききたくない時に出るやつ。

「はい!だから私とも仲良くしてください!!」

最終的に()()()()って、大事だよね。


「〜〜っ(それは断る)」

アルファイは、アホらしいと思いつつ

ラースの言葉を思い出した。

『魔女を守ってやってくれ』


まだそんな気はない。





「(こ、これで、とりあえず大丈夫、かな?)」

魔女はちら、とアルファイの様子を伺いながらも

肩掛けかばんをゴソゴソしだした。

「(ご機嫌取りでもしておこう)」


取り出したのは、水筒だった。

「アルファイさん、これ飲んでください。

 あたたかいミルクティーです。

 好きですよね?」


魔女は朝食の時にアルファイが紅茶にミルクをたっぷり入れ

飲んでいるのを4回見た。

アルファイは水筒を見たが、すぐに顔を背けた。


「いらん」

()()()()()()付きですよ?」

ラースから聞いていたアルファイの好物。

(ネズミ、検品合格済)

「・・・」

無言で受け取った。



魔女はニコニコしながら

また全体図を眺める。

少しだけ上目でアルファイを見た。

あぐらの間に水筒を置き、片手で器用にクラヴァットを食べていた。

アルファイの顔を見続けた。

「・・・(アルファイさんの顔って)」

痩せ細っているが整っている方だ。

「(骨格的にはイケメンの部類、か?)」


イケメンたりうるには骨格は大事な要素のひとつだ。

そう見れば、アルファイは

その要素をクリアしているように思えた。

渾身の主人公キャラ作りをした喪女は

骨格判断だってできるのだ。

「(そういえば、

  二人目の主人公の勇者って)」

魔女のまわりにはいっぱい勇者がいるから

(愛の農業勇者ディオ、

 騎士風聖獣勇者シャルラッハロート

 死にかけの預言勇者アルファイ)

ゲーム上の主人公その2を忘れていた。


「?ーなんだ、人の顔をじろじろと」

「!あ、あぁ、ごめんなさい

 えっと〜、

 どこの塔行ってもらおうかな〜って」

「核がなければ全部同じだ。入れない」

「そ、そっか〜!じゃぁやっぱり私と一緒に」

「だから早く返せ」

「それは!まだ、駄目ですけど〜。ん〜、

 あの〜、質問なんですけど

 斬られた腕、痛くないですか?」

魔女は、ふと気になった。

「・・・(何言ってんだ、こいつ)」

見てわかんねえのかよ、と言わんばかりの顔だ。


「(私、今、魔法使えるなら

 アルファイさんの回復もできるんじゃ

 なんなら腕も生えてくるんじゃない?)」

突拍子が無さすぎる。


そう思ったら、

魔女はもっとアルファイをジ〜ィっとみた。

薄目になりながら思案もする。


「(なんだろ、なんか大事なこと

  忘れてる気がするんだけど

  この人、預言者だしなんか影響とか、ない?

  ステータスとか見れるのかな。

  よくわかんないけど、そうだー、

  まずはやってみようか)」

心の中でつぶやいた。


「(アルファイさんの腕、戻れ)」

ぬ〜ん。

両手を奇妙に動かし、念を送ってるように見える。

その実、魔女が行なっていたのは

自分の頭を治すために出したあのー

魔女宅での白い光だ。


し〜ん


何も変化がない。

「(ん〜、チートって言っても

  できないこともあるのか〜。残念)」

その代わりに白い光は三つに分かれ

アルファイの体を包んだ。

体は肉を取り戻し、肌艶は大変良くなった。


長く白い髪はそのままだったが

まるで毎日のお手入れに命かけてる女子のように

サラサラでツヤッツヤで、光の風に揺れている。


「なんだ、この力は・・・?

 (聖職士でもこの回復はできない)」

アルファイは我が身に湧き上がる力を感じた。

自分の手を見れば、すでに死人のような手ではない。


あたたかい光に包まれて、心地よかった。


「回復はお前が?」

「え、あぁ、そうです。

 どうですか?どこかおかしなとこ

 ありますか?」

「不思議だ。」

「ごめんなさい、腕はちょっと、あの」

「ー、それは当然だ。

 腕は回復魔法の部類ではないし、

 “呪い返し”なのだ。」


アルファイは自分の手を見つめ

その手を握ったり広げたり、

何度も手のひらと甲をひっくり返しては

近付けて見た。


腕は戻らなかったが魔女は嬉しかった。

「(よかったね、アルファイさん)」


少しだけアルファイは顔を魔女に向ける。

「もしや回復コレ

 私に“貸し”とする気ではないだろうな?」

「なっ!とんでもないですよ〜

 そんな気はないです〜。」

でも魔女

ちょっとだけ(貸しっぽいのを)思い付く。


「あ、アルファイさんって〜

 預言者なんですよね〜?」

「? ー、あぁ」

アルファイは魔女を見たが

すぐに手に視線が戻った。


「よ、預言者の人って

 勇者を指名するって聞いたんですけど〜

 それって、どうやるのかな〜って」

純粋にやり方を聞いたつもりだ。

打算的だが、二人目の勇者についての情報を

得ようともしていた。だが

アルファイにしてみれば

その大事な予言をしようとした術式を

ぶっ壊しといて

勇者を逆指名したのは酔っ払い魔女だ。


だが

「星見だ。星が教えてくれる」

意外にもアルファイはさらっといいのけた。


「星ですか?

(星? 星がなんか喋ってくるのかな)」

「あぁ。」

「じゃ、じゃあ!

 いつ会えるとか〜、誰とか〜

 そういうの、わかっちゃうんだ〜。」


アルファイは魔女を見た。

「(お前が指名したのは ー)」

アルファイは俯き、ため息をついた。


「?」

アルファイの答えに窮したような姿に不安を覚えた。

「(ひょ、ひょっとして

  主人公その2も、(魔術師ゴーリーさんみたいに)

  もう死んでるとか(私が変なことしちゃったから)

  今回は勇者いません、みたいな)」



アルファイは立ち上がった。

ヨロヨロもせず、扉へと向かった。

扉の前で立ち止まり、少しだけ顔を横に向ける。


「わからないんだ。

 星は私を導かなかった。」

その横顔には、なんだか悲しみか

それとも怒りか良くわからない表情がいた。


魔女は

“わからなくってよかった”、と思った。

なぜかはわからないが

落ち込んでいるようにも見えたアルファイが

どこへ行けばいいのかわからない迷子みたいで

不安そうだった。

「(だから、()()()が欲しいのかな)」



魔女は腕はないが、健康体になった

アルファイを見て

「(そうだ。

  アルファイさんのステータスを)」

これからの戦いに備えよう、

ー そう思った。


 アムラン(素性:勇者(呪いアリ)初期ステータス)Lv:5

「技量」8 (持って生まれた才能みたいなもの)

「持久力」5(スタミナとか頑丈さ、素早さ)

「生命力」7(攻撃として与えるダメージ)

「幸運」6(アイテム発見確率、呪いへの耐性、運の良さ)

「信仰」9(信仰度が高いほど、技量補正が強くなる)

「筋力」4(マッスル)

「精神力」10(メンタルの豆腐度←高いほど鋼のメンタル、勇気)

「愛」5(ラブ、慈愛の程度、信頼)


「は?」


魔女は固まった。

「なんだ」

アルファイは魔女に向き直った。


魔女は目をこすって、もう一度

ステータス表示をしっかり見直す。

「(え、う、嘘、

  だっ、だって名前ちが、

  “アムラン”て 誰よ)」


名は確かに()()()()()表示されている。


「(え、何、バグった??)

 あ、アルファイさん、

 アルファイさんの名前って ー」

「お前に名乗る名などない」

「お、教えてください!

 フルネーム!なっ名前!!早くっ!!!」

魔女は必死だ。



さっきまでの死にそうだった男は 

ゆっくりだが口を開いた。 


「アルファイ()()・ヴォン・()()()()


「あ、

 アルファイ()()

 バン?

 ()()()()???

()()()()()じゃねえのかよ!!

 略してんのか!!

 なんだ()()って!撃たれた?

 どこが名字で、どこが名前なの〜〜!

 アムラ〜〜〜ン!

 マジで勇者かよ〜〜!!)」



二人目の勇者、確定?










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