勝負
かくれん‐ぼう【かくれんぼう、隠れん坊】
鬼が目をふさいでいる間に子が隠れ、後に鬼がそれを見つけだす遊び。
全世界、老若男女(その他多様性含む)誰もが参加できるシンプルなゲーム。
「いぃ〜ち、」
暗闇なのにさ
「にぃ〜ぃ、」
こうして机に突っ伏してる意味
「さぁ〜〜ん、」
ある?
ゲームの世界でかくれんぼするって
最強最悪の魔女がのたまう世界線って、どう?最弱じゃね?
「ごぉ〜ぉ〜、」
勝て(ラースを捕まえれ)ば魔女に魔法を使えるようにする、のと
負け(ラースを捕まえられなけ)ればラースの望みを叶える、というもの。
たった一度の真剣勝負。
いざ尋常にー、
の、前にあらかじめ魔女はラースにルールの確認だ。
「あ、そうそう。かくれんぼで魔法は使用禁止ね。姿消すやつとか〜、足音消すやつとか〜。移動魔法もなしだよ。だって、私今魔法使えないし。」
ラースは黙って頷いた。
『私が見張ってるから安心してかくれんぼしたまえ』
アイスクラピウスは、審判のつもりらしい。
「ろぉ〜ぉ〜く、」
ルール
その一、10数えたら『もういいかい』と聞く
その二、隠れたら『もういいよ』ということ。
まだなら『まだだよ』ということ。
『まだだよ』は一回まで(大人だから。)
その三、魔女が見つけたら、指を差し『見つけた』と言い、ラースを捕まえること。
「捕まえる、というのはどういう意味だ、捕縛するということか?」
「見つけたら背中とか肩とかにタッチ、でいいんじゃない?」
こいつ、ネズミの隠形術舐めてんな。
「なぁ〜〜ぁ〜なっ、」
ネズミとかくれんぼするとか、ファンタジー突き抜けてんな。
魔法を使いたい一心で考えた対策なのに
魔女には何か作戦があるのだろうか。
ちょっとその辺を ー「は〜ぁっっち〜、」ちょっと「きゅ〜ぅ〜う〜ぅ」聞きた「じゅぅ〜ぅ〜う〜」
だから
「も〜ぉ〜お〜、いぃ〜い〜ぃか〜ぁ〜い!!」
「いつでもこい」
戦いの火蓋は落とされた ー
*
暗闇でのかくれんぼというだけでも、魔女にとって不利の上、相手は(ややデカめの)ネズミ。
さらに、戦いのフィールドは汚部屋である。ネズミには絶好の隠れ場所となるだろう。対して、153歳腰の違和感を棚ぼたで乗り越え、今は単なる魔法が使えない魔女 ー
勝算は ー
魔女は机を離れ、辺りを見渡す。
「(アイスピックスさんの魔法が切れてから、大体5分くらいか・・・)」
部屋が明るく照らされ、その次には暗闇に戻ってのことだ。
アイスクラピウスだっつってんだろ。
「(ちゃんと探さないと・・・)」
もう痛くない腰を折って、机の下をのぞいた。ーいない。
そのまま床から全体を見渡しながら、わざと大きな声を出した。
「ど〜ぉこ〜ぉ〜か〜ぁ〜な〜〜?」
なまはげばりの迫力だ。ー ネズミに効果あるか?
壁伝いに部屋の中を歩く。一周はした。
本の山の隙間を覗きながら、ラースの居所を見つけようとする。
「(・・・全然わかんないや。やっぱり。・・・でも悠長に探してる時間もないし。)」
物音ひとつしない。
さすがネズミだ。隠れるのはお手のものだろう。
だが、魔女には勝算有り、ー
「(ほんと、アイスピックスさんに腰、治してもらって感謝。敵対者じゃないことを祈る。)」
部屋のほぼ中央あたりに立って、魔女は深呼吸して小さくつぶやいた。
「ふぅ〜・・・じゃぁ、行くよ〜」
手にしていたのは瓶。妖精が入っていた瓶だ。蓋はない。
魔女は瓶の中に何やら入れ、ー 床に投げつけた。
っっガシャーーーンっ!!!!
けたたましい音と一緒に、部屋が大きく揺れる。
ー、地震だ。
ゴゴゴゴゴゴぉぉぉぉーーー!!
地鳴りに混じって次々に何かが倒れ、割れる音やミシミシと壁が崩れ、・・・崩れ?
魔女の家が崩れ始めた。
「なんだっっ何事だっ!!!」
飛び出てきたラースに、魔女の目が反応する。
「(目印のー、いたッッッ!!)」
魔女は地鳴りに負けず、声を張り上げ指を指す。
「みぃ〜〜っっつぅ〜〜〜うけえ〜〜たああっっ!!!」
暗闇でよかった。きっと般若みたいな顔してるだろう。
崩れ落ちる部屋の中をものともせずに、魔女は走る。
何かわからないが、魔女の体に当たる。すでに床に山となった本を乗り越え
落ちてくる瓦礫たちの中、
ー 暗闇を一直線に ー
「つかまえたあ!!!!」
「!?」
ネズミ、捕らえたり。
魔女は、ラースの両脇をしっかり両手でつかみ、持ち上げた。
「へへっ。」
地震は止んでいた。
*
風通しのだいぶ良い部屋で、審議中。
あの揺れで頭に乗ったと思われる枯草を払いながら魔女は否定する。
「え〜?だって魔法じゃないし〜」
おネズミさま、異議あり。
「魔法でなければ、あんな揺れは起こせないはずだ。
では何だ?何を使った?!不正じゃないのか!!」
『魔女、君は今魔法が使えないはずなんだ。
ー 何をした』
審判のアイスクラピウスは、姿こそ見えないものの声は静かに問いただす。
「ん〜、道具を使っただけだよ〜。これ。」
魔女がポケットから取り出したものー
・瓶(蓋なし)
・草
・砂
・小石
「・・・?これが、何だというんだ」
「えっとね、これでさっきの地震起こしたんだ」
『は?』
魔女が使用したのはー、
アイテム情報:“大いなる狂震”
瓶(または小壺)に
火炎草・大地の呼び砂・大地の砕石を入れ
衝撃を与えると、中心から半径四メートル外に
大きな揺れを発生させる。(時間15秒)
「そ、そんなものが・・・この部屋に?」
ラースは目を丸くした。
「へへ〜、暗かったらわからなかったかも。
さっき、アイスピックスさんが部屋明るくしてくれたでしょ?
その時に机の上にあったんだよ〜。」
よく見れば、草はほんのり赤く、砂は黒色火薬のようだった。
「(ゲームでは敵が近づけないようにするデバフアイテムなんだよ。
ま〜じ〜で見つけられてラッキー。)」
初めてゲームの知識が活きた。
「・・・大地の砕石を触媒にしているのか・・・」
ラースはじっとアイテムを見ていた。
もはや、誰もアイスクラピウスの名前間違ってる事を指摘しない。
だが、諸君には覚えていてほしい。
アイスクラピウスだって事。覚えて帰ってください。
『だが、地震を起こしたところでラースの居場所はわからないだろう?どうやった』
「あ、それはね〜。
ラースには絶対動いてもらわないといけなかったんだ〜。」
魔女はにっこり笑いながら、ラースの尻尾を指差した。
『?何?尻尾?・・・』
ラースの尻尾がほんのり光っていた。
「!こ、これはっ!さっき尻尾をつかんだのはーっ」
ラースは思わず自分の尻尾を握りしめていた。
「そぉ〜で〜す。ふふふ〜、正解〜。妖精さんのおかげなんだよ〜。」
尻尾だけじゃないぜ?瓶だってつかんでました。
魔女は瓶を持ったとき、瓶の中のある部分だけが光っていることに気づいた。
「(?これ・・・、妖精の鱗粉だ。)」
自分の指に鱗粉をこすりつけ、ラースの尻尾にそのままなすりつけた。
割とガッツリ。
アイテム情報:“妖精の光鱗粉”
付けて動くと短時間、光を発する。
(発光時間:10秒)
つまり、種明かしをまとめれば
アイスクラピウスが明るくした部屋の中に
「(お、アイテムだ)」と確認した魔女は
暗くなった瞬間、瓶の中に付着した妖精の鱗粉を
自分の指に付けー、
ラースの尻尾をつかむと見せかけこすりつけた。
あとはもう、どうやったらそれらしく勝負に勝てるか、と
考えあぐねていた。
かくれんぼをする、という突拍子の無さは
それ以外思いつかなかったから、である。
かくれんぼのカウントアップをしながらアイテムをしめしめと盗み
ポケットに忍ばせ、それらアイテムを使用し部屋に地震を起こし
ラースが動いた瞬間、暗闇に光る尻尾を目掛けて
捕まえに行った、というのが事の顛末だ。
「じゃんけん3回勝負でもよかったんだけどね。」
・・・それ以外の戦い方を知らないのだろうか。
魔女、3回連続で負けそう。
『フ、ふはっ。ふはははっそうか、そうだったのか。』
アイスクラピウスは、嬉しそうに笑った。
『ラース、この勝負、お前の負けだ。いい加減認めろ。』
「ーっだが、家を壊していい理由にはならない。」
だよね。たかだか、かくれんぼで家壊して良いはずない。
「えー?でもさ〜、まだ家残ってるよ?無事だよ。」
「壁と天井がない家を”無事”と言えるのならな。」
そーだそーだ。魔女、こういうのは半壊してる、っていうんだぜ。
「か、風通しは良くなったしカビ臭くないよ!!」
確かに。壁ないもんな。寒くない?
おネズミさま、何となく納得してない。
だって、魔女がドヤ顔してるのムカつくし
見つけたら、つかまえるんじゃなくて
背中か肩タッチで良いって言ったくせに両脇持ったし
尻尾だっていきなりつかんできたし
・・・なんか色々・・・
「(だが、これだけの道具であの揺れを起こせるのは
錬金術師か、学者並の知識がないとできないのは事実だ。
・・・核の力の解放をするのか・・・?私が?・・・
・・・くそ、・・・)」
お、負けを認めちゃう?
おネズミさま、負けを、ー
「?!っ」
パラパラ、と砂がラースのいる場所に降り出した。
ガラガラガラっっっ!!!
落ちてくる砂は瓦礫に変化した。
「ラースっっ危ないっ!!」
魔女はラースに手を伸ばし胸元に引き入れ、抱きしめた。
砂埃と土煙で、辺りが真っ白に染まった。
土・日は投稿をお休みします。
投稿が不定期になることがあるので活動報告を見ていただくか
これを機会に、ブックマークの登録をしていただけると嬉しいです。




