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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第二部 賢者と砦のドノヴァッテン魔法王国編

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46/53

過去のひとつ




ドノヴァッテン魔法王国へ

出発のときが近づいていた。


魔女は自室で準備中。

「(えっと〜、タオルは持ったし〜

  薬草は・・・九十九個あれば足りるでしょ。

  それと〜、あ、アレも持ってこ〜。)」

肩掛けかばんは今日も大活躍。

パンっパンにしてく予定だ。遠足じゃないよ。


コンコン・コンコン


ノック音に魔女はドアを見る。

「は〜い?」

「私だ」

「?ラース?」

魔女の口同様、半開きのドアから

ラースの尻尾が見えた。

「(開いてるから入ってくればいいのに)

 どうぞ〜」

隙間からスルッと入ったラースは

そのままベッド上の魔女の元に登ってきた。


「どうしたの?何かあった?」

実は魔女も話したいことがあったから

ちょうどよかったが、まずはラースの用件を聞く。


「魔女、アルファイのことだが・・・」

「アルファイさんがどうかした?」

「あの()()()のことだ。」

肩掛けかばんに詰めていた手が止まる。


『お前が世界を呪わなければ

 ラースは禁書(スクロール)を使う必要はなかった!!』

アルファイの声が脳内再生された。


今の魔女が呪いをかけたわけじゃないが

アルファイからすれば、()()も魔女は魔女。

同じようなものだろう。

「(分かってはいるけど・・・)」

なんとなく口にするのも億劫だった。

損な役回りと知りつつも、魔女は口を開く。


「あ、・・・私のせいで」

全部言う前にラースは言い切った。

「違う、いや、今はその是非を問うべきじゃない。

 禁書(スクロール)を使用したのは、私だ。

 そして召喚状の言わんとしてることは

 ああ、その、つまり禁書(スクロール)の件だ。」


ラースは魔女を責めるような素振りはない。

むしろ、魔女に言いにくそうに言葉を慎重に選んでいる。

「?(いつもはビシビシ言うのに歯切れ悪いな。)

 禁書(スクロール)のことはわかったけど

 それがどうしたの?一緒に行けばいいじゃん。

 (地下牢ってのが気になるとこだけど)」

小さな深呼吸が聞こえた。


「ドノヴァッテンへ行けば、私は捕まる。」

「は?え?なぬっ?!」

驚きの三段活用みたいに魔女から言葉が出た。

召喚状(あれ)は出頭命令のようなものだ」

「えぇ?!そ、そんな捕まるって

 ラースはどうなるの!?」

「大丈夫だ。その辺は問題ない。だが・・・

 アルファイの腕は私にも責任がある。」


“金のナナカマド”は、万能じゃなかった。

呪いをある程度、浄化し

死にかけを復活させることもできるが

“呪い”自体をなくすことはできない。


「“影の混沌” の呪いは

 アルファイ自身を“贄” にして

 代わりに多大な“力”を与えた。

 術を使えば使うほど、命を侵食する呪いだ。」

「だからディオのおじいちゃんが

 アルファイさんの腕を斬ったの?」

「ああ、残酷なようだが

 イリアス殿の方法が最良だった。

 “呪い返し”が全身を侵食する前に

 腕だけ斬り落としたんだ。」

魔女はアルファイの腕を思い出し

痛ましい気持ちになった。


「(そこまでして、アルファイさんは

  何がしたかったんだろう。

  私を倒したかっただけ?・・・)」

知りたい気持ちと、知りたくない気持ちになる。

ラースの咳払いが聞こえた。

 

「こほん、斬り落とされた腕について

 先にも言ったが私にも責任の一端がある。

 それで、ー」

おネズミさま、口ごもる。モゴモゴ。

「?え、何?

 アルファイさんの腕は治るんでしょ?

 だってケトルさんが紹介状

 書いてくれるって言ってたよね?」

魔女はラースを持ち上げた。

「(お、おもっ)ラース?」

「アルファイの腕は

 ドノヴァッテン魔法王国の

 “魔術師ゴーリー” しか治せない。」

「うん?

 だから紹介状持って行けばいいじゃん」

「それが問題なんだ。」

おネズミさまは魔女と目を合わせない。


気まずいネズミ。


「え?」

なんとしても目を合わせようと

「ラース?」

体をこちらに向けるも

顔はあさっての方を向く。

「?ラース??」

魔女は自分の顔を

ラースの視界全体に入り込む。

「!!」

顔がデカい。デカさの勝利だ。こわい。

逃げ場のないラースは視線が泳ぐ。

「ラース〜っこっち見てってば!

 何が問題なの?!」

観念したか

ラースはチラリ、横目で魔女を見た。


「“魔術師ゴーリー” は、もう死んでいる。」


シーン。


魔女の脳内にラースの言葉が

理解として伝達されるまで十秒。

そして

「死んでる?!え?、死んでるの?!

 いつ?死んだのいつ!?

 死んでからどれくらい経ったの??

 なんで死んだの!?病気??

 死ぬってなに!!」

なんて不吉な言葉を連呼するんだ、魔女。

最後の一文なんて、哲学じゃないか。


「おおよそ100年前に死んだ。」

ラースは手短に答える。

「そ、そんな死んでる人にどうやって

 紹介状を渡せばいいの・・・」

ラースを持つ手も気持ちと

ラースの物理的重さで

自然と下がった。


ラースは魔女の前に立った。


「“時の狭間” へ行けと言うことだろう。」

「な、何の狭間って?」

「“時”だ。」

魔女は、はたと気付く。

「(は!!そうだった、ここは

  ゲームの世界だった。

  死んだ人がいてもどうにかできるんだ。

  よかった、どうにかなるんだ。

  アルファイさんの腕、どうにか・・・

  んん?“時の狭間” って言った?

  “時の狭間” って、えっと

  確か、時空間ワープする石碑みたいな。

  え、でもそこ行くためには・・・)」

そこまで思い至って、口に出る。


「って、ことは

 え、ー。私がやんの?それ。

 え、私が?・・・」

ラースは頷く。

「アルファイを一緒に連れて行ってほしい」

「ちょっと待って、ラース。

 そ、その時の狭間って

 王の(しゃく)がいるんじゃ」

ラースはまたしても頷く。

「え?まさか王の(しゃく)を盗め、と?」

ラースはそうだと言わんばかりに拍手した。

「珍しく察しがいいな、魔女」

褒めてるのだろうが

魔女的にはまったく嬉しくない。

「だ、だって盗んだのがバレたら・・・」

ここはゲームの世界に似た世界だが

召喚状よろしく、ちゃんと法もある。


「バレれば、魔女も地下牢行きだ。」

一蓮托生の、魔女とネズミの相互理解。


このネズミ、策士である。







『時の狭間の石碑

 霧の光の彼方には 

 伝えられる時を遡ることができる。

 知りたくば向かい、しゃくを掲げよ。


 賢者の砦が築かれた時

 賢者はそこを通り、神と出会ったという。


 王の(しゃく)はその時を待ち

 静かに棺に横たわる。』


ラースのポヨンとしたお腹を見つつ

魔女はゲーム内で王の笏と思しきものが

どこにあったか記憶を巡らし、口にした。

「お、()()()()()()()()()()()、と。」

「魔女、致し方ない。

 あなたにしか頼めない。」

そんなこと言われたらひとつ返事で

オッケー!と言いたくなる。


「(だって相棒だし・・・

  でもなぁ〜

  ひょ〜・・・

  ゲームの中ならまだしも

  リアル墓荒らししろってが)」

転生前だってしたことない。

バチ当たりもバチ当たり。


「(寝た子を起こすな、じゃなく

  永眠した人の墓を荒らすな)」

という当たり前の事実に

(自称、常識人)魔女は悩む。


ラースは続けた。

「歴代の王が眠る霊廟は

 魔法魔術アカデメイアの地下にある。

 アルファイなら道を知ってるはずだ。

 だが、その先の王の霊廟へは

 賢者の広間を抜けー」

「聞き捨てならないな。ラース。」

アイスクラピウスが入ってきた。


「ふむ。 

 お前はそこまでして

 借りを作りたくないみたいだな」

「アイスクラピウス・・・

 違う、魔女にしか行けないんだ。

 私がそうしたからだ。」

アイスクラピウスの表情が曇る。

「魔女しか行けない、?」


まさかの常識人、魔女には

「?(何の話してんのかわかんないのに

   話には出てくる・・・。)」

全然話が通じてない。

ラースは魔女の膝に乗る。

「霊廟にはこの百年間

 誰も入った形跡はない。入れないんだ。

 霊廟の結界を張ったのは魔女、

 あなただからだ。」

「(結界??張った覚えもないんですが)」

アイスクラピウスは腕を組み

納得したように言った。

「ラース、ようやくわかった。

 お前は禁書(スクロール)を取るために

 “囚人”を使ったんだな」


「あぁ、そうだ。

 魔女、あなたの魔力を私は利用したのだ。

 あなたの結界は、霊廟内に“囚人” を留めるために

 今もなお張られている。

 利用したのだ、私は・・・。」


ラースの紫の瞳が魔女を見上げた。

何だか縮こまってて、怯えたみたいに見えた。

ただでさえ小さいのに(重さはしっかりあるけど)

余計に小さくみえる。

だが魔女には気の利いた言葉や

かける言葉なんか当然見つからなくって

言えた言葉なんて ー。


「ご、ごめん、全然意味わかんない。

(この気の利かなさよ・・・。

 ごめん、ラース。)」

正直者が、空気をさらに悪くする。


シーン。


アイスクラピウスにはウケた。

「っぷ、ふふっ。

 わからないよな。

 あぁ、わからなくて当然さ。

 ふふっ、そうか〜。

 そうだったのか。

 よしよし、わかったぞ。」

「え?何が?」

頼むから解説してくれ。


「ラース、お前は本当に賢いなぁ。

 だがその賢さは、お前に罪を作ったな。

 ドノヴァッテンへ行き、償うがいい。ー

 で、魔女。」

「?(解説くる??)」

ワクワク。

「このネズミはな、罪なネズミだ。

 ドノヴァッテンで禁書(スクロール)と呼ばれる

 魔術書を持ち出すために()()()打ったのさ。

 霊廟に“囚人”を放ってね。

 そして、魔女はその“囚人”を逃さないように

 霊廟に結界を張ったんだ。

 こうして話を聞くまで、勘違いしたままだった。」

「囚人・・・、あ。」


魔女は思い出す。

「(ボスキャラだ。多分、()()のことだ。

  やばい。めっちゃ強いボスキャラじゃん。

  てか、このタイミングで出てくんの??

  初っ端からクライマックスかよ。)」

ゲーム終盤に出てくるはずのキャラだ。

  

アイスクラピウスは壁にもたれかかり

ラースに問いかけるように言う。

「“囚人”は禁書(スクロール)と一緒に

 封印されてたはずだろ?

 正しくは“囚人”は眠っていたと言うべきだが

 お前は封印を解き、霊廟に放った。

 だが魔女はそれに気付いたか、

 もしくは別の思惑があったのか

 “囚人”ごと結界に閉じ込めた。

 以来、霊廟は誰も立ち入ることがなくなった。

 ーと、言うのがこの話のまとめかな?」

長いけど、まあ、いいよ。


「あぁ、そうだ。」

「なぜそんなことをした」

「王の(しゃく)に興味はなかった。

 “囚人”の持つ禁書(スクロール)だけ

 手に入れれば良かった。

 だが、禁書(スクロール)

 “囚人”の中に封じられていた。

 取り出すだけで起こすつもりはなかったが

 あの日、魔女が現れて ー」


ちら、と魔女を見る。どきっっ!

「(え、え、え?私??

  前の魔女だよね!?)」

アイスクラピウスも魔女を見て

優しく微笑んだ。

「これはもう運命と言って差し支えないな。

 そのような言葉は使うべきではないだろうが

 ふふ、囚人ともども片付けるべきだ。」

優しく微笑みながら、脅迫されている。

「わ、私が?ーた、倒す、の?」

笑顔で頷いた。


「うっそ〜〜〜ん!!!」

声に出ていた。


「(“囚人”、って

  ゲームの中でもベスト3に入る強いボスだよ?!

  プレイヤー時、一番死んだとこだよ?!

  アイテムフル活用して

  レベル上げも推奨レベルの倍で

  ようやく勝てたボスだよ?!)」

心の叫びが、魔女の顔を苦悶の表情にさせる。



「おい」



ビクッッ!

後ろをそーっと振り返ると

シャルラッハロートが立っていた。


「シャ、シャル!どうかした?

 あ、お腹すいた?」

「違う。」

アイスクラピウスの前に立つ。

「ドノヴァッテンには

 ラースとアルファイだけ行くと聞いた」

「ああ」

「俺も一緒に ー」

「シャルラッハロート。お前はだめだ。」

アイスクラピウスはシャルの肩に手を置き

笑顔でシャルを見上げ、魔女を見てから

耳打ちしてる。

コソコソコソ。


ひとしきり聞いた後

シャルラッハロートは

まんざらでもないという顔をした。


そのままドアへ向かうと思いきやー。

「魔女、

 次は俺が お前との約束を守る。」

「?へ?」

言うと、シャルラッハロートは部屋をでた。


「な、なんだったの・・・?

 (約束なんてしてませんけど??)」

アイスクラピウスは笑顔のまま

魔女に近寄ってきた。


「魔女、これを」

アイスクラピウスは魔女の手に置いた。

「?」

「紋章だ。

 これで、王城に入れるだろう。

 王との謁見にも見せたらいい。

 どこまで有効かわからないが

 大体どこでも通用すると思っていい」

「え、そんな大事なものを

 私が貰っていいんですか?」

「?それは元々、君のものだよ。」

「!!(・・・私の・・・)」

魔女はローブのポケットにすぐにしまう。


「いいかい?

 ドノヴァッテンへ行くのは

 魔女、使い魔ラース、そして

 ・・・いつまでそこにいるつもりだ?

 こっちに来い、アルファイ」

いつからそこにいたのか

アルファイは部屋の外にいたらしい。

立ち聞きしてたってわけね、ん?

え?ラースが心配だったから

ついてきただけって??


・・・君、執着系男子?


アイスクラピウスに呼ばれて

渋々、本当に渋々部屋へ入ってきた。


入ってきたのに、すみっこにいる。


「お前たち三人が、()()()だ。」

アイスクラピウスは真顔になった。


「どうしてですか?」

「ん?魔女。

 ドノヴァッテン魔法王国は

 魔法が使えないやつは足手まといだ。

 “核”がないと入国すらできない。

 ディオもギーズルもゾイも

 シャルラッハロートも

 現時点では

 あなたの邪魔になるからな。」

「え、でも」

「大丈夫だ。

 イリアスと私で特訓して

 後から合流できるように調整する。」


それを聞いたラースはアルファイの肩に乗って

言った。

「つまり()()()

 先に片付けておけってことだろ」


ビンゴ。


アイスクラピウスは苦笑いして

「半刻後に出発だ」

言い残し、部屋を出た。







シャルラッハロート情報:特訓?

            俺に今必要なのは

            忍耐だ。


ディオ情報:え?!

      俺は連れてってもらえないの?

      ちょ、まっ、じいちゃんっ

      タンマっっ!!タイム!


ギーズル情報:アイスクラピウスが

       ニコニコしながら

       関節技を決めてくる。

       あいつは絶対武闘派。


ゾイ情報:特訓なんてしたくないし

     サボりたいんです。

     ギーズルさまがやってるから仕方なく。


ディオ祖父情報:生涯現役ジジイ。

        今の所、若者たちに無敗。


アルファイ情報:ラースが優しい。

        肩に乗る時

        乗るぞ、って言う。

        

アイスクラピウス情報:さて、本気出すか。







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