召喚状
魔女の家に朝が訪れた。
朝食を取ったあと、魔女はまた手紙を開く。
「(おかしい。・・・
王様から手紙をもらったのは私なのに
手紙の内容はほぼ、ラースのことだけだ。
しかも・・・)」
魔女は手紙を持つ腕にラースが乗り
存外の重さにプルプルしつつも思う。
「(読めるのに意味がわからん・・・
そして、そしてラースが重い・・・。
ラースのお腹には朝に食べたおにぎりが四個と
目玉焼きを三個、ウィンナーが六本・・・)」
おネズミさま、食欲旺盛。
重量に負けずもう一度、手紙に目を通す。
「(ラースは“禁書のことだ”って言ってた。
う〜ん・・・。やっぱり重い。)」
以下、手紙内一部抜粋。
“魔女方 ー
学徒 ラース・ヘルヴェルト・スタイン”
「(ラースの名前って長いんだな・・・)」
“王立魔法魔術アカデメイア
召喚状
ー 学院内規律条項三十八条第四項により
至急研究棟 地下坑道東南東
血脈零番 第弐列に来られたし。”
昨日はここまで読んで、ラースを呼んだ。
「(研究棟の地下坑道って、ゲームの中の
ドノヴァッテンの地下牢のこと?
あれ?あそこって一回目は行けないんじゃ。
でもゲームとは違うかもしれないし。
ラース、重いな・・・)」
ラースの確かな質量はもはや腕だけじゃなく
体全体がプルプルしてるように見えた。
魔女は耐えている。
ゾイは、勘違いも励ましに入る。
「魔女さま、
事情があったんですよ、お辛いと思いますけど
間違いに違いないですよ。ね?ラースさん。」
違う。ネズミの重量感に魔女の腕は
もう限界なのだ。気付け、気遣いのゾイ!
「お、おもっ・・・」
魔女の切なる心の叫びは
小さなつぶやきとなってギーズルに届く。
「そうだな・・・
アカデメイアに呼び出しにしては
話が重いな・・・」
違う、違うぞ!おかま!!じゃない
オネエ!!!
ほら、よく見て!!
魔女の腕が重力とラースの重さに耐えきれず
だんだん下がって、ああ?!
「魔女さまっっラースさんっ!
大丈夫です!俺がついてます!!」
グッジョブ!愛の農業勇者!!
ディオは黙り込んだおネズミさまを
魔女の腕から持ち上げ、胸に抱き締めた。
「!!はっ離せっディオ!
私は平気だっ」
ラースは慌てた。ちっちゃい足をバタバタ。
「学校から呼び出されても
ラースさんの価値は変わりません!!」
と、いうのをジト目で見るのは
片腕の勇者(真偽不明)のアルファイ。
「(ラースが苦しそうじゃないか。
もう少し丁寧に抱き上げろ)」
男の嫉妬って見苦しいわあ。
「(う、腕がしびれた・・・)」
魔女は肘下を揉みながらもう一度手紙をみる。
「(地下牢に来いっていうのは
なんかおかしいんだよな・・・。
いきなり地下牢っておかしくない?
これ本当に王様が出したの?・・・)」
“この召喚状が貴殿(以下甲)に対し
送達された此れより以内に
甲は本訴状に対する答弁書
または[本召喚状への異議]申立書を
王立魔法魔術アカデメイア(以下乙)に
早急に送達あれかし。
仮に甲がその対応を拒否または滞った場合
これを黙示的に同意したと見做し
請求された救済について甲が敗訴の欠席判決が下される。
ー ドノヴァッテン王国憲章 第十一条項 五ノ二
いかなる者も己の潔白の証拠によって主要事実に関する争いが
現実には存在しないことが証明でき かつ
その争いのない事実に王国法を適用するときその真実は
自分が勝訴することを主張できる場合に認められる。
(中略)
保護者である“魔女”の付き添は必須とし
王の謁見を順次遂行されたし。なお・・・ー”
うんたらかんたら・・・
魔女、離脱。
「・・・(うん、わからん。
漢字いっぱいで読みにくいし
難しい内容だし、腕も疲れたし
途中から読むのすら諦めたね。
何言ってんのか、さっぱり)
わかんないなぁ・・・」
魔女は純粋に内容が理解できないでいた。
「そうですよね、僕もなんで
ラースさんが呼び出されてるのか
わかりません。」
ディオは違う意味で“わからない” と言った。
「行くしかないだろうな」
アイスクラピウスは含み笑いを浮かべた。
だが
「理由が明記されていない以上
この手紙は無効だ。」
アルファイは言い、手紙から顔を上げ
魔女に怒りともつかない眼差しを向けた。
「お前のせいだ」
アルファイは憎々しげに言った。
「え」
魔女はポカンだ。
「お前が世界を呪わなければ
ラースは禁書を使う必要はなかった!!」
「やめろっアルファイ!!」
ラースはアルファイの前に飛び出した。
それと同時に、ディオは魔女の前に立つ。
「魔女さまになんかしたら
ただじゃおかないからな。」
剣の柄に手をかけていた。
一触即発。
だが空気が変わる。
「お前ら、ドノヴァッテンの召喚状ごときに
怖気付いたのではあるまいな?」
にっこり笑うイケおじこと、ディオのじいちゃんだ。
「じいちゃん、そういうことじゃないんだよ」
ディオはアルファイを睨みつけていた。
アルファイはディオではなく、魔女を睨む。
「なあにを言うか、小童どもが!」
ゴッッ!!ゴッッ!!
「だっっ」「っっ!」
ディオとアルファイは、ゲンコツ食らう。
喧嘩両成敗。
「ワシの唐揚げをたらふく食い
同じ釜の飯を食うた仲だろう。
いまさら、敵だ味方だと騒ぐなら
このイリアスが相手になるぞ!!」
ムキムキっっ!
そして、横にはアイスクラピウスが立った。
「まだまだ相互理解が足りないようだな」
にっこり。
ジジイ、華麗に上着を脱ぎ
逃げようとする奴らに大発声。
「ディオ!!
シャツは脱いでおけ、どうせ破ける」
「え、ま、また?!」
ディオはたじろいだ。
「アルファイ、お前は死にそうだから
食ったもんを洗え」
「・・・!」
HP24のアルファイはダンマリ。
ギーズルは一服、と外に出ようとして
襟首掴まれた。
「祭祀王、お前の相手はアイスクラピウスだ」
「!!マジかよ」
ゾイは空気になろうと努力した。
「お前もだ」
「ぼ、僕は戦力外ですから〜」
相互理解という名の、特訓がはじまった。
*
静かになった部屋の中
魔女は、アルファイの言葉を繰り返し思い返す。
「(私のせい?・・・え?
ラースが禁書を使った??
また前の魔女がなんかした?
え?でも、ゲームでは
禁書は盗まれたって
・・・んん?)」
もちろん、アルファイに言われたことに
傷付いてないわけではないが
魔女は胸がざわつく。
「(禁書はゲーム上二回出てくる。
どっちだろ、わからない。
急いで大学ノートを見返したいっ)」
エレーミナルス王国へ行く前に
魔女はゲームのイベント進行と
必須アイテムの回収と取得可能アイテム
サブイベントでの行動を記した大学ノートがある。
「(“金枝”を手に入れてるのがもう・・・)」
もはや“ゲームと進行が違う”、ということはなかった。
だが、必須アイテムがやすやすと手に入るのが
魔女には不思議で仕方ない。
「(私が“魔女” だから?・・・ゲームの内容と
どこでつながるのかわからない。)」
黙々と台所で朝食の後片付けをしながら
皿の水を切る。
手渡すと、皿が拭かれ重なる音がする。
「(あれ、そういえばシャルは・・・)」
顔を上げた。
いた。
しかも真ん前に。
「!!びっっ、くりした〜・・・。
シャル、どうしたの?」
「そいつを見張れと言われた。」
「?」
横を見れば、
不満たっぷりの仏頂面のアルファイが
皿を拭いては、重ねていた。
「(いつのまに・・・!)
あ、あはは・・・アルファイさん
お手伝い、ありがとうございます。
もう、終わったんで自由にしててください。」
型通りのお礼に当然返事はなく
アルファイはラースのいる部屋へ行ってしまった。
「・・・(行っちゃった・・・。
アルファイさんと仲良くなるのは無理かな〜。
昨日もご飯、少ししか食べてくれなかったし。)」
前掛けエプロンで手を拭きつつ
「シャル、昨日の残りだけど
プリン食べる?」
「ああ」
魔女はボウルにそのまま作られたプリンを出し
オタマをシャルラッハロートに手渡した。
「スプーンいる?」
「いらん」
シャルラッハロートは、オタマで直食い。
しばし魔女は食べっぷりを眺めた。
「(シャルが聖獣バロンっていうのも
なんか嘘みたい・・・。)」
会話がてら、シャルラッハロートに
質問でもしてみたらいいのだろうけど
目下、魔女には目的があった。
大学ノートを取り出してページを開く。
「(まずは・・・)」
ドノヴァッテン魔法王国の情報だ。
『ドノバッテン
魔法王国について
城門前スタート
北門、東門、どちらからも入れるー
「(う〜ん・・・、ここじゃない。)」
ページを次々めくる。
ふと、目に入る文字。
『王との謁見後、回避』
「!(“謁見”!あった!
・・・あれ、回避って
何を回避するんだっけ。)」
頬杖ついて考える。
唐突にゲームのストーリーに突っ込まれる別イベント。
「(あ〜、あれね。
王様と謁見、ってつまり
えーっと 偉い人と会うの?!
何すんの、私。
マナーとか知らないんですけど。)」
転生前。
唯一会ったことのある偉い人は
泥棒捕まえて、表彰された地元の警察署長。
「(あの時もめちゃくちゃ緊張したな。
でもあの時と同じで良いなら別に)」
転生後、
まさか偉い人レベルで
警察署長も王様と肩並べるとは思わないだろう。
「(王城内に入ったら、確か ー。
主人公その2がいるはず。)」
すでに魔女宅には勇者と名乗る者が三人いるが
王城内でも会うことがノートに記されている。
「(主人公その2は魔法王国の学徒で
えっと何だっけ。)」
ペラペラと主人公その2のページを見た。
「(あ、ここだ。
私の渾身のイケメン主人公その2の
情報はー、と。)」
初期ステータスが書いてある。
(素性:魔法使い:初期ステータス)Lv:5
「技量」8 (持って生まれた才能みたいなもの)
「持久力」5(スタミナとか頑丈さ、素早さ)
「生命力」7(攻撃として与えるダメージ)
「幸運」6(アイテム発見確率、呪いへの耐性、運の良さ)
「信仰」9(信仰度が高いほど、技量補正が強くなる)
「筋力」4(マッスル)
「精神力」10(メンタルの豆腐度←高いほど鋼のメンタル、勇気)
「愛」5(ラブ、慈愛の程度、信頼)
全体的に低い。
「(仕方ない。
素性が魔法使いだもんね。
魔法使いは、魔法の強さはあるけど
筋力とかスタミナがないもんね。
物理攻撃向きじゃないんだよな〜。)」
ちら、とシャルラッハロートを見た。
プリンはもう食べ終わったようだ。
「まだ食べる?」
「いや、いい」
そう言うと、シャルラッハロートは席を立ち
彼もまたラースの部屋へと向かって行った。
「?(シャルも行っちゃうんだ。
ラースに何か用事があるのかな?)」
魔女はその背を見送り、またノートに目を落とす。
「(でもまぁ、今回は主人公に会えるかどうか
わかんないな。こっちにはもう勇者三人いるし
確かドノバッテンで勇者に会うのは秋だけど
今は春だから会えないと思って良さそう。
けどそっちの方が都合がいいかも。
アイテムの回収がスムーズだろうし。)」
ノートに記された解呪アイテムをチェックする。
『解呪アイテム
満月の水
夜の太陽の石指輪
幸運のネルガル
白のマルドゥクの犬刃』
魔女は改めて見直して天井を仰ぐ。
「(ドノヴァッテン魔法王国は
マップもアイテムも
ボリュームが大きいから
効率よく回らないと・・・。
行かなくてもいい場所は無視して・・・)」
ページをめくる手が止まる。
「(待って・・・。これは
主人公その2に会わないとダメだ。
え、魔女が会っていいのか?!
だって、これ・・・。まずくない?)」
エンディングに関わる
主人公その2の知り合いと織りなすサブイベント。
部屋を抜ける風に魔女は目を向け
ノートを見る。
「(まさかの坂がここでも出現・・・
サブイベントのくせに、重要なイベント。
しかも主人公の知り合いなのに名無し。
モブにありがち、わかるぞ、モブ。
私だって名前聞かれないし
雑だけど、“魔女”って呼ばれてるからな。
会ったら名前、聞いてみようかな・・・)」
窓の外に目を向ければ
洗濯物が風になびき
その後ろをチラチラと野郎どもが
相互理解を深めていた。
洗濯物の白さに負けない純情勇者ディオが
これまた洗濯物のコマーシャルでも出るような
爽やかさで、上半身裸で剣を振る姿に
魔女は思わずノートに目を落とし
今朝早くのことを思い出す。
*
「ディオ〜、おじいちゃんが呼んでるよ〜!」
勢いよくドアを開けたことを
魔女、激しく後悔。
「あ」
上半身裸で背中全体あらわにして
ベッドに体を放り出し
うつ伏せ寝している愛の農業勇者を発見。
「(布団、かぶってないのなぜ?)」
魔女は見ないようにしつつ
椅子にかけられていたディオのマントを持ち
自分の顔を隠し、ディオに声をかける。
「ディオ〜、起きてくださ〜い」
チラッ。
下手なマジシャンみたいだ。
も一度チラッ。
「(見てはいけない、けど
ちょっとだけなら 見てみたい)」
魔女、誘惑のちらり、心の小窓を開く。
良心の呵責はない。
これは朝の点呼である。
ディオを呼びに来ただけで
やだ、イケメンって寝顔もイケメンね!とか
上半身裸だからムフフ、筋肉すげーな、おい。
やったぜ!!見るだけだし触ってないからセーフ。
とか思ってないし
見てませんよという顔してるし
ディオのおじいちゃんに言われて
ディオを起こしに来ただけだから。
「(起こしに来たのです。だから)」
チラ。ーーー 五秒ガン見。
寝てらっしゃる。ー イケメン。
間違いない。
十人いたら百人が振り返るイケメン。
そしてせせこましくもお声がけ。
「ディオ〜?」
どこまでもイケメン。
しっかり筋肉美を確認後、ひと呼吸するために
わざわざマントを頭まで持ち上げる。
「〜っふぅ〜っ
(朝から刺激が強い・・・
今、朝四時ですけど。)」
悪いことしてるみたいで、ドキドキする。
マントの端っこから
「?」
見える腕が少しだけ動いたように見えた。
「(あれ?マントちょっと湿ってる?
・・・なんか臭いな、マント)」
独特なかほりがした。
ちょっとだけマントを顔から遠ざける。
またマントの向こう側の景色が動いた気がした。
「?(ディオ以外も誰か、いる?)」
後退りしつつ、伺うと
あら大変、魔女、マント!
マント踏んでるって!!
顔から遠ざけたマントはいつしか
持ってるだけになっていて
魔女の足元でもたついた。
「っわっっ!!」
すってんころりん。
ついでに小さなテーブルにぶつかり
テーブル上のコップを軒並み倒した。
朝っぱらから騒音を奏でる。
「ふわぁぁ〜、も〜ぉ、なによ〜ぉ」
ディオの腕から出てきたのは
「ギーズルさん!?」
ディオの下に組み敷かれ、
違う、
隠れて寝ていた、違うけど
神々しい祭祀王だ。
祭祀王は 全裸、である。
魔女、誰かに何かを隠す勢いで
マントをベッドの二人めがけてかぶせた。
「(オネエ!それは色々まずい!!)」
続いてディオもお目覚め遊ばした。
「な、なんでお前がここに!」
ディオはイケメンだし目覚めがいいのね。
「アンタが結婚の書類の書き方教えてくれって
言ったんでしょ」
気だるいオネエ、髪をかきあげる仕草すら神々しい。
「!!だ、だけど
そのあとはすぐ帰れって言ったはずだっ」
「ゾイが先寝てて
ドア開けてくんなかったの〜」
魔女、半裸のディオと全裸の男の言い合いを
冷静には見られない。
目の焦点をずらしつつもチラッ。
「(種類の違うイケメン・・・
片方はめっちゃいい体のイケメンで勇者。
片方は細いけど
美しいイケメンオネエ。
何、このアンバランスな
超絶バランス組み合わせ。
これはこれで・・・)」
転移魔法の時といい
二人の間に流れていた微妙な空気感は
まさにこのことだったのかと
魔女は納得しかけた。
だが
ギーズルは投げられたマントから漂う
大自然の贈り物とも取れるかほりに声をあげた。
「くっさ!!何、このマント!
くっさいんだけど!」
ギーズルがマントをディオに向け投げ返す。
ディオはマントを
ギーズルの主に下半身に向け投げ直した。
「お前なんで裸なんだよ!」
「肌が弱いから布ズレが嫌なの。
お前も裸じゃん」
「俺は暑かったし、上半身だけだっ」
「へ〜、
俺の肩にスリスリしてたのは何でかな〜」
「してない!!」
「ディオ、正直になれよ。
お前、ホントは俺のこと大好きだろ」
「はぁ??」
困った。
見てる分にはいいけど
喧嘩は良くない。
この場を何とかせねばならない。
仕事で培われたのは忍耐だけではない。
そう、揉めた状況を打破する魔法。
大声出した。
「ディオっ!!
おじいちゃんが呼んでるってばぁっ!!」
同僚のおばちゃんも言ってた。
「声の大きいやつが正義」
大声出しとけばとりあえず
注目は集められるわけで ー
「ま、魔女さま!!」
ほらね。
気付いてさえくれればいいのだ。
今更気付いたらしい。
ディオは顔を赤くし、シーツを引き抜き体にかぶった。
もっと見せてくれてもいいのよ。
「じいちゃんがどうしましたか!」
「庭に来いって!」
脊髄反射的に魔女は答えた。
ギーズルはベッドに腰掛け
タオルを腰に巻きながら立ち上がり
シガレットケースを探す。
魔女は見ない。
「(見たらビンタされる・・・)」
「イリアス殿がなんて?」
ギーズルはシガレットケースからタバコを取り出し
一本口に咥えた。
火を探しているが、見つからない。
「あ、あのシャルと手合わせしてるから
ディオも来いって」
魔女は目線を自分の前掛けエプロンの中に落とした。
見たら、取りこぼしたハーブが入っている。
ディオはすでにシャツを羽織り、剣を手にした。
「わかりました、すぐ行きます!!」
ディオは走って出て行った。
「じゃ、じゃあその〜、お邪魔しました〜」
魔女はそそそ、と部屋のドアに移動しつつ
足下を見たたままギーズルを見ないように
部屋を出ようとした。
「待て」
男の裸足と巻かれたタオルが目に入る。
「?!」
下を向いたままの魔女は顔を上げずに答えた。
「何でしょーか」
「イリアス殿は
シャルラッハロートと手合わせをしてるのか?」
「?、はい」
「ふ〜ん」
「?」
「あと」
下を向いた魔女の目に
落ちてきたタバコを挟んだ片手。
「?(何?ー また殴られ、)」
身構えた。
魔女、初めて顎を上に向かされた。
(顎クイっ)アゴクイである。
アリクイに似てるが全然違うものだ。
「?!?!」
小首を傾げる朝の気だるそうな
イケメンオネエ。
「よく眠れたか?」
「!!」
ドアの扉が開く。
「おはようございます!」
ゾイだ。
魔女は、思わずギーズルに返事せずに
ゾイに返事した。
「おっおはようございます」
「あ、魔女さま〜、おはようございます〜。
早いですね〜、眠くないですか〜?」
ゾイは部屋へ入るなり、小さなテーブルにコーヒーを置きつつ
持ってきたバスローブを広げ、ギーズルの肩にかけた。
脱ぎ捨てられた服を畳み始めた。
ギーズルの周りが小綺麗になっていく。
ギーズルは魔女に流し目をおくりながら言った。
「着替え、見たい?」
「ヒッいっいやっ」
「いけません!ま、魔女さま、ご退出を!」
ゾイに言われるまま
魔女は急いで部屋を出てドアを閉めた。
出たが、“おはよう”の挨拶の返事をしてないことに気付く。
「(挨拶は どこの世界行っても基本)」
ドア越しに向かって大声だした。
「おはようございます!!ギーズルさぁぁん!」
それを聞いたギーズルは
小さくつぶやく。
「おはよ、魔女」
*
ラース情報:呼び出しとかありえん。
アルファイ情報:HP24とかありえん。
ディオ情報:じいちゃん。51歳とかで
その体力はありえん。
ギーズル情報:睡眠時間三時間とか
ありえんて。
ゾイ情報:色々あり得る世の中です。




