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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第一部 5月の森 エレーミナルス王国編

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【番外編】食に集う





引き続き、魔女宅である。

陽はいつのまにか陰って空は茜色に染まった。



「ん〜、なんと言うかのう。

 アイスクラピウスよ・・・」

「ー、わかるぞ、テイアー。」

「あいつら、分かっとるのか?」

「ああ、分かっていない。」

「魔女があれじゃあ、仕方ないか・・・」

「ああ、仕方ない。

 それよりどうだ、紅茶でも」

「あ〜!腹が減ったなあっっっ!

 魔女っ飯はまだかのう!!!!」

「(・・・大声出して遮ったな・・・)」

アイスクラピウスは騒がしい台所を見て

微笑み、また紅茶に口を付ける。

「(こんなに美味しいのにな・・・)」


台所には魔女、ディオ、ゾイが

野菜を洗ったり刻んだり、忙しなく動いていた。

包丁がまな板に刻む小気味の良い音が笑い声と重なる。

「あー!ゾイさん!つまみ食いは禁止です〜!!」

「違いますよ〜、シャルラッハロートさんです〜」

「もう!シャル?!あれ?逃げた??」

「さっきアンタが裏庭から

 暖炉用の薪持って来いって言ったから

 取りに行ったわよ。」

「あ、そうだった。」

「薪?何に使うんですか?」

「お鍋!庭で使うんだよ!

 あ、ゾイさんっ今取ったでしょ!」

「ギーズル様も食べました〜」

「毒味よ、毒味。魔女の作るもんに

 毒入ってるかもしれないでしょ?」

かすめ取ったハムを一口放りこみ

ギーズルは台所を離れた。

「(なかなか美味いじゃん)もぐ」

玄関を出てシガレットケースから

タバコを取り出し、自分で火をつけた。

「〜っふぅ〜〜・・・」

開きっぱなしのドアに肩をよりかけ

庭の中心を見た。

「(ちゃんとやってるじゃん、ん?)」

シャルラッハロートが薪を組み立ていた。

ギーズルが声をかける。

「シャルラッハロート。

 お前のやろうとしてんのって

 キャンプファイヤー?」

「?」

鍋置くにしては、高く積み上げられすぎていた。

ギーズルは苦笑いしながら近付いて

薪を一本手に取り

「さては聖獣(お前)、キャンプしたかった?」

イタズラ小僧みたいな顔をした。





「(ゾイさんも、ギーズルさんも

  ハム盗んで逃げるたぁいい度胸だ・・・)」

食い逃げした二人を恨めしく思うのも無理はない。


台所には今、魔女と ー

「これは ー」

「あ、えっと、それは

 研ぐんですけど〜」

「研ぐ?」

「お米です。生米、研いだことありません?

 軽〜く、こうやるんですよ〜」

アルファイがいる。


互いに

「(嫌われてるのに)」

「(嫌いなのに)」

地獄なのに、逃げ道なし。


絶賛、(食べ盛りの野郎どものために)

()()()()()()という名の

()()()()()()履行中。

片腕しかないからお任せもできず

魔女がアルファイを補佐。


「魔法でやれないのか・・・」

カショカショカショ

「あー、あの、私〜

 魔法使えないんですよ〜、今」

ザーーーっ

「は?」

「なんかぁ、使えても三分とかだし

 色々あって・・・、あ、アルファイさん

 袖が水についちゃうからめくりますね。」

アルファイは魔女に袖をめくってもらいながら

気になっていたことを口にした。

「聖獣と手を組んだのか」

「え?」

魔女は、めくった袖から伸びる

枝のような細い手を見つめた。

「・・・手は組んでないです」

袖から手を離し、米の入ったボウルを持ち直した。

アルファイは仏頂面で

「聖獣は“力”には仕えない。」

カショカショしはじめた。

魔女が研いだ米に水を足す。

ザーーーーーっ

「でも〜、」

水の勢いが強い。だから自然と声も大きくなる。

「なんかぁっっ!!」

ザーーーーーーっ!

「シャルはおっきい捨て犬みたいで〜!」

魔女はボウルに溜まる水を見ながら言う。

ザーーーートポトポトポっ・・・キュ。

「お腹空かせてるのってかわいそうだしっっ

 お腹いっぱいになってから

 考えようかなって!!!」

水は止まったのに、大声でいうものだから

「(うるさいな・・・)」

アルファイの目はラースを探していた。

ソファに目を向けた。

ソファにはイケオジ(ディオ祖父)と

アイスクラピウス(元ケトル)が

親しげに談笑していた。

「(あの二人はどういう関係なのか・・・

  イリアス殿がただの農民ではないことに

  私は一度も気付けなかった。

  何かから隠して、いや、隠れ、)」

「アルファイさん!!」

ビクゥっ!

魔女が視界に割り込んできた。

「なんだ」

驚いたことはなかったことにして

アルファイは答えた。

「お米、浸水させるんで〜

 一旦休憩しててくださ〜い」

そう言うと、魔女はスタスタと台所を出た。


アルファイが所在なさげに立っていると

ゾイがチョコチップクッキー片手に話しかけた。

「アルファイさんって

 腕、どうしちゃったんです?」

誰もが聞きにくいことを聞いていくスタイル。

こんなヤツ、めっちゃデリカシーない上に迷惑だが

聞いてくれてありがとう。


アルファイはゾイのデリカシーのない質問に

怒ることもなく静かに答えた。

「“呪い返し” だ」

「え?“呪い返し” ?」

小さく頷いて、アルファイは腕のない肩を撫でた。

「私の呪いは、」

興味津々で聞こうとしたゾイの手から

チョコチップクッキーを取り上げたのはー

「侵食しとったもんでの〜、

 ワシが、切り落としてやったわい。」

ディオの祖父、おじさまだ。


「?!?(き、切り落とした?)」

ザクっ

おじさまは、クッキーを力強く噛んだ。


(チキンズ)締めるより

 ラクじゃったわ。」

残りを口に放り込む。

「さあて、ワシも本気出さねばならんな。

 ふふ、腕が鳴るわい。・・・

 お主らに天国を味わせてやる」

イケオジ、腕まくりをすれば

日焼けした腕に筋肉が浮き出ていた。

ムキっ







「シャル〜っ!ディオ〜!!」

魔女がお呼びだ。

()()()呼ばわりされたシャルラッハロートと

魔女の()()()()、ディオは

「どうしましたか!!」

呼ばれて五秒以内に魔女の前にいた。


「この鍋、庭の焚き火の上に置いてきて〜」


鍋には浸水した米が入れられていた。

「はじめチョロチョロだよ〜」

「?え、何が」

「あ、お米の炊き方〜。

 最初は弱火でじっくりで〜

 中、ぱっぱ〜。」

魔女は楽しそうだ。

「沸騰してきたら火を強くして〜

 ボコボコと沸騰させるんだよ〜!

 分かった?」

シャルラッハロートは黙って頷き

鍋を持ち上げると、肩に担いだ。

「(俺が行く必要ないじゃん・・・)」

ディオは少しいじけそうだ。

「あっ!ディオが行かないとだめ!

 一番大事!!

 “赤子泣いてもフタとるな!!”

 って言ってね、お米を蒸らしてる時は

 絶対蓋開けたらダメだよ〜。ディオは

 お米の炊き具合を見極める役だからね!

 よろしく〜!!」


ディオの自尊心、舞い戻る。

「(きっと途中で開けたがる奴らばっかだから

  俺がしっかりしないと・・・)」

謎の責任感も生まれる。


庭へ出た。

「・・・なんだこれ・・・」

ディオのつぶやきに

シャルラッハロートは答えず

鍋を担いだまま、組んだ薪を登っていく。


「え、おっおい!

 シャルラッハロート!!

 これなんだよ!!」

シャルラッハロートは答えた。

「キャンプファイヤーだ」

「は?

 いや、だって米炊くのに

 キャンプファイヤーって規模じゃないだろ

 これ・・・」


藁と薪と木の枝で組み立てられた人形が

庭の中心に仁王立ち。

十メートルはありそうだ。


タバコを咥えたギーズルがディオの横に来た。


「五月祭の目玉だ。

 編み細工人形(ウィッカーマン)さ。」

「それって生贄を入れるやつだろ!!」

「ああ、エレーミナルス王国じゃ

 もうだいぶ昔にやめたけどな。

 神々に捧げるのはー

 動物やら、人間入れるのは違う。

 俺らは芋と米、それからー」


シャルラッハロートが降りてきた。

「点火する」

「え」

ボォウッ!


編み細工人形(ウィッカーマン)が燃え上がる。


「いや〜、やっぱこれがないと

 祭って感じじゃねーわ」

ギーズルは加えていたタバコを投げ入れた。

「(・・・はじめチョロチョロ・・・

  じゃない・・・)」

ディオは不可抗力だ。

「(魔女さま、ごめんなさい。

  僕は無力な勇者です・・・)」


暗くなった空へ、鍋を包んだ炎は

火の粉を舞い上げた。




空まで届きそうな火の柱に

魔女と魔女の肩に乗ったラースは

愕然とする。

「な、何が起きたの・・・」

「・・・?ちょっと待て

 あいつ、何で火を突いてる」

ラースは目を細めて

ゾイとギーズルの手に握られてるものを見た。


「ん?(祭祀の杖と祭祀の剣?!)」

ゾイは祭祀の杖で、火の中の薪を移動させ

ギーズルは祭祀の剣の上で何かを焼いている。

「おいっっ!何をしてるんだっ!」

「キャンプファイヤーだ」

シャルラッハロートの声に振り向けば

チョコチップクッキーのかごを持っていた。

「キャンプファイヤー?・・・」

魔女が不思議な顔をしている。

「え、お米は?」

「そこにある」

シャルラッハロートが顔を向ければ

玄関の横に置いてあった。

魔女はラースを肩に乗せたまま、しゃがむ。


「わ〜ぁ!すごーい!!

 お米が立ってるー!」

嬉しそうに声を上げる魔女に

ラースはさらに驚愕する。

「は?こ、この鍋は・・・」

そう、心当たりがある。

虫とか煮込んでた(アレ)だね。

それだけじゃない。

編み細工人形(ウィッカーマン)の火に照らされ

鍋の全体像が明らかになったことを踏まえて

ものすごく冷静に魔女に問う。


「魔女、この鍋は、どこから持ってきた?」

「え〜?この鍋?どこだったっけ〜。

 この家に元からあったやつだけど

 うんと〜、壺の横に置いてあったやつ」

「!!(こいつ・・・。

 エレーミナルス王国の四つの宝のうちの

 ひとつを、鍋なんかに使ってたのか。)」

おネズミさま、冷や汗ダラダラ。

だって大鍋の側面に“大地”を示す

古語が彫ってあるんですもの。

神話上の宝で、団子玉作って

お米炊いてる。


鍋は“善き神の大鍋” と呼ばれていた。

「(魔女と言い、ギーズルらと言い・・・)」

ラースはめまいがしそうだ。


「おにぎり握ってくる〜」

そう言って、魔女は

(今度こそは)鍋を持つディオと

台所へ向かった。


ラースはなんだか、狐に摘まれた気分だ。

「(・・・あくまで伝承だ。

  建国に際して、()()が持ってきたのは

  聖なる石、神の盾、そして祭祀の剣

  最後に大鍋だ。・・・まさかな・・・)」

「ラースさんっ!

 焼いたマシュマロ

 めっっっちゃ上手いっすよ!食べます?」

祭祀の杖に刺さるマシュマロを見せた。

やれやれ、ラースはゾイに向かって走る。


「ギーズルっ!祭祀の剣の上で

 マシュマロ焼くな!!!」

甘くて美味しそうな匂いには勝てん。






チリンチリン



魔女はドアを見た。

「?誰だろ」

ディオのじいちゃんとアイスクラピウスは

魔女たちと入れ替わりに外へ出たばかりだ。


「大魔女さま〜!!郵便で〜ぇっす!」

「?(郵便?)」

いつか逃がした妖精が、いた。

真っ赤なシーリングで封をした真っ白な手紙。


「?え、これ、私に?ー」

「知りませ〜ぇっん」


受け取りながら差出人の名を見るも、

ーない。裏返して、


「女神さまから祝福もらったからって

 いい気になるなよ〜!!」

「え」

ピュ〜〜〜っ

「わぶっっ!」

妖精から水鉄砲を食らった。

魔女、避けることなく見事に顔面直撃。


「魔女さま、大丈夫ですか?」


タオルを受け取りながら魔女はまたも情けなく笑った。

「うん、大丈夫。へへっ、やられちゃった」

タオルで顔を拭きつつも、手紙を見た。

ディオも一緒になって見る。


「何にも書いてないなぁ。」

アルファイが覗き込んできた。

「“魔法封”だな」

「魔法封?」

魔女は無理やり開けようとした。

「ちょっと待て」

アルファイが手を止めた。

「?」

アルファイはその手紙のシーリングを指差した。

「これは()()()()()()()()()()()()()()()だ」

「わ、私、はっはじめてだよ!!

 王様から手紙なんてもらったの」

ヒョイ、と魔女の手から手紙は奪われた。

アイスクラピウスだ。

一人だけ戻ってきたらしい。


「こういう“魔法封”は ー。

 魔女本人か、ふふ

 私ぐらいにしか開けられないのだよ。」

「え?!何で?」


アイスクラピウスは微笑みながら

手紙に手をかざした。

キラキラと結晶が砕かれるように

シーリングが弾けながら消えていった。

「す、すご〜い!」

「手紙とは秘匿でもある。

 アルファイ、よく見抜けたな。

 ー もし無理に開けていたら ー」

アイスクラピウスが手紙をプラプラさせた。


「命はここで終わりだ」


アイスクラピウスは少しばかり口角をあげ

魔女に差し戻した。

「どうぞ、あなた宛らしい」

「?は、はい、ありがとうございます。」


魔女は封を開け、中の手紙を出した。


気になるが、黙っていた。

ディオは握ったおにぎり食べてた。

もぐもぐ。

固唾を飲んで、魔女を見守る。


「(はよ、内容教えろや。

  腹減ってんだよ。)」


魔女は手紙をめくりながら

そこに書かれている文字を目で追って、読んだ。


一生懸命読んで

「ラース!!!!!」


叫んだ。

魔女は鼻息荒く言ったがために

鼻に詰め込んだ綿が勢いよく吹き飛ぶ。


ラースが台所にやってきた。


「学校から呼び出しくらってるよ!!」

「は?」

ラースはまた動かないネズミだ。

「学校?」

「え?()()()()()()()()()()じゃなくて?」

言い直した。

「呼び出し?ラースが?」

アルファイは言いつつ眉間にシワを寄せた。

「え〜?、呼び出しなんて

 不良じゃないですか、ラースさ〜ん。」

ゾイはラースについてきて

しれっとおにぎり食べてる。

「ラースさんに限ってそんなっ」

ディオはやや擁護しつつ、二個目のおにぎり。


「ラース、どういうこと?!」

魔女から手渡された手紙を読んだラースは

一言。


禁書(スクロール)のことだ・・・」


魔女はピン、ときた。

「(ドノヴァッテン魔法王国の禁書・・・。

  行かなきゃいけないのか〜。)」

思いつつ、唐揚げをつまみ食い。

「!!っ何これっんまっっ〜!

 やだ〜、超おいし〜〜っっ!

 ラースも食べなよっ!!」


これにはおじさまも会心のニヤリ。

「(また天国送りにしてしもうたわ。

  妻よ、ワシにはお前だけだぞ。)」

と、思いつつ燃えるキャンプファイヤーを見て

なんか、しんみりしてた。








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