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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第一部 5月の森 エレーミナルス王国編

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42/54

【番外編】未実装の世界線






「おぉ〜い、魔女〜、いるか〜!」



外から声が聞こえる。

「え?(誰?)」

魔女がドアを開けば

やや老齢のロマンスグレーのおじさまが

肩におネズミさまを乗せて立っている。

「(イケオジと言われるやつだ・・・

  誰なのかまったくわからないのが

  またここでも・・・)」

魔女はじっと見てしまった。

「(体付きもなかなか・・・

  微笑むと深くなるほうれい線も

  どことなく色めかしい・・・う〜ん。

  こんな人、転生前でも見たことない)」

「魔女」

ぬるっと現れたおネズミさまに

「!!っラース!!

 無事だった?あのっえっと

 これはそのっ」

おじさまを見ていたことを咎められるかと思い

ワタワタ。

「?いや、連れてきたんだが」

「え?何を(このおじさまじゃなくて?)」


魔女はおじさまの肩に乗るラース越しを

首を傾けて見る。


「あ」

なんだか見覚えのある男だ。

そうそう、仏頂面であの落ち窪んだ

死んだような目で辛気臭くて

ガリッガリのひょろひょろで


「あ、 アルファイさん?!」

本当に第一印象の悪さと言ったらない。


魔女と目が合うと

あからさまにそっぽを向いた。

「(“金のナナカマド”が効いたんだっ!)」

アルファイの態度はいただけないが

“金のナナカマド”の効用は、ゲームどおりだ。


アイテム情報:金のナナカマド

       戦闘不能で致死になっても

       一度きりの復活を遂げる。

       別名“生まれ直し”で

       ステータスの振りなおし可能。

       HPは全体の10%で回復


「お〜、魔女。

 久しいな。元気にしとったか。」

「?え、と?

 (まったく存じ上げないけど)」

他人の空似が通じるわけでもなさそうだ。


「じいちゃん!」

魔女の後ろから走ってきたのは ー


「ディオ!え?知り合い?」

「おぉ!ディオ!!祭じゃ会えなんだが

 ここにおったか!よしよし。」

「じいちゃん!どうしてここに?」

ディオは駆け寄っていた。


「?」

みんな、わけがわからない。


「邪魔するぞ〜」

おじさまは中へズイズイっと入ってきた。

「見違えたな。

 ほれ、アルファイ、お前も入れ」

後ろを振り返りもせず、おじさまが促すが

アルファイは心底“死にたい”という絶望感丸出しで

外で突っ立ったままだ。

眉間のしわと断固たる動きたくない意志に

予防接種に向かう動物のそれを感じる。


「あの、アルファイさん

 ど、どうぞ入ってください!」

魔女は外に出て迎えに行く。


目を合わせもせず

口も利かないアルファイを

魔女は手を引こうと自分の手を伸ばし

ー 気付く。


「(ー、腕が・・・)」

アルファイの片腕がなかった。

「(“生まれ直し”にも限界があったんだ・・・)」

よく見たら、生きてはいるが

ガリガリだし死にそうな顔してる。

さすがの魔女も気が引けた。

いつのまにか魔女の肩に乗っていたラースが

「アルファイ、入れ。風が入る」

声をかけた。


アルファイはラースをちら、と見てから

黙って部屋に入った。

が、今度は玄関から一歩も動かない。

よほど魔女の横が嫌だったのだろう、

魔女から大股で一歩反対方向へ避けた。

「・・・(すんごい嫌われてるじゃん、私)」


おじさまことディオ祖父(じいちゃん)

あろうことかシャルラッハロートの横に

ドカンと腰をおろし

シャルラッハロートの手にあった

チョコチップクッキーを食べ始めていた。


「おー、うまいな、これ」

ディオは慌てた様子だ。

「じ、じいちゃん!

 なんでここにいるんだよ?!

 スージーはどうしたんだよ!!」

お、そうだな。スージー、どうなったの?


穏やかな眼差しは、一言。


「孫の()()()()()じゃっ!」


「は?」

おい、ジジイ、蒸し返すな。

「え?うそっ」

やだっ!ディオったら、おめ!!

「わお、(キタキタ。)」

話題も流行も巡るもんよね。

「あ〜(みんな好きだなぁ)」

なるほどですね〜。

「ーもぐもぐ」

おい、チョコチップクッキーじゃなくて

ポップコーンもってこい。


「じっじいちゃん!やめてくれよ!」

「ぬ? 神木マルムの前でやっただろ?」

「ちがっ、違わないけど、あれは呪いを解くためで」

「おぉ、呪いを解いたとな!さすがワシの孫だ、

 だが乙女の唇だぞ、さらにこの王国の姫だ。

 責任重大だな!はははっっっ!!

 王は執念深い男だ、覚悟しておけ。」

「じいちゃん、笑い事じゃないよ

 (もう実害出てるんだよ・・・)」


『“磨羯の弓”、シーガピオン海王国に

 持っていけ。一年以内に。』

ディオの頭の中に響く圧の強い声。

「(シーガピオン海王国だって?

  ・・・そんな国、おとぎ話だろ。

  誰も行ったことないって聞いてるぞ。

  一年以内ってそんな無理だ)」

ディオは、存在するのか怪しい国に

“磨羯の弓”を持って一年以内に

帰らなければならない。こっちも無理ゲー。

「(地図に載ってないじゃないか)」

まずは村人から話を聞けばいいんじゃないかな。


()()()()殿。」

ギーズルはイケオジの前に片膝をついた。

「ー?どうされたかな、()()()

穏やかに微笑む顔は崩れない。

「話を聞かせていただきたい。」

頭を下げたギーズルに、“ああ”と頷いた。


「(じいちゃん!?・・・何者なんだ!?)」

はじめてだった。

ディオの知らない顔をした祖父は

ギーズルを眺めていた。





「何を聞きたいかな?」

シャルラッハロートの隣に座り

クッキーを軽くかじって微笑む。

日焼けした顔にシワが目元をより黒くした。


ギーズルは口を開く。

「祭祀の件です。」

「ふむ、“とき”がめぐったと

 お前の親父さんがワシを訪ねてきたのさ。

 だからあらかじめ、用意しておいただけだ。

 それに、そこの従者の願いを魔女が聞き入れ

 ()()()()()()()()()()()()()()と小耳に挟んでな」

「?!」

思わず顔を上げ、ゾイを見た。

ゾイは肩をすくめてみせた。

「(すみませ〜ん。)」


おじさまはゾイにウィンクした。

()()()()()()友、だな。」

「イリアス様の唐揚げには勝てませ〜ん」

ギーズルは、ハッとした。

「アンタ!!」

「まぁ、祭祀王。

 世の中綺麗事だけでは、済まないものだ。

 お前の親父さんはやれることをやっただけだ。

 従者は、ああ見えて忠誠心は強いが

 ワシの作る唐揚げの誘惑に勝てる奴など

 見たことがない。

 妻もこれで手に入れたものよ。ハハっ。」

「すみませ〜ん、ギーズル様〜。

 すんごく美味しかったんです〜」

「唐揚げで買収・・・。」

魔女の呟きに、ラースは付け加えた。

「正しくは、()()()()()()()、だろう」


アルファイの視線は冷たいままだ。

その視線に気付いた魔女は、情けなさそうに笑う。

「へへ、それぐらい美味しかったんですよね。」

アルファイは何も言わず、またフイっと目をそらした。

「(こわいよ〜ぉ。助けたはずなんだけど

  ずっと敵対してるんですけど〜)」

魔女はビクビクしてる。

「(結構、頑張ったと思うんですけど〜)」

ちら、とアルファイを見たが無視されていた。


おじさまは頬杖をついて

「それにな。

 お前がここにいるとは、知らなかったよ。

 アイスクラピウス。」

優雅に紅茶を飲む男を見た。


()()()()()()、とはまさしくこの事じゃな」

「ー、あぁ。そうだな。

 ()()()()、久しいな。」


「(ケトルとディオのじいちゃんは

  お知り合い??)」

ディオのじいちゃんは

単なるじいちゃんじゃなかった?!


魔女は声には出さず、驚いた顔だけしておいた。

実はあんまり驚いていない。

それよりアルファイの方が気になる。

魔女より驚いていたのは


「え?(何、その昔から知ってますみたいな顔)」

ディオだ。

わからないことだらけだ。

自分の祖父が

アルファイを連れてここにいることも

スージーは無事なのかとか

神木マルムの前で初接吻(チュー)したことも

情報得るの早くね?!って焦るし

唐揚げでばあちゃん釣り上げたことも

初聞きでめっちゃ驚いてるのに

ケトルだった男と知り合いって

それだけでも小一時間質問責めしたいのに

そもそも、じいちゃんが魔女と知り合いなのは

なんでなのかとか

やっぱりスージーは無事なのか!?

ちょっと設定多すぎじゃね!?


ディオ(勇者)は、こんらんした。


そんな孫の姿を見て、苦笑いしたおじさまは

立ちっぱなしのアルファイに声をかけた。

「おい、お前。

 ワシがしてやった恩義を忘れるでないぞ。

 後は自分で願い出ろ。」

アルファイは顔が真っ青だ。

「!そんなっ、」


『魔女を殺して、自分も死ぬ』

その目的は奇しくも魔女によって阻止された。


まじで、まーじで、嫌だった。

ほんの2、3時間前に

この世で一番嫌いな魔女に

預言者である自分を差し置いて

酔っ払ったような(てい)

『お前、勇者な』と指名され

自尊心すらガリンゴリンに削り倒し

すべての計画を超台無しにされ

挙げ句の果てに死ぬこともできず

ゲロまみれで吐き出された屈辱が

記憶に新しい。なのに

どの面下げて

『ドノヴァッテン魔法王国に

一緒に連れて行ってくれ』など

言わねばならないのか。

口が裂けたって言いたくない。

「ーっ」

唇を噛んだ。


「(魔法さえ使えればー、

  “核”さえあれば)」

今の自分は無力だ。

アルファイは、この辱めに

消えてしまいたくなるほど絶望した。


そんなことつゆ知らずの

魔女はなんのことかわからないので

相変わらず口半開きのまま

「(ディオのおじいちゃんの作った

  唐揚げ食べたいな〜。お腹すいたな〜。

  ディオの持ってきたパイ、美味しそうだな〜)」

とか思って、テーブルに置かれたパイ見てた。


「な、魔女。

 お前がこの男を生かしたのには

 理由があるんじゃろ」

おじさまはソファに深く腰掛けた。

「へ?」

食べようとしたパイから視線が上がる。

()()()()()()()()()()()()()()

 魔女に。」

ラースが口を挟んだ。

「!!違うっ!」

アルファイは思わず大きな声を出す。

ラースはテーブルに乗った。


「アルファイ。お前ならこの意味を

 知ってるはずだ。

 “新月”は、時の長さを

 夜の数で計る中で最も“完成”の形だ。

 ー、そして」

魔女の肩に乗った。


「それは “はじまり” をあらわしてる」


おじさまは笑顔で拍手をして興奮気味に言った。

「お前、ただのネズミじゃなかったんだな!

 はははっ、そうだぞ!

 預言者、お前は今日から勇者だ。

 魔女が言うんだ、違いない。

 片腕だからって心配するな。

 ドノヴァッテンには

 お前の腕をどうにかしてくれる

 腕のいい魔術師がいる。」

「片腕?ー」

ディオはアルファイを見た。

「(腕が、ないのか・・・?)」

アルファイはディオの視線に気付いて

隠すように身をよじった。

そんなアルファイに

アイスクラピウスは無い腕を見て言った。

「その腕はどうにかなる。

 紹介状を書いておこう。

 あとは、魔女が連れていってくれたら、

 の話だが。」

ちら、と魔女を見た。


「え」

まだ何も言ってないし

実はなんも考えてないけど

アルファイを勇者だと言った覚えはないけど

“お前だっ”と言った覚えは

ちょっとあるから困る。指まで指した。

「(連れて行ってもいいけどさ

  私、すんごい嫌われてるよ。

  どーすんの、これ・・・)」

いまさら、それ無しで!と言いづらい。


ラースはアイスクラピウスに向かって答えた。

「もちろんだ。

 ()()()()()()は、この私と同様に

 ()()()()()()()()()()()()()()()()。」

ラースのお世辞を真に受けた魔女は

まんざらでもない様子でちょっと嬉しい。

「(慈悲深き、だって。へへっ)」

アルファイの方を見たら、うつむいていた。

ラースはアルファイに走って行き肩に乗った。

ガリガリのアルファイの肩を

ドンドン!と地団駄を踏む。

痛い痛い。重いって。

「そうだろう、アルファイ」

返事のないアルファイの肩をー、

「(この頑固者がっっ)」

爪を出して食い込ませた。

「っっい゛!」

アルファイは思いの外

攻撃力のあるラースの爪攻撃に顔を歪めた。

死にそうな男の残りH P10は

今の攻撃で3ぐらいは削れてる。

「アルファイ、私の言うことを聞け」

同時にささやきネズミだ。

「言え、早く。」

「っっ、くそっ」

それでも心の何かが邪魔をした。

ラースはアルファイのそんな心を知っている。


だからこそ、言った。

「お前の自尊心など見て見ぬ振りしろ。

 師の教えだ。魔女にギャフンと言わせたいなら

 ()()()()()

「!(覚えていたのか、ー)」

ため息は深呼吸になった。

「(わかってるのだ、ラース。

  ・・・わかってはいるが)」


アルファイは魔女を見て

ちょっとイラついて

ラースの乗っている肩に向かって小声で言った。

「なんて言えば・・・」

「思うままに言えばいい。」



アルファイは、魔女に向いた。

「魔女」

「はっはい!」

アルファイはまんま、いうことにした。


「魔女、

 私はお前が だいっっっっっっっきらいだ。

 お前のせいでラースが犠牲にしたものも

 ラースがネズミなんかになったのも

 世界が呪いまみれになったことも

 私は許さん。

 呪いが無理なら、復讐すると誓う。

 今日はすでに無理だが

 来月はお前に対して復讐を企ててやる。

 (でも ー)」

 

自分が黒竜に飲み込まれた後

『これ、“金のナナカマド”っていうの。

 飲んで!!はやくっっ!!!』

拒否したら、魔女に頬を叩かれて

『ラースと約束したんでしょう!!』

魔女に無理やり“金のナナカマド”を飲まされた。


かすかに残る、頬の感触に

 「イリアス殿から聞いた。

  私の呪いを解いたと。

  ー 礼を言う。」

頭を下げた。屈辱ではあったが

「(魔女を倒すチャンスはまだある)」

アルファイはあえて頭を下げる。


魔女はポカンとアルファイの顔を見た。


「私をドノヴァッテンに連れていってほしい」

断られる覚悟でアルファイは目を閉じた。


「いいですよ。」

「!!」

眉を下げて、情けない顔で魔女は笑った。

「あ、でも〜」

顔を上げて、アルファイは魔女の笑った顔をみた。

「あの、約束してください。

 ラースと仲良くして、え〜っと

 助け合ってほしいのと〜ぉ

 それで〜、ディオにもギーズルさんにも

 ゾイさんにも〜、

 “ごめんなさい”してくださいね」


「え」

アルファイはきょとんとした。

あれだけ殺伐とした戦いを繰り返したのに

「(“ごめんなさい”だと?

  ・・・バカにしてるのか)」

「あれが本当の魔女だ」

「?」

「お前の知ってる魔女はもういない」

肩に乗っていたラースはそれだけ言って

テーブルへ行ってしまった。

「(私が知る魔女がもういないとは・・・

  どういう意味だ?)」


思い出したように、魔女が言った。

「そうだっっ!!あとでいいから

 あの()()()()()()さんにも

 謝ってくださいよ!!」

「?!ーっそれはお前がっ」

アルファイが言い返そうとしたら


「アルファイさんのせいで

 ディオとエレメーラさんの

 ()()()()()見逃したって

 すんごい残念がってたんですから!!

 私も見てないんですからね!!もうっ」

ディオ、ドーン。

「(見なくていいんです、そんなの)」

わお。


どこまでもほじくり返される。

「・・・(俺、勇者なのに)」

ディオの受難はまだ続きそうだ。


ゾイがぽつり、言った。

「ってことは〜・・・

 今、ここに勇者が、いち、にぃ・・・

 三人いるってことですかね?」


魔女の家の()()()()()、高すぎ。



ディオ、愛の農業勇者。

シャルラッハロート、騎士風勇者。

アルファイ、ガリガリ片腕勇者。(NEW! )


「そ、そうみたいですね。・・・

 (これも想定外・・・)」


勇者、増殖中。







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