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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第一部 5月の森 エレーミナルス王国編

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35/54

精霊の行方






うたかたの

酔っ払い(えひびと)

夢のまにまに ただよへば

憂し()

(超意訳:酔いが覚めたらなんか(うつ)。)


「ぐふっごほっ、あー、うー

 ・・・(鼻が痛い)・・・」

喉の調子が悪いようで、良いから

魔女はアイスクラピウスの紅茶に

またしても助けられてはいる。


「魔女さま、蜘蛛のとこは俺が行きます。」

ディオが胸をドン、と拳で叩く。

団子玉を小さくちぎっては

口に入れ、勢いだけで飲み込む魔女は

「・・・ちょっと待ってて・・・」

げっそり。ダウナー魔女。

色々な()()()()をしっかり覚えてて

自己嫌悪の真っ最中。

「(もっとこう、うまくやれたはずなのに

  楽しくなっちゃった自分が憎い。

  あー、穴があったらもぐりたい。)」

魔女百五十三歳。いや、中身だって二十八歳の大人。

ラム酒付けレーズン入りチョコごときで

楽しくなっちゃって、王城に穴開けるたぁ

「(これは恥以外のなにものでもない・・・)」


ちぎるチビ団子玉が、酔い覚ましに効くかわからない。

指先で捏ねつつ口に何粒か放り込んでは飲む。

飲み込むうちに意識がはっきりするし

さっきまでの楽しさはもうない。

だからなおさら

「(覚えてないフリしよっかな〜・・・)」

魔女の脳裏にそんなことが浮かぶと

「たっのもし〜ぃ、さすが勇者さまね〜ぇ。

 一人でも蜘蛛倒せるんじゃない〜?」

ギーズルはディオを見て微笑みながら

煙草をふかすし、ディオを煽る。

その口元を見たら頬が熱くなった。

「(!そっっそういえば

  ギーズルさんにもされたっっ!

  ど、どどっど)」

落ち着くために、団子玉を大きめにちぎり

口に入れて飲み込む。

「っんぐっ!!

 (あれ、これ確か虫入れてた)」

一気に正気に戻る。

ディオも、ギーズルの煽りを買う。

「いけると思います、俺。」

「あ、ダメです。

 ディオ1人では行かせません。

 あー、えと、仲間なんだから

 みんなで協力しよう?

 蜘蛛、強いし()()()()()()()しね。」

魔女は残りの団子玉を肩掛けかばんにしまう。

「(厳しい?・・・まぁ確かに

  大変だったし勝てなかったけど)」

ディオは思い出した。

「(でも、今は一人じゃないし

  魔女さまだっているんだから

  みんなで攻め込めば勝てるんじゃ・・・)」

だからこそ先陣切りたい、と思う勇者(仮)。


魔女こそ“仲間なんだから”、とは言ったが

正直なところディオ同様同じことを思う。

「(実際、蜘蛛は強いんだよ。

  戦える人数は多い方が何かといい。

  だけどそれ以上に、厄介なんだよなぁ。

  私のせいなんだけど・・・)」

ラースはあらかた説明したと言っていたが

ディオの反応からして

肝心要の話はしていないと思われた。

「ラースさんにも言われました。

 なんでですか?

 なんで俺が行ったらだめなんですか。」

ディオの真剣な表情に、魔女は少しだけ

デコが気になった。


「 “糸” だ。」

ラースが魔女の膝の上から言った。


ゲーム内の初手、蜘蛛に攻撃は通じない。

なぜなら蜘蛛は自己結界を張り巡らせているのだ。

まずは蜘蛛の自己結界を解くところから

始めなければいけない。

この自己結界というのが()()()()で張られている。

ネバネバもする。触りたくないぬっちょり系だ。


「糸?糸って、蜘蛛の糸?」

「うん、この糸は切ったとこから

 また伸びるんだよ。」

「ああ、そうですね。」

ディオは知っている。

糸を切った瞬間、伸びるより速く進むしかないのだ。

「だから俺がーっ!」

速さに定評のある(?)ディオは自信がある。


魔女は指先でデコを少し触りながら

言いにくそうにして、ディオを見た。

「? どうしたんです? 」

「えっとぉ〜、怒らないで欲しいんだけどぉ〜

 私の魔法っていうか〜ぁ

 魔力?魔力的な力で〜ぇ

 そういうので動いているんです。

 あの蜘蛛。えへ。」

ラースはしれっとシャルラッハロートの肩に乗る。

我関せずネズミ。

「は???」

これにはディオは声を上げた。

「えへへ、び、びっくりだよね〜」

自分で言っといて、自分でびっくり。

「(だから、ゲームでも魔女は

  この蜘蛛(ボス)戦に出てこなかったんだ)」

「そんなっ、最強じゃん・・・」

ディオはこの戦いが()()()()()()()、という

意味を理解した。それでいてちょっと納得。


「この蜘蛛はね、でっかいし

 めっちゃ足が長いの。

 毛もすごい。超剛毛。うげっ

 そんで〜、なんだっけ。あ、そうそう

 蜘蛛に魔力を与える水晶があって〜

 水晶も結界が張ってあるの。」

魔女が顔の前で指を無造作に動かす。

「きもっ」

ギーズルは(毛を想像したら)ブルった。

「え?ってことは何、アンタ。

 蜘蛛に魔力供給しながら戦うっての?」

魔法が使えないのに、魔力だけは供給できる。

理不尽過ぎるファンタジー。

だが、この現象はすでにアンデリダの森で

魔女の魔法陣が展開していることから

「はい、多分そうなるかと。」

魔女はそう答えた。

ゾイは腕組み後方支援(後ろで応援)の立場だが

厳しい現実を言葉にする。

「ってことは

 魔女さまが魔力切れを起こさない限り

 勝ち目ないんじゃないんですか」

「魔女だぞ。

 さっきの()()()()()()()()()とは

 わけが違うだろ。」


その通りすぎて、シーン。

対策なしか?


「俺が蜘蛛の相手をする」


シャルラッハロートが魔女を見ながら言った。

「え」

ラースはシャルラッハロートの肩の上で

“コイツ、聖獣なんすよ”と言うかどうか悩んだ。

「(難しいところだ。・・・目的はおろか

  敵か味方か、正直判断がつかないのに

  聖獣であることを告げる意味あるか?)」

しかもややこしいことに、勇者と名乗ってる。

魔女はその間、ポカーンと口を開けていたが

「ほんと?ほんとに??え、ほんと?!」

シャルラッハロートのそばに行って

魔女は首を傾げた。

シャルラッハロートは、ただ頷いた。


「ありがと〜ぉ!!なんか嬉し〜ぃ!」

そう言ってシャルラッハロートの前で

ぴょんぴょん飛び跳ねた。

「ねえ!ディオ!!

 この、()()()()()()()()()さんが」


「シャルラッハロート」

訂正ネズミ。

()()()()()()()()?」

バカ魔女。

()()()()()()()()()()!!!」

全員総出の名呼び。

「シャーロットホームズ」

お前、わざとやってるだろ。

なんか失礼だし違うし。


「・・・()()()でいい?」

諦めた魔女、シャルラッハロートに確認。

頷く聖獣。

仕切り直しで、魔女はディオを振り返る。

「ディオ!()()()が一緒に行ってくれるって!

 やったね!」


ディオは魔女を見て微笑んだ。

その意味に気付いたからだ。

『勇者の立ち回りは

 まず魔女への攻撃を可能とする”力”こそが

 ()()()()()の一手から』

口にこそ出さないが、わかっていた。

「(シャルラッハロートが()()()()()だって

  魔女さまは知ってるのだろうか)」

ディオはスージー運んでる時に

本人から聞いて、絶対嘘だと思ってたが

魔女の喜び具合を見ると、どうでも良くなった。

それに、スージー運んでくれたし。


「(だって、()()なんて力強いじゃないか)」

ひとりぼっちで戦った記憶の中の孤独が薄れた。





魔女は興奮しながら説明し出す。

「だから〜っ水晶が割れれば

 魔力が切れるからいいんだけど

 でも、それでようやくスタートラインなんだよ」

「ふ〜ん」

ギーズルは煙草を消し

体を起こしてあぐらをかいた。

「魔力切れてもあの蜘蛛、糸吐いてくるんでしょ」

「え、あ、それはちょっと違くて。

 水晶を割った後吐いてくるのは()()です。」

「まじか。どっちを吐くかはわかんないの?」

ギーズルはあぐらの上に頬杖をついた。

「ランダムなんですけど〜

 前足上げるのが吐く予備動作なんですけど

 お腹の毒袋が萎んだら毒です。

 えっと、水晶を割るまでは

 正直言って私の出番はないっていうか

 むしろその場にいない方がいいぐらいで。

 けど〜いないよりいた方が

 何かの役には立てるかもしれないし。」

魔女は指を絡めてモジモジした。

「魔女さま、あの、質問なんですけど

 ー 魔力って供給止められないんですか」

さすが、ゾイ。自分がギーズルにやってたことだ。

魔法陣を使って、同じようなことをしていたからこそ

その解除のことを聞いてきたのだろう。


「ー、止められません。

 実は〜さっき酔ってるとき

 止めようとしたんですけど〜、

 蜘蛛が言うこと聞かないっていうか

 ー 呪いを別の人がかけてるっていうか。」

「?」

「どういうこと?

 呪いを別の人がかけたってことか?」

ギーズルは怪訝な顔になる。

「この王城に入ったときから

 なんか変だな〜って。

 なんていうか、違うんですよ。

 私の”魔法”じゃない、魔力じゃない

 違う”魔法”っていうか。」

「ー 預言者だな。」

ラースは言った。

「〜っはぁ〜、参ったな。

 結局こうなるのか。」

ため息をついたギーズルに、ディオは続ける。

「ギーズル、預言者の予言は

 失敗だったろ。」

「失敗っていうか

 本人が魔女に指名されてただろ。」

「あぁ」

こりゃもう、わからんな。


魔女は会話を聞いて、

必死に脳内で整理している。

「(だめだ、全っ然わかんない。

  どういうことなの!?

  預言者を勇者だって言ったのは

  確かに私だけど、やっちまったけど

  それがなんだっていうの。)」

顔に出ていたらしい。


ディオは魔女のそんな顔を見て、小さく笑った。

「魔女さま、預言者は本当は俺に会うはずが

 あなたに会ってしまった。

 預言者は本当なら

 俺にエレメーラの呪いを解くことを伝える。

 そして預言者は、その後

 祭祀王であるギーズルに言うんです。」

ディオはギーズルを見た。


「“ 森の王、神木なる栄誉を 勇者に与えよ” 」


ギーズルは地面を見たままつぶやいた。

地面から目線を上げ、

ギーズルは頬杖つき不満そうな顔をした。

「皮肉なもんだろ。

現れたのは”勇者”じゃなくて

 ”魔女”で、予言をしたのも“魔女”。

 預言者が勇者になって神木になるってことだ。

 こんなおかしい話あるか?」

ゾイに向いたギーズルは小首を傾げてみせれば

ゾイは困ったように笑った。


ディオは口を挟んだ。

「信じることは愚かじゃないが

 どんでん返しはよくあることで

 まぁ未来なんて、そんなもんだろ?

 ”未来はこうなる”だなんて、断言できない。

 信じて

 そうなるように努力すればそうなるし

 信じなければ

 自分で切り開くのが未来ってことだろ。」


それを聞いたギーズルはおかしそうに笑う。

「ハハハ、さすが生き返ってきたやつは

 含蓄あるな。

 お前が言うとそんな気がしてくる。

 ー そうさ、未来なんて

 どうとでもなる。

 少なくとも自分が変われば。」

魔女を見た。


魔女はじっとギーズルを見てしまった。


「(どうとでも、なる。

  自分が変われば・・・、)」

現状が実のところ、魔女である自分が

”呪い”を解くと動いたせいで

ゲームの内容から

大きく軌道が変更していると思っている。

不安だったゲーム進行のズレが

「(どうとでもなるんなら、)」

まずはあの酔っ払った自分を覚えてる彼らの記憶を消したい。

と、ちょびっとは思ったが

「(なんか、希望があるなぁ)」

握った手を

ギュッとまた強く握りなおした。






ちょっとの勇気だ。


「ねぇ、ディオ。あのさ

 私が魔女だと知っているのに

 なんで私に助けを求めたの?」

「そ、それは ー」

ディオは頭を二、三度かいた。

「精霊アンデリダが

 ”魔女”に助けを求めなさい、と

 それで俺、魔女さまを祠に行かせて

 ・・・ごめんなさい。」

「?謝らなくていいよ!

 いいよ!うん、わかったから!」


魔女は理由が分かっただけでも

胸のつかえが少し、取れた気になる。

(団子玉の効果:胸やけ)


「けど精霊がそう言ったの?

 アンデリダの精霊が?」

「そ、そうです。あの

 俺は一昨日まで隣村まで牛を運んでて。

 足には自信があったので

 帰りはダッシュで戻りました。

 その後、なんか暇だな〜って

 森の中をフラフラしてたら

 咲いてるはずの5月の薔薇が散っていて

 これは不味いなってことで

 王城じゃなくって

 その、祠に向かったんです。

 預言者が来るって知ってたから。

 けど、俺、そこで ー」

「祠で何があったの?」

「その ー、」

「?何よ。」

「あ、アンデリダの精霊が

 あの預言者に殺されそうになってて」

「え?殺されそうって、精霊が?」

「だから約束したんです。

 魔女さまを連れてくるって。

 それまで、“弓”は絶対渡さないからって。」


魔女は酔っ払いながらも

精霊アンデリダを移動させたことを

我ながら褒めたくなった。


「(そうか。・・・

  預言者は“弓”を取り出せなかったんだ)」


本来のシナリオなら

ディオの言う”弓”は時間縛りのアイテムだ。

そして、その”弓”は3人目の主人公が取りに来るのだ。

「(なんでこのタイミングなのか。

  いや、ー 私が動いているから?

  酔っ払ってるとき、勝手に体が動いた。

  楽しくてやったことだけど

  なんか不思議な感覚だったな〜。)」

とりあえず、今はこの現状を確認するしかない。

ラースがまとめた。

「つまり、アンデリダの精霊は

 殺されそうにはなったが

 祠に封印されたのだな」

「そうです。」

「魔女を連れて来い、と言われて」

「はい。」

ディオの発言に考察ネズミこと

ラースは胸騒ぎがした。


「(だとしたら、なぜ預言者(アルファイ)

  精霊アンデリダの封印を解いた?

  ・・・“弓”を手に入れるためか?

  いや、それだけじゃない。

  預言者は()()()でもある。

  エレーミナルス王国の神話は

  ()()()()()()()()()()()

  やはり、ドノヴァッテン魔法王国が

  この件に絡んでると考えた方がいい。)」


ふと、シャルラッハロートを見たら

魔女からまたチョコチップクッキーもらってた。

イラっとした。


「魔女!精霊アンデリダは今どこにいる!」

魔女は振り返って、ヘラっと笑う。

「あ〜、蜘蛛のとこだよ〜」

「は?」


敵陣に精霊置いてどうするつもりだ。






ギーズル情報:魔女はあのときのことを

       絶対覚えてる。

       くそ。・・・死にたい。


ゾイ情報:死にたいなんて言わないでください!

     おっぱいの話しましょう!!


ディオ情報:聖獣バロンはなんか聖獣だから

      人間に変身してるんですよね?


ラース情報:それがわかれば

      苦労はないんだ、勇者。


シャルラッハロート情報:シャルか。

            悪くない。









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