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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第一部 5月の森 エレーミナルス王国編

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33/53

月の雄牛





その雄牛の角は、三日月をあらわし

死を迎えては再生を意味する天球である。


このエレーミナルス王国で

月が意味するのは再生への約束であり

死を超えた再生への時間と空間に結びついた

生命力のことだ。


死は命の終わりではない。

死と生は、対になっている。


そう、この雄牛の角のように。

このスージー、え?


スージーぃ???


「あれはなんだ?!」

おネズミさま、異常事態に目を凝らす。

王城地下への通路途中に、

赤黒くモヤが発生していた。

「・・・牛だな」

シャルラッハロートはつぶやいた。

「牛??なんでこんなところに牛が・・・」

ラースは自分がおかしなことを言っていることは

十二分に承知している。


だって、牛おぶってる人(かどうか怪しいけど)の上に

精霊アンデリダがいて、その上にネズミ乗ってるもの。

「(しまった・・・牛はすでにいる、ここに・・・)

 おい、シャルラッハロート、ちょっと止まれ。」

って、言ってるのに

シャルラッハロートは歩みを止めない。

「おいっ!聞こえてるのか!」

「わかった」

そう言うと、シャルラッハロートはしゃがんだ。

()()()()? は? “とまれ”とは言ったが

 しゃがめとは言ってない、」


シャルラッハロートの背から

スージーは降り立った。

「?!スージー?!」

思わずラースは(絶対言いたくなかったのに)

名を呼んでしまった。


だが、スージーはすでに戦闘モード。

頭を低くし角を突き出して

前足は地面を蹴り

今にも突進していきそうだ。

赤黒いモヤは今、はっきりと赤い牛をあらわした。


ラースはシャルラッハロートの肩に乗って

その赤い牛が、()()()()()()、知る。

「あれはー・・・」

「森の沼地で牛が戦ってたやつだ。」

・・・どっちが?

もう少し、説明してくれてもよろしいのでは?

「エレーミナルス王国の神話の

 “咎”だ。・・・赤い雄牛は“清め”だ。

 “贖い”であり、“解放”・・・。」

ラースは嘘みたいに今、目の前で神話を見る。

スージーと互角か少し大きい。

「(でかい・・・戦うには通路が狭すぎるし

  私一人逃げるならまだしも不利だ。)」

咄嗟に赤い牛との戦闘の最適解を探すと


スージーの鼻息が荒くなり

赤い牛に突進するその瞬間に

「ン゛モ゛ォォォォォォッッッ!!!!」


『ここは任せて先に行けえええ!!!!』


地面から突き上げるような唸り声を聞く。

唸り声のはずなのに、そう、聞こえたとき

シャルラッハロートは精霊アンデリダを背負い

スージーと一緒に走り出していた。

追い越し様に


っっガゴォッィィン!!!


角同士が激しくぶつかり合う音が響く。

ラースはシャルラッハロートの背で振り返る。

互いに動かぬ牛同士の角の傷が目に入った。


思わずだ。


思わず、ラースは叫んでいた。

「スージーぃッッッ!!!!

 絶対、勝ってこい!!!」


この声がスージーに届いたかどうかは

ラースには問題じゃなかった。

興奮より、発奮。

畏怖に近いスージーの力強い生命力が

激しく鼓動を共鳴させた。

胸に込み上げる“何か”は、昔感じた“何か”だ。


先を急ぐ。






魔女が預言者のほっぺたに

人差し指をめり込ませるに至った話をすべきだろう。



ディオと別れて、魔女、ギーズル、ゾイは

“王の間”を目指していた。

魔女は顔を赤くしたまま

敵が出現しない道を選んで歩く。

「あ、ここは一人ずつ静かに歩いてください」

とか言ってソロソロ歩いたり

自分たちの行き先とは逆に向かって

何かを投げ、敵がそちらに行った隙に

「走って〜!!」

とか言いながら必死に進んでいたら

もうすぐ“王の間”に着きそうだ。

ギーズルは“王の間”への道すがら

魔女を()()という名で見ていた。

「(これがあの魔女か・・・?)」

どっかのおネズミさまと同じ感想を持つ。

時々、チョコがおいしかった、としつこいから

あれから追加で三個ほどあげた。


本当に美味しそうににチョコを食べる顔に

ギーズルは悪い気はしなかった。


だが、ギーズルはずっと気になってる。

「(なんで魔女(こいつ)光ってんのか

  聞いていいのか、これ・・・)」

ピカーっと光ってるのではない。

ぼんやり、光が魔女にまぶしてあるみたいだ。

思い当たると言えば、ディオがしたデコチュウぐらい。

「(・・・魔法、なんだよな、性質が)」

ずっと光ってる。


「あの〜」

魔女が話しかけてきた。

「ギーズルさんは

 ディオに倒されるつもりだったんですよね?」

意外に真をつく質問に

「・・・さあね、どうだったかな。

 預言者に言われるままにあそこにいた気もするが」

わざと濁す。

「そんなことありません!!」

なのに、ゾイが叫ぶように言った。


以下、ゾイのギーズル論。

「ギーズル様はすごいんです!

 必ず祭祀の三日前から完全断食を行い

 その身を清めるために

 毎日二時間、アンデリダの森の湧水に体を沈め

 真水でお清めの塩で体を洗うんですよ!?

 粗塩だからヒリヒリするはずなのに!!

 あたたかくなったからって真水は辛いですよ!

 ギーズル様のお肌は敏感肌なのに

 魚じゃないのに真水に粗塩で洗うなんて!!

 あと勘違いされがちですけど

 オネエじゃありません!

 これには深いワケがありますけど今は言いません!

 話すと長くなるからです!

 とにかくオネエはファッションです!!

 喋り方が変なだけで祭祀には問題ないです!

 ヘビースモーカーなのに煙草だって

 お酒だって飲みません!

 見てくださいよ!禁煙・禁酒してるのに

 目の下クマできてるじゃないですか!

 ストレスまみれで禿げたらどうするんですか!

 どこでストレス解消したらいいんですか!

 ストレスで痩せたわけじゃないんですよ?!

 元から細いんです!ガリガリに見えるけど

 これは祭祀のためで、本当は筋肉質です!

 細マッチョですし、ムキムキです!

 寝る前に毎日百回は腹筋もするし

 腕立てだって百回してます!!

 僕だって付き合いますけど毎日はきついです!!

 僕にはそっちがストレスです!!

 極限まで体力を追い込んだら

 死んだみたいに眠れるとか言うけど

 全っ然眠れた試しがないし

 なんならこのままでも死ねると思いますよ!!

 眠れるお茶とか淹れるんですけど

 文句しか言わないし結局飲んでも

 眠れないから、僕は鉄板ネタを提供してますよ!

 おっぱいの話なんですけどっっ!

 それにはノリノリです!

 おっぱいの話をしてる時のギーズル様は

 すごくイキイキしていますっ!!本当です!

 そんな人が、ーっそんなギーズル様はっっ

 預言者の言いなりになんてなりませんよ!!

 絶対にっ!」


「(ゾイ、あとでブッコロす。)」

ギーズル、静かな殺意を讃えひきつりの微笑み。

「あ、う、うん、」

魔女はボ〜ッとする頭で

ただ “おっぱい” の言葉がぐるぐる回る。

ゾイはなんかすごい並べ立ててたけど

よく聞こえなかったから

ギーズルの方を見ないで、ゾイを見て

(なんかわからんが)”すごいね” と言った。


ところが、何を思ったか

魔女は顔を真っ赤にしたままで

独り言だが、しかし大声で言う。

自慢風悩み相談だ。

デコをこすりながら ー

「こっ困っちゃうなあ!もうっ

 なっなんなんでしょうかね!

 ディオってばま、魔女の私をからかって!」

あのデコチュウ、すごくない?自慢だ。

あのイケメンにされた私、すごくない?だ。

「からかってるようには見えなかったですよ?」

ゾイが魔女の横に言って、ニコリと一言。

「かっ彼女がいるのにっディオはっ!」

髪をかけた耳まで真っ赤だ。


「ディオなりの祝福なんだろ。

 (本人も言ってたしな)」

さっきのゾイの発言で思い出したかのように

ギーズルはパンツのポケットから

シガーケースを出し、煙草を一本取り出した。

「(アホくさ)」

口に咥えるとゾイはすかさず、火を点ける。


「あっっ!ギーズルさんっ!

 ここ王城ですよ!!」

魔女がギーズルの前に出てきた。

腰に手を当ててる。

「? いいんだよ、誰もいねえし。」

「よくないですっ」

魔女はプンスカしてるが、依然顔が真っ赤だ。

だから、ギーズルはまた意地悪したくなった。


「魔女、ディオのこと好きなのか?」

ド直球の豪速球。

おおっと、これにはゾイもニヤニヤが止まらない。

「!? す、すす好き???

 そ、そんなっ恐れ多いっていうか

 ありえないっていうか、だって、えっと

 ディオは彼女がいるしっ私は魔女だからっ」

しどろもどろするものだから、ギーズルオネエは

またしても追撃開始。


「いいじゃん。奪っちゃえよ。

 お前、魔女だろ。」


あかーん。その言葉はあかんよ、オネエ。

その発言は、魔女を愚弄してるし

ディオだってバカにしてる、 ーん?


「っく・・・っひっ・・・」

あれ?魔女、愚弄されて泣いた?

あ、ギーズル意地悪なことばっか言うから

魔女泣いちゃったじゃ〜ん。

泣〜かせた〜、泣〜かせ、

ゾイは優しさで、魔女に寄り添うように

声をかけた。ハンケチーフを添えて。

「魔女さま、大丈夫ですか?」

「っひくっ、ひっく」

あれ?

「(・・・様子おかしくない?)」

ギーズルも少しばつが悪かったのか

謝ろうかな〜、と思った、その時。


「うぅるさああ〜〜ぁいぃ〜なぁ〜〜あ

 ヒック、あれえ?

 ギーズルさん、二人います〜ぅ?」


「あ、こいつ、酔ってる。」

「ええ?!お酒、飲んでなかったですよ?!」

ギーズルはしばし考え、思いつく。


「チョコだ。」

「え?チョコ?チョコって、この ー」

ゾイが取り出した袋に入ったチョコ。


「ラム酒漬けのレーズン入りチョコだ。

 ・・・アルコールどれくらいだ?」

「・・・2%もないと思います、けど」

「・・・四個食ってた・・・」

「魔女さまって下戸なんですね・・・」

「どーすんだ、こいつ・・・マジか」

「どうしましょう」



魔女、フラフラ。






ー それは闇の波間に揺らぐ小舟のよう。

澄んだ空気を切り裂く 不協和音。


“王の間”に、すでに預言者がいた。

ギーズルは深呼吸する。

ゾイに小さな声で言う。

「計画に変更はない。

 このまま祭祀をはじめる。

 ゾイ、配置に付け。」

「はい」

ゾイは音を立てず、その場からいなくなった。


「(さて、この酔っ払い・・・

  どうするか。祭祀王として

  俺も意地張ってる場合じゃない。

  作戦をうまく進めるには・・・

  やるしかないな。)」

覚悟を決めて、深呼吸。


ギーズルはフラフラ魔女の目の前にやってきた。


「魔女。ー 」

言いながら、魔女の頬に手を当てた。

ビクッと身を固くした魔女に

ギーズルは首を傾げて微笑む。

思いっきりぶん殴ったから腫れてるかと心配したが

今は綺麗に治ってる。

ギーズルは白蛇ドンちゃんを思い出していた。

「(俺は俺のやれることをやるよ。

  ドンちゃん。・・・見守っててくれ)」

魔女が酔っ払いでフラフラでよかったと

ギーズルは思う。

できれば記憶だってないままでいてほしい。


だって、これからものすごく

小っ恥ずかしい告白をしなきゃいけないのだ。

ギーズル・マロー。

それは、“対話”によってひらかれる。


祭祀王の宣言だ。


「魔女、ー 

 アンデリダの森の木立は

 あなたを歓迎するだろう。

 声なきものらの声を聞け。

 あなたは “とき” を超え

 あなたは魔女として

 俺の前にやってきた。

 唯一にして無二の魔女。

 このエレーミナルス王国の

 “とき” を動かすのは、あなただ。

 森の女神ディアナと神木マルムの

 名の下に

 今こそこの祭祀の宣言をする。

 ー あなたに、()()()()を ー」

微笑むと、魔女は完全に顔を赤くして

「ふぁい・・・」

と小さく答えた。


 魔女の頬に触れたギーズルの手から

まばゆい光が漏れて魔女を包む。

「!」

その手から漏れた光は草木の若葉が芽吹き

葉をつたを伸ばし

天高く空へ向かうようだった。


「生と死と再生、めぐる三つ

 五月の薔薇に誓う、ー 

 過去より現在へ、そして未来の

 “とき” を混ぜろ ー ひらけ、」


ギーズルは目を細めて

その頬を軽く撫でた後


ちゅっ


頬に接吻をした。


「ーいただきました」

ギーズルはニッコリ微笑む。

「さあ、俺はまだやることがある。

 いけ、ー 魔女」

魔女がギーズルの手を離れ

光り出し、宙に浮かんだ。



そして物語は動き出す。






そのころのディオ情報:インプ1匹残してきたけど

           追いかけてこないし無視。

           ついてきたらキックする。

           俺のダッシュについてこれるか?

           

シャルラッハロート情報:俺がスージーと

            会話してるかと?

            もちろん勘だ。


ラース情報:シャルラッハロートか?

      バロンって呼ぶのが正解か?

      

ギーズル情報:だいたい合ってるだろ?


ゾイ情報:さすがギーズル様です!!!






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