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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第一部 5月の森 エレーミナルス王国編

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32/54

新月の予言③






「(たかが紅茶をどうしてこんなにも

  不味く淹れられるのか・・・不思議。)」

魔女は不味さの向こう側にケトルこと、

アイスクラピウスがチラついて、ふと思う。

「(ケトルさんは結構適当だと思う。

  呪い解くって言ったら

  『君がすべきことをするだけでいい』って

  教えてくれないし。ゔ、口がずっと不味い・・・

  口の中で消えないな、ずっといるな・・・。

  ゲームの流れでいうなら、お姫さまの呪いだけど

  それ以外にもあるんだろう・・・

  何か苦い味に変化してる?・・・ぐえ。

  けど〜魔女はディオにも何かしたって?

  つまり回帰したっていうの?呪いと違うような。

  ギーズルさん、よく吐かないでいられるな。

  あの回復茶も相当不味いのに。

  あ、口直しにチョコ食べてる。いいな〜。

  そういえばギーズルさんが昔話してる時

  ドンちゃんは毒でおかしくなったとか言ってたけど

  その毒もひょっとして魔女のせい?

  え、そうだとしたら

  魔女が手広く恨まれる手法を全面に押し出してる。

  呪いでしょ〜、毒でしょ〜。あとは

  不慮の事故だけど、アンデリダの森焼いちゃった。

  ぃんけいも含めると・・・あれ?

  そのせいで口の中苦いの?吐いた方がいいかも。

  え〜、もお、消化中だよ〜。

  え〜・・・もぉずっと口の中が不味い〜ぃ。

  ・・・なんで金のナナカマド飲んだっけ

  あ、それはあれで必要だったわ。

  エレーミナルス王国に先に来たのは〜

  “金枝”が必要だからで〜、弓もいるから〜

  あれ、なんで今日・・・っ!!)

 あああっっ!!やばいっっ!

 やっぱり不味いっ!!」

紅茶の不味さと思考が入り組んでる。

不味さの向こうで、アイスクラピウスが

“どういたしまして”と言ってそうだ。


「?どうしたんですか? 何が不味いんですか?」

ディオが近付く。

「あああのっ!えっと!

 こ、ここって王城、だよね」

魔女、デコを隠しつつ言う。

また触られでもしたらゆでダコ魔女になっちゃう。

「はい、そうです。」

ディオは魔女をうかがうような顔をしたが頷いた。

さっき転移魔法で無様に落ちてきて

庭走ってきたじゃねえか。

「でも王城地下じゃない!!」

「えっとまぁ、そうですね。」

それも同意した。ディオはスージー心配。

「どうしよう!!!」

ギーズルは何かを察したようだ。

回復茶の激不味さを乗り越えて、魔女の慌てふためく姿に

「何が」

聞いた。


「きょ、今日って()()じゃない?・・・」

月が出てないから、魔女はど忘れした、でなく

純粋に頭から抜け落ちてた。

「ああ、そうだな」

軽く返事をしてギーズルは

ゾイからチョコレートを受け取り口に運んだ。


()()()()って、()()()()()()()()んじゃ」


魔女の言葉に、ディオは瞬間呼吸が止まる。

「(大丈夫だ、俺はこうしてここにいるじゃないか。

  予言されたわけじゃない・・・、大丈夫だ。)」

言い聞かせて、気付かれないように息を吐く。

軽く拳を握った。

「出てくるだろうな。だが預言者は

 “聖なる灰”をまだ入手してない」

ギーズルは腕組みして、目線を後ろに流した。


背後には”王の道”が続いている。

煌々と明るく焚かれる松明を背に、ギーズルは言う。


「魔女、あの庭から通用口まで一直線なのに

 わざわざお前がこの“王の道”を走ったのは

 ここに()()()()()()()()があるのを

 知ってたからだろ?」

あの庭からこの通用口まで目と鼻の先なのに

魔女は、わざと遠回りした、と言ったのだ。

「そ、それは、ーはい。」

ディオはまだよくわからない。

「? “王の道”が何かあるのですか?」

魔女は“王の道”を指差す。

「えっと、“王の道”ってあれ三百六十五日、

 松明焚きっぱなしでしょ?夜も昼も関係なく

 すんごい明るいでしょ?この松明って

 アンデリダの森で拾ってきた枝とかでしょ?」

「そうですね」

骸骨不死人(スケルトンアンデッド)はね、()()()()の」

「!っへぇ〜!そうなんだっ!」

「この量の松明の間を追いかけてくる骸骨不死人(スケルトンアンデッド)って

 多分、いない。()()()()()()()()()

 すんごい火の粉落ちてくるし。」


事実、今骸骨不死人(スケルトンアンデッド)はいない。


そして魔女が逃げるに至ったもう一つの理由を

魔女は言わない。


「(”発動”の音。

  ラースは言ってた。

  私がかけた魔法や呪いなら

  ”発動”の音がするって。

  だから、私はずっと

  城門番の庭の中を歩いているときも

  注意していた。すんごく。

  でも何も聞こえなかった。

  そして、骸骨不死人(スケルトンアンデッド)の出現。

  骸骨不死人(スケルトンアンデッド)は、初回では出てこない。

  一度目のお城の中へ入って、あるアイテムを取って

  二回目、この場に来ると出現する。

  つまり ー。

  ゲーム通りではないけれど

  それに準じたモンスターは出てくるし

  私が骸骨不死人(スケルトンアンデッド)にした対策は

  間違ってない、と言うことだ。

  ・・・やっぱり口の中が不味いんだよな・・・)」

ギーズルの手にあるチョコが欲しくてチラチラ。


それを見たギーズルは意地悪そうに微笑んで

自分の口にいれた。あ〜・・・と

口を開けっぱなしの魔女は、どう見てもアホ面。

「!!っ(・・・オネエ、意地悪ぅ〜。

  チョコチップクッキーあげたのにさ。ちぇっ)」

「そう、つまり“王の道”は聖なる木立の木々で

 焚かれてるってわけ。そして、“聖なる灰”は

 まだ、預言者は持って行ってない、ーほら」

そう言って、ギーズルは魔女の口に

チョコレートをひとつ、押し込んだ。

「んぼっっ!?もぐもぐ・・・

 (あま〜い、おいし〜ぃ〜。あ、ラム酒の

  風味がする〜ぅ。おっとな〜ぁ〜。)

 あ、ありがとうございますっ」

「?!」

ギーズルは驚いて魔女をガン見し

「ふんっ」

と言って、顔を背けた。

「?えっと〜ぉ

 こほん、あの、“聖なる灰”って

 どこにあるんですか?」

「これです」

ゾイが指さした。

「え?」

魔女は指の先を見る。

「“王の道”で焚かれた木立の“灰”です。」

ギーズルが両手いっぱいにすくってみせた。


「え、それ?」

魔女は知っていた。

“聖なる灰”は、祠に行かないと手に入らないこと。

なのに、

「(こ、こんなに()()()()()・・・。

  しかも取り放題・・・。)」

ゲームではアイテムとしては優秀なくせに

回収が大変なものベスト5に入る代物だ。

「(ゲームではここで回収できなかったのに)」

ちょっとお得な気分になった。


「ただし ー」

ゾイは手に乗せた灰を、ギーズルに向けた。

「ギーズルさまがその、対話を」

「ゾイ!!」

「っす、すみませんっ」

ギーズルが声を荒げ、ゾイを制したので

手の中の灰はいくらかこぼれ落ちた。


「? 何か、ギーズルさんがするんですか?」

魔女は聞いたが、それきり

ギーズルは魔女と目を合わすこともせず

黙ったままだった。





さて、困った。

魔女は“預言者”なるものを知らない。

「(ゲームの出自だってそんなのいなかった・・・。

  何者なんだろ。っていうか

  預言者って誰・・・。

  何かギーズルさんとゾイさんも

  喧嘩してるっぽいし、雰囲気わる〜ぅ。)」

気まずさにディオに視線を逃がす。

ディオはしゃがんで何かをしていた。


魔女は近寄る。

「ね、ねえ、ディオ。あのここから

 王城地下に行きたいんだけど〜」

「魔女さまは“王の間”に行ってください。」

「え」

意外な回答だった。

「“王の間”には、()()()()があるので

 きっと必要になるはずです。」

「そ、それはそうだけど、ディオは ー」

「俺は先に王城地下へ行きます。」


魔女が答える前に、

「だめだ」

ギーズルは言った。


「?!ギーズル、いい加減にしろっ!

 なんでお前はいっつも俺の邪魔をするんだっっ!!」

「ディオ、お前ひとりでどうにかなるもんじゃない。」

「知った口聞くな」

おうおう?

勇者(仮)と祭祀王オネエ喧嘩か?

「“祭祀の剣”と“祭祀の杖”がないと

 行っても無駄死にするだけだ。

 一回死んで懲りなかった、ーっぐっっ?!」

珍しい、ディオがギーズルの襟ぐり掴んでる。

めっちゃ、怒っとる。


「祭祀から逃げ続けた野朗に言われたくないな」

勇者マジギレ。

「対策もしないまま突っ込むのは勇者じゃない。

 無謀っていうんだ。」

オネエやや正論。

「ぎ、ギーズル様っ、」

オロオロゾイ。

「(えっと、どっちの言い分もわかる。

  ーけど)」

魔女だけは、別のことを考えていた。


今にも殴りかかりそうな二人の間に

グイっっと入り込んだ。

「魔女さま?!」

「はいはい、ディオ、ちょっと離れて」

「魔女っ」

「ギーズルさんも落ち着いて。」

二人をひっぺがした。


「座ってください」

魔女は先に座る。

ディオは少し、躊躇したが座った。

ギーズルはツーン。

ゾイに促されるも、ギーズルは座ろうとしない。

「ギーズルさん。

 ・・・ドンちゃんとの()()、忘れたんですか」

魔女は立ったままのギーズルを見上げる。

「〜〜っ・・・あ〜〜っもうっくそっっ」

どかっと座り込んだギーズルはどこか不服そうだったが

ゾイは、困ったように笑って横に座った。


パーンっっ!

魔女が両手を打ち鳴らした。

「?」

思いの外、音は響いた。


「作戦を立てよう。」


魔女はゾイの両手から落ちた灰の上に

王城の見取り図を描き出した。








「緊急作戦会議です。」



魔女、勇者(仮)、祭祀王と従者による

王城攻略のための作戦会議だ。

(ラース、シャルラッハロート、スージー不在)


魔女はあらかた説明した。


「え、魔女さまほんとにやるんですか?」

「ー?うん、大丈夫。」

「でも、危ないんじゃ」

「あ〜、ディオ。時間がないからね。

 ここではお互い別行動の方が効率がいいから

 むしろ、行ったり来たりがない上に

 めんどくさい敵の出現を防げるんだよ」

「はぁ、でも」

不満顔のディオはギーズルを見た。

「どうしたの?なんか、嫌だった?」

「嫌ですよ。だって、俺は魔女さまの勇者なのに。」

ギーズルだって不満顔だ。

「何が悲しくて魔女と一緒に行動する必要があるんだよ」

おっと、やんのか?

中腰になったディオに魔女は笑顔で止めた。


()()()()の仕事ですから

 ギーズルさんには絶対やってもらわないと。

 ね?

 それで、()()()()()のディオにしか

 これを頼めないんだ。だめ?」

ギーズルはギョッとした。

ディオは魔女に頼まれたから、腰を下ろした。


王城の見取り図のとある場所を指差し

「じゃあ、ここで落ち合おう。」


魔女は付け加える。

「みんなで、戦うんだよ」





『”ココ”と、”ココ”。

 こっちの方は、”インペット”が出る。』

ディオは魔女の言葉を思い出しながら王城を駆け抜ける。

剣を抜き、言われた地点へ警戒を怠らない。

『インペット?』

『うん、略して()()()って言うんだけど

 そんなに大きくない。

 子供くらいの身長で全身が黒くて

 尖った耳、膨れたお腹と

 (かぎ)のある長い尻尾を持った姿してる』

ディオは一回目の勇者の頃を思い出していた。

「(あぁ、あいつ、インプって言うのか。)」

忘れるわけない。

チビのくせに武器振り回してくるし

こっちが怪我するたびにケケケケって笑うから

めっっっちゃ腹立った。

一体倒すために、何時間かかったか覚えてない。


でも、今は ー


『角曲がると三体いるの、“隠れてるやつ”と

 “上から降ってくるやつ”、“ど真ん中にいるやつ”。』

魔女が言った通りだから、ー

もう、どうすればいいのかわかってる。

「(降ってくるやつが一番腹立つ。)」


ディオは高く飛び上がると

飛び降りるインプと目が合った。

『ケ、』

インプの黒い瞳に映り込んだディオは

壁を突き抜けるかと思うほどの力で刺した。

声も満足に出さないでインプは黒い煙になった。


同時に音を立てずに床に着地したディオはさらに

隠れた(つもりの)一体を、同様に倒した。


『倒す、というかコツがあってね。

 インプってゾロゾロ寄ってくると

 ほんとマジで・・・クソなんだよ。

 いや、マジでもう、はぁ〜・・・』

魔女の中でインプに対する何かがあったのだろう。

口にできないほどの共感を覚えた。

ディオは思い出して、ちょっと笑う。

「(わかりますよ。魔女さま)」


『だからね、一匹だけ誘き出すの。』


ディオの手には

魔女から手渡されたダガーがあった。

ダガーを目にしたギーズルはちょっと怯えたので

ディオはちょっと嬉しかった。ざまあ〜と言いたかったが

何を()()()なのかわからないので、黙ってた。

でもちょっとスカッとした。


ダガーの剣身を持ち、よく狙う。

『部屋のど真ん中にいるインプに、当てる。

 うまく当てれば1本でいける。』

「(当たった!!)」

すぐさま、移動する。

『けど誘い出したところで油断大敵だよ!

 あいつらブンブン武器振り回して

 こっちの首狙ってくるからね。』

呼吸を整えて、剣に持ち替えた。

ヒタヒタ、とこちらへ向かってくる音に


『インプがこっちに向かってきたら

 最速で後ろに回ってー、』


っガッ!ザシュッッッ!!!

ディオは華麗に背後致命(バックスタブ)を決めた。

インプは黒い煙になった。


「〜っふぅっ、よし!」

確かな手応えと、達成感にディオは次へ進む。

「(順調だ、ー 魔女さまは大丈夫かな?)」

多分、魔女も知らない近道を走る。

「ぃよっと!!」







魔女は、ディオの質問に答えられなかった。


『魔女さまはギーズルと何をするのですか?』

『えっと〜、ギーズルさんには〜』

魔女はちょっとだけ言いにくそうにした。

だって、言いにくい。


ギーズルはディオに言う。

『祭祀だ』

『はあ?神木マルムの御前でもないのに?』

『お前の知らない祭祀もあるんだよ』

『俺のいない間は魔女さまを守れよな。』

『はあ?そんな義理はない』

魔女がまたしても二人の間に入る。

『ま、まままっ!あのっ

 えっと私がギーズルさんに頼んだので〜!

 あと、私強いから、その、』

と、魔女は誤魔化し立ちあがろうとした。

ディオは魔女の手を引っ張った。

「ダメですよ」

「?え?」

引っ張られ、ディオに向かってよろついた。

両手でディオに支えられ、思わず見上げた。


「魔女さまには 必要ないかもしれませんけど!

 俺はっ。必要だと思うので!」

「?な、何を」

ディオに握られた手は魔女の頬に当てられ

前髪を軽く払うようにどかされた。


ちゅっ


デコチュウだ。

「!は?!え??な?!」

ディオは満足顔だが、魔女は目が泳いでるし

動揺のあまりデコを何回もこすりはじめた。

「へへ、・・・俺から

 魔女さまに()()を与えました!」

ギーズルはうっすら光る魔女をじっと見ていた。

「(なんで光ってんの)何あれ。」

「なるほどですね〜」

ゾイはニヤニヤしていた。





そして、今。


“王の間”にて ー



預言者は、新月の夜に ()()()()を謳う。


「聖なる木立よ、聞きたまえ ー」


預言者の声に、風が巻き起こる。

祭祀王の “聖なる灰” は

“王の間”に木立の若葉を降らす。


預言者の祈りの声が一段と大きくなる中 ー


「選ばれし次なる勇者はーっっ!!!」

豪風と若葉渦巻く中から、

預言者めがけて飛んでくるのは ー


「お前だああああっっ!!!」

魔女。

「っっ?!」

預言者の顔に、魔女の人差し指、食い込んでる。



指差し、勇者逆指名された預言者、唖然。







ラース情報:スージー?!え?

      スージー???


シャルラッハロート情報:ほう・・・


ディオ情報:え?え、スージーに

      何かあったんですか!?

      やっぱり・・・

      マント臭かったし。








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