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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第一部 5月の森 エレーミナルス王国編

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祭祀王ギーズル







木立の下に 眠る ものたちは

静かな 鏡のごとき 動かぬ その雄弁さを語りけり


この木立は 光と陰を 讃えたもう

ほの暗き その悲しみに よろこびを

恐ろしき祭祀は 君臨す


かの者は 木立を まもりし 乾いた陰謀を倒し

しかして 自らも また (ころ)されるに至るべし






「ちょっとーーっっ!!

 ドンちゃんのことどうしてくれるってーのよぉ!!」


魔女は貪食の大蛇の頭の上でわめく人に確信。

「(あれは“祭祀王 ギーズル”)・・・っ」

ラースが小声になる。

「奴がアンデリダの森にいるのは

 おかしなことじゃない、神木マルムで儀式を

 行うし今日は()()だ。

 だがなぜ大蛇と一緒なのかわかるか?・・・」


ラースの言葉は耳には届いていたが、魔女の頭の中では

すでにゲーム内での戦闘がグルグル回っていた。

想定外の動揺を小刻みな呼吸で逃す。

ー『祭祀王との戦闘は長期戦』

「(必須アイテムがないー、“祭祀の剣”もない)」

どうやって攻撃を回避した、とか

ー『この祠奥にまで走っていけたら逃げられる』

「(ここは現実だよ、エリア回避したら

  あいつらは追ってこない?・・・)」


エリア回避とは・・・敵の攻撃を無敵時間やマップ

          移動で避けるアクションまたは

          攻撃を無効化するステータスのこと


思い出そうとしても

「(だめだ、どれも()()()じゃない。)」

思いつく限りの対応策が、あまりにも

ゲームから剥離しすぎて

「うまくいくとは思えない。」

最善の選択肢が“正しい”のか

わからなくなっていた。

「(二体同時の戦闘とか無理でしょ。

  ゲームにはない、勇者との出会いといい

  聖獣バロンの出現といい、何かが変わった?

  ・・・私が魔女だからなの? )」


判断がつかない魔女に

「魔女、先へ行け」

ラースの声だった。

「何、いつものことだ。

 私がここであの大蛇と祭祀王を足止めしよう。」

「!」

意外すぎる言葉だった。

ラースにしてみたら、“いつもどおり”だったはずだ。

「でもっ」

魔女はラースに向いた。

「足止めぐらいにはなる。

 その間にー」

そこまでラースの声が聞こえてたのに

途切れた。代わりに聞こえたのは ー


『ようやくここに呼べたんだ、せいぜい楽しみな。』

あの魔女の言葉が聞こえた。


「(楽しむ? これを?!

  っラースが一人で足止めしようとしてるのを? ) 」

頭をぶん殴られたような衝撃で

胸がぐぅーっと押し込まれたような気持ちだった。


「(私だけ()()()?ー それは()()。)」

次いで、そんなことを()()に言わせた自分に腹が立った。

ー だから、


バチィンッッッ!!!

「?!魔女、おまえ、」


団子玉ごと、魔女は自分を引っ叩いたらしい。

「イタタっ・・・へへっ。

 ごめん、日和った。」

「は? 」

頬についた団子玉の汚れを袖で拭きあげ

魔女は前を向いて歩き出していた。

「おいっ!お前は私の話を聞いていたのか?!

 先へ行けと」

「うん、ありがと。

 気持ちだけもらっとくよ」

スタスタ歩く。

「は?何を言っている、

 ここで二体を相手にするのは得策じゃない。

 さっさと次へ ー」

「そう、だから魔女()使い魔(ラース)で戦おう。

 あいつら倒して、一緒にここを出よう。」

「?!ーっ」


“なんて、愚かなことを!!”、という言葉を

怒りに任せていうつもりが

ラースは言えなかった。魔女の汚れた顔に

強いまなざしを見てしまった。

「(また、挑むような目だ。

  ・・・一緒にここを?・・・)」

ラースの動かなかった心に、小さな波が立つ。


「作戦はね・・・」

どうやら、あるらしい。





「あ〜、来たわねぇ、来たわぁ。

 待ち疲れよぉ、もう、いつまで待たせんのよ。

 ねえ?ドンちゃん。」

()()()()()()()()は口の中の名残を楽しんでるようで

静かにしていた。

その頭の上で、あぐらをかいた人が

肘をついて魔女らを見下ろした。

見上げた魔女は ー

「(あれ、なんか、話し方が・・・)?」

足を止めた。

「(ゲームの中じゃ()()()って確か

  緑の法衣を着て・・・着てる、けど

  着てるけど・・・あんなんだったっけ?

  頭にも“枝の冠”かぶってたはずだけど・・・)」

ゲームで見てた祭祀王との違いに違和感を覚えた。

目の前の祭祀者ギーズルの声は男性だし、(多分)見た目も男性だ。

に、しては法衣を着崩してるし

“枝の冠”なんてかぶってない。


「(若い人、だとは思う・・・。

  あれかな?制服ちゃんと着ない、みたいな。)」

単純に、そう思った。


祭祀王ギーズルの顔はよく見えないがー

「もぉ勇者じゃないじゃない!

 ちょっと!ゾイ!聞いてんの?!

 アンタまぁ〜った間違えたわねぇ?!

 女が来たじゃない!しかも魔女よ、魔女!!」

どうやら一人じゃないらしい。

「すみませ〜ん、ギーズルさまぁ〜ぁ」

祠の中のどこかから聞こえる声。

それにしては悪びれた感じはしない。

「っんっとに使えないおバカねっ!!

 勇者が来るって聞いてたから

 おしゃれしてきたっていうのに!

 まぁいいわ、ちょうどよかった。

 ドンちゃん、仇は討つわ。

 この忌々しい魔女を殺したら

 その後、勇者を可愛がってあげるわ〜ん。」

そういえば、デヴ蛇ドンちゃんのストレスの原因が

魔女だって言ってたね。

それと祭祀王が何の関係があるのか

魔女もきっと気になってるに違いない。

そうだね、魔女?


「(こ、こ、この人・・・)

  ()()()だ・・・。」

口に出てた。

思うだけならまだしも、結構しっかり言ってた。


 魔女は、その手の人を初めて見た。

テレビでしか見たことないし、みんな演技だと思ってた。

いるかもしれない、けど未確認飛行物体(UFO)のように

見かけることはおろか、一生縁がないと思ってた。

お前、転生してきたくせにな。


「?あん? なんだって? 」

祭祀王ギーズル、聞こえてるくせに

聞こえないふりの問いかけである。

「っは!ー え、と。オカマ?」

魔女、馬鹿正直に答える。


「ちょっと!もっとアンタ腹の底から声出ないの?!

 聞・こ・え・な・い、っつってんの!!!!」

デヴ蛇ドンちゃんの頭からの叱責である。

聞こえないって〜。

あれじゃん? ドンちゃんの咀嚼音が邪魔で

ー違う? 違うね。


魔女は多少たじろいだが

息を吸い込み腹の底から声を出す。

「っ()〜ぉ〜、()ぁ〜あ、()ぁっ!!!」

やだ、そんなストレートパンチ。

聞いてるこっちがたじろいじゃう。


「失礼じゃない、人のこと()()()って」

「?!っっ」


魔女の目の前に祭祀王がいた。

魔女はびっくりして顔をのけぞらせる。

「っわ」

祭祀王ギーズルは真顔だ。


()()()じゃないわ、()()()よ」

祭祀者ギーズルは持っていた杖を

思い切り魔女目がけて振り下ろす。

ドゴォッ!

「(ーっな?)」

一瞬の出来事に魔女は眼前が黒くなったことすら

気付かなかった。

かろうじて顔をのけぞらせていたが

思い切り祭祀王ギーズルの杖に頬を引っ叩かれた。

「っっ!!」

杖に叩かれた衝撃で、魔女は地面に倒れ込んだ。

軽くめまいがした。

引っ叩かれた頬はジンジンして、熱を帯びていく。


ギーズルは魔女の頬を殴った杖を

愛おしそうに撫で回しながら笑った。


「っはっはっはっぁ〜あ!!

 あ〜ぁ、気分いいわぁ〜ぁ!」


混乱する魔女の脳内は、何が起きたかわからない。

されたことに体が反応してるだけだ。

頬の熱さに脳がようやく追い付く。

「(殴られた)」

ギーズルは魔女の方を見ないで、杖を持ち上げ

杖に組み込まれた石をうっとりとした顔で見ていた。


倒れ込んだままジリジリと後退りする魔女に

ちら、と目線を流し

魔女の前を二、三歩通り過ぎた。


「アンタ、っとにかったるいわ。

 アタシは女と、虫は嫌いなの。

 けど魔女・・・アンタは特別。

 この世で生かしておけないわ。」


言いながら杖を今度は空へ向けた。

杖の石が光る。




「(ー!まずい!魔法発動されちゃう!!)」

魔女は立ち上がり近くの瓦礫に向かって走った。


「あら、逃げるつもり?ーふふ、いいわよ。

 どうぞお逃げなさいな。

 アンタは 死ぬけどっ」


瓦礫裏に隠れた。

「(ど、どうしよ、

  ()()()の魔法を発動されれば逃げの一手だ)」 

想像つく状況に心臓がバクバク言ってる。

頬の痛みが増した気がした。


「魔女〜ぉ、いくわよぉ〜」


気配を感じた魔女が顔を上げれば、すでにギーズルの杖から

火炎の放射が放たれていた。

「!(攻撃魔法(そっち)か!) 」

魔女は緑花芽草を取り出して一気に飲み込んだ。

えずきそうな酸味に、奥歯を噛む。  


立ち上がり、もう少し大きめの瓦礫を目指す。

次々に魔女目がけて降ってくる炎をかすめ

瓦礫裏手に逃げ込んだ。


「あら、いらっしゃい」

目前のギーズルは冷笑を浮かべ

「!!(転移してきた?!)」

ひどく低い声で、魔女の首を締め上げた。

「はっっーっぐぅっっ!」

片手で魔女の首を掴み持ち上げ

瓦礫にその背を打ち付ける。

飛び出た瓦礫のおうとつが背中に食い込む。


「ゔっ!ぐっっぅ!」

喉奥から漏れるのは、吸い込み損ねた息。

「あ〜、つまんないわぁ。他愛ないこと。

 アンタ、本当にあの魔女なの?ー 」


息苦しくもがくものの

ギーズルの手はかびくともしない。

魔女の手はギーズルの片腕を制止しようとする。

足はすでに地面から宙を浮いていた。

ため息まじりのつぶやき声。

「あ〜ぁ。どっちでもいいわ、もう。ー 」

首を絞める手に力が込められる。

「(こんな、こんなと、こ、で)」

ギーズルの指は魔女の頸動脈に食い込んだ。


「じゃあね、魔女さんー」




「魔女ぉッッッ!!解除したぞっっっ!!」

切れそうな意識に割かれたラースの声が

祭祀王ギーズルの手を緩めた。


「何?!っ」

振り返った祭祀王ギーズルの隙を

魔女は見逃さない。足をばたつかせ

バランスを崩させれば思いの通り

祭祀王ギーズルの注意は完全に魔女から削がれる。

首を絞める伸びた腕は、緩められた。

魔女は肩掛けかばんに手を突っ込みながら

自分の四肢に力を込める。

祭祀王ギーズルの手首を捻じ回すと同時に

魔女は足を ー

思いっっっっきり ー


ドゴォ!!!ー(副音声:チーン)

「っっん゛あ゛っっ」

祭祀王ギーズルの金的(股間)を蹴り上げた。


締め上げられた首から手が離れた。

魔女は咳き込みながら地面に両手をついたが

立ち上がった。肩掛けかばんから手を出し

今や地面にひれ伏すように股間を押さえ

悶えるオカマ、じゃない

祭祀王ギーズルに向かって


ポト、ーポトポトボトボトボトっっっ!!


「?!っな゛ッッッ」

祭祀王ギーズルの頭上落ちてくる無数の

ウネウネして足がいっぱいあって

触覚みたいなのがにょ〜んとある虫たち。

未知なる感覚が股間を襲う衝撃か

それとも、天を仰ぐ感涙か ー


「ひ、ひぃあああああああんっっ!!!」

何だか卑猥な声と同時に叫ぶ声が祠を包んだ。 

こりゃイッタね。


チーン(主音声)


魔女は首を押さえたまま

酸素をなんとか体に入れようとするが

うまく息が吸えないで背を瓦礫に、咳き込んだ。

「おいっ!大丈夫か!!」

駆け込んできたラースの声に

咳をしながらも頷き、 

「ごほっげほっっ、はーっっ

 だ、だいじょ、ぶ。ラースこそ」

「ああ、大丈夫だ。こっちはうまくやった」

「よ、よかっゲホッ」

「しゃべるなっ今は呼吸しろ!!」

首をさすりながら


「ありがと、ラース。

 たったすかったっげほっっ」

これだけは言いたかった。

体全体で息を吸い込んだ。





「っふーっ、はぁーっ、..ふぅー..はぁっー..」

何度か繰り返すうちに落ち着いてきた。

祭祀王ギーズルは股間を押さえたまま気絶していた。

なお、頭にかぶった虫たちは

今魔女の手によって、一匹ずつ剥がされている。


「(ギーズルが虫、苦手でよかった・・・)」

手のひらの虫を見ながら思った。

虫はアンデリダの森で見つけたアイテムの一種だ。


アイテム情報:抗虫

       アイテム生成に必要な虫。

       毛と足がいっぱい。

       雄は触覚が太く雌は触覚が長い。


ここに至るに

ラースに言った魔女の作戦は大変杜撰なもので

『私が時間稼ぎする。

 ラースは、祭祀王ギーズルに魔力を供給する

 従者を捕まえてきてほしい。

 あ、あと残りの団子玉をデブ蛇にあげてきて』

こんな程度だった。

ラースはラースで、この作戦を否定することもできず

言われるがまま従者を見つけ出し、拘束し

デヴ蛇ドンちゃんに団子玉を与えていた。


「魔女、こいつが従者だ。」

ラースに連れられてきた男は

それはもうしょげて、目に涙を浮かべていた。

「すんませんっ!!悪気はなかったんですぅ。

 ギーズル様は騙されてただけで!!」

魔女は腕組みして、睨みを利かせる。

「んーっでも、あなたは祭祀王ギーズルに

 魔力供給してたじゃん。」

「はっはいっそれはえっと

 ギーズル様は魔法を使えなくて」

ラースが反応した。

「? なぜだ。祭祀王だぞ?」

ゾイはちょっと俯いた。

「・・・儀式をしないためです」

「なんだと?・・・」

「ギーズル様は騙されていたのです!!

 だから、僕が代わりに魔力を供給してーっ!」

ゾイはシクシク泣き始めた。


魔女はちら、と倒れてる祭祀王ギーズルを見た。

祭祀王ギーズルはすでに有能使い魔ラースによって

ぐるぐる巻きに拘束されている。

あ、虫、まだいるよ。ゾワゾワ。


「けど・・・」

魔女は虫に気付いたが、無視した。

「(無害だし)」

ギーズルを見て、自分の首をさすると

まだ熱を持っていた。

殴られた頬は多分腫れているだろう。

だが、そんなことはどうでもいい。


「あ!!ちょっと、あなた!

 あなたの名前、なんていうの?!」

「ぐすっえ?僕ですか?僕はゾイです。」

そうそう、名前聞くの大事だよね。

おい、ゾイよ。鼻を拭け。

二本の川ができてるぞ。

けど、魔女には聞かなきゃいけないことがある。

「ゾイね・・・。

 ねぇ、なんで祭祀王ギーズルはデブ蛇

 あ、違った、えっと貪食のデブ蛇と

 一緒にいるの?私がストレスってどういうこと?」

そ、それか〜。そういえばデヴ蛇ドンちゃんはどうしてる?

え?団子玉食べてから静かにしてる?・・・あ、そう。


「えっと、あの、」

ゾイは気まずそうだった。

「なに?」

魔女、珍しく詰め寄る。

「えっと、その、魔女さまがですね・・・」

「私が何!」

おっと強気だね。


「アンタが、ドンちゃんの()()()()()

 食ったからでしょぉがっっ!!!」

起きたギーズルが叫んだ。


「っ!!」

咄嗟に股間を守るネズミ。

「え」

きょとん魔女。


ゾイが顔を真っ赤にしてアシスト。

「ギーズル様っいけませんっっ!!

 貪食の大蛇の“陰茎”とお呼びください!!」


「い、んけ・・・い?」

いん‐けい【陰茎】

〘 名詞 〙 動物の雄の生殖器にみられる円柱状の突出部



わお、そりゃストレスだ(棒)








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