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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第一部 5月の森 エレーミナルス王国編

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22/22

貪食の大蛇





異形の竜のなりそこないは

その命の業ゆえに

満たされぬ渇望に噛み砕き、苛む

孤独の中に

それでも孤独を恐れ


蝕む毒に、惨めな運命を

腐肉をすすりながら、這い、まわる


いつか神をも喰らってやると





「ぃやあああ〜〜〜あ〜〜ぁ〜〜あ〜〜」

ターザンではない。

落ちる魔女だ。

いや、落とされた魔女だ。


相棒もとい、使い魔のネズミのラースに

振り向けば、思い切り体当たりを食らって

落ちている。

「(相棒だと思ってたのに!!ひどい!

  落とすなら“押すよ!?”って

  3回ぐらい言ってくれればいいのに!!

  そしたら”押さないでね!”って

  3回ぐらい絶対言うのに!!)」

魔女、それはもう“フリ”なんだ。

“押せよ”って言ってると同等だ。

落としてほしい、むしろ

落としてもらうことに喜びを感じ

かつ、おもしろ美味しいと感じる人が使う手だ。


「落ちるぅうううう〜〜っっ」

「もう落ちてる! 」

体当たりしてきたラースはすでに

落ちる魔女の肩にしがみつくようにいた。


ヒュルルルル〜〜〜〜っ・・・・どんっっ!

「い゛だああッッッ!また腰打ったああ!!」

おっと、魔女またしても腰強打!

「警戒しろ!」

くるりん、スマートネズミ無傷で体勢整えた!

二者二様、無事祠の底へ着地。


魔女とネズミは祠の穴に入ったようだ。

「暗いな」

「! あ、私ランタン持ってきたよ!!」

魔女は腰をさすり、肩掛けかばんをゴソゴソ。

「じゃ〜ん!」

辺りが明るくなった。

ラースは落ちてきた穴を見上げていた。

「(ずいぶん落ちてきたな・・・。

  だが穴の崩れ方と、内部からすると

  ここは元々空間があったようだ・・・。

  祠に地下空間があったのか?知らなかった。)

 ー、魔女、この祠の底には何がある。」

視線を戻せば、魔女はすでにそこらをうろうろしていた。


「(こいつ・・・どこでもうろうろしてるな。)」


ラースはあえて声をかけずに魔女に付いて行った。

すると魔女はブツブツ独り言。

「う〜ん、この辺かなぁ?

 もう少し、あ、あっちがいいかも」

「? (何か探してるのか?)」

ランタンを向け、歩き出したかと思うと

いきなり座り込んだ。


「? 何してる」

ラースがそばに近づくと・・・

肩掛けかばんをゴソゴソ、じゃない、

だばあーっと中身を出し始めた。

ラースに見向きもしないで次々

膝の上に乗せ、肩掛けかばんの中に手を入れる。

「ん〜っ重っ、ぐぬぬぅ〜っ・・・

 えいっっ!」

引っ張り出した。


「は?」

ラース、あんぐり。

気にせず魔女、怒涛の早口。

「あのさ、ここのボスって一度倒したデブ蛇なんだよね。

 あ、知らないよね。“貪食の大蛇”って言うんだけど

 “貪食”って()()()()なのか()()()()()なのか

 どっちで呼べばいいかわからないから私は

 ()()()()って言ってるけどめんどくさいから

 デブ蛇って呼んでるの。わかりやすいでしょ。

 それでね、えっと〜

 そのデブ蛇ってさただの蛇じゃなくって、あー

 ラース見たことないでしょ?

 えっとねえ、見た目はナメクジとトカゲをブヨブヨさせて

 足して2で割るみたいな?あ、遠目で見るとキモカワだよ。

 顔はつぶれたカエルみたいなんだ〜ぁ。ふふっ。

 けど、ボケーっと見てたら寄ってくるし

 噛みつかれちゃうから要注意ね。

 私も前、何回か突っ込まれたし。

 とりあえず見た目は蛇っていうかでかいしキモい。

 なんか全体的にぬるぬるしてるしキモさ倍増。

 それでね、えっと攻撃。攻撃っていうか

 デブ蛇の攻撃は大体決まってて、のろいんだけど

 攻撃範囲が広くって、雷落としてきたりするんだ。

 あの顔で雷かよって思うかもしれないけど

 あいつ雷耐性もあるっていう不思議な奴だよ。

 私たちが戦闘するのは2回目のデブ蛇で〜

 祠の1回目の戦闘は、ディオにお願いしたんだけど

 それにもちゃんと理由があってね、へへ。

 攻撃までの予備動作が判断つきにくいんだけどぉ〜

 デブ蛇の攻撃ってパターン決まってて

 雷落としてくるか、尻尾を振り下ろしてくるか

 噛みついてくるぐらいしかないんだよね。

 雷かわすだけならディオぐらい速ければ

 デブ蛇あんまり動かないし持ってこいって感じ。

 ディオ、めっちゃ速いじゃん。ビュンビュンって。

 それにナナカマド食べてたみたいだから

 雷回避30%なんだよ!!知らないと

 雷に当たるから教えておいてよかった〜。

 ほんと、うまくいってよかったよね〜!

 それにデブ蛇(あいつ)、毒吐いてくるんだよ。

 ふふふ、けどあれ、毒じゃなくって胃液なんだ。

 多分、胃酸かなんかだと思うけど

 “ぶえ”って!吐くとこ、超気持ち悪いんだ〜。

 それに当たるとね、持ってる武器が溶けちゃうんだよ。

 けどさ、ディオはノーダメ(ージ)だったね。

 すごいよね、勇者って。あ!!でもでも!

 2回目はそうはいかないんだからね!おっと

 忘れてた、これは、ーよしよし。あ、なんだっけ。

 そうそう。2回目の戦闘ではね

 デブ蛇、パワーアップしてるから気をつけないと

 ちょっと、あ、ラース、そこの草取って。」

魔女の口は止まることを知らない。

ラースは思うところあっても口を挟めない。

すんごい早口だから。ひょっとしたら

魔女は何かに取り憑かれたのかもしれないが

そういうことはない。

知ってることならずっと喋り続けられるだけだ。


ラースがやや引き気味に、草を魔女に渡す。

「ありがと」

と、魔女は小さく言って

肩掛けかばんから取り出した大きな鍋に

膝の上の草やら何やらちぎっては入れていた。

「(鍋なんか持ってきたのか? )

  ・・・なんだそれは・・・」

魔女の家で何やら詰め込んでいた中に

まさか鍋まで入れてるとは思わなかった。

魔女は鍋を見たままで口も手も止めない。


「ケトルさんに、お願いして

 なんでも入る肩掛けかばんにしてもらって

 よかった〜。けどこのかばん、なんか寂しいから

 家帰ったらアップリケとかしようかな〜。

 あ、ラースにも肩掛けかばん作ってあげるよ!

 お揃いにする?ふふっ」

本当に色々ツッコミどころが満載なのを

ラースは度外視して

「魔女、なんだ、ー、それは何だ?」

ようやくラースは声をかけられた。


「これはね、()()()()()。」


魔女はようやく顔を上げて、ラースを見た。






魔女は鍋の中からグダグダになった半液体の

固形物を出し、せっせと丸くしはじめた。

「大蛇の対策とはそれか?」

()()()とは口が裂けても言いたくないラースが聞くと

魔女は頷いた。

「デブ蛇ってね、顔の前に何か投げると

 必ず食べるっていう習性があってさー。」

言いながら、次々丸めては並べる。

「(ゲームの中では捕食って言ってたけど

  さすがにそれは・・・ね。)だから

  これを投げるの。」

()()でできてるんだ?これは」

ラースよりは小さいが、魔女の手には余るほどの

団子玉が全部で六つ。

「ん〜?食べられるものだよ。」

ラースがツンツンした。かすかに薬草が香った。

その時だ。


地面を大きく長く擦る音がした。


「きた」

魔女は小さく言って、鍋ごと肩掛けかばんにしまう。

ラースが音のする方を見ている間に

あっという間に片付けていた。

団子玉を両手いっぱいに抱え、にラースに言う。

「ラース、肩に乗って」

「あ、ああ」


ラースは不思議で仕方ない。

以前の魔女ならば、自分をこの場に置いて

魔女だけ先に行ってしまうか

もし敵が出てきても、さっさと倒してしまっただろう。

それなのに、目の前の魔女は

何をしているかわからないが

3分の魔法を使おうともせずに道具を出して

何かを作った。

魔女の横顔から覗く、鼻っ柱に付いた鍋の付着物。



「(挑むような、そんな顔するのか)

 ・・・魔女。作戦は分かったが

 先の敵の情報が足りない、教えろ。」

ラースの心が、魔女に当てられたのか

こちらもちょっぴりやる気。

だから、ラースは不思議で仕方ない。


「ん?あ、えーっとあのねぇ・・・」


あらわれた貪食の大蛇は

空間を半分ほど占めるほどの大きさだ。

「でかいな・・・」

大きな口をだらしなく半開きにして

垂らし続けるよだれが、貪食の大蛇の体を濡らす。

こちらにはまだ気付いていないが

不定期に体をくねらせたあと

少し転がったところで一旦動きを止め

またすぐに転がった。

その度に、地面が揺れる。


「魔女、何をしてる?」

魔女は膝を曲げたり真っ直ぐ立ったりを繰り返す。

おネズミさまの垂直移動。

「屈伸〜。」

ラースが下を見ると、足首を回してた。

「なんだ? 準備体操か? 」

わざと言ったつもりだった。


正解。アキレス腱も伸ばしてる。


魔女の頭の中では作戦の段取りができていた。

「(こいつ・・・。ゲームでは

  初見で武器を破壊され、丸裸にされたの

  忘れてないからな。思い出しても腹立つわ〜。

  貪食にゴロリン踏み潰され、グリグリされ

  お口でもぐもぐされ、ゲロをぶっかけられた。

  対策知らないと逃げ場なしなんだ。)

  けど・・・今なら。」

ポケットの中から、草を取り出し

口に詰め込んで飲み下す。

「お゛ぅぇっっ!んふっんぇっ」

えずいてるけど大丈夫?

何度か咳払いした後、魔女は敵を見た。


魔女の足の爪先に、力がこもった。


ジャリ、と地面をこするように鳴らした。


魔女は走り出す。

「こっちだよーーっっ!!」

「!!!っ」


小さな獲物に、巨体が揺れる。





 魔女はこの祠の底のマップは分かっていた。

ランタンで歩き回ったのも、位置確認だし

程よい場所でアイテムの生成を行ったのも

出口に最短距離を見つけた。計算通りだ。


貪食の大蛇が魔女に気付けば、戦闘開始。

ラースが2回目の戦闘での情報を聞いたのは

こうだ。

「2回目で注意すべきは

 飛び掛かりと噛みつきだね。

 どっちもガード不能なの。

 私は出口に向かって走るから

 ラースは後ろから追いかけてくるデブ蛇みてて。

 もし、追いかけてくるデブ蛇が頭を下げたら

 口を開けるから教えてね。

 噛みつきはね〜・・・」

そのときがきた。


「魔女!!口を開けたぞ!!!」


ラースの声に魔女は振り向きざま、団子玉を投げた。

「食前のお薬よっっっとぉぉっっ!!!」

「薬ぃ?!」

貪食の大蛇の口に無事団子玉が入ったのを確認すると

また、魔女は走り出す。

「(食べてるときは静かになるから今のうち)」

貪食の大蛇の横をそそくさと、走り抜け

魔女はラースに言った。

()()()()って言ったの。」

「は?なんだって?!」

動きを止めていた貪食の大蛇は回り込んで魔女を追う。

だが、魔女と貪食の大蛇との距離は開いたままだ。

「(動きがのろくて助かった!)」

また、貪食の大蛇は頭をもたげた。

「口を開けたぞ!」

「オッケー!!!」

ナイススローイン!!

魔女は前だけを見て、後ろを見てるラースに向かって

大きな声で言った。

「あいつ、多分、()()()()ってこと!!」

「胃酸過多・・・

 (鍋で何を作っているのかと思いきや・・・)」


「だって、武器が溶けるぐらいの胃酸だよ?!

 相当つらいと思うんだよね〜。

 ストレスかかってんじゃないの?

 別の団子玉でもよかったんだけど〜っ

 そっちはリスクあるっていうかっふっほっ!」

「(だからって敵に塩送る奴がいるか?)」

ラースは肩を落としたくなる。

魔女は息を切らしながらも、その走るスピードは変わらない。

「(もう少しで出口、だから)」


魔女が、貪食の大蛇に追いかけられる前に

えずきつつ飲んだもの。


アイテム情報:朝の緑花芽草(りょっかがそう)

       目が醒めるほどの酸っぱさ。

       一時的にスタミナの回復速度を上げる。


団子玉の残りも少なくなってきた。

目と鼻の先と思われていた出口までの道のりの

なんと長いことか。

「(あ〜、やばいかも)」

魔女は朝の緑花芽草(りょっかがそう)の効き目が

だんだんなくなっていることを自覚した。


「魔女!!」

ラースの声に、団子玉を握りしめ振り返る。

だが ー


貪食の大蛇の頭に、何か蠢いているのを確認した。

「?何あれ・・・」

ゲームの中でも見たことのないものだった。

魔女は団子玉を貪食の大蛇に投げつつも

蠢く何かをじっと見た。

貪食の大蛇はまた、団子玉を口に入れて

モゴモゴしていた。


「?あれ・・・人? 」

ラースも確認したようだった。

「人が・・・乗ってるのか?」

「・・・え・・・」

ぼんやりとした輪郭に、目を凝らせば

その姿に見覚えがあった。


魔女は頭を抱えたくなる。

「(うそでしょーーっっ!!

  なんで?!どうして???

  え、ここで出てくるの?!)」

ラースがつぶやく。

「・・・あれは、・・・()()()だ。」


魔女もまた、同じ人物を思っていた。

「(ここでボスキャラ登場って

  デブ蛇と同時かよ〜〜!!

  まさか、穴に入る要素の選択が変わったから?

  キッツーー!まじか!本来なら

  祭祀王と会うのは王城に入ってからなのに

  こんなとこで、・・・なぜ?)」


答えは貪食の大蛇の頭の上から聞こえた。


「魔女、てめえこのブスッッッ!!

 ()()()()()のストレスの原因は

 お前じゃ、ボケーーーーーっっ!!!」


ドンちゃん・・・?

あぁ、()()の大蛇の()()ね。

あだ名あったんだ。

え?胃酸過多のストレス原因が魔女??



あれ、嫌な予感。









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