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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第一部 5月の森 エレーミナルス王国編

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2人の勇者





「な、え?、ゆ、勇者?」


 ディオは”こんらん”中だ。

だが、相手の男はディオに声をかけてきた。


「ー 名をなんという、お前。」

ディオが聞いたことのある中で

一番低い、静かな声だ。

森の静けさに似た雰囲気のある男だ。


 男は沼地の中からディオに向かってきた。

一歩の歩幅が大きい上にものすごい、圧。

近づいただけで威圧感が半端ない。

だがこんなことでイケメン勇者(仮)は怯まない。

マッハダッシュ(個人の意見)でここまできたのに

だまって雄牛の角取られたんじゃ、勇者の名前に傷が付く。

角取り返すついでに、パンチしてやれ!!


「お、俺はディオだっ!ーお前はっ」

あ、律儀に答えた。つまんねえな。

じゃあ、大男、お前でいい。

“うるせえ”って言って平手打ちしろ。

「・・・シャルラッハロート」

お前も律儀だな。

「・・・名前長いな。」

名前の長さを言ってる場合じゃねえ。

男なら拳で語り合っていただきたい。


「ど、どうしてここにいるんだよ。」

答えによっちゃあ、ディオはキックするつもりだ。


この沼地に見知らぬ者が来たというだけで

ディオは警戒をしていた。

「(ここはエレーミナルス王国が

  立ち入り禁止にしてるとこだぞ。

  ・・・バレたら、()()()が黙ってない。

  大事(おおごと)だ。)」

ディオだってそれぐらい覚悟の上だが

今は、王国民でもなさそうな騎士みたいな

勇者が何者なのか、まったくわからない。

だが、それはディオも相手の男にしても同じことだ。


自己申告が互いに“勇者”ってだけ。


「(本当にこいつ、勇者かよ・・・)」

シャルラッハロートと、言う男は

ディオを見下ろしたまま黙っている。


「(でっっか・・・、こいつマジで人間か?)」

ディオだって育ち盛りだから

身長だって負けたくない。

村の中じゃ、一番身長も高い。

何センチとか、みみっちいことは言わない。


「(俺が一番でかいはずなのに・・・!)」

なんか負けた気分。


シャルラッハロートという長ったらしい名の男は

咎の雄牛の角を握りしめたまま、ディオを見ていた、つもりだ。

だが、ディオにとってはそうではなかった。

威圧感に混じった警戒心はまるで

『あ゛? やんのかコラ。』

という、喧嘩を売られてるような気分だ。

だからこそ、ディオは冷静に努めた。


「(じっちゃんも言ってたしな。

  喧嘩は先に手を出した方が負けだって)

  お、お前、“勇者”、なのか?」

「ああ。 」

男の外見は勇者っていうか、騎士だった。


「(だってあれだろ?騎士っていうのは

  騎士って、・・・なんだっけ?)」

ディオ、実は騎士のこと、あんまよくわかってない。

聞きかじった程度の情報をより集めたら

「(マントは(剣を抜くために)

  肩半分しかかけてないし

  銀の肘当ても(狩用とは全然違う)つけてるし

  ・・・腰に剣が・・・あれ、背中に剣がある。

  背負ってんのか!かっこいいな〜。

  大剣だ〜。重そうだな〜。強そうだし、

  かっこいいな・・・。」

その男は身なりが騎士っぽい、ってのと

純粋に“かっこいい”だけだった。


「(剣技とか、すっげえんだろうな)」

負けたって認めたわけじゃないんだからね!!

その証拠に


「俺も勇者だからなっ!」


聞かれてないけど、ディオは

とりあえず自分も勇者だってことを

さっきよりも声、大きめにアピールしておいた(2回目)。


「そうか」

存外男に受け入れられたので、肩すかしだ。

「何だよ!ー お前、何しに来たんだよ!?」

「 ー ? 俺は魔女に会いにここに来た。

 お前も勇者なら、それでいい。

 ー 俺は魔女を探している。」

「魔女さまを?何で?!」

「お前には関係ない。」

シャルラッハロートはディオの横を抜けようとした、

が、ディオはすぐシャルラッハロートの前に出る。


「(咎の雄牛の角(あれ)がなきゃ!!) 」


優先順位で反応していた。

だが今はどうやって雄牛の角を手に入れるか

考えも思いつかない。時間稼ぎが必要だった。

「(どうする、雄牛の角・・・雄牛・・・)」


ちらり、とディオは雄牛のことが気になった。

「シャルラッハロート。お、お前、牛はどうした」

「牛? 知らん」

「は? 倒したんだろ? 」

「倒してない 」

「倒してないだと?!じゃ、じゃじゃじゃあ!!

 お前はどうやって雄牛の角を手に入れたんだよ!!!」


「拾った。」

どーん。


「ずっ(りぃ)・・・」

喉まで出かけた言葉を“ず”で飲み込んだ。

これにはイケメン(自称“魔女の”)勇者(仮)も困った。

普段は“早い者勝ち”、なら負けても気にしないし

勝ちは譲るが、今は絶対()()()()()()()()()だ。


本当はよくない、だが、引き下がれない勝負があったディオは

ー 思いつく限りの難癖をつけてみた。


「じゃあ、牛はどこいったんだよ!!

 牛いねえじゃねえか!!農家舐めんなよ!!

 農家は牛いねえとはじまんねえんだよ!

 牛はなぁ!命の次、ー、いや、命と

 うちのチキンズとかと同じくらい大事だ!!」

へ、へえ。(チキンズ)も飼ってるんだね、ディオ。


だがこの大男(シャルラッハロート)、はディオの言葉に一切動じることなく

「牛ならいる。」

握り拳から親指を立て

男は肩越しを2回、示した。


「 ンモォォォォ〜〜っっ 」


「え」

ディオはこの鳴き声に反応した。


シャルラッハロートは自分の背の向こうにいる

牛を見せるように半身を向けた。

大きな雄牛が、一頭堂々たる風格でいた。

体のあちこちに傷があるが、元気な様子だ。

「俺がここに来たとき、牛が二頭戦っていた。

 赤い雄牛と白い雄牛だ。

 この白牛が、赤牛に向かって行き

 倒した。ーすると、」

「スージーぃ?!?!」

ディオ、聞いてない。

「モォォ〜!!」

スージーっていうんだって、この牛。


「す?」

シャルラッハロートはディオと(スージー)の戯れに

黙って過ごした。

ディオは今にも泣き出しそうな顔をしながら

(スージー)を撫でくりまわしている。

「お前、・・・お前っ、スージーか!よかった!

 スージー!会いたかったよ!!!」

(スージー)は自分の鼻をベロンと舐めた。

「もう会えないかと思ってたよ!

 お前、俺を迎えに来てくれたんだろ?」

「ンモォォォ〜〜!!」

んなわけあるかい、

「おい ー、それはどう言うことだ。

 その牛はお前の“何”だ?」

お前がその話題に噛みつくのかよ。

迎えに来たのがそんなにすごいこと?


「?ーえ、ーあぁ、これは・・・。」

(ちょっと待て、コイツ怪しいしな。

 (スージー)のことぐらいなら言ってもいいかな。

 でもな・・・雄牛の角のこともあるし・・・。)

ディオは様子を見ながら

「俺ん家の牛なんだよ、スージーって言うんだ。」

「牛とお前は話ができるのか?」

「?当たり前だろ。俺が生まれてから

 ずっと一緒だ。スージーは特別なんだ。」

飼い主自慢だった。

「な?!スージー!!」

「モォ〜〜」

ほら、通じてるね。


ディオはまじまじと(シャルラッハロート)を見る。

スージーを撫でながら。

もう少し、男をじっくり観察するように見る。


「(緋色のマント。金糸の刺繍があるな。

  フードを目深に被ってるけど

  目鼻立ちは良さそうだ。体はー、

  筋肉は俺よりあるなあ、羨ましい。

  背もでかいし。羨ましい。

  マントの留め具に紋章が付いてる。

  くそ〜、紋章付けてんのに

  どこの国かわかんねー。

  ちゃんと()()()()()の話、きいとけばよかった。

  っー、エレメーラ。」

そんなことを思っていたら

想い人の名前が自然と出てきてしまい

感傷的になりそうだった。


だから、優先順位を思い出す。


「もう一度聞くけど、シャルラッハロート、ーお前は

 なんでここに来たんだ?」

シャルラッハロートは、沼地の周りを見渡す。

「ー ここには()()()()がある」

「え?ー、それだけ?」

シャルラッハロートは黙った。

「 ー 」

「ノーコメントかよ!!ー なんだよ、それだけかよ。

 そりゃラドの実は美味しいけどさ。

 あんま取りすぎると怒られるからな。

 昔、百個ぐらい取ってった奴いたから気をつけろよ。

 じゃあなんで雄牛の角を持ってないとダメなんだよ。」


シャルラッハロートは雄牛の角を手にしたまま

つぶやいた。

「・・・勇者だからな」

いや、もうその話わかったから次行こうよ。

だがディオは思う。

「(俺だって、勇者だ、俺はー。

  俺は、ただの勇者じゃない)」

シャルラッハロートを見上げる。

表情は読み取れないが、ディオは口を突いた。


「俺は、一度死んでここに戻ってきた。

 だから、次は間違ったらだめなんだ。

 約束したんだ、俺は・・・っ

 魔女さまの勇者になって、ーっ」

どこまでこの男に話が通じるか、わからない。


だが、シャルラッハロートは

ディオのマントをかじっている(スージー)の方が気になっている。

すんごい、ムッチュリムッチュリ。

マントをムッチュリ。


シャルラッハロートは(スージー)の動向を気にしつつも

ディオに聞いた。

「お前、本当に魔女の勇者になったのか?」

「あぁそうだ!(現在非公認だけど)

 だから俺には咎の雄牛の角が必要なんだ!!

 もう、預言者に騙されないんだっ!

 あっ!ひょっとしてシャルラッハロート!

 お前、預言者に予言されたのか?!」

「預言者?ー 何のことだ」


(スージー)はいよいよマントを食べようとする。

ディオはまだ気付かない。

「予言だよ!お前を勇者にしてやるとか

 世界を救うために魔女を倒せとか!!」

よだれでベットベトだよ、イケメン勇者(仮)。

「俺は一度目の戦いで、騙されて

 傷だらけの()()()()になっても戦ったんだ!」

なお、今は()()()()()()なんだけど

そこは気にしなくてもいいの?


「ムッチュリムッチュリ」((スージー)、効果音)


マントの端はすでにスージーの口の中へ引っ張られてるが

ディオ、筋力にてこれを阻止。

身動きしない、してたまるか、ここで引けば男が廃るって

そんな意気込みすら感じる。


「お前、勇者になってどうするんだよ!!」

ディオには明確な思いがあった。

それこそ、一度目の何も知らない頃とは違う、そんな

強い意志があった。

一度目に誰かが自分に聞いてくれたら

何かが変わってたかもしれない、

そんな思いも込めて言った。


だが、シャルラッハロートは

ディオの人生二度目発言に驚くこともなく

預言者に関して言及するでもなく ー。


「ー お前に言う義理はない」

それだけ言って

シャルラッハロートは咎の雄牛の角を

自分の腰袋へ仕舞い込んだ。

「!まっ待てって!

(それがないとーエレメーラが!

 打つ手なしか?!ちくしょう、どうすればっ)」

悔しくも、ディオの勝負は(スージー)のよだれだけしか

得るものがなさそうだ。


だが、ディオは見捨てられていなかった。

「おい、ディオと言ったな、連れて行け」

「?」

「魔女の元へ、俺を連れて行け」

「え、な、んで・・・」


言いかけて、ディオはシャルラッハロートの言葉を

思い出した。

『魔女を探している。』


ディオの目的の前に、邪魔が入るのは想定外だ。

シャルラッハロートの真の目的はわからない。

「(勇者が2人って、魔女さま何て言うかな・・・)」

だが、連れてく最中にチャンスがあれば

雄牛の角を手に入れられるかもしれないし

最悪、その場でどうにかできるかもしれない。


「わかった。連れてくよ。」

旅は道連れ、世は情け、という。

ディオは自分だって魔女とここまで来た。

多少の打算はあるものの、それはお互いさまだ、と思う。


「(魔女さま・・・絶対わかってて

  知ってて、祠に行ってくれた。それに

  俺しか解けない呪いがあるって、知ってますよね。)」


だから、ディオはシャルラッハロートだって

魔女のところに連れてってやる。

「(あとは本人次第だしな。けどなぁ。

  こいつ、何者なんだ。目的がわかんないな。

  魔女さまに会っていきなり攻撃してきたら

  俺が魔女さま守らないと。

  勝てるかな、でも俺の方が絶対動きは速いはず。

  こっちにはサンザシもナナカマドもあるし。

  盗む・・・のはなんか違うけど。う〜ん・・・)」

(スージー)がマントの端を強く引っ張るような勢いで

よだれまみれにして一層、かじった。

「(そうだ、その前にスージー何とかしなくちゃ

  スージー、どうしようかな。

  スージー・・・?)」

沼地を出る前に、シャルラッハロートがディオに向いた。

「おい、牛。」

「?え、何が?」

「牛」

シャルラッハロートは投げるように言ったきり

前を向いて歩き出した。この思い気付けー!

ディオは横を歩く(スージー)をみて

「っぱ、かわいいな〜ぁ、スージー!」

ん〜、残念っ!ディオったら、牛バカなんだから〜。


しかしながら

シャルラッハロートは立ち止まり

「お前、マント食われてるぞ」

ディオを見ずに、言ってまた歩き出す。

「・・・あ

(〜〜〜〜っっっ!マント食われてるって

 やばっ!ベトベトだー。

 俺、勇者なのに!・・・ま、でもいっか。

 スージーかわいいしな。迎えにきてくれたし)」

ディオも歩き出して、急に思い立った。


「おい!! シャルラッハロート!

 魔女さまのとこへ連れてってやるから

 スージー運ぶの手伝ってくれ!」

「ー  あ?  ー」

スージー(牛)はマントをかじり続けている。


シャルラッハロートは、(スージー)をじっと見た。

「(白の精強な雄牛と赤牛の争いか・・・)」


草の匂いがした。






「魔女!!いつまでそうしてるつもりだ?!」

「え、え〜、だって〜〜ぇ」


『(穴に)入りますか? 入りませんか? 』


ゲームで見たより

リアルの方が、十倍はデカい。

穴が。

そして、底の見えなさ具合に足がすくむ。


魔女とラースは祠に着いて愕然とした。

祠はもう跡形なく、眼前に広がるは大きな穴。

ここについてからというもの

魔女はどこか足がかりになるような箇所を探すも

そんなものはなかった。

かろうじて祠の中にあった祭壇と思われる残骸から

下を覗いていた。


「(こんなの、バンジージャンプじゃん!!)」

しかも底が見えない。

こんなの入っても無事でいられるか不安。

入らなきゃ入らないで、魔女にとある懸念事項が浮かぶ。

「(急がないといけないのはわかってるけどさ〜

  (ボス)キャラの出現が・・・

  どっちが楽なんだ?え、どっちも地獄なんですけど。

  どうしよ〜、結構大変なんだけど〜ぉ。

  アイテムかぁ〜、それでもなぁ〜。)」


「魔女!まだか!!」

イライラネズミ。

「え、ちょっと待ってって。今、ちょっと

 心の準備が、ちょっとだけっ。」

そんなやりとりを何回か繰り返すことー 


ドンっっっ!!

「あ、」

落ちゆくさまに、振り返れば

おネズミさま、満面の笑みで

悩める魔女の背中を文字通り、押した。


()()()()()()じゃない。


『穴に ()()()()()

という、新たな選択肢がおネズミさまより与えられた。








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