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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第一部 5月の森 エレーミナルス王国編

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20/21

道中、過程、最中






「まったく・・・

 衛兵ともあろう者たちがあの体たらくでは

 エレーミナルス王国の未来も明るいものではないな。

 緊張感がなさすぎる!」

プンプンネズミ。

ラースはぶつくさ言いながら

サンザシを肩掛けカバンに押し込んでいた。


「魔女さまっ!道中、お気をつけて!」

魔女は衛兵2人を前に

「ご無事を祈ってます!」

話を聞いてる風で、聞いていられない気持ちだった。

「(・・・ディオはなんで・・・)」

本人(ディオ)を前にしているにも関わらず

その気持ちを聞くことはできない。

「(なんで知ってるの?)」


ゲーム内での勇者と魔女の立場が

現在の関係性の浅さが、魔女を億劫にさせた。

「(よくよく考えたらディオに会ったのだって

  さっきみたいなもんだし・・・。

  私がこの2人とディオみたいな関係だったら

  ・・・正直に言えたのかな? )」

「こら、2人して魔女さまが困ってらっしゃるだろ?

 お前たちときっとパイ食べてくれるよ。」

絶え間なく続く衛兵らとディオのやりとりが

無機質なほど、魔女を置いてけぼりにした。


「では、行くか。」

ラースが魔女の肩にのぼった。

「あ、・・・うん」

魔女はトボトボ、祠へ向かって歩き出す。

「(だめだ〜・・・

  私、へこんでるんだ。

  なんか・・・

  すっごく、・・・悲しいんだ。

  でも聞けないよ、

 『私のこと祠に行けだなんて

  知ってて裏切る気?!』なんて・・・

  どうしよう、穴に入る?入らない?

  え〜・・・どうしよう。)」

いまだ、決心付かず。

「(と、いうより、もうこの際だし

  ・・・思い切って聞いちゃう?)」

これはゲームの世界かもしれないが

今、自分がいるのはリアルな世界だ。

「(どうせ、魔女だし裏切られたって。)」

ゲームじゃ聞けないことも、ここなら聞ける。

モヤモヤする気持ちに


「(ええい、ままよ!)」

魔女は意を決し、振り返った。


「ー あれ?」


ディオの姿は、もうなかった。


魔女の脳裏には

あの静かに微笑んだ顔がこびりついて

「(どうしてあんな顔したんだろ)」

離れなかった。


「(やっぱり祠に行くしかないのか・・・)」

魔女はまた、歩き出した。





少ししてラースは口を開いた。

「魔女、下ばかり見ても

 食べられるようなものは落ちてないぞ。」

魔女は顔をあげた。

「え?」

「ようやく顔をあげたな。」

ラースは手にしていたクッキーを魔女の口に突っ込んだ。

「むぐっ? 」

「“祠へ行け”とディオが言ってから

 様子が変だ。まぁ、変なのはここへ来る前からだが。

 祠に気掛かりでもあるのか?」

「そではっもぐっングっ」

口の中がパッサパサだよ。

クッキーに水分持ってかれてパッサパサだよ。

「〜〜〜っ水筒の茶を飲め!」


魔女は立ち止まって、水筒の茶を飲んだ。

「プハーっ、飲めないことはないんだけど

 やっぱ美味しくはないよね〜・・・へへ。」

カラ元気魔女。

ラースの鼻で笑う声が聞こえた。

「アイスクラピウスの淹れる茶は

 極端に苦いか薄いか、だ。」

魔女は水筒をしまいながら、ぽつり、言った。


「あのさ、・・・

 もし、だよ。もしも

 裏切られるってわかってても

 そこへ行かなきゃ行けないなら

 ラースだったらどうする? 」

ラースは魔女の肩から腕を伝って、手に乗った。

魔女を見上げる。


「裏切られるなら、それまでなんだろう?」


「!っ(そうだった。)」

自分で言った言葉を、ラースに返されて

魔女は驚いてから、笑ってしまった。

「へへっ(さっきまでへこんでたのに。

 私、ラースに励まされたのかな?・・・)」

ラースは相変わらず偉そうだった。

魔女はラースを両手に乗せ、顔の前に上げた。

「ラース、あのね。

 お願いがあるんだ。」

「? なんだ?クッキーならかばんの中だ」

「ふふっ違うよ。お願いっていうか

 相棒だから、聞いてほしいことなの。

 いいかな? 」

ラースはわざとらしくも少し考えるフリをして

「回復茶に砂糖を入れようが

 水筒の紅茶に牛乳を足そうが

 私はアイスクラピウスの茶は飲まん。」

魔女はきょとんとしたが、久しぶりに満面の笑みを浮かべた。

「それなら、私が最高のお茶を淹れてあげるよ!!」


そして、

「(よし!祠は行く。そんでもって

  ラースにもディオにも正直に言おう。)」

魔女の()()()()()()らしい。

グゥ〜〜ぅ・・・


「ラース、お腹すかない?」

空腹(そっち)の腹かよ。






「勇者は”接ぎ木”になる使命があるの。」


魔女は、おにぎりを頬張りながら

(ゲームでの)勇者の顛末(てんまつ)を言う。

「神木マルムはさ、寿命を迎えていたんだよ。」

ラースにおにぎりを小さくちぎって渡す。

「神木が枯れるということか? 」

「うん。」

「それを阻止するために

 勇者が自ら進んで(にえ)となるんだな?」

「・・・うん」


ラースはチビおにぎりを見つめながら

何度か頷き、顔をあげた。

「神木マルムは森の王だ。その神木が

 枯れれば森の女神ディアナの加護を失う。

 もし、神木の接ぎ木が見つからねば

 この世界から聖域は消えるというのは

 エレーミナルス王国の神話上の

 話じゃなかったのだな。」

「うん・・・」

「だから呪いの解除のナナカマドも、サンザシも

 雄牛の角も存在しているのだな?」

「うん・・・」


ゲームでは

魔女に燃やされた神木の代わりに 

勇者はその命を接ぎ木とするのだ。


“勇者は その御霊を 御身を 神木にやつす”

ゲームのテキストメッセージは

勇者の最期を、この一言で終わらせた。


「(こんなエンディングを、どうして

  こんな終わりを どうして

  ディオに言えるのか。ー それって)」

ひと口だけかじったおにぎりがにじんで見えた。


ラースは少し考えるように首を傾げてから

もぎゅ、とおにぎりをかじる。

「そうか。・・・

 ディオと話をしていて、

 いくつか矛盾を感じる点があった。

 なんと言うか、

 戦闘にしても手馴れすぎているというか

 順応性が素質を凌駕している。

 その割に知識に(あら)が見受けられる。

 仮定の話は得意じゃないが

 個人的見解を述べるならば ー

 彼は()()()ではないのか?」


ブバーーーーーっっっ!!!

魔女、口の中のおにぎり、ラースに向けて全放出(ブッパ)


「なっっごほっっごほっ!!」

咳き込む魔女をなんと冷淡な目で見つつ

顔に張り付く米粒をひとつひとつ、取り払い

ラースは続けた。

「何を驚く。

 あなたの言う“神木”の話が神話上のもので

 ないならば、つじつまが合う。

 このエレーミナルス王国は死後の世界を信じている。

 物質と霊魂は永遠なるもので、宇宙の実体は

 絶え間ない変動する中で、不変である。

 ゆえに、人間の魂も()()するのだ。」

魔女、驚きすぎて口ポカン。

「て、転生なんてできるんだね・・・」

ラースの説明が脳みそダダ滑りすぎて

まったく入ってこない。

何か言おうとして、他人事のようにつぶやいた。

お前が転生者(そう)じゃん。


「簡単なことではないが

 魔女、ー あなたの力をもってすれば。」

米粒を魔女に向けて投げてきた。

「いだっ」

顔に当たった。

「ディオが、過去の記憶すら持って

 転生したと言える。」

「へ、へえ〜・・・

 (そんなことできんの?!

  っていうか、私は??

  私はどうなの?!)」

そう思いつつも、魔女の心のどこかでは

さっき固めた意思が、モリモリと大きくなって

「(私もそうなんだよ、ってラースに

  言いたいな、記憶はないけど。)」

結構、気持ち切り替わってた。


ラースはしばらく動きを止めて

魔女に向いた。

「魔女!!

 こんなところでゆっくりしてる場合じゃない。

 祠へ急がないとー!」

「え?」

「預言者がディオのことを知ったらまずいぞ」

「よ、よよ、預言者って誰!」

「知らん、だがあいつらも“弓”を狙ってる。

 もしディオが転生者だと知れば、殺すだろう。」

「え?!それはまずいじゃん!

 ディオを助けに行かなきゃ!」

「まだ新月を迎えてない、あいつはまだ大丈夫だ。

 ーだが、今夜は新月(それ)だ。」

「?!予言の日じゃん!っ急ごう! 」

エレーミナルス王国の空が茜色に染まっていた。


お、こうしちゃおれんな!

魔女はおにぎりを無理やり口に詰め込んで

ネズミの頬袋みたいな顔しながら、走り出す。


足取りは軽い。






「(また、あの妙な食い物を

  魔女は差し出すだろうか。)」

聖獣バロンは、ディオを背から下ろしたあと

ふと思った。


魔女をみつけたのは

偶然ではない。

気配がする。魔女の気配だ。

老婆に変化してない。


動き出したのはわかっていた。

何やら企んでいるとも。


魔女ー、

お前に聞かねばならないことがあるんだ。

ー 俺は。


思い出していた。

               

「   ?   」

祠の前は少しばかりの広場だったはずだが

ー 道? 違うな、森の一部が燃え盛って消えた。

なんだ? 道なんてなかったはずだ。

頭上遥か見上げ、近くの高い木を目指す。

「(あれでいいか)」

そこへ登り、燃えた森の全貌を見渡そうとした。


そこから見えたのは ー


わめく 竜?いや、違うな

あれは古代竜だ。

天と地を分ける戦いをした、黒竜だ。

「(? なぜわめいている)」

何をしてるんだ?変な動きだな。

使い魔が魔法を使役してるようだ。

あれはー、()()()()()()()()()な。

魔法剣で青雷のレイピアを使うつもりか。

剣の刃先は黒竜に向いているが

攻撃もせず、黒竜は手を組んでる。


「(な ぜ ? )」

こうしていても仕方ない。

魔女の近くへ行ってみるか。

元よりそのつもりで ー


「うっ、うわぁぁぁ〜〜〜〜っっ!!!」


近くで誰かが叫ぶ声を聞く。

「(ー この声は)」

下を見れば、人間か。

若い男だ。

「(こいつ、どこかで)」

ー?

追われてるのか?


不死人(アンデッド)はよろよろふらめきながら

男をを追っている。

男の足は速いようだ。

だがその先を見れば

不死人(アンデッド)はいる。

武器などは所持しているようには見えない。

体力切れの時点で、殺されるだろうな。


「(人助けをするつもりはないんだがな。)」


ちょうど真下に来た男の前に飛び降りた。

「ゔわっ!」

びっくりしたのか俺の後ろで尻餅をついて倒れ込んだ。


不死人(アンデッド)は男に襲い掛かろうとしたが

俺は喉元めがけて牙を剥いた。

散り散りとなった不死人(アンデッド)を見て

後ろを静かに振り返る時にはー 


気を失って、伸びてやがる。


「(厄介だな。

  俺は人助けをするつもりなんてないんだ。)」


男を背に乗せ、魔女の気配のする方へ走る。

ー もう変化を解いたのか?

使い魔の青雷のレイピアは魔女(黒竜)に何をしたんだ ー


「(古代竜を使役するとは・・・。

  あれでは誰も手を出せまい)」

魔女に妙な興味が湧いた。


「(魔女の気配が近い、

  ー 道に出てみるか。)」


見つけた。


グゥォギュルゥゥゥ〜ッッ!!


腹が減った。

もうかれこれ、十年以上

食い物を食ってない。


ところが、魔女が俺に寄ってきた。

鼻先をくすぐるような香りを漂わせて


「(その包みには何が入っているんだ)」

うまそうだ。

なんぞ、それ。


ゴギュュゥルルルゥゥ〜〜っっ!!


俺の胃袋は正直者だ。


俺は魔女の天敵だ。

俺は魔女の天敵だが

俺自身は、魔女を滅することを使命にしてるわけじゃない。

攻撃されたら、誰であれやり返すだけだし

ときに選ばれた”力”を携える者が

俺にお供えしてくるから手伝うだけだ。


俺に、魔法は効かないし

俺を誰も、操れないし、縛ることなど不可能だ。


俺は 聖獣 バロンだ。


魔女だけだ。魔女は、俺の力を制御してくる。

魔法の力で、俺を押さえ込もうとする。


魔女は唯一、俺の 天敵になる。


俺に、魔法は効かないし

俺は、魔法を使えない。

ただ、純粋な”力”が 俺には ある。

なんだ?

この魔女にはー、感じない。


だが、この魔女には

なにかある。思い出せそうなのに

何かが邪魔をして、思い出せない。


魔女の白い手が震えてる、その手に乗せられた何か。

ー なぜ震える。

お前が震えるところなんて見たことはないし

その三角形はなんだ。


その魅惑的な 三角形は なんていう食べ物なんだ。

匂いが強くなる。

香ばしい芳醇な香りと

塩気の香りが混ざって、混ざって俺はー


ー 舐め回したい。

ー 一口でイケる。

ー それは勿体無いから、3回ぐらいは噛む。

吹き出す声が聞こえた。魔女だ。


「ぶっ、ふふふっ!お腹、空いてるよね?

 召し上がれ〜。これ、”おにぎり”って言うんだよ。」


その魅惑の三角形は

”おにぎり” と 言うのか。


おにぎり

力強い良い響きだ。

”にぎり”の部分が、いい。

”にぎる”って言うのが、

”たぎる”に似てていい。

”おに”と”ぎる”に分けてもいいが

”お、にぎる!”って言うのがいい。



しばし、魔女の震える手に乗ったその”おにぎり”を見る。

ー魔女の目をチラ、と見た。

魔女は手の上の”おにぎり”を見てる。ー 


魔女は嘘をついてない。

心音が緊張の音を奏でているだけだ。


もし仮に毒であったとしても、俺に毒は効かない。


「(魔女、ー お前の、心、受け取るぞ。)」


そして、俺は今 ー







咎の雄牛は、もういなかった。


ディオが沼地に到着したときには

もう、いなかった。

「(遅かったのか?)」

マッハで走ってきたのに。


焦るイケメン勇者(仮)ディオは

先んじてこの場にいた男を見つけた。

「(誰だ?こんな男はこの王国にいない。

  騎士みたいな格好してるな・・・)」

男の手には、雄牛の角が握られていた。

「あっ!!それ! 」

「?」

男はディオに気付いたが、黙っていた。


「そっその雄牛の角を譲ってほしいんだけど」


男はディオをじっと見た後、一言。

「だめだ。俺は勇者だから、これが必要だ。」


「は?」

おい待て、騎士みたいなお前、勇者なの?

あれ?なんか話違くね?

っていうか、ー

「おっ俺だって勇者だからなっっ!!

 違った、俺なんて魔女さまの勇者だっっ!!!

 今は農民だけどっっ!!」

聞かれてないけど、対抗心が生まれた。



ディオは”こんらん”してる!








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