表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第一部 5月の森 エレーミナルス王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/24

獣人のサンザシ②




 ー 獣人は 変化する。

 正しくは 獣人は二体に分かれる。



もうひとつの問題、とは()()なのだ。

獣人は二体同時に攻撃を仕掛けてくる。


二体に分かれてからが本番。

どっちが本体かわからないまま

攻撃しつつ隠れたりしながら

戦うのが定石である。

動きが俊敏でHPが高く魔法も弾くやつ、というのが

森の遺跡のボス、獣人である。


だがこちらは

イケメン勇者(仮)ディオ(今は農民)と

しゃべれる使い魔ネズミのラースが控えている。

そして何よりー


ゲームの知識だけはしっかり持ってるが

魔法を使うなら接吻しないと使えないのに

使用時間がたったの3分という

最強のポンコツ魔女、である。


さて、どうなる。ー




 すでにディオとラースは、獣人の攻撃をかわしながら

逃げ回っている最中だ。

ラースは持ち前の俊敏さで、獣人を翻弄していた。

遺跡が石だらけなのが幸いなのか

獣人の攻撃を避けるのにも使える。

気を付けないと、石に躓いてしまう。


「おっと、あぶねっ」

躓きそうになるディオは前転しながらこれを回避。

ディオは獣人の攻撃も、石の邪魔もうまいこと避けている。

ラースは自分が隠れるたびに

二体がディオに向かわないよう、獣人を挑発する。



「(もう少しだからー 頑張れ!)」


そして、この二体のうち

どちらが本物かわかるために必要なのは

獣人の体力を50%削るか、もしくは

五月の薔薇で編まれた王冠を捧げること。


王冠を捧げるための器

ー それがお盆だ。銀の盆だ。


「(ソロプレイなら、攻撃一択。

  こっちはディオもいるしラースもいる。

  それなら手分けしたほうがいい。

  何回かお盆ルートやってみたけど

  あれはしんどかった。

  獣人の攻撃がうざいし、動きが速いから

  追いかけっこになるだけ。

  倒すのにアイテム全部使ったのに

  一時間かかった・・・、もうやりたくない。

  だから、ふっふっふっふ〜。

  私は、この瞬間を待ってた!!)」

実際は拾った銀盆が真っ黒で

おいおい、ほんとにこれお盆かいな?と

若干魔女は疑ってみたが、他にそれらしいものを

他に確認できなかったので

「(あー、もういいよ!これで行く。

  いい、いい、これ、お盆。

  お盆てことにしよう。)」

という、なんとも雑な気持ちで

五月の薔薇の花冠を置いた。

「(これはお盆だという気持ちが大事。)」

そだね。


ー すると。


獣人、第二形態、顕現さる。


メリメリブチブチと何かが裂け、切れる音に

獣人が分たれた。


「ーっくるぞっっっ!」

ラースの大声と同時に、獣人から強い風が巻き起こる。

それは空気を伝わって波動となる。


「ーっぐっ風がっ!!!」

地面の土と砂塵が獣人から立つ暴風に

ディオは目を細めた。

獣人、二体のうち

本物の獣人の背中に

”サンザシ”が紅い紐で結われているのが現れた。


波動が二つに分かれ、遺跡の中を走る。

「ディオ!! 右だ!右が本物だ!!」

ラースの声に、必死に目で追う。

影だけがかろうじて見えた。

「!?み、右?!

 右ってどっちだ?

(俺から見て?ラースさんから見て?)」

ディオは大きな風のうねりを背中に感じた。


「!!!!」

ドガっっっ!!

背中を蹴られたディオは衝撃で前に倒れそうになるも

振り返りざまに、回し蹴りをお返しした。

「!?っっなに?!!」

獣人に攻撃は阻止され

逆に足首を持たれ、ディオは力のままに投げられた。

「ーっっがっっ!!」

地面を転がるディオはなんとか起き上がる。


魔女はそんなディオを見て

不思議に思う。

「(?・・・剣持ってるのに

  なんで蹴り入れたんだろ。

  振り抜いたほうが攻撃当たるのに。)」

しばらく観察してたが、ディオはあまり剣を使ってない。


「(なんでだ?)」

だがその謎の理由は、すぐに訪れた。

汗が落ちる額を腕で拭ったとき

ディオがつぶやいた声が、風の隙間を縫って

魔女の耳に届く。


「俺だって、わかんないのか。

 気付いてくれよ・・・」


魔女は、はっとした。

「(だから、獣人を倒しに行くってとき

  ディオは浮かない顔したのか。)」


ディオは二体を相手に

自慢の足で戦い始めた。リアル鬼ごっこだ。

捕まれば、獣人の鋭い爪で皮膚が切り裂かれる。

ディオも当たらないように必死だ。

獣人が二体に分かれてから5分は過ぎようとしている。

「(・・・ 隙ができるまでは耐えろ・・・)」

ラースは身をかがめ、構えた。


だが、ディオはこの戦いの中

剣をしまい、本気で逃げ始めた。

「(動きは覚えたぞ、もう見抜いた。)」

ディオは自信があった。

「(祭りのかくれんぼだって

  鬼ごっこだって、

  アンデリダマラソンでだって

  負けたことはないんだ。

  誰にも捕まったことはないし

  王城主催の体育祭だって毎年賞状もらってる。

  ー 俺なら、できる。)」

ディオはラースに目配せした。

「(こっからは俺に任せて)」

おネズミさま、ハラハラ。

二体同時に獣人が前から後ろからディオを攻撃しているのに

ディオは背中に目でもついているのか、華麗に避けている。


額の汗が頬を伝って落ちる頃。


「っはっ!!」

ディオは、そのうち一体の胸を肘鉄突いた。

『グゥアッッッ!!』

みぞおちクリーンヒットされた獣人Aは

バク転をしながらディオから離れようとする、のを

ディオは追いかけ、獣人Aの両足にタックルかます。

獣人Aは膝から落ちて、顔面強打。

二体が離れた。

「今ですっっ!!!ラースさああんっっ」

もう一体の獣人B、ノーマーク。


その針の穴を通すような隙間を ー

ネズミが 獣人Bの背中を滑るように走った。


ー するん。


その口には紐に結われた

真っ赤なサンザシが咥えられている。

「やった!」

ディオはもう一体の獣人Aを押さえ込んでいる。


「ラアアアアーっっス!!!!」

名を呼ぶ魔女に向かって、ラースは飛び込む。


金色のネズミが、魔女の黒くたゆたう髪に

吸い寄せられる。

紅い紐とサンザシが

魔女のすべてを色付けて

“美しい”、

とディオは思った。


辺りが真っ白になる。

光で包まれて、何も見えなくなった。

眩しくてディオは目を開けられないのに ー


魔女の声だけが、はっきりと ー

「 お す わ り!!、 伏せっっ!!!」

聞こえた。


「(おすわり? 何が起きたんだ?)」

ディオは目をようやく開けた。

獣人A、Bが地面に体をベタッと貼り付けられた。

「え?あれ?

 俺が獣人のこと捕まえてたのに?」

魔女の足元に、二体が“伏せ”してる。

『っっっグゥルルルゥゥ〜〜〜っっ』

『フゥーーーっっ!!』

不満そうな鼻息と唸り声を出す。


ラースは魔女の肩に乗っていた。

「獣人からサンザシを取ってしまえば

 魔法は使えるようになるからな。」

言うと、ディオから目を逸らした。

事故接吻(ブッチュウ)したのバレたくない。


「え?どういうことですか・・・」

ディオはまだわかってない。

魔女は獣人A、Bに向けて両手を広げた。


「治れ〜ぇ、治れ〜ぇ、

 呪いよ、解けろ〜ぉ〜ぉ! 」

え、それマジでやってんの?

目なんか閉じちゃってさ

あげた手を上下しはじめた。そんなんじゃ

絶対治らないし、呪いも解けると思えない、のに

魔女の声の後ろで、魔女の声が重なる。

 

「 無窮(むきゅう)の光よ 喜びの花輪を 

  深淵の主に謳われる祝福を

  荘厳なる扉に立つ彼らには光柱の盾を 」


ラースは確かに聞いた。

「あれは、ピスティス・ソフィアの宣誓詠唱か?

 まさか、魔女が?・・・」


だが眼前の魔女は、そらもう一生懸命に言うわけさ。

「治れ〜ぇ!呪いよ、解けろ〜ぉ!」

って。

本人、本気よ。上下してる腕だって辛いはずだ。

だって  

獣人A、Bが光に包まれたもの。

「え」

「?」

うそでしょ?

ファンタジー、どこいった。

いやいや、諸君。


これこそファンタジー。


魔女、まだ目閉じてる。

あ、腕疲れたから手首振ってる。




魔女の前にいるのは ー、

王城の城門を護る、衛兵2人。

 

「ラリー?、ロビン?? 」

ディオは2人に駆け寄った。

2人の衛兵はポカン、として

体に怪我もなく、すぐに気を取り戻した。


「ー?っディオ!!

 え、ディオこそなんでここに? 」

「こ、ここは? 俺たちは魔女に ー」

2人の衛兵、ラリーとロビンは魔女を見て固まった。

「魔女、さま?」

ディオも魔女を見る。

もう手首しか振ってない魔女を、見た。


ここにきて魔女、ようやく目を開く。

「あっ!!ほらっ!!

 やっぱほらっラース見てよ!ね?

 うまくいくって言ったじゃ〜ん!!」

「・・・魔女、そうじゃない。」

「え? 」


衛兵2人は、魔女をジーっと見てる。

そんな視線に、魔女は察した。

「(あ〜、このパティーン、ね。

  はいはいはい、わかってますよ。

  私は嫌われ者ですからね〜、と)」

1人の衛兵が口を開く。

「ま、魔女さま? 」

つられてもう1人が話し出す。

「このひとが、あの魔女さま? 」

すかさずディオも割り込んだ。

「ラリー、ロビン、ちょっと聞いてくれ」

ディオは2人に何か説明しようとしている。


だが、魔女は

「(ー ディオ、それは土台無理だよ。

  だって、私は最悪の ー)」

口にこそしないが、そっと思う。

ところがどっこい

「魔女さま!!とうとうこの日が! 」

「え? 」

「お待ちしておりました!ー 魔女さま!」

「え?ー なんのこと、で、しょう」


2人は顔を合わせて、また魔女を見上げた。

「ー 王城の皆は、勇者を引き連れて

 魔女さまがくることを待っています!」

「は?」

今度は魔女がディオを見た。アイコンタクトだ。

「(知ってる?)」

「(わからないっす)」

ディオも顔を横に小さく振りつつ、困惑している。

ラースを見る。

「(知らんがな)」

あからさまに首を横に振った。


歓迎モードですが

魔女だよ?


「ちょっと、何のことか説明してもらえる?」

魔女はラリーとロビンの前にしゃがんだ。

(以下、ラ:ラリー、ロ:ロビン 表記)

ロ:「はい!」

ラ:「じゃぁ俺が」

ロ:「お前っ、俺が聞かれたのに!」

ラ:「ロビン、お前説明下手くそじゃん」

ロ:「あん?てめー、ラリー、魔女さまの前だからって」

ラ:「だって魔女さま、こんな、こ、モニョモニョ」

ロ:「いや俺見た時はでっけえ熊だったし」

ラ:「あー、それな」

「ゴホン!」

ラースが大きな咳払いをした。

2人はラースを見て、首を傾げた。

「なぁラリー、俺まだ魔法かかってんのかな」

「じゃあ俺もだ。目の前のネズミが咳払いしたもの」

「お前もかぁ〜。」

「俺もだぁ〜」

もう、だめかもわからんね。

「ネズミですが何か?」

ラースは首を傾げた。


「!!」

「おい、2人ともいい加減にしろ。

 この()()()()()は、魔女さまの使い魔のラースさんだ」

ディオ、ナイスフォロー。

「おぉ、ディオ、お前かっこよくね?」

聞け、若人。

「お〜、ほんとだ。騎士みたいじゃね〜かよ。」

騎士じゃない、イケメン勇者(仮)だ。今は農民な。

「いや、だからこのネズミさまはラースさんと言って」

そうだそうだ、しゃべるネズミだぞ〜。

「そんな格好してたら、お前また祭でモテモテじゃねーか」

そんな格好じゃなくても、ディオは()()()になりますので。

「ずっりいよな〜ぁ。毎年いっぱい告られてるくせによ〜」

ああ、ヤダヤダ。

男の嫉妬って見苦しいわぁ。


もう、収拾がつかない場合はどうしたら ー


「ディオは勇者で、私の仲間ですよ?」

魔女の一手。ー 話を戻す。ー が

「えぇ??!ディオ、まじか!!」

「やっべえ、お前、勇者とか無双じゃん!!」

「まじかよ〜ぉ、かっこいいし、足速いし、勇者っても〜ぉ〜

 も〜ぉ、俺が勝てんのなんて()()()()()ぐらいだわ〜」

「バカ言え、かくれんぼだってディオは無双だわ。

 10年連続鬼になってねえよ。」

「あー、もう帰りてぇ。」

「祭で飲んだくれるしかねーわぁ〜」

「あれ、俺ら、なんでここにいたんだっけ」

「あー、それな」

より、ひどくなる。


ラースはサンザシを持ったまま、呆れっぱなしだ。

2人はラースの手のサンザシに気付いて言った。

「はっ!そうだ。」

「そういえば魔女さま!王城へ急いでください!」

「違うだろ、ラリー!ご神木が先だ!」

「違うって!ご神木は次だ!ー?あれ、どっちが先だっけ。

 俺らの呪いが解けたら、何って言われてたっけ。」


ディオは2人を見て2人の肩にそれぞれ手を乗せた。

「ラリー、ロビン。

 俺はお前たちが大好きだよ。本当に。

 だけど、大事なことを忘れたら、衛兵失格だろ?

 特に・・・」

言いながらラリーとロビンの制服の胸ポケットから

はみ出ていた紙切れを2枚、取った。

メモ書きのようだった。


『ラリーへ:俺が魔女に会ったら伝えること』

『ロビンへ:俺が王城地下の鍵を渡すこと』


ディオはその紙をヒラヒラさせながらにっこり。

「書いたことを忘れてるってのは、論外だな。」

たしなめられてるのに、あら不思議。

2人は目を丸くしたまま顔を赤くした。

照れたのではない。

何かが芽生えそうになった。

何だろうね。


「(今、女子の気持ちわかったかも)」

「(トゥンク。もう完敗でいい。

  もっと怒ってほしい。)」

男ですら落とす男、それがイケメン勇者(仮)ディオ。


そんな衛兵2人とディオを見ながら

魔女は思っていた。

「(魔法、使えてよかった。

  ギリギリだったけど。

  ラースの鼻、食べちゃうとこだったよ。

  作戦うまくいってよかった。

  ディオは知ってたんだよね。

  獣人が友達だってこと。んー、でも・・・)」

何か違和感を感じた。

ディオは魔女に振り向いていった。


「魔女さま、魔女さまは一度

 祠へ行ってください。

 ー、俺が咎の雄牛に行きます。」

「え?だってさっき、祠は行ったんじゃ・・・」


「俺じゃ入れないとこがあります。

 そこには“弓”があります ー」


魔女は心臓が凍りそうな気持ちになった。

だって、知っていた。

「(・・・弓はまだ取れないはず。

  だって弓を守ってるのは

  アンデリダの精霊だから・・・、

  そしてその弓を取ることができるのは

  ディオじゃなく、3人目の勇者だけ・・・。

  なんでそのことをディオが知ってるの?)」

否定したい不安要素が浮かぶ。


サブイベントの発生。


そのとき、勇者は選択を迫られる。

()()()()()()()()()、もう一度祠に行くと

地面に大きな穴が空いている。


そこで表示される、選択肢。

()()()()()()か、ー。』


どちらの選択肢を選んだかによって

メインイベントで出現するキャラが変化する。

そして、()()も、仕組まれたものだと露見する。


「(ひょっとして・・・

  ディオは私を嵌めようとしている?)」


そう思ったら、魔女はディオの顔を見れなくなって

下を見た。

「(嫌だ、ディオを疑いたくない。

  でもこのタイミングで祠に行けってことは

  弓をとりに行くってこと。

  でもなんで・・・?ディオには必要ないじゃん。

  やっぱり、裏切られるのかな・・・)」

頭を殴られたような衝撃と

そうでないと良いという願いが

気づかないうちに、下唇を噛ませていた。

「魔女?」

ラースが足先に乗った。

「ラース・・・。」

「ディオがああ言ってる。

 雄牛は任せて、私たちは祠へ行こう」



魔女が顔を上げると

ディオは、静かにほほえんでいた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ