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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第一部 5月の森 エレーミナルス王国編

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18/18

獣人のサンザシ①






それは贈与と奉献。


獣は森林を徘徊し、森林の奥深く獲物を求める。

若葉や木の芽を貪り、空地や谷間で草を喰む。


神聖なるディアナに丁重な許しを問わず

これらを殺すことは

森への冒涜であり、女神ディアナを穢す行為だった。


ディアナの忠実なる猟犬に、戴冠を。

偉大なる森の王に、祭祀の杖と剣を。


人は自然と ともに あり

その恵みを 人は 感謝を もって 自然に帰す。





「おまっ、金のナナカマドを・・・」

おネズミさま、絶句。

「っ魔女さまっあんなもの飲んで大丈夫ですか?!

 はやっ早く吐き出した方がいいんじゃ!?

 あ、でも欲しかったんですよね?!」

イケメン勇者(仮)、ナナカマドの中身知ってるから

親切心と罪悪感がせめぎあう。


「大丈夫だよ〜、ほら、なんともないよ。

 ん゛ん゛っ、なんか()()()()()()かな。」

言いながら、魔女は一枚だけ薔薇の花びらを口にした。

「(口直し、口直し〜っと。)」

魔女は気にしてもいないらしい。

貪り大蛇も気の毒なことだ。

まさか魔女に、ティンコ食われるなんて

思ってもいないだろう。


魔女の腹でも壊してやれ、無念のティンコよ。


 森の遺跡に向かって歩き始めて数分。

「あ、ディオ、ちょっと止まって。」

「はい、なんですか? 」

「森の遺跡に入る前に作戦の確認っていうか。」

ディオは魔女に寄ってきた。

魔女は、寄ってきたディオとしっかりパーソナルスペースをとる。

イケメン寄ってきたら、一歩引く、これ喪女の礼節。

埋まる気がしない物理的距離感。

「中ボス、あー、えと獣人のことなんだけど。」

「獣人・・・、はい」


ディオの顔が曇ったのを、魔女は見逃さなかった。

「(・・・なんかあった?でも

  次の作戦にはディオがいると助かるし。

  ディオも連れていってほしい、って言ったし

  覚悟はあると思う。それに・・・

  貪り大蛇から逃げないで

  ナナカマドも持ってきてくれたし

  私の話を聞くために止まってくれて

  近づいてきてくれたし

  お祭りのパイとか唐揚げ食べさせたいって

  言ってくれたし

  花束くれたし花冠褒めてくれたし

  花冠くれたし似合うって言われたし優しいし)」

 自分に有利な“情報”(だけ)を(隅々まで)かき集めて

ものすごく勇気を出してみることにした。

「(友好関係を加速させたい・・・っ)」

政治家みたいなこと思いつつ

()()()()()()、発動。


「森の遺跡も、その〜ぉ。

 手伝ってくれると嬉しいっていうか〜。

 ディオがいると百人力っていうか〜。」

魔女っ子、驚愕のモジモジ。


おネズミさま、デバフ(ダメージ)絶句。

しかし、イケメン勇者(仮)この魔女のキモさをものともせず

「もちろんです!!手伝わせてください!」

むしろ乗り気。

「え、本当!?ありがと〜!!

 あ〜、よかった〜。あのさ〜

 最初の作戦では私とラースだけだったからぁ

 うまくいくか心配だったんだよね。」

勇気出してよかったね。

でもそれはモジモジがきいたんじゃなくて

ディオの人間としての優しさだと思うんだ。

「・・・きいてないぞ、魔女」

ラースはようやく口をきいた。

あれ、デバフ(ダメージ)効いてなかった?


「あ、そうだったけ。ごめんごめん。

 でもこの作戦はうまくいくよ!!

 あのね、獣人ってさ

 すんごい素早いの〜。」

「はい」

「で、獣人は()()()()を持ってるの」

「サンザシ? 」

魔女の急な作戦変更にも絶句したかったラースは

鋼のメンタルをもって、これに答える。

「魔除けのひとつだ。」

「え?ナナカマドとどう違うんですか?」

「ナナカマドはもともと“生命の樹”と言われてる。

 ()()()()()()()()()()()()()的意味合いが強い。

 春の到来を早める力があるとも言われてるが

 サンザシは、()()()()()()の意味合いが強い。

 アンデリダの精霊のシンボルでもある。」


お〜、おネズミさま、博識じゃ〜ん。

魔女の精神攻撃にも負けないのは

さすが使い魔だからだね!


「へえ〜、なんかすっげ・・・。」 

ディオは感心しきり。

「それで〜。ディオと〜ラースに

 やってほしいのは〜。」


魔女はギリギリまで考えて考えて

出した作戦を発表。

「(アイテム使っても戦えるんだけど。

  一番効率良くて、安全な方法は・・・)

 ()()()()()()()()です。」


聞こえなかった?

()()()()だよ、()()()()


「   え   」

ディオ、耳を疑う。

おネズミさま、自主規制(口をききたくない)の絶句。

魔女はラースの静けさに、思わず肩を見た。

「あれ? ラース?」

肩にいつも陣取って、ちょっと偉そうにしてる

あのおネズミさまがいらっしゃいません。


どこ行った?

キョロキョロ探すもいない。


ラースはディオの肩にいた。

おのれ、寝返ったな、ネズミ。


ものすごく冷ややかなラースの声。

「そんな方法が作戦?鬼ごっこ?

 ・・・馬鹿にしてるにも程がある。

 やっぱり()()()()()()()食ったから

 頭がおかしくなったんだな。 」

「ちっっ違うよ!!馬鹿にしてないよ!

 これでもすんごい考えたんだよ!!

 ちゃんと考えたんだから!!

 あと、ナナカマド食べたから頭がおかしいんじゃないよ!

 前からちょっとおかしいだけだよ!!」

認めるのか。

「ー ほう、どのような作戦か教えてもらおうか。

 あと薔薇も食ってたの、知ってるからな。」

ギクっ。


「え、えっ〜っとぉ。」

魔女はなんとなく申し訳ない気分で説明をする。


ディオは魔女の説明を最後まで聞いたあと

吹き出した。

ラースは話を聞いて肩に座ったら、お尻がはみ出た。


「ぶっふっふっふっ!いいですね!

 面白いっていうか、それがいいと思います。

 俺は賛成ですよ、魔女さま!」

イケメンは、発言に余裕があるよね。

なんだろね、それ。


魔女は、はみ出たラースを見た。

「あの、ー ら、ラースは、どうかな?

 いや? 」

ネズミだからって舐めんなよ。

おネズミさまだって、金色の毛並みあるからな。

ケツはみ出すくらい余裕あるわ。


ラースは煮え切らないため息を大きく吐いた。


「〜〜〜〜っはぁ〜〜っ

 ・・・それしか方法がないわけじゃないだろう?」

「ないわけじゃないけど

 効率的だし、時間的にもその方がいいと思う。」

「確実性は」

「あるよ!」

「十分で倒せるんだろうな?」

「が、がんばります!」

「・・・花冠の準備を」

「? 花冠?もうあるよ?」

魔女の察しの悪さが、ラースを苛立たせた。


「時間がないと言っているんだ!行くぞ!!」

「え?うそ、やってくれるの?」

「・・・使い魔だからな」

「ほ、本当??ーよかった〜ぁ!ありがとう!!」

「まさかこんなことをするとは」

ラースのはみ出たお尻がこれ以上落ちないように

ディオはお尻を支えた。

「けどラースがいてくれないと、うまくいかないから

 やってくれると嬉しいんだよ!」

「そうですよ、ラースさん。

 うまく行くかどうかは、ラースさん次第ですよ!

 ラースさんはただのネズミじゃないです!!

 魔法も使えるし、作戦の切込隊長じゃないですか!」

ディオのヨイショが効いたのか

さっきまでの冷ややかさは消えて

やや、胸を張っているように見える。

 

「仕方ないな。」


だって。

ネズミ、褒められるとやる気出すタイプ。






遺跡の前に出た。


遺跡、というにはすでにその原型はなく

雑草が生い茂る地面には積まれた石壁が崩れ

所々にその面影を残すだけの、ー 寂しい場所だ。


魔女が作戦を変更したのには

いくつか理由があった。

「(なにせ、獣人の体力って

  削るとなれば長期戦は避けられない。

  これこそ、正攻法では勝てない。

  私は魔法が使えないし、アイテムだけだと

  結構厳密なアイテム管理が必要になる。

  持てるアイテムにも限界があるとなれば

  獣人戦は短期決戦が、必勝法。  

  ー 今のディオは強いんだけど

  剣だけで戦うのは得策じゃないし・・・

  ラースに魔法は使わせない。)」


なんか割と考えてて、びっくり。


魔女たちは遺跡前に巡らせられている結界に気付いた。

「これ? 結界って。」

結界は森の遺跡を蜘蛛の糸で取り囲むようにある。

パッと見はよく見えないが

集中すると蜘蛛の糸の内側には入れないように

膜が張ってあるようだった。


「ああ、魔女、花冠を持って手をそこにー」

花冠が光った。

花冠の薔薇から放射状に結界が解かれていく。

同時に ー。


グゥルルルルル・・・・っ


遺跡の奥の方から低い唸り声が聞こえてきた。

ー 獣人だ。

唸りながら、獣人は遺跡の石の間を

獲物を探すように警戒している。

「二足歩行の獣人だね」

コソコソ魔女。

「俺よりでかいな・・・。」

デカさ対決中イケメン勇者。


「ー ディオ」

ラースがディオに話しかけた。

目線は獣人を捉えたまま

ディオは聞いている、という顔をして

小さく頷いた。デカさ対決は置いといて

並々ならぬ緊張がディオにはあるらしい。


ラースは魔女の作戦を元に、言った。

「この作戦は最初の五分で勝負が決まる。

 十分と魔女は言ったが、おそらく

 体力はそこまでもたないだろう。

 だから、私が最初に囮になる。

 君は獣人の動きを見極めろ。いいな?」

おネズミさま、覚悟の囮計画。

「でも、ラースさん、あなたにはやることが」

「ー 私は最強の魔女の使い魔だ。」

“ここは俺に任せて、お前は次へ行け”スタイル。

やだ、おネズミさま、かっこいい。


そんなことを話しているなんて魔女は知らない。

なぜ魔女が獣人に魔法を使わないかって言われたら

魔女が魔法を使えないから、というのは建前で ー

ーそれが、この獣人戦の対策であり

ディオには全力で走り回ってもらう必要があるのだ。


その理由が ”サンザシ”だ。


サンザシには魔除けの意味がある。

この魔除け、ナナカマドと同等の働きがあるけれど

サンザシに関してはこれー。


”魔法”に 有効。


ナナカマドは“命を守る”魔除けだ。

雷だって避ける。


でもサンザシは違う。

“魔術を弾く系”の魔除けだ。


それを獣人が持っているのだ。

なかなか魔法使い泣かせの中ボスだ。

それだけじゃない。

獣人にはもうひとつ問題がある。


「ラースさん!」


ラースが飛び出して、獣人の前を横切る。

「!!!」

獣人はラースに気付いた。

標的を絞り、風のようにラースを追った。

獣人の素早さは、ゲーム内ベスト3に入るだろう。

しかしこれにラースは遺跡の石の隙間を縫って、高くジャンプし

近場の木に身を隠れた。

獣人はその木に向かって鋭く尖った両爪を横に切る。

木は音もなくスライドして、倒れていく。

ミシミシと倒れる音に混じって

ラースは枝を踏み台に弾みをつけ

獣人の眼前をわざと抜けるようにジャンプし

交差した枝に飛び乗り、ー またさらに

獣人の額を蹴りあげ、獣人の背中へと回り込んだ。



「(す、すごい、ーラース、すご)」

魔女はラースのすばしっこさと

華麗な跳躍に口あんぐり。

ラースは獣人の攻撃をすべてかわしている。

あ、獣人の足の間をくぐった。


すばしっこいから捕まえられず

獣人はイラついている。

次第に雄叫びを上げた。

その大きさに、魔女は、はっと気付く。

「(いかんっ!ボケーっとしてた。

  わ、私もやらなきゃ)」


魔女のやること。

「(そうだ。

  私には私のやることがある。

  この花の王冠を ー。)」

花冠を両手に持つ。



「ディオ!! いけ!!!」

ラースの叫ぶ声が聞こえた。

「 っっはい!!!! 」

ディオは走り出す。ー 獣人に向かっていた。


魔女の視界に飛び込むディオの姿に

違和感を覚えた。

「(?ー あれ?・・・なんか・・・!あっ

  け、剣持ってない?ディオ!剣がない!!

  え?ど、どうするつもり?)」


なんと、イケメン勇者(仮)ディオは ー


獣人にタックルしに行った。


「?!」

そのまま獣人とディオは団子状態になって転がる。

転がりつつ、体を反転させた。

さらに

ディオはうつ伏せになった獣人の背中に乗って

その動き、なめらかに

首から顎を掴み、獣人の体を海老反りにする。


「!!なっっ

 (そ、それ、何かの技じゃ・・・)」

魔女、自分のやること忘れて釘付け。



説明しよう。

ディオが行っているのは、キャメルクラッチという。

プロレス技だっ!!

あんまり引っ張りすぎると

首と背中の筋とか骨とかやられるから

獣人以外にはかけちゃダメだよ!!



海老反りになった獣人から

低く苦しそうな声が漏れる。

ディオもまた顔を真っ赤にして

獣人の首を絞めながら引っ張り上げている。

すごいな、ディオ。


『〜〜〜グゥゥゥっ〜〜っっ!』

「(くそっ!力が、ーっっ)」

唸る獣人の力が込められ

ディオは体全体、弾かれた。


地面を転がり起きながらディオは笑っていた。

「あ〜、力負けしちゃったか〜。悔しいな。」

追いかけてきたラースはディオの肩に乗る。

「当たり前だ、ー 遊びじゃないんだぞ。

 獣人の動きは見たな?」

「はいっ!」


ラースの鼻が鳴る。

「そろそろだ。」

「ー はい。」

ディオは剣を抜いた。ー 


「(ディオ見すぎた!時間ロスしちゃったよ〜!

  探せ、探せ!)」

遺跡の中を探す。

「(ゲームの中でもランダム配置だったから

  遺跡の中探すの大変だ〜!)」


魔女が探しているもの。

ー 聖なる 銀盆。

お盆です、お盆、銀の盆。

夏の行事じゃない。

ものを載せる方のお盆だよ。


銀盆は遺跡の中3ヶ所のうちどこかにある。

遺跡の端から端を行かなければならないので

意外に遠い。

だが、ここにあるに違いねえ、と

思われるうちの2ヶ所になく

3ヶ所目を当たっているところだ。


獣人の注意をイケメン勇者(仮)とネズミが

精一杯引いてくれているおかげで

このハズレしか引けない、むしろ引きの強さを

存分に発揮しながらこのポンコツ魔女は

優雅にお盆を探しているわけだ。


「(わ、悪いとは思っているよぉ〜。ごめんよ〜

  昔からクジ運悪いんだよぉ。3箇所目は

  確かこの辺に・・・あった、あった。)」


銀盆だから“銀”なわけじゃない。

毎日磨いてたらピカピカだけど

「きったな・・・。これ?

 ほんとに?・・・大きさ的にこれ、だよね・・・。」

銀って、酸化したら黒くなるって知ってた?

魔女は真っ黒のボロボロのお盆を拾い上げた。


『ウガァァアアっっっっ!!! 』


お盆を持つのと同時に、獣人が一際大きな雄叫びをあげる。

(?!っきた!)

魔女はお盆を持って遺跡の平たいところを探す。

「(こ、ここでいいか!これで、一旦、ーっ!)」



獣人は 空に咆哮し 変化する。





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