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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第一部 5月の森 エレーミナルス王国編

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黒竜②




ラースはまた魔女(竜)の鼻先へ戻ってきた。


「そういえばー」

魔女は魔法陣を踏んだときに

聞こえた“音”についてラースに尋ねた。

「ああ、それは()()()()だろう。」

()()()()? 」

「ああ、音だ。ガラスが割れるような音が聞こえなかったか? 」

「あ!それ、パリンて。」

「私の敷いた予備機動の魔法陣が

 あなたの魔力に反応した音だ。」

「・・・ほぉ〜、なるほどですね。」

絶対わかってないやつの答え方だ。


放射熱がまだ口全体を覆っている。

魔女は平気なようだが、ラースは少しばかり熱に喘いだ。


「それはあなたにしか聞こえない音でもある。」

「ねぇ、ラース。その発動の音ってさ

 聞いてすぐ対応したら、変化しなくて済む?」

「ー、場合によりけりだろうが

 あなたなら、()()()できるだろう。」

魔女に心当たりがあった。

()()()か・・・。

 (確かゲーム内でもそんなのあったな・・・。

  ()()()って“聖職士”しか使えなかったような

  ・・・魔女だから使えるのかな?

  あり得る。最強だし。)」

ラースは続けた。

「魔女、あなたが魔法を使役できなくなったのは

 いつからだ?」

「それはー、・・・わかんない」

だって最初から(意識して)使えてない。

「誓約か? 」

「え? 何それ。」

「アイスクラピウスと誓約を交わしたのか、と聞いている。」

「何で?」

ラースはしばらく魔女を見つめてから

1人で頭を軽く横に振った。

「ー、いや、いい。何でもない。」

本当に聞きたいのは、それじゃなく

“約束”についてだったし

そもそも魔女がアイスクラピウスと誓約を交わしたとして

何の問題があるのか、そしてー

「(だとしても、何も変わらない。)」

使い魔として過ごした長い時間が、ラースを捕えたままだ。


 魔女は正直に言うべきか悩んだ。

自分が何故だかわからないが

ゲームの世界(と思われる)にやってきたと思ったら

腰は強打してるし、153歳の老婆の魔女になってて

気持ちだけは若いし、前向きにがんばってるとか

ラースは信じるだろうか、と。


 だが、ここに至ってとある言葉がよぎる。

魔女にこっそり教えてくれたこと。

『ラースには秘密だぞ。ーふふ、そうだな。

 呪いを解けば、魔法は使えるようになっていく。』

友好関係だと思っていたケトル野朗(アイスクラピウス)

まさかの隠密活動(コソコソ話)してきやがった。

魔女は頷きながらも、その言葉の真意を探っていた。

「(ケトルさんにも何か事情があるんだと思う。

  とりあえず静観しつつ、呪いを解く方向で

  ラースからも情報を集めるのがいいんだろうな。)」


そんな思いは、ラースに対して

どこまで話すべきか、境界線を見誤らせてもいた。

「(全部言えるなら言った方がいいんだけど

  ・・・私、ウソつくの下手だし〜。)」

ラースが鼻筋の真ん中に立っているものだから

魔女(竜)は、常時寄り目に疲れてきたし

まだ竜だし、座りたい。もぉまじ無理。


「座っていいっすか」

言おうとした言葉は、ラースによって遮られた。

「では、魔女。ー 変化を解くぞ。」

「へ」

完全に忘れてた。


おネズミさま、見たことない顔しておられる。

寄り目に疲れた魔女(竜)は()()()()を2回、した。

「あ、そ、そう、で・・・すね。

 (諦めろ、私・・・)」


魔女(竜)の深呼吸は、熱気をまだ保ってる。

「もぉこのまま竜でいよっかな〜・・・」


それもアリ。




魔女(竜)はラースと最終確認だ。

もちろん、竜から人に戻るための、だ。


「眉間だな? 」

ラース、嬉しそう。

「・・・ぅん。」

回答を差し控えたいぐらいの声の小ささだ。

だが、魔女は弱点を告げた事自体を褒めて欲しいぐらいだ。

だって、“強弱”に関する情報ー、


『バット持ってたらストライク振り抜くぐらいの力加減で。』


この言葉を言うかどうするか迷っていた。

「(力加減に関する発言は言いたくない。

  言えば、このネズミ容赦無くやるだろう。)」

嫌われてる自覚がある奴は違うな。

だが、心配は無用だ。

おネズミさまは言われなくても全力でいく。


 ラースは口を開く。

「はぁ、そういうことか。」

妙に納得した口ぶりだった。

「? 」

「第三の目を突くんだな?」

「第三の目? なにそれ。」

「ーっ、眉間より少し上の額より下にある。」

ラースは自分の眉間の少し上を指差した。

「竜には予知ができるそうだからな。

 太古の竜にはあったとされる。

 ふ、第三の目が弱点とは。」

魔女が18周目で気付けたのは

ゲーム内で、たまたま剣に付与(エンチャント)した雷が

黒竜の眉間にクリーンヒットしたからだ。

「(あの時は驚いた。竜が一時的に動かなくなったし。

  だからって完全に倒せたわけじゃないんだけど。

  まぁでも、やってみるもんだなぁ。)」


ゲームの黒竜は

眉間に攻撃をクリティカルで入れられたら

防御力が著しく低下し、攻撃が通るようになる。


「では始めるか。」

ラースはすでに鼻尖に立っていた。

やる気マンマン。


「ちょ、ちょっと待って!

 ラースがやるの?」

「もちろん。それとも勇者の攻撃を待つつもりか?」

「それはダメだよ!けど、待って、心の準備ができてない!」

「心の準備?もう済んだだろ。」

「でも痛いのやだ〜ぁ、こわぁぁい〜ぃ。」

今更だが、ほんとキモい。

黒竜がクネクネすんの、ほんとキモい。

「大丈夫だ、一発で済む。」


「一発?! っどっどうやって? 」


ラースは魔女(竜)の眉間に向かって指を指す。

「魔法で貫く。怖ければ目は閉じておけ。」

「魔法?! 」

「魔法剣だ」

「!! 魔法剣?!

 (ドノヴァッテン魔法王国から(勇者が)使える魔法だ!) 」

さすが最強の魔女の使い魔、おネズミさまだ。

おネズミであるにも関わらず、魔法のレベルが高い。

魔法剣は魔法で錬成された剣で、物理攻撃が可能で

追尾機能まで付いてる飛び道具でもあった。


「(やるな、ネズミ・・・。

  魔法剣の攻撃を当てられるのは初めてだけど

  死にはしないと信じたい・・・。竜だし・・・。)」

魔女(竜)は目をしっっかり閉じた。

ちなみに両手を組んでのお祈りポーズだ。

「(痛くありませんように、痛くありませんように、

 ちょっとなら、痛くてもしょうがないから

 ちょっと痛いだけでありますように!

 ちょっとだけ痛いのは許します!)」

鼻息が荒くなる。フンスーっ!!


が、諸君。

わかるだろう?

信頼関係はそんなに簡単に築けるものではない。

(今の)魔女とネズミが出会ってまだ一日だって経ってない。

(前の)魔女とネズミは100年以上一緒だったが

信頼関係なんて無いに等しいのだ。

どこをどう、信じろと。

だから ー


 ラースの“目を閉じてろ”に反し、やはりと言うべきか

魔女(竜)はうっすら目を開けている。うっすらだ。

だが、ラースから見たらもう、半分目開いてる。

「(堂々と目を開けていればいいものを・・・

  こいつ、本当にバカなのか?

  ・・・こんな奴に私は・・・。)」

ラースだって魔女を信じてるわけじゃない。

それどころか、使い魔だってことを後悔してる。

半開きの目って、ちょっと怖いよね。


「(ごめん、ラース。

  信じてないわけじゃないんだ。

  ちょ、ちょっと怖いだけなんだ。

  だって血、出るかもしんないじゃん。)」

血だけ出て、竜のまんまだったら

魔女は火力全開で叫ぶ覚悟でいた。


「(何されるのか、ちょっと見るだけ。

  ちょっとだけ、頼む〜ぅ。

  痛くしないでくれえ・・・。

  信じてるぞ、ネズミ・・・。)」

心の底から祈ってる。


ラースは手のひらを空へ向けた。

「(物理攻撃が全く通じない黒竜の唯一の弱点が

  第三の目か・・・、この黒竜は伝説の古代竜だ。

  魔女が召喚したと考えるべきだろう・・・。

  この魔女が召喚したとは思いたくないが

  事実、黒竜になっている所を見れば否定はできない。)」


詠唱を始めると、ラースの掌から光の粒子が空へ舞い上がり

空から舞い戻りながら剣の形になった。

その形は ー。


『 レイピア 』

だ。

レイピア:細身で先端の鋭く尖った刺突用の片手剣。


ラースの体の10倍はあるであろう、レイピアを

ラースは片手をあげ手のひらを返すような仕草を取った。

高音の金属が擦れる音が聞こえた。

レイピア自身が風を起こしているようだった。


さらに、ラースは魔法の詠唱を続ける。 


『 天なる父よ、 雷霆(らいてい)パルジャニヤ

 

  至高至大の主こそ動かざるもの

  動くもの、あらゆるものの


  恵みに神聖なる(いかづち)を与えん  』


レイピアに真っ青な雷が付与された。



「 ー いざ 」

豪風を巻き込みながら回転して

黒竜めがけて突き進む。


魔女(竜)の目は見開かれている。

ガン見スタイル。

レイピアと一緒にラースが魔女(竜)に向かってきた。

そのまま眉間にー

レイピアの力を後押しするかのように

おネズミさま、渾身の押し込みジャーーっンプ!!!


グサッッッっ!!!

「ぐえ゛ッッッ!!!

 (ネズミっわ、笑ってやがるっっ!!! )」

今までで一番の笑顔でした。






「ー あっという間だっただろう?」

「はぁ、そうデスね。」

「体も元に戻ったな。」

「はぁ」


確かに。

憔悴しきった魔女は

念願叶って、人間に戻ったし

地面に座ってもいる。

やったな!おでこは真っ赤だが。

血は出てないよ。

「(デコピンされたみたいだよ。なんかめり込んでない?

  じんじんして、すんごい痛いんだからね・・・)」

「魔女、茶。」

「・・・はぁぃ。」

いつのまにか主従がひっくり返ったのか。

ラースは座って、優雅にクッキーを頬張りなさる。

魔女もクッキーをかじりながら、茶を飲んだ。

魔女の家を出る前、アイスクラピウスが用意してくれたものだ。


『回復茶だよ、3回分はある。』

中身は薬草を煎じたようなものだった。

すっごい苦いし、ぬるい。


上から見下ろしたおネズミさまの耳は

時折ピクピク動いてかわいい。

クッキーをかじる度、頬ぶくろが膨れてかわいい。

クッキーも溜め込めるの?ツンツンしたい。

魔女はつい先ほどを思い返す。

「(ラースの言う通り、一瞬だった。

  突き抜けた痛みで地面に座り込んでたし。

  ・・・あれ、もう痛くないかも・・・。)」

ラースが魔女を見上げた。

「回復茶が効いてきただろう?」

「あ、それか。」

魔女はおでこを撫でた。

ラースも上機嫌だ。


「さて、道もできたことだし

 そろそろ出発するぞ、魔女」

「え、もう??」

「ー 預言者の気配がする。

 あいつらは特殊な匂いがするからな。」

ラースがネズミだからなのか、匂いに敏感なの?


 言った後、ラースは肩掛けかばんの中にするりと入った。 

ひょこっと顔を出して

「分かりやすい一本道だ。()()()()()()()。」

言って、かばんの中に消えた。




魔女は立ち上がり、軽くローブの埃を払った。

「えっと、アイテムは」

呟きながら、一本道の両脇を交互に見た。

両脇にはかろうじて、まだ森の片鱗が伺える。

木々が生い茂っていた。


「だいぶ広い道になったし

 これなら祠も近いし、途中でアイテム回収できる。」


 目指すアイテムに向け、歩き出す。

だが、森の奥から一本道に現れたその姿に

魔女は身を固くした。


「うそ・・・。」


ゲームでは物語後半、現れるはずの

魔女を苦しめることになる唯一の敵だ。


やっぱ、竜のまんまが良かったんじゃない?







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