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【改稿版】最強最悪の魔女に転生してしまったので巻きで呪いを回収いたします  作者: マダム良子
第一部 5月の森 エレーミナルス王国編

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12/19

黒竜①




漆黒の魔法陣から立ち上がるのは

空と大地をつなぐ、ひとつの黒い柱だ。

(かつての)魔女の罠に、(今の)魔女が引っかかるという

前代未聞の事故を起こした魔女は、思い出していた。


「(知ってた、知ってたよ。)」


この場所こそ、ゲームのオープニングで

壮大な音楽が、物語の始まりを知らせてくれる。

天を震わす轟音に、魔女の魔法陣が黒い柱を作る。


そして、勇者は震えあがるのだ。


何に?


「っっガゴォォッッッ〜〜〜〜〜!!! 」

あれ? 魔女?

踏みしめた魔法陣から不死人(アンデッド)は出てきてないぞ。

残っている不死人(アンデッド)はこちらへ向かってきてるが

どうした、まだ壺投げてないぞ。

奇怪な叫び声はやめたまえ、ただでさえ品がないのに

野生味溢れた原始の咆哮だなんて、・・・あれ?


「グゥガーーーっっっ!!!」


 あ、そう来る? 咆哮系?

品だけじゃなく、言語も手放したのか?

魔女、おっきくね? あれ、そんな姿してたっけ?

っていうか、これは異常事態ではないのか?

こういうときのための使い魔、ラースよ。

魔女の異常事態を何と心得る。

今こそ、この状況を何とかしたまえ。


「ーっじょっ!ーーっえろっ魔女っっ!」

遠いんじゃないのか?おネズミさん。

聞こえてないようだ、もう少し近寄って、ー


「(ラースがなんか言ってるけどさぁ。

  何言ってるかわかんないよ。)」

黒い柱はいつのまにか消えていたが

新たな敵が出現しているわけでもなかった。

ただ、ラースが喚いていることが気になった。

「(どうしていっつも私ってこんな失敗ばっかするのかな、

  いいとこないなぁ)」

なんて、らしくもないことを思い、ため息をつく。


「っっっゴォォォォォォォッッッッッッッ〜〜〜〜〜!!!!

 (なに?私、火吹いた?!!)」

すんごいため息じゃん。火を吹くタイプのため息?!

口から轟音と共に吐き出される大量の炎は真っ直ぐ突き進む。


「ゴォォォォッッッッッッーーーーーーーーっっ!!!

 (意訳:なんでえーーーッッッ)」


何でだろうね(棒読み)

魔女、お前何踏んだっけ?


「(と、止まらん!止まらないよ〜!!)

  ヴゴォォォォォーーーっっっ!!」

ほとばしる炎は大気をもこれでもかと燃やすような勢いで

止めたいのに止まらない。思わず叫んだ。

「(ラース!って言いたいだけなのに!!)

  グォゴォォォッッーーーーーーーーーッッッ!!

  (意訳:ラース〜!!)」

より火力がマシマシだ。


ネズミに通じるかね?それ。

火を吹いて、咆哮してるだけに見えるけど。


「(んも〜ぉ! しゃべれないじゃぁぁぁん!!

  喋ろうとする度に、火吹く仕様?、これ?? )」

火を吹きながらも、魔女は周りを見渡した。

空は真っ暗で、見渡す限りの曇天模様だ。

魔女は自分を遮るものがないことに、疑問を抱く。

「(これって・・・魔法陣踏んだから? 

  私、何かに変身したの?ー あれ・・・。)」

ようやく止まった火は、魔女の周りの温度を少し上げていた。

既視感(デジャヴ)のある嫌な予感はゲームでのイベントを彷彿とさせた。

「(ん?勇者がエレーミナルスのアンデリダの森に入ったら

  あのイベントは起こる、んだけど・・・今、私は魔女。

  ーて、ことは ー)」

足元を見れば、爬虫類と言うには有り得ない禍々しい鱗と尖った爪。

そして鱗がなんか黒い。

すんごい黒い。もう、自分が人間じゃないのを自覚した。

「(終わった、人間じゃない・・・)」

大抵は口から火を吹いたら、わかりそうなものだが。


「(あー・・・座りたい。なんか恥ずかしい。)」

隠れたいぐらい恥ずかしいだろうが

森からはみ出してる時点で

座ったところで、隠れたりはできないだろう。

「(体感、すでに何十本か私のお尻っていうか

  尻尾で潰れてる感じがする。)」

だってめっちゃ体でかいし、薄目で見ても察するに余りある形。

見たことないのに、知ってるやつ。

明らかにこれ ー


「(竜じゃん。

  勇者をイベント死させる黒竜じゃん。)」

鼻息だけで燻る煙が視界を邪魔する中

下にいるであろうラースを探す。


「(あれ、いない!

  踏んじゃった?うそ・・・ラース。

  小さすぎて踏んづけたのもわからなかったのかも。

  踏んだの??もぉマジかよぉぉぉぉ!!!)」

「魔女! 」

「?! 」

「(ラースだ!! ラースが生きてる!

  よかった。踏んづけてなかった。

  私の体を登ってきてくれた?!)」

竜の姿してるくせに、魔女は泣きそうになる。

ラースはすばしっこくも、竜の鼻先にいた。


「あの魔法陣で変身したのか。ー 大丈夫か?」

大丈夫なわけではないが、魔女は口を開く前に

珍しくも一考した。

「(喋るな、危険!喋ると火吹く。)」

魔女は精一杯頷いた。

竜が頷きゃ、ラースにとっちゃ地殻変動並みの揺れ。

バランスを崩したラースが落ちそうになる。


「わ、! 」

ラースは魔女の鼻先にしがみついた。

「(ご、ごめん!! )」

力加減がどうしてもわからない。

魔女が竜となった今、米粒ほどの大きさのラースは

ちょっとした動きでこの地の果てまで吹っ飛びそうだ。

ラースはようやくバランスを取り戻し

鼻先に立ち上がった。

「困ったな・・・このままでは、不便だ。」

不便っていうか、竜だよね。

でかいし、邪魔だよね。

()()()()の、()()()って最悪じゃん。

「(困る!困るよ! 元に戻れって思ってるんだけど

  戻りそうもないし・・・これはもう、魔女として 

  倒されないとダメかも・・・)」


だが、その一方ちらり、と思う。

「(ラースが竜の私に接吻してくれる、わけないよね)」

思考と、ネズミと竜の関係性がバグってる。

接吻するにしてもラースにとって全部が地獄。

ラースはしばし考えて、魔女(竜)に言った。

「魔女、私が今から魔法陣を敷く。

 まずは、移動できるか? あ、返事は

 “yes” なら()()()()を一度。“no” なら二度。

 ー 理解できたか? 」

「(そんな意思疎通の方法があったとは!

  あったまいいな、ラース。)」

そうだね、おネズミさまの方が竜より頭いいね。

魔女(竜)は()()()()を一度、しっかりした。

そのままラースはスルスルと、鼻から降りて

地面にどうやら着いたようだ。


キラキラと足元が光り始めた。

ラースが魔法陣を展開した合図だ。

竜の姿では大きな動きはできないが

顔を動かすぐらいならできる。

「(ー 黙ってれば火も吹かないだろうし。)」

じっと下を見ていた。




「魔女」

ビクッ!

よかった。

びっくりしただけでは火は吹かないみたいだ。

ラースはまた鼻へのぼってきた。

「用意ができたから、このまま横に移動を。

 見えるか? 」

魔女(竜)の足元の左横には、魔法陣が光っていた。


魔女(竜)は()()()()をひとつして

そろーり、と移動してる。

だいぶ気をつかってはいるが


どっっっしぃーーーぃんっっっ。


足音は可愛げがまったくない。

地響きと共に舞い上がる砂埃に黒い竜は

森を蹂躙するタイミングを伺ってるように見えた。


魔女はちょうど魔法陣を踏むような形になり

ラースはそれを確認し、竜の鼻先で

魔法の詠唱をはじめる。


「ー、

 ”聖なるものよ、この上なく恵みぶかきもの。

 降る光、廻る音、その者の

 内なる囁きを 聞かせたまえ” 」


鼻先のラースが言った。

「魔女、もうしゃべれるはずだ。」

「 ! 」

まばたきを2回してしまった。

「大丈夫だ。炎は吐かない。」

魔女(竜)はゆっくり口を開けー

「あー、えー、! っあ!!ホントだ。よかったぁ。

 ラース、ありがと〜ぉ。

 どうしようかと思ったよ〜ぉ。」

「・・・っぷ。」

ラースは私の鼻先で笑った。

「ん? 何? 」

「ふ、ふふっいや、何でもない。コホン。

 竜が魔女だと言うことは理解できるが

 見た目にしては気弱な発言だったからな。」

すぐに笑いを仕舞い込んだラースに

魔女は少しだけ残念な気持ちになった。


「そんなにかっこいい竜?」

魔女は聞く。

「ああ、伝説の黒竜のように神々しい。」

そんな言葉を聞けば、魔女は照れ臭くて仕方ない。

褒められたのは“竜”だが

思わず、照れ隠しにベラベラ喋り出す。

「け、けど!いきなり竜になるし、火吹くし

 ラースのこと踏んづけてたらどうしようって思ったよ。

 叫ぼうとすると、止められないんだよ、火。

 気弱にもなるよ〜。喋れるようになってよかった。」

「"しゃべる"ことは可能だが、変化を解くには至らない。」

ラースはその場に座った。ぽよん。

「そんなことないって。これだけでも十分だよ。

 話できないと、作戦決行できないしー、ぁ。」

魔女(竜)、はた、と気付く。


「あのさ、ラース。

 元に戻れそうな方法思い出したんだけど。

 えっと、その方法ってちょっとっていうか・・・

(”勇者に”倒されるか、”勇者を”倒すか)」

倒されるのも嫌だし、倒すなんてもっての外だ。

ゲームの中では血生臭い戦いの連続だった。

勝っても負けても、全体的に暗いイメージの中で

希望と言えるようなイベントは

得てして、人間の仄暗い闇を露わにしただけだった。


そんな世界に最強最悪の魔女として生きるのなら ー


「(私は勇者たち(イケメンズ)が見たいんだよ!!)」


欲望ぶっちぎりだった。

素直でよろしい。





ー この黒竜には弱点らしきものがあるのだ。


ゲーム内でそれに気付けば

このでかい黒竜を楽ではないが、倒せはする。

体力の消耗戦のようなオープニングゲームは

誰しもが通ったであろう、初見殺しの()()()()()()だ。

18周目で倒し方を学んだ。

通常なら到底、気付かないだろう。


「(見つけたのだって偶然だったけど・・・。

  私のこの変化は解けるんじゃないかと思う。

  確信ではないけどイメージは付いている。

  けどなぁ、自分がその立場になるとすんごい嫌だ。)」

「ー? 変化を解ける?魔法薬の類か? 」

「ううん、違うよ。」

「?」

意を決して、まずはお気持ち表明。

「すっっっっごく嫌なんだけど。」

「何が?」

「この変化の解き方。」

「なぜ」

鼻の先に移動したラースを寄り目で見ながら

魔女はため息をついてしまう。

自分の姿は見えないが、手を組みながら

指先で多少モジモジしてしまった。

きもい。黒竜の威厳とか怖さが皆無。

ラースが口を開く。

「理由は? 」

ぽつり、と言う。

「・・・痛いから。」

「 ? 何と?・・・痛いから?」

魔女(竜)は頷く。

大きめに揺れ動く顔に

ラースは次こそはバランスを崩さまいと

鼻先の小鼻にしっかり掴まっていた。

「ご、ごめん!大丈夫?」

「痛いのが、嫌と言ったか?」

おネズミさま、ブチギレそう。

最強の魔女が痛いの嫌なんだって〜。クスクス。

「ー うん、まぁ痛いのは嫌だよね。」

「 ーーーー 」


魔女ですけど、痛いのは嫌だと言うのはダメですか。

ラースは、こめかみがズキズキするのを押さえながら

「魔女、あなたはー、ふぅ

 痛いのが嫌だ。だが、変化を解くには

 その”痛み”が必要だと言うのか?」

まとめた。

「はぁ。そうです」

だって女の子だもん。

「ちなみにどのような”痛み”なんだ? 」

ちょ、竜の姿でクネクネすんな。

「物理的な感じの。」

「馬鹿な。竜であるあなたに、物理攻撃は通じない。」

魔女は頬を指先でかくつもりでポリポリした。

「それがさ、あるんだよね。通じるのが。」

ラースは、身を乗り出していた。

「ではそれは体の部位か、角?、翼? 部位破壊か?」

見えるとこ、全部いう。


魔女(竜)の指は気付けば顎を触ってた。

「(言いたくねえ〜〜っ)」

「魔女」

ラースは諭すような声色だ。

「ー・・・はあい」

情けない声がこぼれた。

ラースは鼻先に二本足で立って、腰に手を当てて首を傾げた。

「痛くしない。

 いや、痛いだろうが、すぐ終わる。

 できるだけ優しくする。」


やだ、ネズミにきゅん。


喪女、ネズミになんかそれっぽいこと言われて思考停止。

「(そ、そんなこと初めて言われた)」

意味違いの恥ずかしさに顔を背けたくなる。



「?ー魔女?」

「なっ、なんでもない! ぜ、絶対?絶対痛くしない??」

「善処する。」

ラースは紳士のように胸に手を当てた。

「嘘だ〜ぁ」

痛くないとうそぶかれ、絆創膏を引っぺがされる痛さを思い出す。

「痛いのは一時だ。あなたは最強の魔女だろう?

 アイスクラピウスが用意してくれた回復茶がある。」

「あ、そっか〜。」

て、待て。やっぱ痛いのかよ!!!


躊躇はするが、背に腹は変えられない。

「(どうせなら、そうだ。変化解く前に・・・)」

転んでもタダでは起きたくない魔女は

この状況すら、何かできないかゲーム内容を辿った。


「あるじゃん」

思い付いたことを実行するべく、まずは足元を見た。

不死人(アンデッド)はほとんど死に絶えていたが

まだ生き残りがいた。

黒竜の足を一生懸命、武器で攻撃しているが

魔女(竜)には蚊が止まったように、何も感じない。

「ラース、ちょっとつかまってて」

「? 」

ラースは竜の鼻筋にしがみついた。

魔女(竜)は息を吸い込んだ。


ー グォオオオオオオーーーっっっ!!

  (意訳:燃えちゃえーーー!!)

大地は黒こげになって、不死人(アンデッド)はいなくなった。

魔女(竜)はそのまま顔を上げー

「(ー ここからでも目視できる?)」

森の先を見た。

「(あった。あそこか。できるかな〜ぁ。

  黒竜の力、みせてもらおうじゃない。)」

今まで辛酸舐めさせられた黒竜が今、自分だ。

その実力たるや、を知りたくもあり

妙な自信もあった。



ラースに声をかける。

「残りの不死人(アンデッド)、片付けといたよ。」

「そうか」

「全力で走ってくれて、ありがとう。

 そのおかげで、たいてい倒せたから」

ラースは一瞬、魔女を見たがすぐに目線を外した。

「変身を解く前に

 ちょっとしたいことがあるんだけど」

「? 」

「ラース、そこにいると危ないから

 私の頭に登るか後ろの方に移動してて」

ラースは頭の上に乗った。


魔女(竜)は森を見渡した。

「(確か、あの辺に祠がある。あそこだー。)」

狙いを定めて、次は思いっきり息を吸い込んだ。



『っっグゥォォォォオオーーーーーーーーッッッッゥゥ!!!』


吸い込むよりも吐き出す方が多いぐらいの熱量を込めて

祠目掛けて炎を吐いた。

「ぅわっ! 」

ラースは小さく叫ぶような声を出したが

その耳をつん裂くような轟音にかき消されてしまった。

暗かった周りがその爆風と高温の炎の()()()()で白くなる。


炎を吐き切った魔女(竜)の前に

祠までの一本道が出来上がった。

「(ふ〜ぅ、こんなもんかな。

  こりゃ達成感が半端ない。)」

驚いて声も出ないラースに魔女は一言。

「これでアイテム集め、だいぶ楽だよ。」

燻る口元から、未だ熱気がたちのぼっていた。


「ーっはっー」

ラースは頭の上で身震いした。

「(黒竜の力がこれほどとは)」


鬱蒼(うっそう)と生い茂るアンデリダの森は

別名”迷いの森”とも言われるほど、人も動物すら惑わすはずだが

今、竜である魔女の一度の咆哮による炎で

森の木は跡形もなく一筋の道になった。

後に残った焼け焦げたような香りが、漂った。

「(腐臭よりマシだな)」

ラースは不死人(アンデッド)のときとは違い

昇ってくる熱風に顔を上げた。


魔女はあっけらかんと、言い退けて笑う。

「迷わ()の森、できあがり〜ぃ。」


なんかムカついたおネズミさまは心に誓う。

「(()()を焼き払ったのだ。

  多少痛くしても、かまわないだろう)」

いいぞ、ネズミ、もっとやれ。









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