よんのさん アンケート
とりあえずコトとタマに神能というものについて納得してもらったところで、ゼンチさんは二人の身に起きたことを説明し始めた。
「そういう訳で、あなた達の声には特別な力がある。叶うと信じて発した言葉なら、その言葉を聞き入れる人がそれを現実にする。できる限りね。」
「じゃあ……跪いて。」
いきなりなんてことを言う妹だ。しかしゼンチさんは自分の椅子に座ったままタマを見下すように首を上に向ける。
「現実にするんじゃなかったの?」
「その言葉が聞き入れらればね。」
確かにゼンチさんは人の話を聞かないタイプだし。ゼンチさんはこちらをチラリと見た後、
「普賢くんに試してみなさい。」
いやさすがの僕でももう『言霊』と分かってる相手なら「跪いて」確かに必要かもしれない。言われるがままに跪いてみると、サトリさんが吹き出した。
「あ、アンタ、どこまで素直やねん。」
「……引くわー。」
どういうわけか命令してきたコトにまで引かれている。ゼンチさんも深いため息をついて、ゼンノーさんが僕をひょいとソファーに戻した。
ゼンチさんの方を見ると、額に手を当てている。
「とにかく、こんな感じ。分かった?」
「でも兄さんはコトに強く出れないところもあるし。」
「え、僕ってタマにまでそんな風に思われてたの?」
正直コトに舐められてる気はちょっとしていたけど。またサトリさんが笑ってる。
「じゃあ、次はサトリさんが受けてみてくださいよ。」
「え、ウチ?ええよ。なんでも言うてみ?」
タマは少し考えている様子。やがて諦めたように。
「……姉さん。」
「じゃあ……黙って。」
サトリさんは半笑いを浮かべた後口を開いて――なにも喋らなかった。代わりに驚いたような表情を浮かべて顔や喉をペタペタと触る。本当に声が出ないみたいだ。
「『読心』と『言霊』は相性最悪みたいね。。心が見える分共感する力が強いのかしら。」
ゼンチさんの分析にサトリさんは苦々しげにうつむく。コトが「もういいよ」というと途端に話し始めた。
「まさかこんな話せんのが辛いとは思わんかったわ。」
「確かにサトリが来てから事務所も賑やかになったよな。」
サトリさんやゼンノーさんの反応とは裏腹にコトはまだ納得いっていない様子だ。
「ねぇ、アタシたちを担ごうとしてるわけじゃないよね。」
「そんなんしてウチらに何の得があんねん。」
「……お金取って変なアクセサリー売るとか。」
コトの推理にゼンチさんは少し興味ありげな顔になった。
「それはいい線いってる。ただ、残念だけど私はお金には困ってないの。」
ちょいちょいとコトを呼び寄せて、なにやらパソコンの画面を見せる。不思議そうだったコトも画面をみて、目を見開いて一、十と数をゆっくりと数えている。
「……なんで仕事なんてしてるんですか。」
「あえて言うなら趣味ね。ともあれお金が不要っていうのは信じてもらえる?」
タマは黙ってぶんぶんと頷く。お金の力ってすごい。コトはちょっと面白くなさそう。
「それで、いい線いってるって言うのは?」
「変なアクセサリーはあげる。といってもまだ物は無いけど。」
どんなのがいいかは聞きたいからと、簡単なアンケート用紙が出てきた。色やアクセサリーのタイプ、デザインの要望も書く欄があるようだ。
「それ、作ったんですか?」
「なに、悪い?」
いや別に悪くはないですけど。
「なんのアクセサリーなんだ?」
「神能を抑えるための。『言霊』は特に直接的な害が出やすいから。」
ゼンチさんはコトとタマを見ながら、別の人を見ているようだ。たぶん、前の『言霊」だと思う。
コトとタマは特に気にせず紙に色々書いている。時々コトがタマの書いてるのにダメ出しをしているけど、タマと物によっては譲らない。
サトリさんも何か思うところがあるように二人を見ていたが、ふとゼンチさんの方にむき直した。
「なあ、ウチの分はないんか?」
ゼンチさんはあからさまにいやそうな顔をした。
「あなたはもう折り合い付いてるでしょ。……どうしてもっていうなら、まあ頼んでもいいけど……。」
ゼンチさんのなにがしかを悟ったのか、「まあ聞いてみただけや」と簡単に引き下がった。
「そういえば頼むって誰に頼むんですか?そんな不思議アイテム。」
ゼンチさんは今度は僕の方にいやそうな顔を向けた。サトリさんもちょっと引いてる。まあ普通の人じゃあないんだろうけど、いったいどんな人なんだ……。
「できた!」「できました。」
サトリさんが何か言おうとしたところで、コトとタマが仲良く同時に書き終わったようだ。よし、これでちょっと空気が変わるな。




