Wellcome to walkerworld〜3〜
プロローグ
意識が戻ってきた。焦げ臭い匂いがする。また、あの時のように最悪の事態が頭をよぎった。相棒、みんな、どうか無事…で……?
「あぁ!稔、来てくれたんですね!」
レイが笑顔で近づいてくる。その横には相棒こと、自分のAVI-8の姿もあった。
意識が戻ってきた。焦げ臭い匂いがする。また、あの時のように最悪の事態が頭をよぎった。相棒、みんな、どうか無事でいますように!心の中から精一杯に祈った。ただ、その祈りはレイの一言によって裏切られた。
「あぁ!稔、来てくれたんですね!」
そう言いながらレイが笑顔で近づいてくる。その横には相棒こと、自分のAVI-8の姿もあった。
.....…………。
「……おい。どういうことだ?なんでピンピンしてんだ?」
「え?だって、警報だったので。」
「理由になってない。」
相棒は嬉しそうに肩に乗っかってきた。そう。レイも相棒もなぜか元気そうにしている。なのに周りには人型ロボットの屍が転がっている。血が流れるわけでもなく、霧に霞んで見えずらい微細な電流が走っているだけだった。
「NULL'Sってやつらの襲撃じゃ…。」
「…?あぁ!あの警報ですか?大したことじゃないですよ?特に、キミも頑張りましたね?」
そう言って肩の相棒に笑いかける。嬉しそうに反応する相棒。それはそうと、ならなぜあんなに慌てていたのだろうか。本当に大した事ないなら、あんなに必死に俺を連れていく理由もないと思うのだが。
「なんで俺まで巻き込もうと?」
「だって、人手は多い方がいいだろ?」
気配すらしなかったのに、なぜかそこにはアランがいた。消えたり現れたり、本当に気味の悪い奴だ。
「そうですね。今回は多かったので、尚更……。あ、注意報は1体から10体ほど。警報は10体から30体。特別警報が30体以上って感じですね。」
そのシステム考えた奴、絶対日本人だろとツッコミたくなるのを必死に抑えた。
辺りは真っ暗。すぐ目の前にいるレイとアランしか見えない。風もなく、灯りもない。
「でも、なんでそこまでしてこっちを守ろうとするんだ?」
「こっちには、なにも。いや、なくなったんだ。」
答えたのは俯いていたアランだった。
「それじゃ、なんで……。」
「NULL'Sは、いまだに私たちを狙っているんです。こんなとこで話すのもアレだし、戻りましょうか。」
そう言ってレイは俺達から目を背けて、ゲートのある方へと進んでいった。その後ろをアランが続く。2人は霧の中に消えていった。ここがどこかも分からないので急いで着いていく。
「狙われてるって、ここは本当に、なんなんだ?」
その小さい呟きに答える声はなかった。
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元の世界へと帰り、今は喫茶店のようなこぢんまりとした店の一角に席をとっている。対面のレイに、先ほど聞いた不穏な言葉に着いて聞いてみた。店の中は俺らと2名ほどいる。何か音楽がかかっているわけでも、誰かが話すわけでもない店の中はガラスのぶつかる音すらよく響く。そんな沈黙を打ち破るように俺はアランに質問を投げかける。
「んで、狙われてるってのは、どういうことだ?」
「昔ね、大きな災害があったんだ。」
「ええ。津波です。私たちの故郷を一瞬で飲み込んだんです。」
トーストと思わしき食べ物を食みながらレイは答えた。こいつの食欲の凄まじさにアランが戸惑いつつ、コーヒーを片手に言葉を続けようとした。
「……お前、コーヒー飲めんの?」
「え?コー...ヒー?そんなものは知らないけど、これは飲めるよ?ほろ苦い感じがたまらなくて。」
「はい?」
まさかこの年でコーヒーが飲めるとは。自分はまだコーヒーが飲めないというのに。なぜか対抗心が湧き出てくる。というか、コーヒーじゃないならなんなのだろうか。頭の中がそのことでいっぱいになるが、話を戻して。
「こほん。んで、お前らはその後どうしたんだ?」
「結果、こっちに住んでる。」
そんなことは知っている。見りゃわかる。というか、そろそろこの世界がなんなのか。どんな目的で動いているのか。いい加減聞きたい。アランはおそらくこの世界の住人。レイは日本人だからレイに聞いた方がいいと思う。
「レイ、単刀直入に聞く。この世界はなんだ?」
「そんなこと言われても……。でも、昔の故郷は楽しかったなぁ。」
なぜか一人で思い出に更けているレイ。こいつ使えない。ワンチャンと思いアランに問うてみる。
「アラン、この世界について、何か教えてくれないか?」
「そうだなぁ。一つ言えるのは、今が平和ではないことかな。」
諦めて俺もコーヒー(?)を飲んでみることにした。
.....................。
「にっっっっが!!!」
何がほろ苦だ。アランは二度と信じないと心に決めた。と同時に、自分は子供なんだろうかと自問を始めた。
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レイは用事があるというので1人でどこかへ消えた。ならなぜあの時泊まったのだろうか。アランは先に家に帰ると言った。俺も後から向かう予定だ。とはいえ、ずっとアランの家に泊まると言うのも気が引けるので、やはり自分の家が欲しい。となれば、やはりお金が必要だ。この間レイに散々使われてしまったので財布はすっからかんだ。とりあえずパークに向かうことにした。
パークへと向かう途中にて、なにやら懐かしい香りがすることに気がついた。このうまそうな匂い。日本人なら嫌いな人は1人もいないと言っても過言ではない料理。まさかと思い匂いがする方へと進むと……
「やっぱり!!ラーメン屋だ!」
そこには日本のラーメン屋と変わらない作りの店があった。暖簾には、「ラ・メーン」とオシャレにアレンジされたラーメンの文字があった。一日本人としてはある種の侮辱であるが、今はそんなことは関係ない。レイのおかげで財布には冬が来た。とてつとない空腹を満たすのが先だ。
暖簾をくぐり、引き戸を引くと、店の中の人が元気に挨拶してくれた。
「いらっしゃい!注文は食券でお願いします!」
店主に促され食券が買えそうな券売機の前まで行き、値段を見ると
(たけーよ!!)
一番安いミニでも800円って、この店は狂ってんのか?思いっきり動揺しつつもなけなしの金で買えるミニラ・メーンを買うことにした。それでも800円。普通なのかはわからないが、異世界だし、こんなものだろう。
カウンター席に着き食券を店主らしき人に渡す。店内は近未来的な作りではなく、日本のラーメン屋と変わらないものだった。と、奥で店主らしき男と小柄な女の子が口喧嘩をかましていた。
「お客さん、どうせ食えないんだから大なんか頼むなよ。」
「あたしはこう見えて結構食べれる方なんです!絶対いけます!」
自分が店主と同じ立場なら同じことを言うだろう。と、そんなことを考えているうちに自分の食券を出すように言われ店主に渡すと
「ニンニク、入れますか!?」
「二郎系かよ!?」
まさか人生初の二郎系ラーメンを異世界で食べることになるとは。だが、一度行ってみたかったセリフもあるので思い切って。
「ニンニクマシマシ、アブラマシマシ、ヤサイマシマシ、カラメで!」
あってるかも分からない呪文のような注文をしてみた。すると店主は眉を顰め、怪訝そうな顔をした。
(なんか、間違ったか?)
「……あの、なんかマシマシ?とか言ってますけど、なんですか?ニンニクを入れるか聞いたんですけど。」
静かになった店内。思わず顔から火が出そうになった。
「……すみません。お願いします。」
蚊の鳴くような声でお願いすることしかできなかった。
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パークに着くとカウンターで何やら揉めている人がいた。受付の人が困った様子でその人をなんとか追い払おうとしていた。自分もここに用があり来ているので、早く退いて欲しい次第である。だから話を聞いてみることにした。同じクラスの女子に声すらかけられない自分が初対面の人に声をかけられるようになったと、心の中でガッツポーズしながら2人に近づいた。
「あ、あのー。大丈夫ですか?」
「ん?ああ、稔さん。ちょっとこの人追い払ってくれませんか?」
申し訳なさそうに言う受付の人の言葉にさらに困った顔をしたその人は、声を上げた。
「私は、報酬をもらいにきただけなんだよ!ちゃんと仕事はしたよ!?」
「だから!その結果あの石像は壊れてしまったわけで…。」
「それでも報酬から差し引いても残るはず!ねぇ!そこのキミもなんか言ってくれない?」
「俺は知りません。あ、ちなみに俺は仕事を探してて……。」
「なら、手伝ってよ!」
なぜこの流れで自分に頼もうとしたのか。そしてこの人は何をしでかしたのか。頭の整理が追いつかない。そんな状況でも言いたいことははっきり言う男。ここはしっかり断ることにした。
「嫌な予感がするので嫌です。」
「なんでよ!キミ、仕事探してるんだよね?報酬も分けてあげるから!」
そういう問題じゃないんだか…。今金銭面で不安のある俺は確かにお金がない。ここは一つ、協力するのも悪くないと思った。
「ちなみに何の仕事?」
そう聞くと2つ下と思われるその女の子は部屋の隅へと誘った。
「それは明日言うから、またここに夜に来てもらえる?。」
ボソリと呟いた。
「お断りします。 俺はこう見えて青年。夜遊びなんてできません。」
「うわぁ!違うよ!そうじゃないよ!夜遊びじゃないよ!」
「……夜遊びなんて全部アウトだろ。」
「いや、だから違うって!」
「じゃあなんで夜なんだよ。今じゃだめか?」
「ちゃんと理由があって!今度話すから今日の夜ここに来てね!」
彼女はそう言い残し、パークを後にした。小走りで駆けていく。
(なんだったんだろう?)
どうせ仕事も探していたところだし、報酬も分けてくれると言うことで。せっかくなので行ってみることにした。
しかし俺は知らなかった。この出来事が、のちに大きく関わってくることを。
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「ただい……ま……?」
アランの家に戻ると、そこにはなぜか動物がいた。愛くるしい目で何かを訴えかけるようにこちらを見つめる。
「……。」
無言で見つめ合っていると、アランが出てきた。
「ああ。稔、帰ってたんだ。」
「おい。こいつはなんだよ?」
「ペット。」
「……どこが?」
とてもペットには見えなかった。動物というよりも、現象に近い。ペット?これが?どうみてもそうは見えないのだが……。
そこには何とも言えない生き物が床に座っていた。パーカーを着ているはずなのになぜか寒気がしてきた。それどころか、どんどん部屋が寒くなっていく。
「おい!お前冷房、入れた?」
アランも寒いのか、震えながら逆ギレ気味に答えた。
「入れるわけないじゃん!まさか…!?」
俺の方向に小走りでくる。そして目の前の子を抱き上げた。
「まったく。また使っちゃったのか。」
そう言って抱き上げたペット(?)を部屋に入れて寝かせる。水をやり、掛け布団をかけてあげていた。
「本当にペット?名前は?」
「この子はメイル。街で拾ってきたんだよ。」
「ふーん。」
しかし、愛くるしいのも事実。思わずメイルを撫でようとした俺にアランが叫ぶ。
「ストップ!近づいちゃダメ!」
アランの忠告も虚しく、俺の右手はメイルに触れてしまった。途端に俺の右手に霜ができた。
「痛い痛い!痺れる!」
俺は反射的に叫んだ。右手全体に痺れが走った。今すぐに離れたいのに体がそうさせない。感電すると体が動かなくなると言う話はどうやら本当らしい。
「だから言ったのに。この子は電気を操るんだ。無意識にね。制御できない。本気になれば、1人くらい葬れる。」
なにそれ怖い!というか、アランはなぜそんな危険なペットを持ってるのか。
「でも、お前には妙に懐くよな。」
「そりゃ、飼い主だし。拾い主だし。」
アランはメイルを奥の部屋に連れて行き、寝かせた。体の周りをか弱い電流が流れる。本当に動物なのだろうか。アランはやはり俺の知らない"こちら側"の人物だ。
エピローグ
「あれ?おかしいな…この辺に…」
「どうした?」
「いや、指輪がなくなってて。」
「はん?どっかで無くしたんじゃね?」
「そうかなぁ。でもなぁ。」
今ひとつ納得できない様子のアランはさておき、俺は夜の約束を交わした彼女の所へ行くべく、早めに寝ることにした。




