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現代日本プレッパーズ~北海道各地に現れたダンジョンを利用して終末に備えろ~  作者: 256進法
第三部:駆け抜けろ 燃え尽きたろか シンデレラ

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154/155

チェス盤フロントライン(前編)

フフッ。それは私に取っては褒め言葉ですね。


鑑賞用BGM:https://www.youtube.com/watch?v=1nlTp-4ilFA&list=PL0sODq2tIjo4oE6Jb_wgGh6jdPfPMA8zQ&index=5

鑑賞用BGM(豪邸から):https://www.youtube.com/watch?v=4JkIs37a2JE


~北海道~

~平取町~


【承知しました。■■■■■様】

【──全ては《夜明け》の為に】


黒い鎧が蜃気楼の様に歪み、夜闇に溶け込んでゆく。


【──!】


突如消えたモーンケを平良は眼で追わず、目を閉じて刀を構え始めた。

モーンケは闇の中を滑らかに動き回りながら、平良を観察する。


【(……大した物だ)】

【(普通の兵士なら目で追って軽いパニック状態になる……)】

【(やはり、中々経験を積んで来ている)】


【(……空気の流れさえ感じ取れない)】

【(特殊部隊出身か……厄介なヤツめ……!)】

【(だが──)】


彼は平良を背後から刺し貫こうとするが、受け止められ弾かれた。


【──!!】


そして逆に、彼は刃でアーマーごと右腕を斬り抜かれる。

再び彼は姿を消し、平良の視界から消えた。


【(達人級(マスタークラス)か……!)】

【(理屈ではない……鍛え上げられた感覚で、周囲の空間を完璧に把握している……!)】


その時、隊員達が平良を発見し、彼目掛けて十字砲火を浴びせる。

彼は殺意に満ちた獰猛な瞳で彼等を一瞥すると、刀を構えて銃弾の嵐へと突撃して行く。


【(──!!マズい!!)】


5秒も経たない内に、10人の隊員はズタズタに斬り裂かれ、血塗れの鬼神が出来上がった。


【舐めているのか!?アメリカ人!!】

【本気で掛かって来い!!】


平良の怒声で地面が震える。


【(何をこれ以上……既に俺は本気だ……!)】

【(バケモノめ……!!)】

【(《スケルトン・ソードランチャー》!)】


モーンケは腕を構え、アーマーから透明な刃を彼に向けて複数飛ばした。

しかし、平良は一瞥もせず全てを弾き返した。


【──そこか!】


【妖刀悪鬼村雨】の切っ先が、モーンケの懐から肩に掛けて斬り上がった。

そして更に彼の肺と臓腑を刃が鎧ごと貫き、吹き飛ばされる。


【ガフッ……!】


彼は血を吐き、彼の鮮血で彼の輪郭が露わになった。

既に出血多量で意識は朦朧とし、彼の視界は霞んで失われつつあった。


【俺は……俺は倒れない……!】


しかし彼の足は地面を掴み、強烈に踏み留まる!


【倒れたら……倒れたら全てが終わる……!!】

【俺は……俺はまだ……まだ何も取り返せて居ない……!!】

【そして……俺の全てを……奪った連中に……鉄槌を下すまで……死ねるものか……!!】


【──見事】

【一流の戦士に相応しい死をくれてやる!】

【【羅刹の秘薬】三段階起動!!】


平良から凄まじい気が放たれ、アスファルトが溶けて行く。

彼の肌は赤く変色し、折れた二本の角が再生する。

後ろから襲い掛かろうとしていた【降下機甲猟兵大隊】の小隊は、平良の放った真空波に吹き飛ばされた。


【俺はこの地の民を死と苦難から護る!!】

【護って見せる!!】


《明けの明星》は軽く拍手する。


【かつてフリスの悪意から無辜の民を護って死んだ、その意気と気迫……】

【未だ全く衰えず、ね】

【最強の鬼神の復活に、心からの祝福を……】


そして銀髪の女は黒い羽を散らしながら、重傷のモーンケの血だらけの頬に触れる。


【でも……バルバドスだって私の身代わりになってくれた】

【あの時の悲しみと後悔は、今でも私の心を膿ませ続けているの】

【今こそアナタに報いる時よ】


銀髪の女は彼の額にキスをした。

しかし、彼女の唇は彼の額をすり抜ける。

そして彼の頭を抱きながら囁く。

しかし、彼女の腕は彼の体をすり抜ける。


【今こそ全てを愛し、壊しなさい】

【【堕天使原理】三段階起動】

【《魂の起爆》】


平良の放った刃はモーンケの首をすり抜けた。



~北海道・日高町~


平取町で戦闘が行われている時、フェルゼンお嬢様一行と【降下機甲猟兵大隊】の検問部隊が対峙していた。


『通れない、ってどういう事ですの?』


『説明する必要は無い(デッ……!?)』

『大丈夫だ。貴女達に対しての安全は保障する』

『戦闘が終わり安全が確保出来たら、ゆっくりと観光して行くと良い』


フェルゼンは身分証を取り出し、隊員達へ提示する。


『私は航空会社の社員ですわ』

『このままではフライトに間に合いませんの』


『……申し訳ないが、近くのホテルか宿舎に一泊しておいて欲しい』


『私はゲオルグ・フォン・エアハルト王子の婚約者でもあります』

『今ここを通れないと、来週に行われる晩餐会にも間に合いませんわ』


『ほ、本当ですか……!?』


『スウェーデン大使館へ問い合わせても宜しいですわよ』

『この《イェリス・フォン・フェルゼン》、ウソは付きませんわ』


思いっきり付いてますわ。晩餐会なんてありませんわ。

隊員は装甲車両に乗っている隊長へ、慌てて報告しに行く。

隊長は車両から飛び降り、フェルゼンの元へやって来る。


『申し訳ございません、フェルゼン様……』

『貴女の様な方が北海道を旅行中とは、いざ知らず……』


『前置きは要りませんわ』

『通して下さるの?そうでないですの?』

『ハッキリさせて下さいまし』


『私共はジェルジンスキ参謀長から任務を仰せつかっております』

『私の一存でここを通す事は出来ません』

『しかし、お食事の提供と宿舎のご案内なら権限内で可能です』


『……戦闘はどの位で終わる見込みですの?』


『ハッキリとした事は申し上げられませんが……』

『本日中には……』

『通行の安全確保には更に2日程度……』


フェルゼンは腰に手を当て、軽く息を吐く。


『……なら仕方がございませんわね』

『クリチカさん。レナさん』

『今日はここでお泊りですわ』


『……もっと粘るかと思ってたんだけど』


レナはアッシュグレーの髪を捩じりながら返答した。

フェルゼンは優しく微笑む。


『戦闘地域を通り抜ける事の難しさは……』

『レナさん。貴女が一番良く知っていらっしゃるのでは?』


『アレ?バレた?』


『バレバレですわよ』

『でも、レナさんのそういう所が好きですわ』


フェルゼンは右背後の山林に向かって、ウィンクした。

アイカは狙撃銃を下ろし、闇の中へ溶け込む様に消えて行く。


『……正直、前のナチより後ろの猟犬の方が、100万倍怖かったんだけど……』


『優先順位的に殺されてないだけよね、私達……』


『そんな事はありませんわよ』

『アイカさんはレトリバー並に優しい方ですわ』


愛嬌もレトリバー並みだぜ。

隊長は無線で何処かと会話しながら、フェルゼン達に合図を送る。


『丁度宿が取れました』

『隊員がバイクで現地まで誘導させて頂きます』


『有難うございました』

『先程の非礼、お詫び申し上げますわ』


『いえ……!そんなとんでもない……』

『私共も失礼な態度を取った事、深くお詫び申し上げます』


レナとクリチカは車に乗り込む。


『……なーんかウワサと違くない?』


『何が?』


『【降下機甲猟兵大隊】の連中よ』

『もっと荒々しくて粗暴で、虐殺すらも問わないヤバい悪魔みたいな連中だ、って評判だったけど……』

『なんていうか、想像していたよりずっと親切というか……』


クリチカは帽子を脱ぎ、膝に置いて答える。


『ああ……連中は人種によって態度を変えるのよ』

『フェルゼンさんに対してあんなに丁寧なのは……連中の教義では、理想中の理想的な存在だから』

『あの人、まるで神話に出て来る女神みたいじゃない?』


『ああ、そういう……』

『ウクライナ系の私達は半ば見下されてそうね』

『何だか微妙な気分だわ……』


『それでも、殴られたり撃たれたりはしなかったし、対応も最初は事務的だった』

『これがヒスパニック系ギャングだったりしたら、今頃ここも戦場よ』

『北海道どころか太平洋全域で彼等も力を増している、って専らのウワサだし』


『色んな意味で荒れそうなネタがゴロゴロ……』


そして後部のドアが開き、車がドスンと揺れた。


『クリチカさん。運転お願いしますわ』


『前のバイクに付いて行けば良いんですよね?』


『ええ。お願いしますわ』


クリチカはアクセルを踏み、前のバイクを追い始めた。

アイカは茂みを駆けながら、車とバイクを追い掛けて来る。


『ぅわ……銃を背負いながら車を追い掛けてる……!』

『しかも森の中を……』

『どんな身体能力してんのよ……』


『や、闇社会出身の人間恐るべし……』


アイカは彼女達にピースまでして見せた。


~十数分後~

~豪 邸~


『えっと……』

『この家は……?』


現地民(・・・)が住んでいた民家を接収しました』

『食事の配達も私が担当させて頂きます』

『何か食材のご注文は?』


『私は健啖家なので、沢山肉とかお菓子とかあると……』


『了解致しました』

『調達に時間が掛かるので、ごゆっくりお寛ぎを』


隊員は笑顔でフェルゼンに家のカギを渡し、バイクに乗って去って行く。

レナは呟く。


『ねぇ、これ……元の住民って……』

『あと食材って……』


『考えるのはよしましょうレナさん』

『良心が咎めて、ご飯が食べられなくなりますわ』


『とんでもない事になって来ちゃったわね……』


彼女達は家に入る。

玄関先のタイルには、元の住民の物と見られる血痕が僅かに付いていた。


『(ごめんなさい……!ごめんなさい……!)』


彼女達が家の中に入ると、既にリビングではアイカが寛いでいた。


『あら、アイカさん』

『既にいらしていたのですね』


『ええ』

『アーデルハイドのヤツ、思っていた以上にデカい存在だと思いましたよ』

『で……この家の持ち主達は、イワシ缶方式(※1)で裏庭に埋められていました』


『『……!!』』


『部屋のカーテンとか壁紙とかが破れていたり、机に引っかき傷があるでしょう』

『それは持ち主達が抵抗した証拠です』

『連中、抵抗する者達には全く容赦しませんよ』

『特に有色人種には……』


フェルゼンはアイカの琥珀色の瞳には、僅かに憂鬱さが見えた。


『アイカさん……』


『人を殺すというのは、作業であってはいけないんです』

『殺した人間の全てを背負って行く、大切なイベントであり重要な仕事なんです』

『だから人殺しを単純化する様な、戦争や虐殺は……嫌いなんですよ』


『やっぱり……アイカさんは優しい人ですわね』

『それともクリスティナさんのお陰でしょうか?』


アイカは僅かに頬を染め、そっぽを向く。


『……お世辞なんかいらねーですよ、でかでかゔぁるきりー』


フェルゼンはクスリと微笑む。

そして、アイカはうつ伏せになって身体を伸ばしながら言う。


『で、聴きたい事がありそうですね……そこのレナ』


レナはアイカの眼光に物怖じせず、それでも喉を鳴らしながら言う。


『前から思って居たけど……』

『アンタ何人なの?』


『物心付く頃には養成施設に居ましたから、分かりませんよ』

『教官が言うには、何処かの国から売られて来た混血児らしいですけど』

『願わくば、イチカさんと同じ故郷であって欲しいですね』


『まさか遺伝子改造だったり……?』


『かもしれませんね。中々面白い発想ですよ』

『もしかしたら、競走馬みたいに交配されてるかもですね』

『けど、私はもう【山県愛歌】として生きています』

『ルーツや真相なんか関係ありません。それで十分なんですよ』


『なんか……ごめん』

『色々邪推してる私がダサく感じて来たわ……』


アイカはクッションを寄せ、丸まって寝転がる。


『気にする事ないですよ』

『お前もイチカさんと同じく、難しい背景の持ち主ですから不問にします』

『少し寝ますから、ナチ共は適当にあしらっておいて下さい』


『ええ。お任せ下さいませ、アイカさん』


『そこは《様》ですよ……すぅ~……』


彼女は目を閉じると、数秒で眠りに落ちて行く。

数十分後──

インターホンが鳴った。


『私が出ます』


クリチカは腰にハンドガンを差し、玄関を開ける。

そこには車椅子に座った緑髪の女が居た。


【これはこれは……】

【クレイエルの部下ではありませんか】

【やはり裏で何かが動いてましたね】

【駆けつけて正解でした】


クリチカはハンドガンに手を掛けたが、兵士達にアサルトライフルを向けられる。

しかし女は兵士達を制止し、食材を持った兵士を呼ぶ。


【大丈夫です】

【今日はディナーとお喋りに来ただけですから】

【それに貴女は我々の同胞(・・)です】

【そして申し遅れました……】


女は片眼鏡を光らせ、深い笑みを浮かべながらベレー帽の位置を直す。


【私は【降下機甲猟兵大隊】参謀長にして宣伝部隊司令官……】

【ヴェルチカ・ジェルジンスキと申します】


『(こ、この連中のナンバー3が直接……!)』


役割は宰相みたいなもんだから、実質ナンバーツーだ。

ヴェルミーナには総統といちゃいちゃちゅっちゅっする仕事があるので、内務は彼女が頼みの綱です。

クリチカの肩に、フェルゼンの大きく分厚い手が置かれる。


『クリチカさん』

晩御飯(・・・)のご用意ですわ』


『──!』

『分かりました……!』


クリチカは家の奥へと引っ込んで行く。

フェルゼンの色違いの瞳が、ヴェルチカと隊員達を見下ろす。


『こんなに大勢でディナーに来て頂けるのは、とても有難いですわ』

『しかし、それだけの食材は用意して頂けてるのですか?』


【無論です】


ヴェルチカは口の片端を吊り上げて微笑んだ。

数人の隊員達が色とりどりの食材を持って来ていた。


『(……完全にこちらの出方が読まれてますわ)』

『(この方相手に小細工は無理そうですわね)』


【ではお邪魔しても?】


『ええどうぞ』

『でもちょっとお待ち下さいまし』


フェルゼンは板を持って来て、玄関先に簡単なスロープを作った。


【──有難うございます】

【やはり貴女は王妃足り得るお人です】

【このお気持ちは決して忘れません】


『そんな……大袈裟ですわ』


ヴェルチカは車輪を手で回し、家に上がって行く。

フェルゼンは後ろの隊員達にも声を掛ける。


『良ければ、皆様もご一緒にディナーをどうですか?』

『レーションや外食ばかりでは味気ないでしょう』


隊員達は、ヴェルチカに許可を求めるような目線を送った。

彼女は指で合図し、数人の隊員達は装備を外して家に上がって行く。


『うわっ……大勢で夕食とか聞いて無いんだけど……』


『しょうがないわレナ』

『多分フェルゼンさんが入れたんだろうし……』


『(そういえばアイカさんは?)』


『(いつの間にか消えてたわ)』

『(ホントに獣並みの感覚ね……)』


クリチカはスツールに腰掛け、赤色のゲーム機を取り出した。


《送信許可求む》


《許可》


《状況報告:【降下機甲猟兵大隊】の兵士達及び参謀長『ヴェルチカ』と接触》

《これから会食を通じた情報交換が行われる可能性大》


《了解》

《引き続き報告を求む》


ヴェルチカはベレー帽を脱ぎ、指で回しながらレナへ言う。


【彼女はいつもああやってゲームを?】


『はい(インテリっぽいのに精悍な美女……どういう経歴の人なんだろう……)』

『彼女はセミプロゲーマーですが、プロゲーマー並みの腕なんです』

『大会や配信でも稼いでいます』


【ゲームですか……】

【私はチェスやウォーゲームが好きですね】

【夕食が出来るまでやりますか?チェスを……】


『……命を賭けたりはしませんよね……?』


【ふっ。まさか……】

【ですが、何も賞品が無いというのも面白く無い……】

【互いの【秘密】を賭ける、というのはどうですか?】


『……良いですよ』

『大したモノじゃないですけど、それでも良ければ……』


【なら早速やりましょう】


ヴェルチカは上着の内ポケットから、折り畳みのチェス盤を取り出した。

彼女は駒を小袋から取り出しながら言う。


【勝負を始める前に、貴女方に聞いておきたい事があります】

【ずっと気になっていたんです】


『……何でしょうか』


【何故、クレイエルはラロシェルに従っているのですか?】


『──!!』


【レナ・椎原・ミーシチェンコ。貴女は既に世界規模で起きている闘争の……】

【一つのコマです】


ヴェルチカは白いポーンをレナ側の陣地に置く。

そして、黒いクイーンを恍惚と眺めながら自陣に置いた。


【奇しくも、チェスのコマが色んな人物に見えて来ませんか?】

【私には明確に見える……】


『黒いキングが無いようですけど……』


【クイーンを取れば貴女の勝ちで良いですよ】

【我々に女王は居ても、王は居ない】


『……!』


そして彼女は白いキングに対し、猛烈な殺意を以て睨んだ。

チェス盤が殺気でヒリ付く。


【ラロシェルは人類の進化だの、文明の進歩だのを嘯いていますが……】

【その実、新たな階級社会を創りたいだけの俗物です】

【弱者保護に拘るクレイエルが、何時までも彼の下で働く事は出来ない……】

【それを暗に分かっているからこそ、彼に首輪を付けた】

【そして……付けられたままで居る理由が知りたいのですよ】


レナは白い二つのビショップを握り締めて言う。


『もし、その理由が私にあるとしたら……?』


【貴女を【保護】させて頂きます】

【そしてクレイエルをこちらに引き込む】

【彼を制御さえしてしまえば、クライヴやファルネーゼ達などは問題にならない】


『クライヴって……東京で指揮官と闘った人ですよね』

『悪いけれど……指揮官の本気を引き出したあの人は、そんなに甘くないと思う』

『映像を見たけど、指揮官を一番追い詰めた人だと思ったから』


ヴェルチカは目を大きく見開く。

レナは白いルークを隅に置いた。


『それに……指揮官はラロシェルに従ってなんかいない』

『あの人は黒い翼で何処までも高く飛び上がり、急角度で飛び込んで獲物を仕留めるんです』

『例え……獲物が宇宙に居ても……』


ヴェルチカの片眼鏡の奥にある、灰色の瞳が鈍く光る。


【……それを聞いて少しだけ安心しました】

【ラロシェルは有能な人材を多数抱えていますが……】

【そのどれをも真に掌握出来ていない】


『それに比べ……』

『アナタ方の総統さんの人心掌握力は、悪魔並みだわ』

『皆が皆、あの銀髪の悪魔に命を芯から捧げている……』


【──分かりますか】

【貴女にもアーデルハイド様の素晴らしさと魅力が……】


『……それは分かります。でも……』

『私はもっと魅力的な人を知っているから』


レナは白いキングを指で撥ね、白いクイーンを置いた。


『私達にも王は居ない』

『でも居るの。命を賭けて助けてあげたいと思う女王が……』

『色んな人があの人の本当の魅力に気付き、集まろうとしている……』

『そんな気がするんです』


彼女はナイトやポーン、残りのルークを置いていく。


【面白い……私と対等な条件で勝負すると?】


『ええ』

『私、ゲームで手加減されるのが嫌いなんです』

『手加減された自分が許せなくなるから』


【成る程成る程……実に有意義な時間になって来ました】

【【戦争】とはそうではなくては……】


ヴェルチカは黒いルークとナイトをリズム良く置き、漆黒のビショップを同時に掲げる。


【事前に警告しておきます……】

【このビショップの姉妹は、貴女のコマの悉くを殲滅するでしょう】

【私の知る限り、この姉妹に戦場で勝てる存在など居ません】


『……言った側から、早速手の内明かして手加減とか……性格悪いって言われませんか?』


【フフッ。それは私に取っては褒め言葉ですね】

【良く上官や同期にも言われましたよ……】


彼女は薄暗い笑顔を浮かべ、黒いビショップの姉妹達を置いて行った。



※1


天晴れ。

平良に関しては、これしか感想が思い浮かばない。

《明けの明星》が手放しで賞賛するぐらいなので、既に最高レベルの戦士なんだとは思う。


イチカに助けて貰った時より、彼は遥かに成長している気がします。

強さでも、探索者としても、人間としても。

今なら、ラインバウト卿も全力でお相手してくれるでしょう。


羅刹は悪鬼や戦闘狂としての側面が強調されがちですが、守護神としても大きな存在です。

南西の方角は羅刹が護っているとも言われ、まだ日本はこの守護神に護られている気がします。

石油備蓄基地も南西方面の鹿児島にあるしな。


《明けの明星》は【バルバドス】に相当思い入れがありますね、コレ。

フリスちゃん様の攻撃を身代わりで受け止めた、というのは親衛隊としては最高峰だ。

元々何でも無い牧夫だった、というのが更に良い……


因みに、モーンケはグリーンベレーに所属した前は、ナイトストーカーズに合格して作戦に従事してます。

だから夜間のヘリから飛び降りても、正確に行動が出来ています。

正直、この人が一番ファンタジーしてる。

隠密行動能力と忍耐力、夜間戦闘能力は恐らくヴェルミーナより高い。


クリチカの声のイメージは野中藍です。

プライドが高く少し気の強そうな、ツンツンした感じです。

そして一体誰と連絡しているのか、それは次回明らかになります。


そして……このフェルゼンお嬢様のホスピタリティよ。

こういう応対をさせたら右に出る人、今の所居ないんじゃないかな……

ちゃんミレやリンちゃん、そしてリヴァもかなりホスピタリティ高い。


ですがお嬢様はこれが本業とも言えるので、流石に敵わないかな。

他の女達が酷すぎるとも言える。

中央値がマジで酷すぎるよ。これがエレナだったら、客にメシを作らせてる。


ヴェルチカの本来の目的は、フェルゼンお嬢様とコネを作りに来た感じですね。

そしたら思わぬ収穫もあった感じです。

来て良かったな。

彼女もフェルゼンお嬢様に対しては、かなり好意を抱いています。


イチカだったら、陰キャラップバトルが始まってます。

見たいか?陰キャアラサー同士のクソみたいなラップバトルを……

自分は少し見たいけど、同時にそこへ四十万を投入したくなった。


そして、ヴェルチカだけは何かに気付いて居ます。

本当に頭がキレるんだよ、この人。

行動力も実行力もあるけど。

ラロシェルは彼女をかなりの脅威と認識しています。


そしてそんな彼女とレナのチェス対決です。

どのコマがどの人物に見立てられているか、それは文脈から想像して頂ければ。

正直レナの勝算は薄いですが、ハンデを突っぱねたその度胸と胆力は褒められて良い。

彼女にも、ヴェルチカとは別方面の優秀な頭脳があります。

きっと良い戦いをしてくれる、っていうか彼女に勝てなければラロシェルにも100%勝てない。


因みにチェスが一番強いのはヴェルチカで、その次にナスターシャ、その次がラロシェルです。

将棋が一番強いのは上杉ちゃん、その次がキリエ、その次がレイやんです。

オセロはイチカ、マルファお姉さん、ラロシェルの順です。


ポーカーが一番強いのはラロシェル、その次がヘイリー、その次がクラリスって感じ。

ブラックジャックはもうレイやん一強です。ほぼ完全記憶能力の持ち主だし……


レイやんはテーブルゲームがクソ強すぎて、イチカですら勝負にならない。

こんなのが戦闘アンドロイド達の指揮官やったら、そら凄いよ。

ヴェルチカはそのクラスか、それ以上の人間です。

性格は悪いですが、イカサマはしません。

寧ろ圧倒的に勝って、相手が屈服する様を見たい人かと。


因みに四十万はゲームで追い詰められると、コンセントを抜いたり盤をひっくり返して無効宣言します。

リンちゃんはちゃぶ台返しをされ、怒って暫く相手にしませんでした。

結局泣きつかれ、渋々相手にし続けています。


イチカ相手だとコマを隠したり、見てない隙にイカサマをしたりしました。

そして勝って、「しーちゃんゲーム強いね!」って言われるのが至福の時でした。

ゲーム一つ取っても、四十万はマジで面白い生き物すぎる……


少女時代のイチカは、メッチャ優しくて繊細で、真面目で純粋で良い子でした。

優しくて繊細で、真面目な部分はあまり変わってない気がする。

それ以外は色々ありすぎて変わってしまった。世間の荒波に揉まれすぎて……

レナは多分、イチカの根っこの部分を見抜いているんだとは思う。


長くなって申し訳ございませんが、今回はこれで終わりですわ。

野菜と豚肉さえあれば大抵は何とかなりますわ。


「面白かった」「次も期待している」「平良、本当につえー……」

「《夜明け》って何だよ……」「モーンケのガッツが凄すぎる」「これは人々を護る羅刹」

「フリスちゃん様、マジで何したんだよお前ぇ!」「まて、次に何が起きるんだ」


「ウソは付きませんわ(嘘)」

「前門のナチ、後門の猟犬」「レナのこういう白々しい所も好き」「レトリバー撫でたい」

「マジで相手によって態度変わるなこいつ等……」「女神(190cm以上115kg以上)」

「接収(強奪)」「アイカの身体能力本当に凄いな……」「アイカとフェルゼンの絡み好き」


「アイカ良いキャラになったなぁ」「初手で見抜いて来るこの片眼鏡怖い」

「なんつーフットワークの軽さだ」「クラリスともいちゃいちゃちゅっちゅっしろ」

「フェルゼンお嬢様とヴェルチカの駆け引きは緊張感ある」「染みるようなホスピタリティ……」


「……クリチカ?」「マジで怖いなヴェルチカ……」「何処まで何が視えてんだこの片眼鏡……」

「クライヴに対する評価が二つに分かれたのは面白い」「女王(大悪魔)」「女王(無職)」

「手加減断ったのは、レナのプライドが感じられる」「性格悪そうだけど、卑怯な事をするタイプじゃないのが厄介」


と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。

宜しくお願い致します。




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