チェス盤フロントライン(前編)
フフッ。それは私に取っては褒め言葉ですね。
鑑賞用BGM:https://www.youtube.com/watch?v=1nlTp-4ilFA&list=PL0sODq2tIjo4oE6Jb_wgGh6jdPfPMA8zQ&index=5
鑑賞用BGM(豪邸から):https://www.youtube.com/watch?v=4JkIs37a2JE
~北海道~
~平取町~
【承知しました。■■■■■様】
【──全ては《夜明け》の為に】
黒い鎧が蜃気楼の様に歪み、夜闇に溶け込んでゆく。
【──!】
突如消えたモーンケを平良は眼で追わず、目を閉じて刀を構え始めた。
モーンケは闇の中を滑らかに動き回りながら、平良を観察する。
【(……大した物だ)】
【(普通の兵士なら目で追って軽いパニック状態になる……)】
【(やはり、中々経験を積んで来ている)】
【(……空気の流れさえ感じ取れない)】
【(特殊部隊出身か……厄介なヤツめ……!)】
【(だが──)】
彼は平良を背後から刺し貫こうとするが、受け止められ弾かれた。
【──!!】
そして逆に、彼は刃でアーマーごと右腕を斬り抜かれる。
再び彼は姿を消し、平良の視界から消えた。
【(達人級か……!)】
【(理屈ではない……鍛え上げられた感覚で、周囲の空間を完璧に把握している……!)】
その時、隊員達が平良を発見し、彼目掛けて十字砲火を浴びせる。
彼は殺意に満ちた獰猛な瞳で彼等を一瞥すると、刀を構えて銃弾の嵐へと突撃して行く。
【(──!!マズい!!)】
5秒も経たない内に、10人の隊員はズタズタに斬り裂かれ、血塗れの鬼神が出来上がった。
【舐めているのか!?アメリカ人!!】
【本気で掛かって来い!!】
平良の怒声で地面が震える。
【(何をこれ以上……既に俺は本気だ……!)】
【(バケモノめ……!!)】
【(《スケルトン・ソードランチャー》!)】
モーンケは腕を構え、アーマーから透明な刃を彼に向けて複数飛ばした。
しかし、平良は一瞥もせず全てを弾き返した。
【──そこか!】
【妖刀悪鬼村雨】の切っ先が、モーンケの懐から肩に掛けて斬り上がった。
そして更に彼の肺と臓腑を刃が鎧ごと貫き、吹き飛ばされる。
【ガフッ……!】
彼は血を吐き、彼の鮮血で彼の輪郭が露わになった。
既に出血多量で意識は朦朧とし、彼の視界は霞んで失われつつあった。
【俺は……俺は倒れない……!】
しかし彼の足は地面を掴み、強烈に踏み留まる!
【倒れたら……倒れたら全てが終わる……!!】
【俺は……俺はまだ……まだ何も取り返せて居ない……!!】
【そして……俺の全てを……奪った連中に……鉄槌を下すまで……死ねるものか……!!】
【──見事】
【一流の戦士に相応しい死をくれてやる!】
【【羅刹の秘薬】三段階起動!!】
平良から凄まじい気が放たれ、アスファルトが溶けて行く。
彼の肌は赤く変色し、折れた二本の角が再生する。
後ろから襲い掛かろうとしていた【降下機甲猟兵大隊】の小隊は、平良の放った真空波に吹き飛ばされた。
【俺はこの地の民を死と苦難から護る!!】
【護って見せる!!】
《明けの明星》は軽く拍手する。
【かつてフリスの悪意から無辜の民を護って死んだ、その意気と気迫……】
【未だ全く衰えず、ね】
【最強の鬼神の復活に、心からの祝福を……】
そして銀髪の女は黒い羽を散らしながら、重傷のモーンケの血だらけの頬に触れる。
【でも……バルバドスだって私の身代わりになってくれた】
【あの時の悲しみと後悔は、今でも私の心を膿ませ続けているの】
【今こそアナタに報いる時よ】
銀髪の女は彼の額にキスをした。
しかし、彼女の唇は彼の額をすり抜ける。
そして彼の頭を抱きながら囁く。
しかし、彼女の腕は彼の体をすり抜ける。
【今こそ全てを愛し、壊しなさい】
【【堕天使原理】三段階起動】
【《魂の起爆》】
平良の放った刃はモーンケの首をすり抜けた。
~北海道・日高町~
平取町で戦闘が行われている時、フェルゼンお嬢様一行と【降下機甲猟兵大隊】の検問部隊が対峙していた。
『通れない、ってどういう事ですの?』
『説明する必要は無い(デッ……!?)』
『大丈夫だ。貴女達に対しての安全は保障する』
『戦闘が終わり安全が確保出来たら、ゆっくりと観光して行くと良い』
フェルゼンは身分証を取り出し、隊員達へ提示する。
『私は航空会社の社員ですわ』
『このままではフライトに間に合いませんの』
『……申し訳ないが、近くのホテルか宿舎に一泊しておいて欲しい』
『私はゲオルグ・フォン・エアハルト王子の婚約者でもあります』
『今ここを通れないと、来週に行われる晩餐会にも間に合いませんわ』
『ほ、本当ですか……!?』
『スウェーデン大使館へ問い合わせても宜しいですわよ』
『この《イェリス・フォン・フェルゼン》、ウソは付きませんわ』
思いっきり付いてますわ。晩餐会なんてありませんわ。
隊員は装甲車両に乗っている隊長へ、慌てて報告しに行く。
隊長は車両から飛び降り、フェルゼンの元へやって来る。
『申し訳ございません、フェルゼン様……』
『貴女の様な方が北海道を旅行中とは、いざ知らず……』
『前置きは要りませんわ』
『通して下さるの?そうでないですの?』
『ハッキリさせて下さいまし』
『私共はジェルジンスキ参謀長から任務を仰せつかっております』
『私の一存でここを通す事は出来ません』
『しかし、お食事の提供と宿舎のご案内なら権限内で可能です』
『……戦闘はどの位で終わる見込みですの?』
『ハッキリとした事は申し上げられませんが……』
『本日中には……』
『通行の安全確保には更に2日程度……』
フェルゼンは腰に手を当て、軽く息を吐く。
『……なら仕方がございませんわね』
『クリチカさん。レナさん』
『今日はここでお泊りですわ』
『……もっと粘るかと思ってたんだけど』
レナはアッシュグレーの髪を捩じりながら返答した。
フェルゼンは優しく微笑む。
『戦闘地域を通り抜ける事の難しさは……』
『レナさん。貴女が一番良く知っていらっしゃるのでは?』
『アレ?バレた?』
『バレバレですわよ』
『でも、レナさんのそういう所が好きですわ』
フェルゼンは右背後の山林に向かって、ウィンクした。
アイカは狙撃銃を下ろし、闇の中へ溶け込む様に消えて行く。
『……正直、前のナチより後ろの猟犬の方が、100万倍怖かったんだけど……』
『優先順位的に殺されてないだけよね、私達……』
『そんな事はありませんわよ』
『アイカさんはレトリバー並に優しい方ですわ』
愛嬌もレトリバー並みだぜ。
隊長は無線で何処かと会話しながら、フェルゼン達に合図を送る。
『丁度宿が取れました』
『隊員がバイクで現地まで誘導させて頂きます』
『有難うございました』
『先程の非礼、お詫び申し上げますわ』
『いえ……!そんなとんでもない……』
『私共も失礼な態度を取った事、深くお詫び申し上げます』
レナとクリチカは車に乗り込む。
『……なーんかウワサと違くない?』
『何が?』
『【降下機甲猟兵大隊】の連中よ』
『もっと荒々しくて粗暴で、虐殺すらも問わないヤバい悪魔みたいな連中だ、って評判だったけど……』
『なんていうか、想像していたよりずっと親切というか……』
クリチカは帽子を脱ぎ、膝に置いて答える。
『ああ……連中は人種によって態度を変えるのよ』
『フェルゼンさんに対してあんなに丁寧なのは……連中の教義では、理想中の理想的な存在だから』
『あの人、まるで神話に出て来る女神みたいじゃない?』
『ああ、そういう……』
『ウクライナ系の私達は半ば見下されてそうね』
『何だか微妙な気分だわ……』
『それでも、殴られたり撃たれたりはしなかったし、対応も最初は事務的だった』
『これがヒスパニック系ギャングだったりしたら、今頃ここも戦場よ』
『北海道どころか太平洋全域で彼等も力を増している、って専らのウワサだし』
『色んな意味で荒れそうなネタがゴロゴロ……』
そして後部のドアが開き、車がドスンと揺れた。
『クリチカさん。運転お願いしますわ』
『前のバイクに付いて行けば良いんですよね?』
『ええ。お願いしますわ』
クリチカはアクセルを踏み、前のバイクを追い始めた。
アイカは茂みを駆けながら、車とバイクを追い掛けて来る。
『ぅわ……銃を背負いながら車を追い掛けてる……!』
『しかも森の中を……』
『どんな身体能力してんのよ……』
『や、闇社会出身の人間恐るべし……』
アイカは彼女達にピースまでして見せた。
~十数分後~
~豪 邸~
『えっと……』
『この家は……?』
『現地民が住んでいた民家を接収しました』
『食事の配達も私が担当させて頂きます』
『何か食材のご注文は?』
『私は健啖家なので、沢山肉とかお菓子とかあると……』
『了解致しました』
『調達に時間が掛かるので、ごゆっくりお寛ぎを』
隊員は笑顔でフェルゼンに家のカギを渡し、バイクに乗って去って行く。
レナは呟く。
『ねぇ、これ……元の住民って……』
『あと食材って……』
『考えるのはよしましょうレナさん』
『良心が咎めて、ご飯が食べられなくなりますわ』
『とんでもない事になって来ちゃったわね……』
彼女達は家に入る。
玄関先のタイルには、元の住民の物と見られる血痕が僅かに付いていた。
『(ごめんなさい……!ごめんなさい……!)』
彼女達が家の中に入ると、既にリビングではアイカが寛いでいた。
『あら、アイカさん』
『既にいらしていたのですね』
『ええ』
『アーデルハイドのヤツ、思っていた以上にデカい存在だと思いましたよ』
『で……この家の持ち主達は、イワシ缶方式(※1)で裏庭に埋められていました』
『『……!!』』
『部屋のカーテンとか壁紙とかが破れていたり、机に引っかき傷があるでしょう』
『それは持ち主達が抵抗した証拠です』
『連中、抵抗する者達には全く容赦しませんよ』
『特に有色人種には……』
フェルゼンはアイカの琥珀色の瞳には、僅かに憂鬱さが見えた。
『アイカさん……』
『人を殺すというのは、作業であってはいけないんです』
『殺した人間の全てを背負って行く、大切なイベントであり重要な仕事なんです』
『だから人殺しを単純化する様な、戦争や虐殺は……嫌いなんですよ』
『やっぱり……アイカさんは優しい人ですわね』
『それともクリスティナさんのお陰でしょうか?』
アイカは僅かに頬を染め、そっぽを向く。
『……お世辞なんかいらねーですよ、でかでかゔぁるきりー』
フェルゼンはクスリと微笑む。
そして、アイカはうつ伏せになって身体を伸ばしながら言う。
『で、聴きたい事がありそうですね……そこのレナ』
レナはアイカの眼光に物怖じせず、それでも喉を鳴らしながら言う。
『前から思って居たけど……』
『アンタ何人なの?』
『物心付く頃には養成施設に居ましたから、分かりませんよ』
『教官が言うには、何処かの国から売られて来た混血児らしいですけど』
『願わくば、イチカさんと同じ故郷であって欲しいですね』
『まさか遺伝子改造だったり……?』
『かもしれませんね。中々面白い発想ですよ』
『もしかしたら、競走馬みたいに交配されてるかもですね』
『けど、私はもう【山県愛歌】として生きています』
『ルーツや真相なんか関係ありません。それで十分なんですよ』
『なんか……ごめん』
『色々邪推してる私がダサく感じて来たわ……』
アイカはクッションを寄せ、丸まって寝転がる。
『気にする事ないですよ』
『お前もイチカさんと同じく、難しい背景の持ち主ですから不問にします』
『少し寝ますから、ナチ共は適当にあしらっておいて下さい』
『ええ。お任せ下さいませ、アイカさん』
『そこは《様》ですよ……すぅ~……』
彼女は目を閉じると、数秒で眠りに落ちて行く。
数十分後──
インターホンが鳴った。
『私が出ます』
クリチカは腰にハンドガンを差し、玄関を開ける。
そこには車椅子に座った緑髪の女が居た。
【これはこれは……】
【クレイエルの部下ではありませんか】
【やはり裏で何かが動いてましたね】
【駆けつけて正解でした】
クリチカはハンドガンに手を掛けたが、兵士達にアサルトライフルを向けられる。
しかし女は兵士達を制止し、食材を持った兵士を呼ぶ。
【大丈夫です】
【今日はディナーとお喋りに来ただけですから】
【それに貴女は我々の同胞です】
【そして申し遅れました……】
女は片眼鏡を光らせ、深い笑みを浮かべながらベレー帽の位置を直す。
【私は【降下機甲猟兵大隊】参謀長にして宣伝部隊司令官……】
【ヴェルチカ・ジェルジンスキと申します】
『(こ、この連中のナンバー3が直接……!)』
役割は宰相みたいなもんだから、実質ナンバーツーだ。
ヴェルミーナには総統といちゃいちゃちゅっちゅっする仕事があるので、内務は彼女が頼みの綱です。
クリチカの肩に、フェルゼンの大きく分厚い手が置かれる。
『クリチカさん』
『晩御飯のご用意ですわ』
『──!』
『分かりました……!』
クリチカは家の奥へと引っ込んで行く。
フェルゼンの色違いの瞳が、ヴェルチカと隊員達を見下ろす。
『こんなに大勢でディナーに来て頂けるのは、とても有難いですわ』
『しかし、それだけの食材は用意して頂けてるのですか?』
【無論です】
ヴェルチカは口の片端を吊り上げて微笑んだ。
数人の隊員達が色とりどりの食材を持って来ていた。
『(……完全にこちらの出方が読まれてますわ)』
『(この方相手に小細工は無理そうですわね)』
【ではお邪魔しても?】
『ええどうぞ』
『でもちょっとお待ち下さいまし』
フェルゼンは板を持って来て、玄関先に簡単なスロープを作った。
【──有難うございます】
【やはり貴女は王妃足り得るお人です】
【このお気持ちは決して忘れません】
『そんな……大袈裟ですわ』
ヴェルチカは車輪を手で回し、家に上がって行く。
フェルゼンは後ろの隊員達にも声を掛ける。
『良ければ、皆様もご一緒にディナーをどうですか?』
『レーションや外食ばかりでは味気ないでしょう』
隊員達は、ヴェルチカに許可を求めるような目線を送った。
彼女は指で合図し、数人の隊員達は装備を外して家に上がって行く。
『うわっ……大勢で夕食とか聞いて無いんだけど……』
『しょうがないわレナ』
『多分フェルゼンさんが入れたんだろうし……』
『(そういえばアイカさんは?)』
『(いつの間にか消えてたわ)』
『(ホントに獣並みの感覚ね……)』
クリチカはスツールに腰掛け、赤色のゲーム機を取り出した。
《送信許可求む》
《許可》
《状況報告:【降下機甲猟兵大隊】の兵士達及び参謀長『ヴェルチカ』と接触》
《これから会食を通じた情報交換が行われる可能性大》
《了解》
《引き続き報告を求む》
ヴェルチカはベレー帽を脱ぎ、指で回しながらレナへ言う。
【彼女はいつもああやってゲームを?】
『はい(インテリっぽいのに精悍な美女……どういう経歴の人なんだろう……)』
『彼女はセミプロゲーマーですが、プロゲーマー並みの腕なんです』
『大会や配信でも稼いでいます』
【ゲームですか……】
【私はチェスやウォーゲームが好きですね】
【夕食が出来るまでやりますか?チェスを……】
『……命を賭けたりはしませんよね……?』
【ふっ。まさか……】
【ですが、何も賞品が無いというのも面白く無い……】
【互いの【秘密】を賭ける、というのはどうですか?】
『……良いですよ』
『大したモノじゃないですけど、それでも良ければ……』
【なら早速やりましょう】
ヴェルチカは上着の内ポケットから、折り畳みのチェス盤を取り出した。
彼女は駒を小袋から取り出しながら言う。
【勝負を始める前に、貴女方に聞いておきたい事があります】
【ずっと気になっていたんです】
『……何でしょうか』
【何故、クレイエルはラロシェルに従っているのですか?】
『──!!』
【レナ・椎原・ミーシチェンコ。貴女は既に世界規模で起きている闘争の……】
【一つのコマです】
ヴェルチカは白いポーンをレナ側の陣地に置く。
そして、黒いクイーンを恍惚と眺めながら自陣に置いた。
【奇しくも、チェスのコマが色んな人物に見えて来ませんか?】
【私には明確に見える……】
『黒いキングが無いようですけど……』
【クイーンを取れば貴女の勝ちで良いですよ】
【我々に女王は居ても、王は居ない】
『……!』
そして彼女は白いキングに対し、猛烈な殺意を以て睨んだ。
チェス盤が殺気でヒリ付く。
【ラロシェルは人類の進化だの、文明の進歩だのを嘯いていますが……】
【その実、新たな階級社会を創りたいだけの俗物です】
【弱者保護に拘るクレイエルが、何時までも彼の下で働く事は出来ない……】
【それを暗に分かっているからこそ、彼に首輪を付けた】
【そして……付けられたままで居る理由が知りたいのですよ】
レナは白い二つのビショップを握り締めて言う。
『もし、その理由が私にあるとしたら……?』
【貴女を【保護】させて頂きます】
【そしてクレイエルをこちらに引き込む】
【彼を制御さえしてしまえば、クライヴやファルネーゼ達などは問題にならない】
『クライヴって……東京で指揮官と闘った人ですよね』
『悪いけれど……指揮官の本気を引き出したあの人は、そんなに甘くないと思う』
『映像を見たけど、指揮官を一番追い詰めた人だと思ったから』
ヴェルチカは目を大きく見開く。
レナは白いルークを隅に置いた。
『それに……指揮官はラロシェルに従ってなんかいない』
『あの人は黒い翼で何処までも高く飛び上がり、急角度で飛び込んで獲物を仕留めるんです』
『例え……獲物が宇宙に居ても……』
ヴェルチカの片眼鏡の奥にある、灰色の瞳が鈍く光る。
【……それを聞いて少しだけ安心しました】
【ラロシェルは有能な人材を多数抱えていますが……】
【そのどれをも真に掌握出来ていない】
『それに比べ……』
『アナタ方の総統さんの人心掌握力は、悪魔並みだわ』
『皆が皆、あの銀髪の悪魔に命を芯から捧げている……』
【──分かりますか】
【貴女にもアーデルハイド様の素晴らしさと魅力が……】
『……それは分かります。でも……』
『私はもっと魅力的な人を知っているから』
レナは白いキングを指で撥ね、白いクイーンを置いた。
『私達にも王は居ない』
『でも居るの。命を賭けて助けてあげたいと思う女王が……』
『色んな人があの人の本当の魅力に気付き、集まろうとしている……』
『そんな気がするんです』
彼女はナイトやポーン、残りのルークを置いていく。
【面白い……私と対等な条件で勝負すると?】
『ええ』
『私、ゲームで手加減されるのが嫌いなんです』
『手加減された自分が許せなくなるから』
【成る程成る程……実に有意義な時間になって来ました】
【【戦争】とはそうではなくては……】
ヴェルチカは黒いルークとナイトをリズム良く置き、漆黒のビショップを同時に掲げる。
【事前に警告しておきます……】
【このビショップの姉妹は、貴女のコマの悉くを殲滅するでしょう】
【私の知る限り、この姉妹に戦場で勝てる存在など居ません】
『……言った側から、早速手の内明かして手加減とか……性格悪いって言われませんか?』
【フフッ。それは私に取っては褒め言葉ですね】
【良く上官や同期にも言われましたよ……】
彼女は薄暗い笑顔を浮かべ、黒いビショップの姉妹達を置いて行った。
※1
天晴れ。
平良に関しては、これしか感想が思い浮かばない。
《明けの明星》が手放しで賞賛するぐらいなので、既に最高レベルの戦士なんだとは思う。
イチカに助けて貰った時より、彼は遥かに成長している気がします。
強さでも、探索者としても、人間としても。
今なら、ラインバウト卿も全力でお相手してくれるでしょう。
羅刹は悪鬼や戦闘狂としての側面が強調されがちですが、守護神としても大きな存在です。
南西の方角は羅刹が護っているとも言われ、まだ日本はこの守護神に護られている気がします。
石油備蓄基地も南西方面の鹿児島にあるしな。
《明けの明星》は【バルバドス】に相当思い入れがありますね、コレ。
フリスちゃん様の攻撃を身代わりで受け止めた、というのは親衛隊としては最高峰だ。
元々何でも無い牧夫だった、というのが更に良い……
因みに、モーンケはグリーンベレーに所属した前は、ナイトストーカーズに合格して作戦に従事してます。
だから夜間のヘリから飛び降りても、正確に行動が出来ています。
正直、この人が一番ファンタジーしてる。
隠密行動能力と忍耐力、夜間戦闘能力は恐らくヴェルミーナより高い。
クリチカの声のイメージは野中藍です。
プライドが高く少し気の強そうな、ツンツンした感じです。
そして一体誰と連絡しているのか、それは次回明らかになります。
そして……このフェルゼンお嬢様のホスピタリティよ。
こういう応対をさせたら右に出る人、今の所居ないんじゃないかな……
ちゃんミレやリンちゃん、そしてリヴァもかなりホスピタリティ高い。
ですがお嬢様はこれが本業とも言えるので、流石に敵わないかな。
他の女達が酷すぎるとも言える。
中央値がマジで酷すぎるよ。これがエレナだったら、客にメシを作らせてる。
ヴェルチカの本来の目的は、フェルゼンお嬢様とコネを作りに来た感じですね。
そしたら思わぬ収穫もあった感じです。
来て良かったな。
彼女もフェルゼンお嬢様に対しては、かなり好意を抱いています。
イチカだったら、陰キャラップバトルが始まってます。
見たいか?陰キャアラサー同士のクソみたいなラップバトルを……
自分は少し見たいけど、同時にそこへ四十万を投入したくなった。
そして、ヴェルチカだけは何かに気付いて居ます。
本当に頭がキレるんだよ、この人。
行動力も実行力もあるけど。
ラロシェルは彼女をかなりの脅威と認識しています。
そしてそんな彼女とレナのチェス対決です。
どのコマがどの人物に見立てられているか、それは文脈から想像して頂ければ。
正直レナの勝算は薄いですが、ハンデを突っぱねたその度胸と胆力は褒められて良い。
彼女にも、ヴェルチカとは別方面の優秀な頭脳があります。
きっと良い戦いをしてくれる、っていうか彼女に勝てなければラロシェルにも100%勝てない。
因みにチェスが一番強いのはヴェルチカで、その次にナスターシャ、その次がラロシェルです。
将棋が一番強いのは上杉ちゃん、その次がキリエ、その次がレイやんです。
オセロはイチカ、マルファお姉さん、ラロシェルの順です。
ポーカーが一番強いのはラロシェル、その次がヘイリー、その次がクラリスって感じ。
ブラックジャックはもうレイやん一強です。ほぼ完全記憶能力の持ち主だし……
レイやんはテーブルゲームがクソ強すぎて、イチカですら勝負にならない。
こんなのが戦闘アンドロイド達の指揮官やったら、そら凄いよ。
ヴェルチカはそのクラスか、それ以上の人間です。
性格は悪いですが、イカサマはしません。
寧ろ圧倒的に勝って、相手が屈服する様を見たい人かと。
因みに四十万はゲームで追い詰められると、コンセントを抜いたり盤をひっくり返して無効宣言します。
リンちゃんはちゃぶ台返しをされ、怒って暫く相手にしませんでした。
結局泣きつかれ、渋々相手にし続けています。
イチカ相手だとコマを隠したり、見てない隙にイカサマをしたりしました。
そして勝って、「しーちゃんゲーム強いね!」って言われるのが至福の時でした。
ゲーム一つ取っても、四十万はマジで面白い生き物すぎる……
少女時代のイチカは、メッチャ優しくて繊細で、真面目で純粋で良い子でした。
優しくて繊細で、真面目な部分はあまり変わってない気がする。
それ以外は色々ありすぎて変わってしまった。世間の荒波に揉まれすぎて……
レナは多分、イチカの根っこの部分を見抜いているんだとは思う。
長くなって申し訳ございませんが、今回はこれで終わりですわ。
野菜と豚肉さえあれば大抵は何とかなりますわ。
「面白かった」「次も期待している」「平良、本当につえー……」
「《夜明け》って何だよ……」「モーンケのガッツが凄すぎる」「これは人々を護る羅刹」
「フリスちゃん様、マジで何したんだよお前ぇ!」「まて、次に何が起きるんだ」
「ウソは付きませんわ(嘘)」
「前門のナチ、後門の猟犬」「レナのこういう白々しい所も好き」「レトリバー撫でたい」
「マジで相手によって態度変わるなこいつ等……」「女神(190cm以上115kg以上)」
「接収(強奪)」「アイカの身体能力本当に凄いな……」「アイカとフェルゼンの絡み好き」
「アイカ良いキャラになったなぁ」「初手で見抜いて来るこの片眼鏡怖い」
「なんつーフットワークの軽さだ」「クラリスともいちゃいちゃちゅっちゅっしろ」
「フェルゼンお嬢様とヴェルチカの駆け引きは緊張感ある」「染みるようなホスピタリティ……」
「……クリチカ?」「マジで怖いなヴェルチカ……」「何処まで何が視えてんだこの片眼鏡……」
「クライヴに対する評価が二つに分かれたのは面白い」「女王(大悪魔)」「女王(無職)」
「手加減断ったのは、レナのプライドが感じられる」「性格悪そうだけど、卑怯な事をするタイプじゃないのが厄介」
と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。
宜しくお願い致します。




