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現代日本プレッパーズ~北海道各地に現れたダンジョンを利用して終末に備えろ~  作者: 256進法
第三部:駆け抜けろ 燃え尽きたろか シンデレラ

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144/155

ニューヨーク地下鉄8番出口ダンジョン(後編)

今まで済まなかった、エスティア


鑑賞用BGM(マイナス4階):https://www.youtube.com/watch?v=7DYdBrajTQQ

鑑賞用BGM(マイナス√256階):https://www.youtube.com/watch?v=oLsURX_Xhwc&list=PLptvYyWJVBjvySBNd8Cr-xPC0zQD31g8b

鑑賞用BGM (トランク・ビル):https://www.youtube.com/watch?v=ol2bezKfSe4&list=PLptvYyWJVBjvySBNd8Cr-xPC0zQD31g8b&index=37


~ニューヨーク地下鉄8番出口ダンジョン~

~マイナス4階~


『虫!多すぎるだろ!!』

『もう一生分は見たぞ!!』

『来世は昆虫博士になれるな!!』


エスティアは足を止めて背後を振り返り、二本の指へ光を集中させる。


『《ライトニング・エクスプロージョン》!!』


彼女が手を振り抜くと同時に、人面蛾の群れに向かって光の粒子がばら撒かれ、一斉に爆発した。


『おい!アホ学者!』

『なんで光学迷彩が通用せんのや!!』


『そんなの私が知りたいぞ!』

『大方熱感知で獲物を追っているんだろう!!』

『何せここは薄暗いからな!!』


『そ、想定が足らんかった……!!』


そして突然、アナウンスが響き始める。


《これから通路の清掃を行います》

《残っているお客様は直ぐにご退去を》


「つっ、次は何ぃ!?」


「わ、わかりません……!」


『──!!』


クエイドはアサルトライフルに武器を切り替えながら、パーティーの先頭へと一気に駆け抜けた。

彼は、天井と壁から出て来た射撃装置を次々と破壊して行く。


『清掃ってそういう意味かいな!!』

『あとサンキュークエイド!!』


『──ケンザキ!』

『2時の方向だ!!』


レイカは刀を返して銃弾を弾き、そのまま射撃装置を細切れにする。


「メイアルーアジコンパッソ(半月コンパス蹴り)!!」


ミレイアも銃撃を躱しながら、銃塔をへし折った。


「葵!!」

「次に結界張れそうな所!見えるか!?」


「だっ、ダメ!!」

「このフロアには【気】の流れが無い!!」

「(それに澱みが酷すぎる……!)」


「ほな、次に行くしかないって事か!?」

『皆!!あのエレベーターまで走るんや!!』

『殿はワイとクエイドがやる!!』


葵とエスティアはエレベーターに駆け込み、続いてミレイアと高っちゃんが滑り込んで来る。

そしてレイカが飛び込み、クエイドが牽制射撃をしながらエレベーター内へ後退して来た。


『ボタンを押すんや!!』

『何処でもええ!!』


『バカな事を言うな!!ヤケド女!!』

『確かにムチャクチャな記号の羅列だが、必ず法則性はあるハズだ!!』

『解読させろ!!』


『んな時間ないわ!アレ見ぃ!』

『このままじゃ、全員ムカデに喰われて仲良く異世界転生や!』


レイカが指差す先には、人面ムカデの大群が迫りつつあった。

薬莢がエレベーターの床に次々と散って行く。


『ふぁっ!?!』

『……えぇい!!もうどうなっても知らないからな!!』


エスティアは乱雑にエレベーターのボタンを押しまくった。

エレベーターのドアが閉まり、動き出す。


「た、助かった……!」


「レ、レイカさん……!」

「だ、ダンジョンってこんなのばかりなんですか……!?」


レイカは刀を仕舞い、タバコに火を点ける。


「いや……」

「難易度に比べて殺意が高杉晋作や」

「虫の大群なんて、装備次第では即死やろ」


「確かに……」


「しかも奴等【血魂】を落とさんかった」


「まさか……!」


エレベーターが振動し、アナウンスが始まる。


《ニューヨーク地下鉄8番出口ダンジョン》

《マイナス√256階へ到着しました》


『ま、マイナス√256!?』


『もうどうやって戻ったらええか分からへん(諦め)』


扉が開く。

眩しい光がレイカ達の網膜を混乱させた。


『『『──!?』』』


ミレイアは目を開けたが、飛び込んで来た光景に驚いて声が出なくなる。


「花畑……!?」


クエイドの手から銃がずり落ち、音を立てて転がった。


『アンナ……』

『そこに居るんだな!?アンナ!!』


彼は何かに取り憑かれた様に歩き出し、花畑に向かって手を伸ばして行く。


『どっ、どうしたんや!?』


『クエイド!何処へ行くんだ!』


『花畑の向こうからアンナが呼んでいる……!!』

『今度こそは死なせない……!!』

『死なせてなるものか!!』


『だ……誰も呼んでおらんがな……』

『たっ、高っちゃん!ミレイア!』


高っちゃんとミレイアはクエイドの手足を掴んで、引き留めようとする。


『離せ!!』

『俺は約束した!アンナを両親の下へ連れ帰ると……!!』


『幻覚や!花畑以外は全てお前の幻覚や!!』


金髪の女性が微笑み掛け、そして花畑の奥へと霞む様に消えて行く。


『待て!俺は……俺は……!!』


クエイドは全身から力が抜けたように崩れ落ちて行く。

高っちゃんは紫色の花を千切って食べてみた。


「……レイやん!」

「これ、幻覚作用がある!!」


「!」


「何で食べて平気なの!?」


高っちゃんはモストマスキュラーのポーズで答えた。

葵も同じポーズで返答した。

グッドコミュニケーション!


『クエイド』


『……』


エスティアは彼の頬を思い切り引っ叩いた。


『こんな時に、昔の女に想いを馳せるとは良い度胸じゃないか?えぇ?』

『このエスティア・ゴールドバーグ様を差し置いて、な!!』


『エ、エスティア……』


彼女は彼の両頬を掴む。


『お前の女は私だ!!』

『私だけを見ていろ!!最高のスナイパー!!』

『私の心を射抜いた事、忘れるんじゃないぞ!!』


『──』


『ダンジョンから生還したら、たっぷり相手して貰うからな!!』

『覚悟しておけ!!』


レイやんはタバコを花畑に投げ捨てる。


『そこのピカピカ学者の言う通りやで、クエイド』

『この世は夢や。だがな……』

『夢の中にも優先順位(・・・・)はあるやろ?』


『優先順位……』


エスティアはチラチラとクエイドを見ている!

どうやらキスを期待しているようだ!

レイカと葵は頬を膨らませて、笑いを我慢している!


『今まで済まなかった、エスティア』


クエイドはその無骨な手でエスティアの身体を抱き締めた。

彼女の脳内をβエンドルフィンが駆け巡り、頭上に光のハートマークが浮き上がった。


『ふ、ふ、ふ……!』

『ふふふふ……!』


彼女の身体は歓喜の絶頂で打ち震えていた。プルプルと。


「ミレイア」

「いい歳こいて交際経験が無いアラサーは、いざ男に振り向かれるとああなるんや」

「勉強になったか?」


「な、なるほど……!!」


『貴様等、何を喋っているか分かってるからな』


レイやんにもいい歳こいて交際経験は無い。

葵は紙垂棒を取り出し、花畑へ足を踏み入れる。


「【陰陽遊戯】第二段階起動」

「《五行安静領域》」


彼女を中心として花の色が紫色から桃色へと変わって行く。


「な、何が起こってるんヤー!?」


「浄化して無毒化してるんだよ、この花達を」

「折角だから、ここで少しお茶にしようか」

「いいムードだし、ね?」


「了解!パワー!」


高っちゃんは花畑に飛び込み、白い歯を魅せてスクワットし始めた。



~ニューヨーク市内~

~トランク・ビル~


『ふんふん……』

『で?』

『あのマヌケのケツを拭けってかい?』

『……アンタの頼みじゃなきゃ、一笑に付していた所さ』


ブランド物に身を固めた筋肉質な大女が、頬に付いた血を拭いながら微笑む。


《マルタレータ》

《一部始終は恐らくラロシェルも視ている筈》

《もしディルレヴァンガー達が殲滅されるか、早期攻略を達成されれば……》


『それはそれは笑えない事態になるねえ~』

『分かった。直ぐ行くよ!』


彼女は不法侵入者の首を片手で捻り、投げ捨てる。


『ヴェルチカ』

『ラロシェルのガキはこのNYに居るよ、間違いないね』


《……それは何時もの直感ですか?》


『さぁねぇ』

『ただ、これからのNYは荒れに荒れる』

『そんな予感だけはひしひしと感じるのさ』

『試合前の、トラッシュトークショーみたいにねえ』


《……》


マルタレータは血塗れのまま堂々とエレベーターに乗り、降りて行く。


『兵隊はどの位貸してくれるんだい?』


《今NYで動かせるのは500程です》


『なら100で良いよ』

『ただ、元特殊部隊出身者、出来ればデルタの市街地戦経験者を混ぜておいておくれ』

『残った仕事を片付けておくから、トランクのジジイに宜しくな』


エレベーターの扉が開く。

アイテムで武装した暴徒達の前に、燃える様な橙色の長髪を上下させながら、ブランド物で身を固めた暴力専門の悪魔が現れる。

巨体で身体はプラモデルのようにバキバキだったが、顔は女神の様にお美しかった。


『私は忙しいんだ』

『そこをどいてくれるかい?』


マルタレータは首を回し、音を鳴らす。

同時にビル入口のシャッターが降りて行く。


『ど、どくのはお前だ!!』

『この殺し屋め!!』


『こんな美女を捕まえて殺し屋なんて……』

『ヒドいねぇ~』


『わ、我々の仲間を殺しただろ!』


『大統領私有地への不法侵入は死罪』

『知らなかったかい?』


マルタレータは暴徒達に一歩づつ近寄って行く。

暴徒達も一歩ずつ後ずさりして行く。


『今、お前達は檻の中に投げ込まれた生肉さ』

『アイテムで武装していたって、使い手が案山子じゃあねぇ』


ジリ。


『──おや』

『来ないのかい?』


ジリジリッ。


『なら、こっちから行くさぁねぇ』

『【サイバネ・ウェヌス】起動』


巨体が素早い肉食動物の様に躍動し、暴徒の持っていた銃は腕ごと引きちぎられた。

彼女に向けて銃弾が放たれたが、驚異的な反射神経で全ての弾が躱される。


『ほらほら!!』


拳が頭蓋を潰し、蹴りが胴体を裂き、肉ごと内臓が引きちぎられる。

虐殺は数分間続き、押しかけて来た暴徒達は全て肉塊と成り果てた。


『全く……これから更に死体臭い場所へ行かなきゃならないってんだから……』

『ラロシェルのガキに復讐する為とは言え、面倒な連中と契約しちまったもんだよ』


彼女は血塗れのストールを投げ捨て、僅かに笑みを浮かべた。


意外とこのパーティー、バランス良いなと思い始めて来た……

盾が高っちゃん、近接はレイカとミレイア、遠距離がクエイド、特殊攻撃や偵察がエスティア、フィールドでのサポートや回復が葵って感じで。

対人でも対モンスターでも強いけど、サバイバル能力が今までのパーティーで一番高いと思う。


しかし、元デルタのクエイドが頼りになり過ぎる。

サンキュークエイド。


うんうん、こういうので良いんだよこういうので。

こういうのが描きたかった。

途中からまた暴の人出ちゃったけど。


で、浄化とかサラッと葵は言ってますが、かなりとんでもないレアスキルです。

現在確認されている中では【聖少女ユクセル】と、ラインバウト卿の【ローランの聖凱】・【至聖剣デュランダル】しかこの能力は持っていません。

しかも後者が単体対象なのに対して、葵のは全体対象です。


条件はユクセルに比べて厳しくなるんだけども、特定の条件下では最強のヒーラーかもしれない。

何より悪意のある呪いとか怨念とか、そういったモノを祓えるのが大きい。

恐らく、アーデルハイドの洗脳や、ラロシェルのマリオネットも解除出来る。

無論四十万の天敵でもある。

祓われたら目がキラキラすると思う。綺麗なジャイアンか??


モンスター避けに関しては曖昧になってしまいましたが、ある程度の効果があるとは思っています。

ただ、穢れが薄い存在には効かない感じ。


葵がレイやんの元へ駆けこんで来たのは、ある種運命かもしれない。

動機は最低だけど。


逆に、ヤストレブや高っちゃんのような、物理でガンガン来る連中は葵の天敵です。

アイカや上杉ちゃんみたいに、暗殺も厭わない相手だとこれまた厳しい。

本当の意味で探索の専門家ですね。この手の人は初めてかもしれない。


探索専門な人の方が少ないと思う。葵とて、本業は陰陽師なので。

彼女は探索だけで月10億円相当は稼げる逸材です。

彼女が居るだけで生存率が桁違いなので、普通に国家レベルの人材かと。

日本の探索者業界はなにやってたの、って言われるレベル。

そこら辺ガバガバなのは日本だからなァ……って感じでもある。


エリちはピカピカ女神の言う通り、マジで良い買い物をした。

寧ろこんな金の卵をあっさり他人に譲る、レイやんの感覚が凄い。

しかも後の面倒まで看てくれる、ってほぼ聖女やで。

そらエリちも彼女面しますわ。


閑話休題。


ディルレヴァンガーは、トーデスの存在をヴェルチカには隠しています。

けど流石に誤魔化しきれなくなって来たので、実は困っていた。

もしバレたら隊内での信用は失墜してしまうし、ヴェルミーナに所業がバレた時の余波が予測出来ない。

ただ、ヴェルチカはもう半ば気付いていると思う。

だから早く帰って来て大人しくしてろ、と助け舟を出したワケですが……


レイやん達といざこざを起こしたお陰で、直ぐに帰れなくなってしまった。

ただ、ヴェルチカはそういった事態も予測し、救援部隊を送っています。

彼女にとって、有色人種やユダヤ人が主導するグループに負ける事など許されないからです。

だからかなりヤバくて強力なのが来る予定です。


このヤバくて強力なの、完全に暴力専門の殺し屋です。

単純な戦闘力で言えば、フェルゼンお嬢様以上かもしれない。

ただ、その暴力性が余りにも原始的で、美しいお顔とブランド物とは不釣り合いすぎて……

最高だな。こういうギャップが人格に歪みを感じて好きだ。


彼女が現れ、シャッターが閉まった時の暴徒達の絶望感は凄かったと思う。

彼女の言葉通り、檻に投げ入れられた生肉状態だった。

この言葉は通じるけど、意思疎通が成立しない感が最高だ。

そりゃエサと会話する肉食獣なんて居ないから、当たり前なんだけども。


ヴェルチカは葵とは正反対の人材を投入して来ました。

エリちとは探索のスタンスも真逆ですなぁ。

てか、ヴェルチカ経由の人材ってヤバいのばかりだ。

しかし、ここまでしないといけないぐらいに状況は悪化しているという……


アメリカはダンジョン関連でも超先進国ですが、同時にヤバい犯罪者達の巣窟にもなっています。

今、彼等彼女達の目は日本というフロンティアに向いています。

アイテムを持った猟奇犯罪者もおり、従来の司法機関では対処出来ないレベルにまで来ている。

因みに、マルタレータは地方判事を大金で買収し、自分に対する起訴を取り下げさせています。


もしレイやん達が早期攻略、もしくはディルレヴァンガー達の殲滅に成功した場合、ラロシェルはこれをリベラル派、もしくテクノリバタリアンへの良い宣伝材料として使う。

逆の場合はヴェルチカが政治的な宣伝として、余す所なく利用する。

この二人は既に頭の中で戦ってますなぁ。

今回の探索は思った以上の余波を引き起こす、それだけは確実なんだ。


もしレイやんが両方に成功した場合、ラロシェルからの評価が天元突破します。

嬉しくねぇ!

そして、クエイドは元同僚達と戦う羽目になるかもしれません。

運命は徹底的にこの男を虐め抜く積りだ。


でもね……屈強で有能な男(+イケメン&男前)が苦しんでるの見るの、少し好きなんですよ(ボソッ)

ああ……今のは冗談です。忘れて下さい。


ここまで読んでくれて感謝します!


「面白かった」「次回も楽しみにしている」「メンタルヘルス的には最悪のダンジョン」

「そ、想定が足らんかった……!!」「サンキュークエイド」

「マイナス√256階ってどうなってんだよ、これ……」「クエイド……」

「エスティアが良い女すぎる」「やっぱ葵すげぇ」

「まーたデカ女か」「美女……?」「美女だろ!」「生肉は草」

「戦闘力クソヤバそう」「ラロシェルマジで一体何をしたんだよ、お前……」

「こんなヤツがフリーでうろつくのは怖すぎるから、契約で縛るのは正解」「冗談……?」


と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。

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