第9話 自己中心的な佐山と復讐計画
「僕がほのかをどう思ってるのか……か」
「話したくないとか、話しにくいなら言わなくてもいいんだけど」
「いや、別にそういうわけじゃないんだ。ただ、自分でもどう思ってるのか。深く考えたことが今までなくてさ」
浮気をされている現場を目撃してから家に引きこもって、閉じこもってたけど。
その間もほのかのことを考えたことは無かった。
何も考えないようにしていた。
考えてしまったら、辛くなってしまう事が目に見えていたから。
「未練は……ないね。うん。よく考えてみても全くない」
確かに僕は彼女の事が本当に好きだった。
真面目で可愛くて、優しい。
そんな彼女が本気で好きで、付き合えた時は本当にうれしかったのを覚えている。
だけど、あの光景を見て未練があるかと聞かれればない。
浮気をされた挙句に変な噂まで流しているんだから。
「そっか。それが聞けて安心したよ。もし、今でも好きだったらどうしようかと思った」
「流石にね。でも、なんでこんなことを聞いたの?」
「ちょっと気になっただけ。それより、午後までは暇でしょ? 一緒に勉強しようよ」
「それもそうだね。日向を休ませちゃった分ちゃんと勉強を教えるよ」
それから僕たちは放課後の時間になるまで、二人で勉強をしながら時間を潰した。
こうやって勉強をしたりしている間は、自分が今置かれている状況を忘れられるから好きだ。
現実逃避だってわかってるけど、人間にはこんな風に逃げる時間も大切なのではないかと自分で思う。
【佐山視点】
「チッあのクソ野郎。今日は休みかよ」
ほのかの元カレをまた煽ろうと思って奴の教室に顔を出してみたけど、今日は休みなのか教室に居なかった。
せっかく面白いおもちゃを見つけたのに、学校にいないのなら意味ねぇじゃねぇか。
今は昼休みで、廊下に人が多い。
そんな中でひと際目立った女が俺のほうに近づいてくる。
「佐山先輩! こんなところでどうしたんですか?」
「ほのかか。お前に暴力をふるったクソ野郎を懲らしめてやろうと思ってな。教室に来てみたんだけど、今日はいないみたいでな」
「あんな人のことはどうでもいいじゃないですか。それよりも一緒にお昼ご飯食べませんか?」
「それもそうだな。行くか」
俺がそういうと、ほのかは俺の腕を抱いて隣をぴったり歩いてくる。
完全に俺に惚れこんでいて、気分がいい。
正直、他人の彼女を寝取るのが一番楽しいんだよなぁ。
征服感が満たされるっていうかさ。
自分が特別な存在なんだと再認識できる。
「佐山先輩、絶対に私を捨てないでくださいね」
「当り前だろ」
俺の目を見上げてくるほのかの頭を撫でながら、微笑みを向ける。
こういう女が適度に甘い言葉をかけて、手なずけておけば自分の好きな時に呼び出せる都合のいい女の完成だ。
こいつもその女の一人。
面倒になったり、飽きたりしたら適当に捨てればいい。
だが、その時にこいつの周りには誰がいるんだろうな。
「ほんと、この人生チョロすぎだわ」
【佐山視点終了】
「湊くんの家ってこんな感じなんだ」
「同じマンションなんだから、そこまで間取りとかは変わってないでしょ」
「それはそうだけど、なんか男の子の家って感じがする」
「どんな感じさ」
僕たちは放課後まで勉強したりして、時間を潰して気が付けば放課後の時間になっていた。さっき隆介からこっちに向かうと連絡があったので僕たちは一足先に家で待つことにした。
「う~ん、そういわれると言語化が難しいんだけど」
日向は悩ましそうな顔を浮かべている。
こんな風に何かを考えている横顔も可愛い。
高校生になってより一層可愛くなったような気がする。
「日向はソファーでくつろいでてよ。飲み物はコーヒーでいい?」
「うん。ブラックで」
「わかった。じゃあ、僕もコーヒーにしようかな」
日向に飲みたい飲み物を聞いて、キッチンに立つ。
久しぶりに自分の家のキッチンに立った気がするけど、物のは配置を忘れているとかは無くてスムーズにやかんに水を入れて火にかける。
その間にドリップコーヒーをマグカップにセットする。
「隆介君は元気にしてるの?」
「相変わらず元気だと思うよ。僕も夏休みに入るまでのあいつしか知らないけど」
あいつはいっつも元気で太陽みたいな笑みがトレードマークの好青年だ。
それもあって、女子からはすごくモテてるんだけど。
今は野球に集中したいって言って彼女を作らなかったんだよな。
もったいない。
「そっか。私も会うのは久しぶりだからちょっと楽しみだな~」
「こっちに来てからは話してないのか?」
「うん。そういう機会がなくてさ。だから、楽しみなの」
隆介とは僕が小学生のころからの親友と言う事もあって、日向とも面識がある。
二人が特段仲がいいという話は聞いていないけど、仲が悪いというわけでもない。
「はい、コーヒー」
「ありがと。湊くん」
話しているうちに熱湯を注いでコーヒーを日向の前に持っていく。
そうすると、日向は可愛くコーヒーを飲み始めた。
ピンポーン
その時にちょうど、インターホンの音が鳴った。
このマンションはオートロック搭載のマンションだから入るためにはまず、一回の扉をこちらから遠隔で開けないといけない。
モニターを見てみれば、見慣れた坊主頭が見えたのでそのまま一回の扉を開ける。
◇
「久しぶりだな湊」
「うん。夏休みが始まって以来会ってなかったね」
「ああ。しかもどれだけ連絡しても繋がらないからすげぇ心配してたんだけど。その顔を見るにある程度マシになってるっぽいな」
「おかげさまでね。本当に心配かけてごめん」
部屋に入ってすぐ、隆介は僕に駆け寄ってくる。
心配そうな顔をしてたのは最初だけで、僕の顔を見たら隆介はぱぁっと笑顔になった。
やっぱり隆介は笑顔がよく似合う。
「マシになったのは望月さんのおかげか?」
「そうだね。日向がいなかったらどうなってたかマジでわからない」
あの時、あの場面で日向が来なかったら。
きっと僕は死んでいた。
全てに絶望して。
「そか。望月さん。俺の親友を助けてくれてありがとうな」
「いえ、私にとっても湊くんは幼馴染なので。当然のことをしただけです」
日向は頭を下げてお礼を言う隆介に笑顔で対応していた。
僕の幼馴染は本当にいい子で、親友もいい奴だ。
「それでよ、お前が浮気した挙句、暴力をふるったっていう噂が流れてるんだけどなんでなんだ?」
「それは……」
言葉にすると、泣きたくなってくる。
僕が口ごもっていると、隣に座っている日向が手を握ってきてくれる。
小さくて、きめ細やかな感触に手が包まれて少し落ち着く。
「私から説明します。流石に本人から説明させるのは酷だと思うので」
「それもそうだな。無神経だった。すまん湊」
「謝らないでしょ。隆介に悪気がないのはわかってるからさ」
それから、日向は隆介に僕が経験したことを要約して伝えてくれた。
時々、僕の顔を見ながら不安そうな顔をしていたけど。
その時は日向の手を握り返して大丈夫だと伝えた。
「そんなことが……許せねぇ」
「ですよね。しかも、その元カノと浮気男は被害者とそれを助けた英雄として扱われてるんです。本当に許せない」
「だな。何とかして湊の汚名を払拭したいんだが。何かいい方法はねぇのかな」
「そうですね……」
二人は真剣に頭を悩ませ始める。
確かに浮気したほのかも、僕に冤罪を着せた佐山も許せない。
そんな人たちがのうのうと学校生活を送っていることも。
できる事なら、復讐したい。
どうすれば、復讐できるのか。
「あ……」
その時、僕は一つの名案を思い付くのだった。




