第46話 クリスマスイブとは言っても所詮は日常
クリスマスイブと言うのに、僕がやっていることは普段とあまり変わらない。変わったことと言えば、いつもは日向がしている家事を僕がやっているという事くらいか。
「悪いな湊。怪我をしてるのに家事をやらせてしまって」
「良いですよ。小雪さんが家事出来ないのは知ってますし」
「面目ない。いつかは覚えようと思っているんだけどな。中々時間が無くて」
「忙しいですもんね。全然気にしないでください。そこまで苦でもないので」
小雪さんが申し訳なさそうにしているのを見ながら、僕は皿洗いをしていた。
リビングのソファーで日向は座ってゆっくりしていた。
「ごめんね湊くん。本当は私がやるべきなのに」
「良いって。いつもやってもらってるし。日向が怪我をしてる時くらいは僕がやらないと」
申し訳なさそうにしている日向に笑みを向けて、僕は黙々と皿洗いを進める。
こういう単純作業はそこまで嫌いじゃない。
「ありがとね。湊くん」
「気にしないでくれ。日向は怪我が早く治るように安静にしてて」
「私の目の前であまりイチャイチャしないで欲しいんだが。まあ、いいか」
小雪さんはため息をついて、うなだれている。
大丈夫。きっと小雪さんにもいい人が見つかります。
「そう言えば、湊くんの元カノはどうなったの?」
「あれは、警察に連れて行かれたよ。流石にその後のことは分かっていないけど」
「そうなんですね。とりあえず、みんな無事でよかったじゃないですか」
「だな。あの状況で死人が出なかったのは驚きだ」
佐山も死んではいないらしいし、結果として今回の一件で死人は誰一人として出ていない。その事に感謝をしつつ。
◇
「ねぇ湊くん」
「どうした?」
「クリスマスプレゼントが欲しい!」
「それは良いけど、何が欲しいの?」
最近は忙しすぎて、クリスマスプレゼントを用意する時間が無かった。
でも、何か欲しいって言うなら少し遅くなっても贈りたい。
「えっとね。キスしてほしい……かな」
「……そんなのでいいのか?」
「そんなのって……酷いなぁ。クリスマスイブに恋人にキスしてほしいって言う気持ちがわかんないのかな」
「いや、わかるんだけど。もっとすごい物をねだられるのかなと思ってたから」
「そんなことしないよ。ほら、キスして? ん」
そう言って日向は目を瞑る。これはいわゆるキス待ち顔と言う奴ではないだろうか?
物凄く可愛い。こんなにも可愛い子が僕の彼女だなんて。
「ん」
こうして、僕は日向とキスをした。
キス自体、あまり経験がない事だけど大好きな彼女とするキスは本当に幸せだった。
「湊~!? 虫が出たんだ! 助けてくれ」
「「……」」
ムードがぶち壊しだが、これはこれで僕たちの日常らしくていいのかもしれない。
もう少し、小雪さんには雰囲気を読むということを覚えて欲しい。
「そう言うわけで行って来る」
「うん。うちのおねぇちゃんがごめんなさい」
「全然。僕は気にしてないから。小雪さんにもお世話になっているわけだしね」
そんなこんなで雰囲気をぶち壊されながら、僕は小雪さんの部屋に現れたらしい虫を退治しに行くのだった。




