第45話 戻ってきた日常と締まらない小雪さん
「いろいろ終わったね。お疲れ様。湊くん」
「お疲れ様日向」
家に帰った僕たちは日向の部屋で楽しく会話をしていた。
車いすでの移動はかなり不便そうだし、早く完治してほしいと思う。
「湊くん、その怪我大丈夫なの? その腕で私のこおお姫様抱っこしてくれてたけど」
「大丈夫大丈夫。日向が思っているほど深い傷ではないからさ」
「絶対うそでしょ。あんなに深々とナイフが刺さってたのに」
「大丈夫だって。日向を助けれたんだから、これくらいの怪我大したことないよ」
腕にナイフが刺さったくらいで、日向の命を救えるのなら安いものだ。腕が吹っ飛ばされたわけでもないし。
「あの時、湊くんが言ってくれた言葉って本当?」
「言ってた事って?」
「世界で一番大切ってやつ」
「ああ、もちろん本当だし本心だよ」
僕は日向のことが世界で一番大好きだし、大切だ。
それだけは、これから何があっても絶対に変わらないんだと思う。
「凄く嬉しかったよ。私のことを助けてくれるヒーローみたいで」
「そんな大層なもんじゃないけどね。めちゃくちゃボロボロにされたし」
目立った傷は腕の傷だけど、他にも体の至る所に大小さまざまな傷が出来てしまっている。
「それでも……だよ。私にとっては白馬の王子様みたいだった」
「日向にそう思われるのは嬉しいな。ありがとう」
「お礼を言われるような事でもないんだけど」
少し困ったような顔をしながら、日向は笑いかけてくれる。
この笑顔を見ることが出来るだけで、僕は凄く幸せを感じることが出来る。
日向が隣にいない世界なんて想像できないし、したくもない。
「生きててくれてありがとう。日向」
「こちらこそ。助けてくれて本当にありがとうね」
◇
「湊、ちょっといいか?」
「どうしたんですか? 小雪さん」
「いや、少し話したい事があってな。少し私の部屋に来てくれないか?」
「全然いいですけど」
クリスマスパーティーが終わり翌日。
世間ではクリスマスイブと呼ばれる日の朝に僕は小雪さんに部屋に呼び出されていた。
「まずは本当にありがとう。君がいなかったらひなちゃんは殺されていたかもしれない」
「気にしないでください。僕は僕がするべきことをしただけです」
「君らしい答えだが、気にしないのは無理だな。君は妹の命の恩人なんだから」
「それを言ったら僕は日向に命を救われてます。おあいこですよ」
日向がいなければ、僕は数か月前に死んでいた。
だから、おあいこなのだ。
「そうか。まあ、いい。それより、何度も聞かれているだろうが腕は大丈夫なのか? 私から見てもかなり深く刺さっていたが」
「傷は深いですけど大丈夫ですよ。前も言いましたけど日常生活に支障はないので」
「ならいいんだ。私は職業的にひなちゃんのそばにずっといることはできないから。足が治るまでずっと一緒に居てくれると嬉しい」
「足が治るまでと言わずに、一生そばに居ますよ。それが日向と交わした約束ですから」
「ふっ。君みたいな男があの子のそばに居てくれるなら安心だな。これからも末永くあの子を任せるよ」
「任せてください」
小雪さんは満足そうに頷いて、僕の頭を撫でてくる。
昔はよくこんな風に頭を撫でてもらっていたな~っと昔を思い出して懐かしくなる。
「よく言った。私からの話はこれだけだ。戻ってくれていいぞ」
「はい。じゃあ、僕は日向を起こしにでも行こうと思います」
「それもそうだな。そろそろ起きる時間だし」
小雪さんは相変わらず、満面の笑みで頷いているかと思うとすぐに真顔になる。
何かあったのかな?
「そう言えばだが、朝食って誰が作るんだ?」
「……あ」
いつもは日向が朝食を作ってくれていたけど、あの足のケガでは料理をすることは難しいだろう。
つまり、この家には料理を出来る人間がいない!?
「ちなみに湊は料理はできるのか?」
「一応できますよ。日向程うまくはないでしょうけどね」
「なら、ひなちゃんを起こした後に作ってくれるとありがたいんだが」
「わかりました。じゃあ、行ってきますね」
最後の最後で締まらない小雪さんに笑みを向けて、僕は日向を起こしに部屋にむかうのだった。




