第41話 狂気の殺人未遂
「それがな、ついさっきの話なんだが。佐山要が何者かに腹部を刺されて緊急搬送されたらしい。幸い命に別状はなかったが複数回刺された形跡がったそうだ」
「よく複数回刺されて生きていましたね。普通は死にませんか?」
「発見が早く、すぐに緊急搬送されたのが功を奏したらしい。後数分見つかるのが遅かったら死んでしまっていたそうだぞ」
「でも、一体誰に刺されたんですかね?」
アイツの交友関係は知らないけど、そう簡単に人を刺せるような奴が多くいるとは思えない。
「それは調査中らしい。でも、何度も刺しているところからかなりの恨みを持った人物の犯行ではないかと警察は考えているそうだ」
「なるほど。まあ、僕にしたことと同じ様な事をしていたのであれば恨みを買っていてもおかしくはないですね」
「そうだな。一応聞いておくが、お前じゃないよな?」
「そんなことしませんって。僕に何のメリットもないですし」
僕は確かに佐山に酷いことをされたけど、そこまで憎んでいるわけじゃない。
もっと言えば、あいつを刺して日向との幸せな生活を脅かすようなことをしたくないんだ。
「だよな。早く犯人が見つかると良いんだが」
「ですね。じゃあ、僕は先に帰っておきますね。日向に校門前で待ってもらってるので」
「それは早く行ってくれ。外は寒いからな」
「はい。それじゃあ、失礼します」
「ああ。気を付けて帰るんだぞ」
小雪さんにそう言われながら、僕は職員室を後にして校門前に向かう。
だが、校門前についても日向の姿は見当たらない。
あの子が僕に何も言わずに帰ることは考えずらいので、まだ校内にいるのだろうか?
「……なんか嫌な予感がするな。佐山の件と言い物騒だし」
急いで下駄箱に向かい日向の靴があるのか確認する。
そこには日向の靴があった。
「つまりは、校内にいることは確定ってわけね」
とりあえず、生徒会室からここに来るまでのルートを探すことにする。
もしかしたら、何かの手がかりがあるかもしれない。
「クソ、こういう時に限ってもう消灯してるんだから」
スマホのライトを使って廊下を照らしながら、走り回る。
そこで、奇妙なものを見つける。
「……血痕? なんでこんなところに」
しかも、持続的に血痕が移動しておりまともに止血していないことが伺える。
この様子を見るに、何かから逃げているような……
血痕を走って辿りながら、僕は小雪さんに今の状況を説明した。
今残っている教員を総動員で探してくれるそうだから、これで効率は上がる。
血痕は階段を上り続けており、屋上に続く扉の前で途切れていた。
「ここから先で何かが起こっている可能性が高いというわけか」
小雪さんにメールで状況を報告して、屋上に扉を蹴り開ける。
そして、視界に飛び込んでいたは……
【ほのか視点】
足に傷はつけた。今の時間は生徒も教員もそこまで残っていないから、誰かに邪魔をされる心配はそこまでない。
あとはゆっくりじっくり泥棒猫を追い詰めるだけ。
「あはは~優雅な狩りって言うのも楽しそうでいいね」
走ったりすることはせず、私は階段の上に逃げて行った泥棒猫を追いかける。
職員室に行かれたら不味いけど、その時は再びナイフを投げればいい。
幸いな事にまだまだストックはある。
「にゃはは~待っててね湊。泥棒猫の生首を持って、洗脳を解いてあげるから」
どんどんと追い詰めていく。
全速力で逃げられることは絶対にないし、あの傷がある以上は反撃の警戒もしなくていい。
冬の暗さは犯行をするのには凄く最適。
しかも、今日は終業式前日で人も少ないからやりやすい。
「待っててね~」
そうして時間をかけて、最後に泥棒猫が逃げ込んだ先は屋上だった。
もう逃げ場はない。
まあ、何度か職員室の方向に逃げようとしてたからそのたびにナイフを投げてけん制したし。
もう両脚から出血してる。
不思議な事に致命傷は全部避けられたのが、ちょっと腹立たしいけどね。
「もう逃げ場ないよ~? 最後に遺言くらいは聞いてあげるけど、何か言い残すことはある?」
「……なんで、こんなことを」
「そんなの私の湊を奪った挙句、私のことを陥れたからに決まってるじゃんか。はは~」
不思議なことを聞いてくるものだ。そんな当たり前のことを聞いて一体何がしたいのだろうか? 異常者の思考は私にはわからないや。
「それは……あなたが」
「うるさいよ。もう、最後の言葉を言い終えたんだから大人しく死になね」
話を聞くのも面倒になってきた。
こいつを殺せばすべてが戻って来る。あと少しだ。
「じゃあね。泥棒猫」
そう言って私は彼女の首を目掛けて包丁を振り下ろすのだった。
【ほのか視点終了】




