第38話 ごめん……隆介の事忘れてた
「今日は騒ぎを起こして本当にごめんなさい」
「いいって。そんなに謝らなくても。僕は気にしてないしさ」
帰り道も日向は申し訳なさそうに頭を下げてくる。
僕は元気な顔をしている日向のことが好きだから、出来れば笑顔で居て欲しい。
「それよりも、楽しい話をしよう。少し気が早いけど、クリスマスとかどこかに遊びに行かないか?」
「クリスマス……うん! 最高に楽しそう」
「でしょ? それに、付き合って最初のクリスマスだから盛大に何かやりたいね」
「うんうん! どこかに旅行に行くってのはどうかな?」
「いいな。日向は行きたいところとかある?」
僕としては、日向と一緒に居る事が出来ればどこだってかまわないんだけど。
でも、何でもいいって言う返答は帰って困らせてしまう可能性だってある。
そうなった場合は僕が何か提案をすることにしよう。
「う~ん、ぱっと思いつくものはないけど。逆に湊くんはどこか行きたい場所とかってないのかな?」
「僕は温泉旅行とかに行ってみたいけど。日向はどうかな?」
「温泉旅行!? 凄く良いね!」
「なら、とりあえずはそれでいこう。日向も他に行きたい場所があったら遠慮なく言ってくれ」
日向が行きたい場所が出来れば、二人でそこに行けばいいし、仮に出てこなかったら温泉旅行に行けばいい。
僕たちにはまだまだ時間がある。
ゆっくりと二人で色んな思い出を積み重ねて行けばいい。
「もちろん。でも、正直に言っちゃうと湊くんと二人ならどこでもいいよ」
「……僕もそう思っているけど、改めて言われると照れるね」
良かった。日向が笑ってくれてる。
やっぱり、日向はこんな風に笑っている方が可愛い。
可愛いというか、もはや尊い。
「えへへ。湊くんは案外照れやすいよね。可愛い」
「そういう日向だって照れやすい癖に」
精一杯の照れ隠しを言いながら、僕たちは笑顔で帰路を辿る。
時刻は既に午後六時を回っていて日が沈んでいた。
夕陽が日向の顔を照らしていて、すごく綺麗で美しくて。
「……なぁナチュラルに俺の存在を忘れてないか?」
「「……あ」」
後ろから隆介に声をかけられてはっとする。
そう言えば、今日は三人で帰っていたんだった。
日向と話すのに夢中ですっかり忘れてしまっていた。
すまない隆介。
「まあ、お前らが仲いいのは知ってるしさ。別にいいんだけどよ。俺は彼女がいないんだから少しくらいは遠慮してくれるとありがたいかな~って」
「「ゴメンナサイ」」
今回に関して言えば完全に僕たちが悪い。
付き合い始めて日が浅いというのもあるけど。
これからは周囲の目をちゃんと気にして日向との時間を過ごさなくてはいけない。
「謝られるような事じゃねぇよ。それとな、湊の元カノ……金島だけだよ。あれから暴れ回って大変だったんだぜ?」
「悪いな面倒な役を任せて」
「良いって。というか、他の生徒会メンバーじゃ対処できないだろ? 湊が対応するわけにはいかないし。日向さんに対応してもらったら完全に逆効果。秋奈さんも何を言われるかわからないしな」
「助かったよ。今度からもよろしく頼むよ」
「いやいや、そんな面倒事ばかりを俺に任せるのはやめてくれよな」
やれやれと頭を掻きながらため息をつく。
そんな仕草は昔から見慣れているけど、今度からはここまで面倒な事案は教員を頼ろうと素直に思った。
「善処はするよ。僕たちはスーパーに寄ってから帰るけど隆介はどうする?」
「俺はこのまま帰るよ。また明日な二人とも」
「また明日」
「また明日です」
さて、日向と夕飯の買い出しに向かって家に帰ってゆっくりすることにしよう。
今日はちょっと疲れたし。




