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彼女をNTRされ絶望して全てを終わらせようとした屋上で幼馴染に拾われた  作者: 夜空 叶ト


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第37話 君が怒ってくれるから

「何があったの? 秋奈さん」


 尋常じゃない様子の秋奈さんに水無月先輩も少し面食らっている様子だった。

 僕自身も少し動揺しているけど、その動揺を見せるわけにはいかない。

 曲がりなりにも今の僕は会長なのだから。


「それが、少し揉め事が起きているというか……ですね」


「揉め事? 珍しいね。この学校で揉め事なんて。それで? 何があったん?」


「そのぉ……日向さんが」


「……なんでや」


 日向が誰かと揉め事を起こすとは考えにくいけど、この様子からして嘘ではないと思う。何より、ここで秋奈さんが嘘をつく理由が全くない。


「えっと、聞いた話なんですけど。どうやら、一年の子が夜霧先輩をバカにしてたらしくて」


「……」


 なるほど。それなら、日向が怒るのも納得はできる。

 まあ、僕なんかのために揉め事を起こしたくて欲しくはないんだけど。

 怒ってくれたこと自体は少し嬉しい。


「なので、ちょっと来ていただけると」


「わかったよ。そういう事なので水無月先輩。ちょっと行ってきます」


「おう。行ってらっしゃい。会長の初仕事がんばってね!」


「ありがとうございます。じゃあ、秋奈さん案内お願いしてもいいかな?」


「勿論です。こっちに来てください」


 こうして僕は、気持ちの整理をつける暇もなく問題の解決に向かう事になった。


 ◇


「もう一回言って見なさいよ!」


「だから、何度だって言ってやるさ。神凪会長のおこぼれで会長になった浮気男ってな。あんなのに会長が務まるわけないのに」


「……なんですって?」


「はいはい。そこまで。二人とも一旦落ち着こうか」


 ヒートアップしている二人を一旦離れさせる。

 日向は秋奈さんに任せて、僕は日向と言いあっていた男子生徒の話を聞く。


「それで? なんでこんな騒ぎになっているんだい?」


「もとはお前のせいだろ! お前なんかが会長になったから」


「それを僕に言われてもね。会長選挙に出たのは僕の意志だけど、当選したのは学校の総意だ」


 そこの責任を僕に問われても、どうしようもないじゃないか。

 この子は何をそんなに怒っているんだ。

 未だに僕のことを睨みつけながら、男子生徒は悪態をつく。


 金色に染めた短髪に鋭い目つき。僕と同じくらいの身長で筋骨隆々と言うわけでもない。この子からはスポーツをしているような感じはしない。


「それが納得いかねぇって言ってんだよ。なんでお前みたいな奴が」


「平行線だね。君は僕に何を求めてるの?」


「そりゃ、簡単だろ。お前が会長を辞めて選挙をやり直せ。俺はお前が会長だなんて絶対に認めねぇからな」


「……はぁ。そもそも学校が定めた選挙内容をそう簡単に覆すことはできないし。何よりも僕にだって任期ってものがある。それを投げ出すわけにはいかないよ」


 それは、僕を信じて票を入れてくれた人たちへの裏切りに他ならない。

 なにより、僕はまだ目的を果たしていないんだから。


「テメェ会長になったからって良い気になってんじゃねぇぞ?」


「言いがかりだね。君は僕の何が気に入らないんだい?」


「全部だ。あんな噂が流れてたお前が会長なんてありえねぇ。どんな手を使ったんだ」


「何もしてないんだけどね。まあ、いいや。とりあえず、僕は君に何もしてあげることができない。それと、今回みたいに変な事件を起こすのはやめてね」


 こんなしょうもない事で問題にしたくないし、変に問題にして権力を悪用してるって思われたくはない。

 だけど、一つ言っておくことがあるとしたら。


「まだ話は終わってねぇぞ!?」


 そう言って僕に詰め寄る彼の肩に手を置いて、一言だけ告げる。


「日向に何かしたら、絶対に許さないからな? それだけは肝に銘じておけ」


 自分でもびっくりするほど、低い声が出たことに内心驚きつつ。僕はその男子生徒から視線を外して日向の方に向かう。


 秋奈さんが宥めてくれていたらしく、落ち着きを取り戻していた。


「お待たせ。話は一旦生徒会室に戻ってから聞くから、移動しようか。ここじゃ目立ちすぎるし」


「うん」


「ですね。行きましょう日向さん」


 そうして僕たちは問題が起きていた一年一組を後にして、生徒会室に戻った。

 全校生徒に認められてはいないと思っていたけど、まさかこんな形で問題になるとは思わなかったな。


 僕の目指す学校を作り上げるのはまだまだ難しいらしい。


 ◇


「私は席を外したほうが良いですか?」


「いや、大丈夫だよ。今は多分、日向と僕は二人っきりにならない方が良いと思うから」


「そうですか。分かりました」


 先にソファーに座っている日向を見ながら、僕は気を使おうとしてくれた秋奈さんに笑顔を向ける。


「落ち着いたかな。日向」


「……うん。ごめんね。迷惑かけて」


「全然迷惑なんかじゃないけど。日向が僕のために怒ってくれているのは知ってたし」


 しょんぼりと肩を落としている日向の対面に座りながら、出来るだけ優しく語り掛ける。


「……でも」


「怒ってないからそんなにおびえた顔しないでくれ。それに、日向が怒ってくれて僕は嬉しかったからさ」


「そうですよ。夜霧先輩はそんなことで怒るような人じゃないのは日向さんが一番知っているでしょう?」


 日向の隣に座っている秋奈さんも日向のことを慰めてくれる。

 秋奈さんは本当にいい子だ。

 日向ともいい友達になってくれると思う。


「そう……だよね。うん! 元気出た! ありがとう秋奈ちゃん」


「いえいえ。私はそこまで大したことはしていないので」


「ま、今日はもうやることもないし解散にしようか。今日はありがとね秋奈さん」


「はい。じゃあ、私はこれで失礼しますね」


 こうして今日は解散になった。

 問題は山積みだけど、日向に何もなくて良かったと安心できた。


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