第33話 増える思い出
「トリックオアトリート!」
「……凄く可愛いね。メイドのコスプレ?」
「そう! ちょっと前にネットで良いやつ見つけてさ。そう言う湊くんはドラキュラのコスプレ?」
「そうそう。僕も同じくネット通販で良いやつを見つけてさ。似合ってると良いんだけど」
「凄く似合ってるよ。めちゃくちゃカッコいい! いつもよりも大人びて見える」
今日はハロウィン。約束通り僕たちは仮装をしていた。
日向はメイドで僕はドラキュラ。この後、仕事から帰ってくるであろう小雪さんも何らかのコスプレをするはずだ。
……どんなコスプレをしてくるか正直あんまり想像がつかないな。
「ありがとう。そう言えば、日向はこの前の中間テストはどうだったんだ?」
「バッチリ! 全教九十点以上だったよ!」
「凄いな。流石日向だね」
「いやいや、湊くんの方が絶対に総合得点違うでしょ。というか、学年順位一位とかじゃなかったっけ?」
「うん。最近はそれなりにちゃんと勉強をしてたからね。やっと一位になれて嬉しいよ」
この学校に入学してから、学年順位は基本的に十位以内だったけど。
一位になるのは今回が初めてだ。
だから、かなり嬉しかったりする。
ま、ひけらかす様な事でもなかったから今まで言ってこなかったわけだけど。
「うんうん。私も久しぶりに君の子供らしい顔が見れて嬉しいよ」
「おかえりお姉ちゃん。仕事の方はもういいの?」
「良く無かったら帰ってこないさ。それよりも二人とも似合っているね」
帰ってきた小雪さんは満足そうに僕たちの方を向いて、うんうんと頷いていた。
きっと、日向のメイド服姿を記憶に焼き付けているんだろう。
「ありがとうございます。小雪さん」
「ありがとお姉ちゃん! それでお姉ちゃんはいつコスプレするの?」
帰っていた小雪さんはパンツスタイルのスーツを着て、リビングに立っていた。
日向はニコニコしながら、小雪さんを眺めている。
日向の瞳からは、絶対に逃がさないという圧のようなものを感じた。
どうやら、日向は小雪さんを逃す気はないらしい。
「わ、わかったからそんなに怖い目で見ないでおくれ」
「うん。じゃあ、早く着替えてきてよ。せっかく今日は三人でハロウィンパーティーなんだからさ」
「はい」
小雪さんは肩を落としながら、自分の部屋に戻っていった。
そこまでコスプレが嫌なんだろうか?
……いや、若い人たちの前でコスプレをしたくないってだけなのかもしれないけど。
◇
「……どうだ?」
少し時間が経ってから、小雪さんが着替えて出てきた。
着ている服はあまり見た事の無いフリフリのピンクと白を基調とした色の服だった。
「お姉ちゃんそれ、アニメのキャラのコスプレ?」
「ああ。コスプレがどんなものかわからなくてな。同僚に聞いたらこれをお勧めされたんだ」
普段の小雪さんからは考えられないくらいに、可愛い服を着ていて正直びっくりした。でも、似合っていないというわけではなくて凄く似合っている。
いつもはクールな小雪さんが可愛い系の服を着ていると凄く可愛い。日向とはまた違った可愛さがあるように思う。
「なるほど」
その同僚はかなり自分の趣味を小雪さんに押し付けている気がしなくもないけど、可愛い小雪さんが見れたから良しとしよう。
「お姉ちゃん凄く可愛い! せっかくだしみんなで写真を撮ろうよ」
「いいねそれ。小雪さんもいいですか?」
「まあ、いいさ。こういうのも思い出だろ」
こうして僕たちは三人で写真を撮った。この家に来てから色んな思い出がたくさん増えてきたような気がする。
そのすべてをこれからも大切にしていくと同時に、増やしていきたいと。
心の底から思うんだった。




