第23話 ……あれから一ヶ月
「僕が立候補ですか?」
「ああ。三年生が立候補できるわけでもないし。それに、君以外の見込みのある子はあんまりいないからね」
「で、でも生徒会長選挙ってかなりの人数が立候補してませんでしたか?」
例年通りで言うのなら、会長立候補者は数人は居たはずだ。
今年はそれが無かったというのかな。
「そりゃあ、あれよ。神凪会長が優秀過ぎて他のみんなが立候補したがらなかったんだよね~あはは」
「笑い事じゃない気がするんですけど」
「そうだぞニコ。本気で困ってるんだ。立候補者がいないんだから、生徒会を降りようにも降りれない」
「でも、なんで僕なんですか? そんな目立った能力もないと思うんですけど」
凄く勉強が出来るわけでもないし、かといって頭がいいわけでもない。
そんな僕に生徒会長が務まるのだろうか?
「いや、君は優秀だよ。書類仕事とか、いろんな部活の調整役をしてくれたりと。それに人柄もいいからね」
「そうそう。私もみなとっちが会長なら安心して任せられるな~」
「そう言われても……」
「大丈夫。私が推薦責任者になろう。業務については君が良く理解しているだろうから問題ないとして」
神凪会長はふむふむと腕を組みながら何かを考えている。
こうなった会長は思考が終わるまで何を話しても反応してくれない。
「ありゃ~会長思考モードに入っちゃったね。こりゃあ、しばらくかかりそ~」
「ですね。何かしてます? お茶でも淹れましょうか?」
「いいの? 悪いね~」
「良いですって。何かしてないと僕も落ち着かないので」
僕は生徒会室に備え付けられている茶器を取り出して、水無月先輩と僕。それから神凪会長の分の紅茶を淹れる。
神凪会長は未だに思考を続けているらしく、何も反応を示さない。
「むふ、やっぱりみなとっちの淹れてくれる紅茶はおいしいね~」
「ありがとうございます。水無月先輩は相変わらず美味しそうに飲んでくれますね」
「そりゃあ、本当に美味しいからね。にしても、大変だったねみなとっち」
「まあ、はい。今はこうして普通の生活を出来ていますけどね」
最近は普通とは程遠い生活を送っていたからこそ、こんな風に生徒会室でゆっくり過ごす時間が貴重に感じてしまう。
「みなとっちの幼馴染はどしたん? たしか最近付き合ったんでしょ?」
「……なんでそんな事知ってるんですか」
「そりゃ、私は色恋沙汰に詳しいからね。いろんなところから情報を収集してるよ」
「なるほど」
確かに、水無月先輩はそういう話が大好きだった気がする。
でも、僕と日向が付き合ったなんてそこまで知ってる人はいないと思うんだけど。
どこからその話を聞きつけたのかな。
「そうなのか。それは私も初耳だな。ぜひとも聞かせて欲しい」
「……なんで神凪会長も乗り気なんですか。水無月先輩を止めてくださいよ」
「そりゃあ、倫理的に良くないことを言っているのなら止めもするけど、そう言うわけじゃないじゃないか。それに私もそう言う経験が無いから興味がある」
「神凪会長まで……」
どうやら、この場に僕を助けてくれる人間はいないらしい。
なんでここまで、恋バナを迫られてるんだ……
いやまあ、こんな風にワイワイできるのもこの人たちが頑張ってくれたおかげだしな。
「そう言うわけでみなとっち、観念して話しな。ほらほら~」
「わかりましたよ。話します」
そうして僕は、夏休みの登校日にあったことを話し始めた。
もうそろそろあれから一ヶ月が経つのだと思うと、なんだか感慨深かった。




