第18話 佐山の終わりと日向の問題
【神凪視点】
「さて、君が今回の夜霧君の噂の首謀者だね。佐山」
水無月に拘束された佐山は私を睨みつけてくる。
でも、全く脅威を感じない。
それはニコに武術の心得があるとわかっているからかもしれない。
「一体なんの真似だ? これは」
「なんのまねって、嘘の噂話を流して夜霧君を虐めた件に関する問題で君が糸を引いていたことが分かったからね。こうやって拘束したわけさ」
「何の権限があって生徒会がそんなことしてんだよ!」
「生徒会の権限だ。この学校は生徒の自主性を重んじる校風だから生徒会には絶大な権力を与えられている。だからこそ、この生徒会長と言う椅子を求めるの物が後を絶たないのだ」
この学校の生徒会と言うのは他の生徒とは比べ物にならないほどの責任が重い。
絶大な権力を与えられている私たちは、それと同じくらいの責任が伴っているのだ。
「そうだよ~そう言うわけだから、私たちは生徒会の権限で今回の噂を調査し関係者を拘束した。ちなみに、このまま佐山が何も弁明ができないのなら君はこのまま先生たちの判断で処分が下るよ」
ニコが笑いながらそう付け足してくれる。
私達には生徒を直接裁く権利は流石に有していない。
だけど、問題を教師陣に報告し処罰を求めることはできるのだ。
「ちょ、ちょっと待て!? 俺はあいつに何もしてない!」
「嘘だな。お前が扇動して噂を流させた証拠は出てきている。バスケ部の連中を使ったこともな」
「そんな証拠がどこに!?」
「え~バスケ部の人たちに聞いたら簡単にゲロったよ? その録音データあるけど聞く?」
ニコが的確に佐山を追い詰めてくれる。
本当に優秀な子だ。
この子を生徒会に勧誘して本当に良かった。
「なっ!?」
「そういう事で、君はこれから職員会議で何らかの罰を受けるだろうけど。一つだけチャンスをあげようかな」
「ちゃ、チャンス?」
「今から夜霧君が来ます。彼に心から謝罪をすれば、今回の件は見逃します。先生方にも話を通します」
先生方も今回の件を調べているだろうけど、こちらが解決したと報告すればそれ以上は介入をしてこないだろうし。
いや、今回は望月先生が積極的に動いてるって話だったから、もしかしたら介入してくるかもしれないけど。
その場合は私の知ったことではないし、佐山の自業自得ね。
「は!? 俺があんなゴミに何を謝るってんだよ!」
「はぁ、反省の色は無しですか。残念です」
それでも、すでに夜霧くんはここに呼んでしまっていますし。
どうしたものですかね。
まあ、こいつの処遇を夜霧君に決めてもらうというのも良いかもしれませんね。
「会長~みなとっち後どれくらいで来ますかね~」
「さあ? 連絡したのが少し前だから早くても後十五分はかかるんじゃない?」
「じゃあ、それまで何してます? ずっとこのカスを押さえておくのも退屈なんですけど」
「好きにしていいわよ。別に、今更佐山にどうこうできる問題じゃないし。まあ、後で事情説明と証拠の提出を望月先生宛にしておけばいいんじゃないかしら」
「了解で~す」
それから私たちは佐山を適当に拘束しながら、夜霧君が来るの待つのだった。
【神凪視点終了】
「神凪会長? いきなりどうしたんですか?」
「あ、わざわざ来てもらって悪いね。とりあえず、これを見てくれ」
「はい?」
神凪会長が指さす方を見れば、そこには縄でギチギチに縛られた佐山がいた。
いや、なんで?
しかも、結構ぐるぐる巻きに縛られてるし。
「君を陥れた張本人の佐山君だ。ほら、挨拶しろ」
「誰が、こんなDV野郎なんかに……」
「黙れ。頼んだぞニコ」
「は~い」
神凪会長に目配せをされた水無月さんは佐山の顔を全力でけり上げる。
うわぁ、結構えぐいことしてる。
いくら何でも横暴なのでは? と思わなくもないけど。
自分のことを陥れた相手がどうなろうと僕の知ったことではなかった。
「がはっ!?」
「ほら~ちゃんとみなとっちに謝らないと。これ以上私も足を汚したくないんだけどな~」
足をぶらぶらさせながら、水無月さんは笑みを浮かべている。
めっちゃ怖い。
サイコパスみたいでマジで怖い。
絶対に怒らせちゃいけないタイプだ。
「わ、悪かった! 俺が悪かった!」
「うんうん、それでいいんだよ。会長、これでいいですか?」
「ああ。ご苦労だった」
「えっと?」
神凪会長が何をしたいのかわからない僕は流石に恐怖を感じる。
何をしたいのか、何を考えているのか全く分からない。
未知と言うのは恐怖だ。
「すまない。佐山が君を陥れた確実な証拠が見つかったから。これから職員会議で処遇を決めてもらう事になるが、君はこいつにどんな処分を受けて欲しい?」
「なんだっていいですよ。正直もう興味もありませんし。それよりも、一つ調べて欲しいことがあるんですけどいいですか?」
「私に出来ることなら今回のお詫びとしてなんだって調べよう」
「じゃあ、最近流れている望月日向の悪い噂の発生源を調べてくれませんか?」
「ほう、そんな噂が流れているのか。分かった。調べておこう」
「お願いします」
神凪会長に任せておけば、何も問題はないだろう。
日向になんで変な噂が流れてるのか。
何の目的で流してるのか。
僕には理解が及ばないけど、きっと理解なんかしたくない。
「任せておけ。ニコ、佐山を職員室まで運んでくれ」
「かしこまりで~す。みなとっち、また生徒会に来てね」
「はい。もちろんです」
僕にニコリと微笑みかけてくる水無月さんを見送ってから、僕も生徒会室を後にした。
佐山の件は片付いた。
後は、日向の噂の件を片付けたら平和な学校生活が戻って来る。
「頑張らないとな」




