番外編1話 佐山の転落
昔から、何かに苦労するという経験がなかった。
何かをすれば簡単に出来るようになるし、何もしなくても女の方から寄って来る。
そんな俺は高校一年の頃にある楽しみを見出した。
それは、他人が大切にしている女を奪う事。
「はは、夜霧の顔は最高だったな」
夏休みに入ったときに見たあの時の顔は本当に最高だったぜ。
絶望に染まり切った顔でさ。
でも、それだけじゃあ物足りない。
もっともっと絶望してもらうためには、噂を広めるしかねぇな。
あいつが浮気したことにして何なら、暴力を振るったってことにしても良いかもしれないな。
「さぁて。これからもっともっと絶望のどん底に落ちてもらおうか。俺はそれを見るのが最高に好きだからな」
◇
作戦は大方うまく行った。
何故か、一年の望月妹があいつに寄り添ってるのが気に食わないけど。
逆に言えば、あいつから望月妹も奪ってしまえば本当の意味での絶望を味わわせることが出来るかもしれない。
「しかも、そうなったら望月妹も手に入る。一石二鳥とはまさにこの事だな」
今後の展開に胸を躍らせながら。これからどうやって望月妹を落とすかを考える。
あいつはかなりガードが堅いからどう行動するか慎重に考えねぇとな。
そう言えば、夜霧の件でこの前生徒会に呼び出されたな。
噂がかなり大事になったから、生徒会まで調査に参加したらしい。
慎重に動かねぇと俺がやったってことがバレかねないな。
「佐山、ちょっといい?」
「チッまた俺に用かよ。生徒会も暇なんだな」
「そんなんじゃないよ~今回は聞き込みなんて生ぬるいもんじゃない。お前が犯人だってほぼ確定したから一度生徒会で拘束させてもらうよ。抵抗しても構わないけど、その場合はこっちも実力行使をさせてもらうかんね」
「……は?」
一体どういうことだ?
なんで俺が拘束されねぇといけないんだ。
何もへまをしていないはずだぞ?
「言った通りだよ。言いたいことがあるなら生徒会室で会長と一緒に聞くから大人しくついてくるんだね」
「水無月、てめぇ」
終始俺を見下してきながら、水無月は俺のことを生徒会室に連れて行く。
まだ大丈夫だ。
俺が噂を流した明確な証拠なんか出てくるわけないし、何よりも俺は直接的な虐めに参加してない。
虐めは正義感にかられた馬鹿が勝手にやっただけだ。
俺は関係ない。
「はいはい、凄んでも意味ないから。とっとと行くよ」
水無月に首根っこを掴まれながら、俺は生徒会室に連れて行かれた。
前に水無月に聞き込みをされてから一週間。
この短期間でどんな証拠が見つかったってんだよ。
「クソが」
俺は屈辱にまみれながら生徒会室に連れて行かれるのだった。




