第12話 動き出す生徒会長
「ふぅ、午前の授業がやっと終わった。結構本気で疲れた」
今まで休んでいた分の一週間を取り戻すために、かなりハイペースで授業が進んでいくからついて行くだけでかなり疲れる。
「……って、そう言えばお弁当持ってきてないな。完全に油断してた」
普段は自分で弁当を用意してたんだけど、最近が全く学校に行っていなかったこともあって完璧に忘れていた。
どうしようか。
「購買にでも行けば、何か買えるんだろうけど」
悪い噂が学校中に流れている以上、あまり人目に着くような場所に行きたくない。
どんな悪意を向けられるかわからないし。
今日の朝だって、靴箱にゴミが敷き詰められていた。
始業式の日もわざわざ机に落書きをされていたくらいだ。
「はぁ、今日はお昼抜いてもいいか」
昼を抜いても死ぬことは無いけど、購買に行って変な視線を集めて多くの人から悪口を言われたら確実に精神を蝕まれる。
「生きにくいね」
こんなことなら家から本でも持ってくればよかったかな。
いや、明日からはちゃんと弁当を持ってこないと。
流石にお腹減ってるし。
「湊くん、いる?」
「日向? どうしたの?」
教室で考え事をしていると、包みを二つ持った日向が教室に入ってきた。
この教室の場所は小雪さんにでも聞いたのかな。
他の生徒にはあんまり知らされてないっぽいし。
「いや、湊くんお弁当もってきてなかったでしょ。だから、持ってきたよ」
「え!? 日向の手作り弁当?」
「そうだけど、私に手作りじゃ不満?」
「まさか、むしろ日向の手作り弁当が食べれて凄く嬉しいよ」
日向の料理の腕は知っている。
ここ最近は毎日日向と一緒に夕飯を作ったりしてるけど、この子は本当に手際が良い。
将来は絶対にいいお嫁さんになると思う。
「そ、じゃあこの教室で一緒に食べよっか。あんまりこの教室の外には出たくないでしょ?」
「うん。まだまだ僕の悪い噂は消えてないみたいだからね」
「だよね。きっと、お姉ちゃんが何とかしてくれるから。それまでは私と一緒にお弁当食べよ?」
「僕は日向と二人が嬉しいから全然いいよ」
どのみち、教室に居てもそんなに話し相手がいるわけでもない。
話せる相手と言えば、隆介と生徒会メンバーくらいだ。
だから、そこまで嫌なことは無いんだよね。
変な噂が流れていること以外は。
「そ、そっか。うん。じゃあ、早速食べよ」
適当な机を向かい合わせでくっ付けて、座る。
日向が渡してくれた青色の包みを開けてみると、そこそこ大きな弁当箱が顔を出す。
蓋を開けてみれば、白米に唐揚げ、卵焼きにミートボール。
お肉関連のおかずがいっぱいだった。
「凄くおいしそうだね」
「いつもの夕飯みたいに手の込んだものは作れないから、味にはそこまで自信が無いんだけど」
「いや、凄くおいしそうなんだけど」
流石にお弁当だから、いつもみたいにアツアツと言うわけにはいかないだろうけど。
それでも、弁当からは食欲をそそるいい匂いがしてくる。
「じゃ、食べよっか」
「うん」
「「いただきます」」
僕たちは手を合わせて弁当を食べ始める。
制服姿の日向と一緒にご飯を食べるのはなんだか違和感があるけど。
逆に新鮮味があって良いかもしれない。
「湊くん、先生と一対一で授業受けてるんだってね」
「うん。みんな凄く丁寧に教えてくれて凄く助かってるよ」
授業速度が速すぎるのだけが、ちょっとあれだけど。
それは一週間分を埋めないといけないからで仕方がないと割り切ってる。
「そっか。湊くんが不利益を被ってないみたいで安心した」
「いつも心配かけてごめんね」
「……前から思ってたけど、こういう時は謝るよりお礼を言った方がいいよ。その方がどっちも気持ちいいからさ」
「そうなのか?」
言われてみれば、確かに僕は今まで事あるごとに謝っている気がする。
こういう時はお礼を言えばいいのか。
「そうだよ。湊くんだってずっと謝ってる私よりも、笑顔で感謝をしている私を見る方がいいんでしょ?」
「確かに」
申し訳なさそうに俯いている日向を見るよりも、笑顔で感謝してくれる日向を見る方が僕は好きだな。
なるほど。彼女も僕と同じようなことを考えているってわけか。
「でしょ? だから、やり直し」
「うん、ありがとう」
「それでいいんだよ」
にへへっと日向が笑う。
その姿があまりにもまぶしてくて、直視が出来ずに目を背けてしまった。
「今日は一緒に帰ろうね。迎えに来るから」
「わかった。授業が終わったらここで待ってるよ」
日向と一緒に帰れる。
それだけで午後の授業が頑張れそうな気がした。
【ほのか視点】
「今日も湊はいないんだ」
一週間が経っても湊は教室に居なかった。
それどころか、学校中に湊の噂が広がっていて会えるような状況じゃないし。
みんな私のことを被害者扱いしてくれてる。
「噂を広めたのは私じゃないし、大丈夫だよね」
私は湊に嫌がらせをしたり、机に落書きをしたりなんかしてない。
湊に実害を出していないんだから、何か言われても私が悪くなるはずなんて無いんだもん。
「私がしたのはちょっと魔がさして、佐山先輩と浮気しちゃっただけ」
だから、大丈夫。
自分にそう言い聞かせる。
もう少し、事態が落ち着いたら湊に謝って。
それで、もう一回付き合ってもらおう。
「えっと、君が金島ほのかさんであってるかな?」
「はい?」
湊の教室を覗き込んでいた私に声をかけてきたのは、茶色の髪をボブにした小柄な女子生徒だった。
琥珀色の瞳はすっと、細められていて私の目を見つめていた。
「少し話したいことがあってね。放課後に生徒会室に来てもらっても良いかな?」
「あなたは?」
「ああ、名乗ってなかったね。私は神凪 雫。三年生でこの学校の生徒会長を務めている」
「そんな会長さんがわざわざ私を放課後に呼び出して、何の話をするって言うんですか?」
「それは放課後に話すよ。忘れずに来てくれ」
それだけ言って彼女はどこかに行ってしまった。
なんだか、自信に満ち溢れている感じで好きになれない感じの人だった。
「にしても、用件って何かな」
もしかして、今回の事件の《《被害者》》の私を慰めてくれるのかな?
だとしたら、行かないわけにも行かないし。
そもそも生徒会長に呼び出されて行かなかったら、変な噂が流されそうだし。
「ちょっと面倒だな~」
【ほのか視点終了】




