第13話 浮気女VS生徒会長
「そう言えば、湊くんって生徒会だったの?」
「うん。一応広報だね」
うちの学校の生徒会は会長が他の役員を選定するタイプの生徒会で、生徒会長を目指すものはかなり多い。
神凪先輩はそんな選挙で圧倒的一位を獲得して、会長になった。
「へぇ~生徒会の人は湊くんに何か酷いことしたりしてない?」
「特に何もされてないと思うけど。どうして?」
「いや、湊くんの味方は学校にどれくらいいるんだろうって思って」
生徒会は今の所、僕を庇う事もしていないし逆に糾弾することもしていない。
今の所は傍観している感じだな。
きっと、神凪会長の考え方的に事実かどうかわからない状態で動くのは悪手と判断したんだろう。
どこまでも理性的な人だ。
「神凪会長はこういった事件だったら、個人的な感情に任せずに客観的に物事を判断するからね。僕が無実だってわかったら協力してくれるかも」
「なるほど。凄く良い会長さんなんだ」
「うん。いつも助けてもらってたよ」
「学校にそう言うちゃんとした人がいて本当に良かった」
隣を歩く日向は可愛く笑いかけながらそう言う。
この子は本当に僕のことを自分の事みたいに思ってくれる。
本当にいい幼馴染を持ったものだ。
「だね。早くこの事件が落ち着くと良いな」
「だね。私も湊くんがちゃんと学校での立場を取り戻せるように、協力するから」
「ありがとね。日向」
彼女の頭を撫でたくなる衝動を必死に抑えて、僕は日向と帰り道を歩く。
もう、学校からはそれなりに距離が離れているから僕のことを排斥するみたいな視線は感じない。
「私はなにがあっても湊くんの味方だから。それだけは絶対に忘れないでね」
「ありがとう。本当に」
日向がこうして、僕の味方で居てくれるから。
僕は腐らずに前を向いて歩んでいけるんだと思う。
本当に感謝しかない。
【雫視点】
「本当に厄介な事に巻き込まれたみたいだね。夜霧君は」
「ですね。流石に、私たちの立場的に何の事情も聞かずにみなとっちの味方はできないですもんね」
「本当にね。個人的な感情としては、彼の味方をしてやりたいんだが」
私の会長と言う立場的に、何の話も聞かないで彼の味方をすることはできない。
まずは錯綜している情報を精査して真実を見つけ出さないといけない。
彼が噂のようなことをする人だなんてこの生徒会で思っている奴はいないと思う。
それだけ、彼はこの生徒会の取り組みに真摯に取り組んできたのだから。
「ですよね~私たちの立場も難しいもんですよ」
そう言いながら、副会長である水無月 ニコはため息をつく。
鮮やかな金髪と深紅の瞳。
比較的小柄な体形だが、出るところは出ている。
聞いた話によると、ハーフなんだとか。
「だな」
私も同感だけだ。
彼のためにも一刻も早くこの問題を解決しないと。
「君は誰が怪しいと思う?」
「そんなの金島ほのかと佐山要に決まってるじゃないですか。どう考えても」
「だよな。噂の内容的にこのどちらかが意図的に噂を流したとしか考えられない」
「はい。なので会長も金島ほのかを呼び出したんじゃないんですか?」
「その通り。もう少しで彼女が来るだろう。まずは彼女から話を聞いて情報収集だ」
虐め騒動は確実に学校側が介入するだろう。
実害が出てるわけだし、話によれば望月先生が動いているらしい。
彼女なら、頭の固い学校上層部を動かすことが出来るだろう。
「了解です。みなとっちのためにも一肌脱ぎますかね」
私達がそうして意気込んでいると控えめなノックが聞こえてきた。
おそらく金島ほのかが来たのだろう。
「入ってくれ」
「失礼します」
何一つ、悪びれた様子のない彼女が入ってきた。
もし、彼女が噂を流した張本人なのだとしたら大したものだ。
「いきなり呼び出して、私に何の用ですか?」
「今、学校で流れている噂の件だ。君は本当に夜霧君に浮気をされて暴力を振るわれたのか?」
「勿論です。そうじゃなかったら、こんな噂流れませんって」
彼女の表情を見ても、嘘をついているようには見えない。
本当に嘘をついていないのか、それとも嘘を隠すのが本当に上手いのか。
「じゃあ、私から質問いいっすか?」
「なんでしょう」
「仮にあなたが本当に浮気されていたのだとして、みなとっちは誰と浮気してたんですか? それくらいはわかってるっしょ」
「……それは」
ここで初めて金島が言いよどむ。
想定していない質問だったのか。
それとも、言いにくい風を装っているのかどちらだ。
「答えられないのかな? それとも、嘘だったのかな?」
「さぁ、とっとと答えちまってください」
ここぞとばかりに私とニコで詰め寄る。
決定的なボロが出ればよし。
そうでなくても、背後関係がわかるだけでも儲けものだ。
「そんなのはわからないですけど。遠目で湊がキスしてるのを見ただけで」
「なるほど。ちなみに、佐山要に助けられたらしいが知り合いだったのかな?」
「ええ。少し前に知り合って。湊の暴力について相談してたんです」
「なるほど。分かった。最後の質問だが、あんな噂を流したのは君か?」
「違います」
即答。
これ以上踏み込んでも話してはくれなさそうだな。
「わかった。わざわざ呼び出して悪かった。帰ってもらって構わない」
「わかりました。失礼します」
私は生徒会室から彼女が出て行くのを見送ってからため息をつく。
会長机に備え付けられたオフィスチェアに背中を預けながら、私はソファーに座っていたニコに視線を向ける。
「ニコはどう思う?」
「まず、嘘でしょうね。浮気相手の所で口ごもったのもそうだし、佐山要と知り合いって言うのも少し違和感があるっす」
「だよな。噂についてはどう思う?」
私の個人的な見解としては、噂を流した張本人は彼女ではない。
おそらく、佐山の方だと考えているのだが。
「十中八九佐山でしょうね。彼女に噂を流している感じはしなかったっす」
「なるほど。じゃあ、明日にでも佐山を呼び出すとするか」
「っすね。その聞き込みは私に任せてくださいっす。会長はみなとっちに話を聞いてください」
「わかった。そっちは任せたよ」
「任せてください。しっかり尻尾を掴んでやるっすよ」
ニコは悪い笑みを浮かべて生徒会室を出て行った。
私も早くこの問題を解決して、またみんなでこの部屋に集まりたいものだ。
そう考えながら、明日夜霧君に何を聞くのか。
考えをまとめるのだった。




