ヤバつよ作成会議2
⋇再び一月前に戻る。
「よし、一戦目のやつはこれで良いかな。じゃあ次は二戦目の敵のアイデア募集だ。何かある?」
無事にエクス・マキナとユニオン・スライムの融合体の作成を終えた僕は、ひとまず調整とかは後回しで二戦目の敵を作る事にした。調整は上手い事やらないといけないし、今ここでやるには時間がかかりすぎるしね。とりあえず今は原型だけ作っとけば問題無し。
「はいはいっ! 一体目はベースが機械だったから、二体目はやっぱり生物系が良い! 人間使おう、人間っ!」
「まあマッドサイエンティスト的な雰囲気を出す以上はそれしか無いよな。やっぱ改造主手術とかして、見た目にも分かりやすいようにした方が良さそうだな」
「君らも意外と倫理観踏み越えてくるねぇ……」
トオルが勢い良く手を上げ、目を輝かせながら人間を素材に使うという恐ろしい提案をしてくる。挙句リュウも特に反対しないから驚きだね。仮にも同じ人を実験に使ったり改造したりするとか、人の心はどこ行ったんだ? 僕が言えた義理じゃないけど。
「だって私、凄く酷い目に合わされたんだもん! 聖人族には体の良い使い捨て特攻兵器にされてたし、良く覚えてないけど魔獣族には薄い本みたいな目に合わせられたみたいだし、それなら幾ら私でも闇に堕ちるってもんだよ!」
「お前は元々闇落ちしてるだろ、中二病。でも俺も大体同じだな? 何か知らん間に改造生物兵器にされてたっぽいし。まあ俺の場合、一番イラつくのはサキュバスなんだけどな」
「わー、どいつもコイツも闇を抱えてるなぁ……」
二人は屋敷内ではわりと常識人寄りだけど、まあまあえぐい過去を持っているせいか現地人に対して結構当たりが強いんだよねぇ。
とはいえ片方は記憶が無いし、片方はある意味では良い目に合ってるからから憎悪とか殺意とかまでは感じられないが。トオルなんか頬を膨らませてぷんぷんしてるだけだしな?
「そんじゃあ人間ベースで行こうか。種族は後で決める感じで。改造方法はどうしようかな?」
「骨格にオリハルコンを結合させよう! あと鋭い爪が出るようにしようよ!」
「ウェポンエックスかな? ちょうど似たような事された方がお隣にいますよ?」
「そうなの!?」
「おい待て、初耳だぞそれ。マジで魔獣族はクソだな。あと羨望の眼差しで見て来るのやめろ」
正にほぼ同じ事をされてたリュウに、トオルが無駄に輝く目を向ける。コイツもしかして自分も改造されるならそっち系が良かったとか思ってないよな? さすがにそこまでヤベー中二じゃないと思いたい。そんなんじゃ第二人格のツヴァイさんも浮かばれないぞ。
「まあそれを採用するにしても、ちょっと見た目のインパクトが弱いかな? 他に何か案はある?」
「はいはい! テレポートとか、目からビームとか、色々できるようにしようよ!」
「ウェポンイレブンに進化したな? というか何? ミュータントが好きなの?」
やたらに元ネタを想起させる辺り、どうもトオルのアイデアにはオリジナリティが薄いな? あんまりやり過ぎると変な所から怒られそう。
えっ、ユニオン・スライムとか作ってるお前が言えた義理じゃない? やめて、正論で殴らないで。死んじゃう。
「んー、色々出来るっていうのは悪くないんじゃねぇか? 一体目が敵の技術をコピーする奴なんだし、それと似たような感じの方向性でさ」
ほう? リュウがなかなか面白い案を出してくれたよ。というかコイツさっきから地味にナイスなアイデアを出してくれるな? 実は中二病的な適性があるんじゃない?
「コピーと似たような方向性か……力や能力の強奪――はさすがに後に響きそうだから無しだな。<救世の剣>の戦力が低下するのは困る」
「あ、一応後々の事は考えてるんだな。ちょっと驚いたぜ」
少し僕が悩む素振りを見せると、リュウはちょっと意外そうな顔をした。
確かに普段の僕なら我が道を行き、誰が死のうが才能が無くなろうが知らぬ存ぜぬのスタイルだ。でも今回相手にするのは、現状最も真なる世界平和を実現する気概を持つ<救世の剣>のメンバー。戦力が落ちるようなことは極力避けたいんだよね。そもそも今回のニアの命を賭けた決闘だって、コイツらをより追い込んで成長を促すためみたいなところあるし。
「じゃあ発想を変えてアレにしよう! アレ、アレ! どんな攻撃にも耐性をつける能力!」
「あー、良いねぇ。ていうかそういう能力持ってる奴、実際にいたなぁ……」
「そんな化物いたのかよ!?」
「まあ宇宙の果てに追放したから今はいないけど」
「……すまん、何て?」
無限に広がる大宇宙のいずこかを彷徨っているであろう某大天使に、僕は遠い目で思いを馳せる。
冷静に考えるとマジでアイツチートだったよなぁ? でもアイツとの戦いは存分に本気出せて楽しかった。またバチバチにやりあいたい気持ちもあるけど、面倒だから二度と会いたくない気持ちもあるんだよね。心が二つある~。
「じゃあ基本は金属骨格と鋭利な爪、そして攻撃への耐性を身に着けて行く感じだね。これを倒せっていうのはかなりきついけど、場外に落としても勝利だからやりすぎって事は無いかな?」
「だな。何とか落とすくらいなら耐性持ちでもやりようによっては難しくないだろうし。ただ何て言うかこう……地味じゃねぇか?」
「だねぇ……」
妙に発想が良いリュウは、その感性を活かしてるのか実に痛い所を突いてきた。
そう、これらの能力を全て実装したとしても、外見上の変化は拳から刃物が生えてるだけ。酷く地味で全くインパクトが無く、恐怖を誘う事も出来ない。
もちろん強さと装いの派手さ加減にさほど関係が無いのは分かってるけど、見た目で分かりやすい強さは大事だ。対戦相手が恐怖に震えるほどの畏怖をもたらし、絶望を抱かせるには外見も強さに相応しくないと話にならない。
「何で!? ワイルドなイケメンが筋肉ムキムキで毛深い身体を晒して、拳から突き出た爪を振り回して戦うんだよ!? どこが地味なの!?」
「誰もそっちが地味とは言っとらん。というかお前そういうフェチか?」
ちょっと険しい表情で力説するトオルには、何やら譲れないものがある様子。くだらない話題なのに凄い真剣な眼差ししてるよ。まあ確かにあの人はめっちゃ良い身体してるよね……。
「だったらもっと外見も変化するようにしたら良いんじゃねぇか? 耐性を身に着ける能力なんだし、姿形を変化させて適応するとかさ」
「なるほど、良いね。最終的には醜悪な肉塊になりそうな気もするけど」
「G……!」
ここでもやはりリュウのナイスアイデアが炸裂。ただ静かに外見上の変化なく耐性を獲得するのではなく、身体を変化させる事により攻撃に適応するという形を取るわけだ。
ただ悲しい事に、そういうのは創作では結構見られるものなんだよね。トオルが瞳を輝かせて呟いた通り、その形式はまるっきりGだ。もしかしてさっき出したウイルスに引っ張られたんですかね? まあ良いアイデアだし採用するけど。
「じゃあ早速お試しで作ってみるか。えーっと、何か良い感じの死体あるかなー?」
「当たり前のように死体を空間収納に入れてるとか怖すぎだろ」
「汝らの中、空間収納に己の性癖に拘わる物を入れていない者のみ石を投げよ」
「………………」
「えいっ! えいっ!」
空間収納を漁ってたら理不尽な事言われたんで、的確なお言葉で黙らせる。この反応、さては何か入れてんな? どうせ等身大の性行為可能な人形とかだろ。全くコイツはよぉ?
なお、トオルはテーブルに常備してある果物盛り合わせから林檎をぽいぽい投げて来たよ。お前はマジで入れてないのか……?
「――よし。こんな所かな?」
「おー、本当に爪出てる……!」
適当な成人男性の死体があったから、それをベースに作成完了。やっぱりそういうのがお好きみたいで、トオルはそいつの拳から出てるブレード状の爪をちょっと嫌らしい手付きで撫でてる。
ちなみに仮作成なので服は適当にそいつが着てたのそのまま。本番では衣装をどうするか悩むなぁ。いっそ全裸で良いか?
「なあ、何で口を縫い合わせてるんだ? これ能力と関係あるのか?」
「いや別に何も。強いて言えば原作再現的な感じ? まあこの方がより非道さが増して雰囲気が出るでしょ」
「それもそうか。しかしこんなのを許容するなんて、俺もだいぶ擦れちまったなぁ……」
かなり悪趣味かつ非人道的な作品を前にして、何やら黄昏てる感じのリュウ。
確かに一般的な人間としては、こんなものを前にしたら嫌悪や忌避を覚えて然るべきだろうね。改造手術以前に死んだ奴を叩き起こして無理やり働かせてるんだし、死者の尊厳とかそんなものは無いし。
ただまあ、人形にしか興奮しなくなった奴が自嘲気味にたそがれてても、何を今更という感想しか出てこないんだけどね……。
「……よし。それじゃあ戦闘テストも兼ねて闘技場に行くかな。せっかくだから二人で協力して戦ってくれない?」
「任せよ! リュウが身を呈して動きを封じた所に、諸共神の雷を叩き込んでくれるわ!」
「俺ごとやるな! 治るって言っても苦痛が無いわけじゃねぇんだぞ!?」
とりあえず試作品の性能テストのため、二人に戦って貰う事にしました。トオルは中二的なポーズで自身満々のドヤ顔で応じ、リュウは自分の雑な扱いに物申す。
何かリュウが何度も死にそうな戦いになる気もするが、まあ不死身なら問題無いよな! 自分の長所を生かして行こうぜ!




