ヤバつよ作成会議
⋇突如場面が一月前に戻る。
⋇箸休め回
「それではこれより、何かヤバくて強い奴――通称ヤバつよ作成会議を始めまーす。はい、拍手ー」
「イェーイ! パチパチパチ!」
高らかに宣言し喝采を求める僕に対し、トオルはノリ良く笑顔で拍手を送ってくれた。
時はアルカVS<救世の剣>の決闘を一月後に控えた夜。決闘に向けてとても重要な事を話し合うため、僕を含む元勇者三人は屋敷のリビングに集っていた。
本当は全部自分で決めようかと思ってたんだけど、あと一ヵ月しかないのに決められない事があったからね。ここは同郷の二人の知恵を借りようと思って。
「いや、その前に説明しろよ!? 何だよヤバつよって!? 何を作るつもりで俺達に何をさせる気なんだよ!?」
「うわぁ、ノリ悪いなぁ? ここは分からなくてもノっておくべきところでしょ」
「そうそう。そんなんじゃモテないよー、リュウ?」
しかし夜十一時くらいに突然呼び出されたせいか、リュウの方はご機嫌斜め。トオルは色気の無いパジャマ姿でナイトキャップ被ったまま来てくれたのにねぇ? ていうかコイツ普段の格好は痛々しい中二なのに、寝る時はわりと普通の格好だな……。
「何!? 俺が悪い流れ!? いきなり夜遅くに集められて訳分からん事言われたら誰だってキレるわ! あと俺はモテなくたっていいんだよ、別に!」
「えっ、じゃあホモなの? アーッ!」
「ホモじゃねぇよ! ぶっ殺すぞ!」
「あまり強い言葉を使うなよ。弱く見えるぞ?」
「うるせぇ、クソ中二! 自分がどれだけ恥ずかしい事やってるかも分かって無いイカれポンチが!」
「わァ……あ……!」
「泣いちゃった!」
トオルはネタを連発してからかった結果、リュウにマジ切れされてしまう。まあ十中八九嘘泣きだからどうでも良いが、リュウの怒りはわりとマジですね。やっぱ普段からこんなノリに付き合ってるんだろうか。
「まあ早い話、<救世の剣>のメンバーの対戦相手を用意しないといけないんだけど、これがなかなか思い浮かばなくてさ。それも出来るだけマッドサイエンティストが作り出した感があるやつを作らなきゃいけないし。だったらこの世界には無い知識と発想を持つお前らに知恵を貸して貰うのが一番かなって」
「まともに説明できるじゃねぇか! 最初からそう言えよ、全く……」
「クックック。任せるが良い! 我が深淵なる知識を授けてしんぜよう!」
リュウもちゃんと説明したら納得して大人しくなり、トオルと共に対面のソファに腰を下ろす。
とりあえず結構長い話になりそうなので、ベルに紅茶やらお茶菓子やらを出して貰って一息ついてから話す事にしたよ。夜十一時にお菓子とか、背徳感が凄いよね!
「決闘は合計三回行う。三戦目はもうメンバー決めてあるから、作りたいのはあと二体だ。強さの上限とかそういうのはこっちでいい感じに調整するから、とにかくナイスな案を頼むよ。イカれた魔法科学者が生み出した生物兵器って感じのやつ」
「と、言われてもなぁ? いざ聞かれるとなかなか出てこないよな。やっぱり某ゾンビゲームみたいな感じの生物兵器で良いんじゃね?」
満を持して話を始めた所、リュウはほぼノータイムで素晴らしい提案をしてくれた。さすがは同郷の人間。この世界の奴らには決して出てこないアイデアだ。やっぱり元勇者二人に知恵を求めたのは正解だったな?
「ほう? 貴様はこの異世界に恐るべきウイルスを撒き散らしたいと……この外道め!」
「いや、そこまでは言ってねぇよ。大体幾らコイツでもあんなウイルス作るなんて無理だろ? 無理、なんだよな……?」
何か笑いながら答えてたリュウだけど、徐々に不安げに表情を歪めつつ尋ねてきた。どうやら僕なら作れるんじゃないかと疑ってる様子。
酷いなぁ、それじゃあまるで僕が人体実験大好きな変態科学者みたいじゃないか。
「お納めください。こっちがTで、こっちがGです」
まあ作れるし、何なら作ったけどね。ちょうど暇な時に戯れで作った奴が空間収納にあったから、テーブルの上に出してあげたよ。それぞれ円筒形のガラス容器に封入して、色もそれぞれ緑色と紫色にして再現にも拘ってます。
「おい馬鹿止めろ!! それどっかに捨て――いや、処分しろっ!! 焼却処分っ!」
「えぇ……本当に作れちゃうの……?」
ドギツイ色の危険なウイルスを前にして、リュウは険しい顔して必死に距離を取る。何ならトオルもちょっと引き気味だ。コイツはもっと目を輝かせてくれると思ったんだけどなぁ?
「心配しなくてもウイルスが広まったりはしないよ。割らなければ。あ、でも案が無いならこれ使うのもいいかもね」
「案は出してやるから絶対使うなよ、それ。さっさとしまえ」
「夢の異世界ファンタジー世界が、ゾンビパニックのポストアポカリプスになっちゃう……」
何か大不評なので、僕はいそいそとウイルス二種を仕舞いこむ。一回くらいはこれで街とか国家を消滅させてみたいんだけど、なかなか機会が無いんだよねぇ?
ちなみにちょっと落とす真似したらリュウにマジ切れされました。最近の若者って突然キレるよね? カルシウム足りてないんじゃない?
「……そういえばお前、すでに兵器は作って無かったか?」
「あっ、あのヴェノ――じゃなくて、ユニオン・スライムとエクス・マキナだよね。私エクス・マキナはかなり好きだよ。あの時計みたいな機械仕掛けって何かこう、そそるよね?」
「ありがと。生産者としては高評価で嬉しい限りだよ。片方はもろパクリだけど」
女の子でもロマンを理解してくれるトオルに、僕の好感度がちょっと上がる。スケルトンカラーのゲーム機とか良いよね。まあ最近はスケルトン仕様のゲーム機なんて絶滅してるが。
「んー……いきなりぶっ飛んだ生物兵器出されてもついていけないだろうし、一体目はその二体をベースに作ったらどうだ? ちょうど片方は寄生生物だし、この二体で一体にするとか」
「ほうほう。一見すると機械兵器なエクス・マキナにユニオン・スライムを寄生させるか。その発想は無かったな? 良い発想だ」
リュウの提案に、僕は珍しくも素直に脱帽。機械兵器と寄生生物をコラボさせるとか、早々出てこない発想だよ。まず間違いなくこの世界の奴らからは出てこないだろうし、僕も自分で思いついたかどうかは微妙だな。
「おー、なかなかロマンある発想するね。やるじゃん、リュウ!」
「お、おう……何か素直に褒められるとむず痒いな……」
僕とトオルから手放しに称賛され、何か居心地悪そうなリュウ。
しかしコンセプト自体は良いが、もうちょっと何か欲しいな? そもそもこの世界にはエクス・マキナ以外に機械と呼べるようなものは無いから、機械と寄生生物の融合のインパクトは薄めだろうし。
「あ、そうだ! 前から思ってたけど、エクス・マキナって機械兵器みたいなものなんだよね? じゃあアレしよ、アレ! ガチャガチャ変形してトランスフォーム!」
「それって車が人型になったりするやつか? 別に車じゃねぇし意味無くないか?」
「あっ、そっかぁ……」
負けじとトオルが案を出すも、指摘されて途端にしゅんと落ち込む。
アレもそもそも変形先の知識がある事前提の驚きなところあるし、車も戦闘機も無いこの世界じゃただ変形したってだけの反応されそう。つくづくロマンに疎い世界だな?
でも待てよ? 何も別の形に変形する必要は無いんじゃないか? 例えばこう、分離合体を繰り返して複雑な動きをするとか、移動に使うとか――
「――そうだ、後年の作品の方で一回出てきた方のトランスフォームにしようか。あの粒子状に分裂して自由に動いて形を変えるやつ」
「やだっ! 私、あれをトランスフォームとは認めないっ!」
「中二な上に厄介オタクかよ、お前……」
力強く断言するトオルに対し、リュウは引き気味にツッコミを入れる。
ぐぬぬ、せっかくのナイスアイデアだったのにこれでもかと拒絶されてしまった。しかも何か拘りがあるのか、トオルは徹底抗戦の構えだよ。回避とか移動にああいう動きを取り入れたらトリッキーで面白いし、きっと度肝を抜けると思ったのになぁ? トオルがこの調子だと粒子状に変形する機能を実装するのは厳しそうだ。
「よし、分かった。じゃあ粒子状じゃなくて、こう、部位ごとに別れて分離合体とかするのはどう?」
「えー? 分離合体かぁ……うーん……」
何で僕が許可を求めてるのか不思議に思いつつも、折衷案を挙げる。
なおこれは意外と感触は悪くないみたいで、トオルはちょっと難しい顔して悩んでたよ。良し、もうちょっと押せばいけるぞ!
「ならこうしよう。分離機能を実装する代わりに、お前の望みの能力を一つつけてやろう。それならどうだ?」
「望みの能力……!?」
これにはだいぶ心惹かれたみたいで、明らかに目を輝かせてた。
へへっ、見事に食いついたぜ。どうせ中二だから焦がれる能力がいっぱいあるんだろぉ? 躊躇わずゲロっちまえよぉ?
「じゃ、じゃあ、エクス・マキナにコピー能力とかつけるのどう!? 前から思ってたけど、人型のエクス・マキナって武器を持ってるのに動きが遅いし攻撃に鋭さも無いから気になってたんだよね。それにやっぱりコピー能力ってロマンだし!」
「なるほど、コピー能力か……」
一瞬まんまるピンクの化物が頭に浮かんだけど、まあここで言うコピー能力は対象を食らって手に入れるとかそういうのじゃないと思われる。たぶん接触を介してとか、近くにいる奴の能力をコピーとかそっち系。
ただ能力バトルなら問題無く採用できるんだが、魔法のある異世界のバトルだからなぁ? それでコピー能力って言われても何をコピーさせ――あっ、そういや僕が今までやってたか。
「なかなか面白い発想だ。採用。相手の武術や身体技術をコピーする形でなら実装してやろう」
「やった! ありがとうございます!」
「お前ら許可求める側がくるくる入れ替わり過ぎだろ。どうなってんだよ」
腕を組んで見下ろす僕に対し、満面の笑みで拝み倒すトオル。そしてツッコミを入れるリュウ。
いやぁ、ノリが良いしツッコミもしてくれるしで楽しいね? 同郷なせいか妙に波長が合う感じがするよ。改めてこの二人を保護しといて良かったと思ったね。まあ片や中二でちょっとウザいし、片や人形偏愛なのは理解できないけど。
「とりあえず、そろそろ実際に作って見たらどうだ? さすがにこれ以上は詰め込み過ぎだろうしな」
「そうだね、じゃあ作成タイムに入りまーす。出でよエクス・マキナとユニオン・スライム」
「トランスフォーム! ガシャンガシャンガシャンヴヴヴヴボボボボ!」
「しません」
というわけで、実際の作成作業に入りました。横からトオルがいちいち目を輝かせて覗いてくるのがちょっとウザかったです。大人しく出来んのか、お前は。




