酔甲将軍【上】
翌朝。
アクセルの街には、昨日までとは明らかに違う空気が流れていた。
朝靄が薄れ、陽光が石畳の通りを照らし始める時間帯。普段なら商人たちの威勢の良い掛け声と荷車の軋む音が主役を張る通りで、今朝は街の至るところから、ノクス教団とガスト教団の死闘を語る囁き声が聞こえてくる。
「おい、噂は本当なのか……? あの横暴を極めていた豪商ガスト教団が、本当に一夜にして潰されたって?」
「嘘じゃねぇよ。本拠地の館は完全に押収されて、主要幹部も全滅したらしい。しかも驚くなよ……ノクス教団の信者数、元ガストの連中を飲み込んで一気に一千人を突破したそうだ!」
「千人だと……!? この街の第三位の勢力に躍り出たってことじゃねぇか!」
「それだけじゃねぇぞ。本部の作戦会議室から黄金の神威が溢れ出して、ノクス様に『四枚の白銀の翼』が生えたのを見た奴がいるらしい」
「本当かよ? 四枚翼の神なんて、おとぎ話や神話の記述でしか聞いたことがねぇぞ……!」
交わされる驚愕と歓喜、そして畏怖の交じった会話。それらをBGMのように聞き流しながら、俺――アステルはフィーナと並んで街の大通りを歩いていた。
昨日の激戦の余波は、教団本部だけでなく街全体に広がっている。だが、俺の足取りは羽のように軽かった。
「アステルさん……昨日からずっと機嫌がいいですね。口元が緩みっぱなしですよ?」
並んで歩くフィーナが、呆れたような、けれど少し嬉しそうな眼差しをこちらに向けてくる。
「当然だろう」
「何かいいことあったんですか? 仲間が無事だったこととか、ノクス様の翼が増えたこととか……」
「決まっている」
俺は堂々と胸を張り、朝日を浴びながら指を一本立てた。
「金だ」
「……やっぱり!」
フィーナがズッコケそうになりながら、ハァと深い溜め息をついた。
「金貨一〇〇万枚ですよ? そりゃあ驚異的な大金ですし、教団の窮地を救う莫大な財産ですけど……アステルさんって、本当にお金のことになると目がキランと変わりますよね」
「好きなんじゃない。必要なんだ」
「同じじゃないですか?」
「全然違う!」
俺はピシッと立ち止まり、フィーナの目を直視して真剣な顔で言い切った。
「金があれば仲間を守れる。食料を買える。武器も買える。怪我人も治療できる。本部だって修繕できる。新しく加わった六百人の元ガスト教団員たちに、腹いっぱいの温かい飯と新品の制服を支給することだってできるんだ! そして何より――」
「何より……?」
「金が減ると俺の心が死ぬ」
「そこは結局、自分なんですね……」
フィーナが脱力したように苦笑する。
だが、その表情に嫌悪の色はない。昨日の凄惨な極限状態を共に生き延びたこともあり、俺とフィーナの間には、以前よりもずっと気安く、深い信頼に裏打ちされた空気が流れていた。
街の人々からは、こうして俺たちが並んで歩いていると、
「あら、あの二人、仲のいい兄妹かい?」
「兄ちゃんが妹の面倒をよく見てるんだな、微笑ましいねぇ」
などと温かい声を掛けられることも増えていた。
最初は「違います、教団の幹部と部下です!」と律儀に否定していたのだが、最近では説明するのも面倒なので放置している。実のところ、妹のように思っていなくもない。
「それにしても、アステルさん。今日は一体何をしにギルドへ行くんですか? 戦後処理ならレオンさんたちが本部で総出で行っていますよね?」
「もちろん、依頼を受けに行くためだ」
「昨日あれだけの死闘を繰り広げたばかりなのにですか!?」
「昨日戦ったからこそ、即座に動くんだよ」
俺はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「いいかフィーナ。教団の運営費というのは莫大だ。新しく六百人もの人間が加入したんだぞ? 毎日の食費だけでも膨大な金額が飛んでいく。制服の仕立て代、予備の武器調達、宿舎の整備、医療費……考えただけで夜も眠れん!」
「でも、さっき言ってたみたいに、手元にはガストから接収した金貨一〇〇万枚(推定)があるんですよね?」
「だからこそ、さらに増やすんだ!」
「……減らさないんじゃなくて、増やすんですか?」
「金は使えば減る! だから、使った分以上に増やしてから使えば実質永久機関だ!」
「ものすごく当たり前の顔をして、暴論を言ってますね……」
そんなやり取りを交わしながら、俺たちはアクセル街の冒険者ギルド本部に到着した。
ギルドの重厚な両開き扉を押して中へ足を踏み入れた瞬間――ザッと潮が引くように酒場内の喧騒が止まり、昨日までとはまるで違う視線が一斉に俺たちへ向けられた。
「お、おい……あれってノクス教団の『アステル』じゃないか……?」
「ガストとの戦いで、最前線で指揮を執って幹部連中を叩き潰したっていう噂の……」
「隣にいるのは弓使いのフィーナだろ? 二人とも昨日の地獄のような戦場にいたって話だぞ」
「あの若さで、ガスト教団を壊滅に追い込んだ大金星の立役者かよ……」
「おいおい、もう怪我はいいのか? 呼吸一つ乱してねぇぞ……」
ざわざわと周囲の冒険者たちが騒ぎ立てる。尊敬、畏怖、そして好奇の視線。
フィーナが居心地悪そうに身を縮め、俺の衣服の袖をちょんちょんと引っ張った。
「なんだか……街中以上に注目されてますね。やりにくいです……」
「気にするな」
「アステルさんは平気なんですか? これだけ見つめられて……」
「俺は金しか見ていない」
「それはそれで人間としてどうなんですか……」
俺たちは周囲の視線を一蹴し、まっすぐ壁際に設置された巨大な依頼掲示板へと向かった。
昨日の戦いで、アクセルの裏社会と商業流通を歪めていたガスト教団という巨大な病巣が消滅したためか、掲示板には滞っていた流通の再開や、混乱に乗じて活発化した魔物の討伐など、普段の倍以上の依頼書が所狭しと張り出されている。
『薬草採取:街道沿いの安全確保』
『護衛:豪商の車列の警備』
『魔物討伐:近郊のオーク群の退治』
「ふむ……どれも手堅いが、今の俺たちの喉の渇きを潤すには少々物足りないな……」
俺が指で依頼書を滑らせていたその時、一枚の異彩を放つ古い羊皮紙に視線が止まった。
用紙の端が微かに焦げ、羊皮紙自体が重厚な魔力を帯びている。
そして何より――一番下に書かれた『報酬額』の数値を見て、俺の目がキランと鋭く光った。
「金貨……六百枚」
思わず声が漏れた。
「えっ!?」
隣のフィーナが跳び上がるように反応し、俺の肩越しに依頼書を覗き込んだ。
「き、金貨六百枚!? 一つの依頼で!? ちょっとした家が建つレベルの大金じゃないですか!」
「ああ……間違いない。一桁読み間違えたかと思ったが、しっかりと『金貨600枚』と刻まれている」
俺は息を呑み、依頼書を掲示板から慎重に剥がすと、そこに記された詳細な文面を精読し始めた。
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【緊急指定討伐依頼】
対象:『酔甲将軍』
種族:武物(タケモノ/魔導兵器・怪異種)
推定レベル:65
討伐報酬:金貨六百枚
発生地域:アクセル東部・酒爛の渓谷
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「酔甲将軍……? 聞いたことがない魔物ですね」
「武物か。古代の遺物や動物が気力を帯びて自律行動を開始した怪異の類だな」
俺はさらに依頼書の下部に書かれた注意書きに目を通す。
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【個体特徴および危険度】
・巨大な山亀に似た漆黒の甲冑外殻を全身に纏う。
・背中に巨大な酒瓢箪をぶら下げており、常に高濃度の魔導酒を吸い上げている。
・異常な腕力と、圧倒的な物理耐性・武法(魔法)耐性を誇る。
・特殊能力『酒気狂乱』:アルコールを摂取・揮発させることで、一時的に素早さと攻撃力が爆発的に跳ね上がる。
・過去に討伐に向かったBランク冒険者パーティー三組が返り討ちに遭い、撤退。
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「なるほどな……」
俺は思わず口元を邪悪に歪ませた。
「レベル六十五。しかも物理と魔法の両方に高い耐性を持ち、酒でブーストをかけてくるか。Bランク冒険者が束になっても勝てないわけだ」
「……まさか」
フィーナが俺の笑みを見て、嫌な予感を全身で察知したように一歩後ずさった。
「受けるんですか……? この依頼を?」
「当然だ」
「でも、昨日の激戦が終わったばかりで、私たちもまだ万全では――」
「フィーナ」
俺は依頼書の『金貨六百枚』の文字を、トントンと指で叩いた。
「六百枚だぞ?」
「……」
「金貨、六〇〇枚」
「分かりましたよ!!」
フィーナはガックリと肩を落とし、深々とため息をついた。
「アステルさんがその顔をしたら、もう誰も止められないって知ってますから……」
「物わかりが良くて助かる。それに、レベル六十五程度なら、今の俺たちにとって決して不可能な相手じゃない」
「『程度』って……レベル六十五ですよ!? 街のトップランカーでも命がけの域です!」
俺は昨日の激闘を脳裏に思い浮かべた。
ガスト教団の主力幹部たち。彼らのレベルは七十前後に達しており、明確にS級相当の危険度を誇っていた。俺たちは命を削り、仲間と力を合わせてそれを打ち破ったのだ。
そして、今の俺たちには――。
「ノクス様の神格が上がり、加護の補正が『一・五倍』から『二倍』へと跳ね上がったばかりだ」
俺は自身の拳を力強く握り締めた。
身体の奥底、脈打つ血管の隅々にまで、黄金色の温かく力強い神威が満ち溢れている。以前とは比較にならないほどの生命力と魔力の高まり。
「レベル六十五の単体個体なら、今の俺たちの戦力と二倍の加護があれば、十分に計算の上で勝利できる」
「油断は禁物ですよ、アステルさん。相手は特殊な能力を持っているみたいですし」
「もちろんだ。無謀な賭けはしない。勝算があるから受けるんだ」
俺は依頼書を大事に懐に収めようとして、ふと足を止めた。
「そういえば……」
「どうしました?」
「今の俺自身の『詳細な能力値』を確認していなかったな」
昨日、一千人の信者登録を爆速で終わらせた直後、ノクス様が神格化して翼が四枚に増えた。あの時は場が混乱していたし、加護が二倍になった体感はあっても、自分の数値がどこまで伸びているのかを冷静に数値化して見ていなかった。
「ちょうどいい。敵のレベルが六十五なら、俺の現状のスペックを正確に把握しておこう」
俺はギルドの隅にある、誰も使っていない木製のテーブル席へ向かい、腰を下ろした。フィーナも向かいの席に座り、身を乗り出してくる。
「意識を集中させて……ステータス表示」
俺が心の中で唱えると、脳内に透明感のある青白い光が収束し、目の前の空間に半透明のステータスウィンドウが浮かび上がった。
世界の法則が紡ぎ出す、俺の「現在地」を示す数値だ。
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アステル
種族:人族
所属:ノクス教団
LEVEL
Lv.68
職業:神拳聖魔将
HP 2500
MP 1500
筋力 170
敏捷 63
魔力 217
神力 160
気力 40
【固有スキル】
・神威転化
・魔法【初級】
・武法【初級】
・聖法【初級】
加護:全能力値二倍
※職業選択可能
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「…………」
俺はしばらくの間、半透明の光文字を見つめたまま、完全にフリーズした。
「アステルさん……? どうしたんですか、そんな鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして……」
フィーナが心配そうに顔を覗き込ん でくる。
「……強い」
俺の口から、ぽろりと呟きが漏れた。
「強いな、俺」
「自分で言っちゃいましたね!? でも、そんなにすごいことになってるんですか?」
俺は震える指先で数値をなぞった。
「レベルは前回の死闘を経て『68』まで上昇している。それだけでも破格だが……この加護の補正を見ろ。すべての基礎ステータスが、素の値と同等分――つまり『2倍』上乗せされている」
魔力容量217の二倍で534。
攻撃力も敏捷性も、実質的にレベル80超えの超上位存在と同等以上の数値に跳ね上がっていた。
「レベル68で、加護が二倍……」
俺は懐の依頼書に視線を落とした。
「相手の『酔甲将軍』はレベル65」
「……数値だけで見たら、完全にアステルさんの方が上じゃないですか!」
「楽勝だな」
俺はニヤリと笑った。
「だが、俺一人で挑むわけじゃない。フィーナ、お前のステータスも見せてみろ」
「えっ、私ですか? ええと……」
フィーナが意識を集中させ、自身のステータス画面を俺と共有してくれた。
そこには――
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フィーナ
LEVEL
Lv.59
職業幻影疾風
HP 1700
MP 260
筋力 170
敏捷 210
魔力 150
神力 90
気力 0
【固有スキル】
・超運
・魔法【初級】
・聖法【初級】
加護:全能力値二倍
※職業選択可能
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驚くべき数値が並んでいた。
弓手として特化された彼女の敏捷性は、加護の二倍補正によって420という異常な領域に達している。もはや並の魔物や剣士では、彼女の放つ矢の軌道どころか、残像すら認識できないレベルだ。
「すごい……私、昨日までの自分じゃないみたいです。足も体も、びっくりするくらい軽い……!」
フィーナが自分の手を握り締め、目を丸くして喜んでいる。
「神の加護……それは単なる数字の増加じゃない。身体能力、魔力、反応速度、さらには実戦における戦闘感覚そのものを根底から底上げする奇跡だ」
俺たちは立ち上がった。
不安は完全に吹き飛んでいた。
「行くぞ、フィーナ。受付でこの依頼を正式に受理してくる」
「はいっ!」
俺たちは自信に満ちた足取りで、ギルドの中央受付カウンターへと向かった。
カウンターの奥では、眼鏡をかけた真面目そうなベテラン受付嬢が、分厚い書類の整理に追われていた。俺がトンと『酔甲将軍討伐』の依頼書を提出すると、受付嬢は手元を見つめたまま言った。
「はい、受領いたしますね……って、えっ!?」
依頼書に書かれた『酔甲将軍』の文字と『金貨六百枚』の金額を見た瞬間、受付嬢の動きがピタリと止まり、勢いよく顔を上げた。
「酔甲将軍討伐……ですか!? アステルさん、本気ですか!?」
「本気だ。ハンコを押してくれ」
「で、ですが! この依頼はBランク以上の大型パーティー向けですよ!? 推奨人数は最低でも『5名以上』、本来なら熟練の重戦士や高位回復術士を揃えて挑むような危険指定個体です!」
受付嬢は慌てて書類をめくり、顔を青くしながら忠告してくる。
「過去に挑んだ冒険者たちも、あの異常な防御力と酒による突発的な暴走攻撃で全滅しかけています! いくらお二人が昨日の戦いで大活躍されたノクス教団の幹部様だとしても、たった二人で向かうなんて無茶です!」
周りの冒険者たちも、受付嬢の叫びを聞きつけてざわめき出した。
「おいおい……あの二人生き残りだからって調子に乗ってねぇか?」
「酔甲将軍に二人で挑むだって!? 自殺行為だろ!」
「いくら加護が強くなったからって、武物の物理耐性を二人で抜けるわけが……」
周囲の静止と心配の視線が集中する中、俺は冷静に腕を組み、静かに言った。
「俺とフィーナの二人で十分だ。無駄な人数を増やせば、それだけ報酬の分配(取り分)が減る」
「理由が結局そこなんですか!?」
受付嬢が思わずツッコミを入れる。
だが、その隣でフィーナがすっと前へ出た。
彼女の背筋はピンと伸び、その瞳には一切の迷いや恐怖の色はなかった。
「受付さん、大丈夫です」
フィーナは穏やかだが、力強い声で微笑んだ。
「私たちは決して命を無駄にしに行くわけではありません。今の私たちなら、ノクス様の加護とともに、確実にこの依頼を達成できます」
フィーナの纏う澄んだ空気と、圧倒的な自信。
受付嬢は二人(とアステルの強欲な目)を交互に見比べ、やがて勝てないと悟ったように重い溜め息をついた。
「……はぁ。わかりました。ノクス教団の凄まじいご活躍はギルド上層部も把握しております。お二人を止める権限は私にはありません」
カツン、と朱色の判が依頼書に力強く押される。
「『酔甲将軍』の討伐依頼、正式に受理いたしました。討伐成功の暁には、ギルド規約に基づき、金貨六百枚を即座にお支払いいたします。……どうか、ご無事で」
「感謝する」
依頼書の控えを受け取ると、俺の口元は溢れ出る笑みを抑えきれなかった。
「フフフ……金貨六百枚……手に入ったらまずは何に投資するか……」
「アステルさん、顔! 顔が完全に悪代官になってますよ!」
フィーナが小突いてくるが、俺の頭の中はすでに金貨の山でいっぱいだった。
六百枚。
たった一枚の紙切れが、俺と教団にとっては未来への絶大な投資そのものだ。
昨日の戦いで傷ついた本部の修繕費用。
一千人に膨れ上がった信者たちの毎日の食費。
新しい装備の調達。
そして――。
「六百枚あれば、昨日の急な食糧調達で発生した教団の予備費の穴埋めが完璧に完了する……それどころか、お釣りでノクス様に最高級の特選牛肉を三か月分買えるぞ!」
「そこまで具体的に考えてたんですか!?」
「当たり前だ! 予算管理に妥協はない!」
俺は勢いよくギルドの重厚な扉を押し開けた。
爽やかな朝の光が視界いっぱいに広がり、活気あふれるアクセルの街並みを照らしている。
「行くぞ、フィーナ! 目標、酒爛の渓谷! 金貨六百枚を狩りに行く!」
「はいっ! アステルさん!」
フィーナが元気いっぱいに返事をし、背中の弓を確かめながら俺の隣に並んで駆け出した。
相手はレベル六十五の強敵『酔甲将軍』。
だが、今の俺たちには恐れるものなど何一つない。
ノクス様の加護は二倍。
俺のレベルは六十八。
フィーナの超絶的な射撃と敏捷性。
そして何より、俺たちの胸には共に地獄を潜り抜けた絆と、一千人の仲間を守るための使命(と膨大な金への執念)がある。
油断や隙を見せなければ、勝利はすでに俺たちの手の中にある。
そう確信しながら、俺とフィーナは朝日が差し込む街道へと踏み出していった。




