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ケチなおっさん、転生して異世界を最弱教団で制覇しに行く。  作者: むちゃうまご飯


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教団戦1

第五位となったノクス教団。

その快進撃を祝う空気とは裏腹に、闘技場の一角では重苦しい空気が流れていた。

白翼教団の控室。

その中央に、一人の神が玉座のような椅子へ腰掛けていた。

「ふぅ……。」

ゆっくりと足を組み替える。

その神の名は――オパール。

白翼教団を率いる神であり、第五位の座を長年守り続けてきた存在だった。

しかし、その顔は神々しいとは程遠い。

痩せこけた頬。

異様に細い目。

蛇のように裂けた口元には、常に薄気味悪い笑みが浮かんでいる。

見る者に不快感を与えるような、不気味な雰囲気をまとった神だった。

「ノクス……か。」

オパールは舌なめずりをするように呟く。

「たかが数か月で第五位とは、生意気な。」

「調子に乗るのも今日までだ。」

その時、一人の信者が頭を下げた。

「オパール様。ノクス教団が会場へ到着しました。」

「そうか。」

オパールは立ち上がる。

「少し挨拶でもしてやるか。」

闘技場の通路。

俺たちが控室へ向かっていると、前方から一団が歩いてきた。

全員、純白のローブを身にまとっている。

その先頭を歩く男が、不気味な笑みを浮かべてこちらを見た。

「君がノクスか。」

ノクスは小さく頷く。

「……はい。」

オパールはノクスの周りをゆっくり歩き始める。

まるで品定めでもするかのようだった。

「なるほど。」

「街一番の落ちこぼれ神という噂は聞いていたが……。」

「随分と幼い神だ。」

「その程度の加護しか与えられない神でも、運が良ければここまで来られるものなんだな。」

周囲の白翼教団員たちがクスクスと笑う。

ノクスは何も言い返さない。

ただ拳を強く握り締めていた。

「どうした?」

「言い返さないのか?」

オパールは顔を近づける。

「羽も生えていない。」

「神格も低い。」

「加護も弱い。」

「君のような神は、この街には必要ないんだよ。」

ノクスの肩が小さく震えた。

俺は一歩前へ出る。

「神を馬鹿にするのはそこまでにしろ。」

オパールは俺を見る。

「ほぉ。」

「君が例のアステルか。」

「ずいぶんと主人思いじゃないか。」

「安心しろ。」

「教団戦が終われば、その神も信者も全部こちらのものになる。」

その言葉にレオンが剣の柄へ手を掛けた。

顔に青筋が浮かんでいる。危険だ。

「コイツ……….。今すぐぶん殴ってやろうか?」

「落ち着け。」

俺が肩へ手を置く。

ここで問題を起こせば失格だ。

オパールは満足そうに笑うと、そのまま立ち去っていった。

「せいぜい最後の時間を楽しむといい。」


やがて、試合開始の時間となる。

中央の舞台へ一人の審判が姿を現した。

「これより、第五位教団決定戦――。」

「白翼教団対ノクス教団による教団戦を開始します!」

歓声が闘技場を揺らした。

審判はさらに続ける。

「教団戦の規則を説明します。」

「試合は五試合行います。」

「各試合、両教団から十名ずつ出場する十対十の団体戦です。」

「先に三勝した教団を勝利とします。」

巨大な魔法陣が闘技場全体へ展開される。

「なお、この魔法陣は創造神様の加護を受けています。」

「万が一、試合中に死亡した者がいた場合でも、教団戦終了後に創造神様の権能によって蘇生されます。」

観客席がざわつく。

「ただし。」

審判の声が鋭くなる。

「故意に相手を殺害しようとした場合は即刻失格。」

「必要以上の攻撃も反則とみなします。」

「勝敗は戦闘不能、降参、または審判の判断によって決定されます。」

続いて、教団戦最大のルールが告げられる。

「勝利した教団は、敗北した教団から教団全員、または五名までを選択して迎え入れる権利を得ます。」

「また、敗北した教団の神は教団を失い、多くの場合は他都市への追放処分となります。」

その瞬間、場内の空気が一気に張り詰めた。

これはただの試合ではない。

教団の存続を懸けた戦いなのだ。

「第一試合、開始ッ!!」

審判が腕を振り下ろした瞬間、闘技場全体に轟音が響いた。

ノクス教団第一試合の代表は第四班。

班長は、オレンジ色のショートヘアが特徴の少女――フィーナ。

いつも明るく元気で、教団のムードメーカーでもある弓使いだ。

「みんな! 最初の一勝、絶対取るよ!」

「「おおっ!!」」

第四班の十人は一斉に散開した。

対する白翼教団。

前へ出てきたのは、白銀の重装鎧を身にまとった幹部――ビスマス。

その後ろには彼の部下の九人の精鋭が静かに武器を構えている。

「全員、生け捕りにしろ。」

ビスマスが冷たく命令を下す。

「試合終了後、どちらの教団へ入るか考えさせてやればいい。」

その言葉に白翼教団の団員たちは不敵に笑った。

「始め!」

ドォォォン!!

開始と同時にフィーナが高く跳ぶ。

「《神弓術・連星射》!!」

十本もの光の矢が一直線に降り注ぐ。

空気を裂きながら飛ぶ神力の矢は、一人の前衛へ命中した。

「ぐっ!」

敵が吹き飛ぶ。

「今だ!」

第四班の前衛が一斉に突撃した。

剣士二人が左右から斬り掛かり、中央では武闘家が拳を叩き込む。

「押せぇぇぇ!!」

しかし。

ガキィィィン!!

「なっ!?」

ビスマスは巨大な戦斧を片手で振るい、三人まとめて弾き飛ばした。

「軽い。」

次の瞬間だった。

ドゴォォォン!!

戦斧が地面へ叩き付けられる。

衝撃波が闘技場全体へ広がり、第四班の隊列が一瞬で崩れた。

「うわぁぁ!」

「くっ!」

フィーナは空中で姿勢を立て直し、再び矢を放つ。

「《神弓術・流星雨》!!」

数十本もの矢が雨のように降り注ぐ。

しかしビスマスは避けない。

「くだらん。」

戦斧を一回転させる。

ブォォォン!!

猛烈な風圧だけで矢が全て吹き飛ばされた。

「そんな……!」

「終わりだ。」

ビスマスが地面を蹴る。

その巨体からは想像もできない速度だった。

「速っ――!」

一瞬でフィーナの目の前まで迫る。

「しまっ――」

ドゴォォォッ!!

戦斧の柄がフィーナの腹部へ直撃した。

「かはっ……!!」

少女の身体が一直線に吹き飛び、闘技場の壁へ激突する。

壁には蜘蛛の巣のような亀裂が走った。

「フィーナ隊長!!」

部下たちが叫ぶ。

その隙を白翼教団は見逃さない。

「囲め!」

敵十人が一斉に突撃する。

「ぐあっ!」

「きゃあぁ!」

第四班の一人が盾ごと吹き飛ばされる。

もう一人は槍で足を払われ、そのまま戦闘不能。

回復役も神力切れを起こし倒れていく。

「まだだ!」

フィーナは震える腕で弓を拾う。

立ち上がる。

膝が笑っている。

それでも立つ。

「みんな……!」

「私が守るから!」

残った神力をすべて弓へ注ぎ込む。

「《神弓術・極光の一矢》!!」

一本の巨大な光の矢が放たれる。

闘技場を一直線に駆け抜ける必殺の一撃。

しかし。

ビスマスは静かに戦斧を構えた。

「砕け。」

ズドォォォォン!!

戦斧と矢が激突する。

一秒。

二秒。

三秒。

そして――。

パリンッ!!

光の矢は真っ二つに砕け散った。

「え……。」

フィーナの表情が凍り付く。

「力不足だ。」

ビスマスの拳が少女の鳩尾へ突き刺さる。

「ぁ……。」

フィーナは声も出せず、その場へ崩れ落ちた。

審判が高く手を挙げる。

「第四班、戦闘不能確認!」

「勝者――白翼教団!!」

歓声が闘技場を包む。

ノクス教団第一試合。

結果は――10対0

第四班は誰一人立っていなかった。

担架へ運ばれるフィーナは、必死に涙をこらえていた。

しかし、ノクスの顔を見た瞬間。

張り詰めていた糸が切れた。

「ごめんなさいぃ……!」

「ノクス様ぁ……!」

「負けちゃいましたぁ……!」

「私……隊長なのに……!」

「みんなを守れなくて……!」

大粒の涙が止まらない。

悔しさと情けなさで肩を震わせながら泣き続ける。

ノクスはすぐにフィーナのそばへしゃがみ込み、優しく頭を撫でた。

「そんなことないよ。」

「最後まで諦めずに戦ってた。」

「私はちゃんと見てたから。」

「でもぉ……。」

「みんな倒れちゃって……。」

「私が弱いからぁ……。」

ノクスはそっとフィーナを抱きしめる。

「違う。」

「相手が強かっただけ。」

「フィーナは何も恥ずかしくない。」

「次は、みんなが必ず取り返してくれる。」

その言葉を聞き、フィーナは声を上げて泣いた。

そして、医療部屋へと運ばれていった。

俺はその様子を静かに見つめながら拳を握り締める。

一敗。

しかも完敗だった。

だが――。

ここで心が折れるような教団なら、ここまで成長できていない。

「レオン。」

「ああ。」

レオンは獣のような笑みを浮かべた。

「次は俺たちの番だ。」

そう、勝負はここからである。

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