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一般人になりたい隠し事令嬢と、暴きたい旦那様 〜チャラ男な最強当主の執着から逃げられない〜  作者: 天野 はるか
第2章:私の隠密行動 vs 旦那様の鋭い目

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第22話:琥珀、おやつを盗み食いされる

この作品を読んでいただき、ありがとうございます!


第一部の作成が終わりましたので、投稿を毎週月曜日・金曜日・土曜日の週3回に変更いたします!


30話まではこの頻度で投稿していきますので、是非読んでいただけると嬉しいです!!

 旦那様が毎日のように私の部屋へ乱入してくる、今日この頃。


 私は、いつも旦那様が来るたびに押し入れの奥で静かにお留守番してくれる琥珀へのご褒美として、食堂の料理長にお願いし、とっておきのふかふかなカステラを分けてもらっていた。


「琥珀~!料理長からとびきり美味しいお菓子を分けてもらったわよ~!一緒に食べましょ!」


 私の弾んだ声に反応した琥珀は、嬉しそうに小さなお耳をパタパタと小刻みに動かして喜んでいた。

きゅるんとした瞳をキラキラと輝かせていて、とても可愛いらしい。


「きゅ~っ! きゅぃ~っ!」


「ふふ、ちょっと待っててね!今お茶を淹れてくるから!」


 私が頭を優しく撫でながらそう言うと、琥珀は嬉しそうに私の手に小さな頭をすりすりと押しつけてきた。


 私はお菓子を机の皿の上に置いたまま、湯呑みを用意するために一度部屋を離れた。


 ――だが、そんな私と入れ違いのタイミングで、廊下の向こうから煉十郎の足音が近づいてきていた。


「紗夜ちゃん~!いるか~い?」


 突如として響いた煉十郎の声に、部屋に残されていた琥珀は「きゅ、きゅっ!?」と短い悲鳴を上げ、大慌てで押し入れの布団の隙間へ突っ込んで隠れた。


「あれ? 紗夜ちゃん、いないみたいだね~。……おや?」


 琥珀が隠れるのとほぼ同時に部屋に入ってきた煉十郎は、机の上にぽつんと置かれた、見るからに美味しそうなカステラを発見した。


「随分と美味そうなお菓子だねぇ。……うん、一ついただこうかな」


 そう呟きながら、呑気にそのカステラを口へと放り込み、もぐもぐと美味しそうに食べ始めてしまった。


 それからすぐ、私がお茶の載ったお盆を持って部屋に戻ると――あまりに衝撃的な光景が目に飛び込んできて、その場に固まってしまった。


 そこには、琥珀のためのカステラを至福の表情で味わっている旦那様と、押し入れの布団の隙間から、恨みがましい目をちらちらと見え隠れさせている琥珀の姿があった。


 ちょうど最後の一口を旦那様がパクリと食べ終えたところで私に気づき、いつものようにヘラヘラとした締まりのない笑みを浮かべて手を振ってきた。


「あ、紗夜ちゃんおかえりー! 机の上にあったこれ、とっても美味しかったよ~! ご馳走さま!」


 固まったままピクリとも動かない私を見ながらも、旦那様は相変わらず底の読めない笑みを浮かべていた。


 本気で「自分のために用意されたお菓子」だと勘違いしていたのか、それとも押し入れの琥珀の存在に勘づいていて楽しんでいるのか、私には分からなかった。


 そんなことを考えながらも、私はハッと我に返ると、一瞬にしておどおどした令嬢の仮面を被り、引きつった笑顔を無理やり作った。


「そ、そうですか……っ。お口に合って、良かったですぅ……っ」


 けれど、私は内心で怒り狂っていた。


(それは琥珀のお菓子よ!! 押し入れでお留守番してくれる琥珀のために用意したご褒美なのに、何盗み食いしてんのよこのチャラ男ーー!!)


 そして琥珀もまた、押し入れの暗闇の中で、小さなおててをぎゅっと握りしめて座布団をポカポカと涙目で殴りつけ、全力で八つ当たりをかましていた。


(それ僕の!!僕のふかふかカステラなのにぃぃ~~!!)


 そんな私達をよそに、旦那様は満足げに私のお茶をズズッと啜ると、そのままご機嫌な様子で部屋を出ていってしまった。


 旦那様の気配が完全に去った直後、押し入れから飛び出してきた琥珀は、空っぽのお皿の前で、がっくりと項垂れた。


 私は「きゅ、きゅぅぅ……」と切なく鳴いている琥珀をそっと抱きしめ、必死に慰めた。


「大丈夫よ、琥珀……。次は、もっともっと美味しそうなお菓子をたくさん貰ってくるからね……!」


 私は今度あのサボり魔が部屋にやってきたら、財布が空っぽになるまで最高級の甘味を要求してやる~!と、傷ついた琥珀の背中を撫でながら、旦那様へのささやかな復讐心に燃えていた。

読んでいただき、ありがとうございます!

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