第21話:甘い化かし合い
この作品を読んでいただき、ありがとうございます!
第一部の作成が終わりましたので、投稿を毎週月曜日・金曜日・土曜日の週3回に変更いたします!
30話まではこの頻度で投稿していきますので、是非読んでいただけると嬉しいです!!
今日も当然のような顔をして私の部屋でサボっている旦那様は、座布団にだらしなくもたれかかりながら、どこか色気のある気だるげな様子でじっと私を見ていた。
私は淹れてきたお茶を盆から差し出しながら、内心で警戒を強めていた。
(……やっぱり旦那様、私がただの無能じゃないことに完全に気づいてるわね! 精霊である琥珀をこの部屋に連れてくるまでは、こんなに干渉してこなかったもの! ここでボロを出して本性がバレたら、絶対に離縁なんてしてくれないわよね……。ますます気を引き締めないと!!)
私が秘かに防衛策を練っていると、旦那様は差し出されたお茶を品良く口に運び、ふっと微笑みながら、いつもより一段と低く甘い声音で囁くように話し出した。
「……ねぇ紗夜ちゃん、そんなに警戒しないでよ。僕はね、君がどんな子であったとしても、ずっと味方でいてあげたいって思ってるんだよ?」
旦那様はじりじりと座布団ごと距離を詰めてくると、私の髪を大きな手で優しく撫で、その深い瞳で私の目をじっと覗き込んできた。
至近距離で浴びせられる大人の男の魅力と、全てを包み込むような優しい声音に、またしても顔がカッと熱くなっていくのを自覚する。
(……うわあああ!またそうやってすぐ甘い雰囲気を作り出そうとする、この天然タラシめ! そう簡単には引っかからないんだから……っ!)
私は顔を真っ赤に染めながらも、この状況を畏れ多いという雰囲気に変えようと、さらに涙目でぶるぶると大げさに震えてみせた。
「……そ、そんな、旦那様……っ、私にはそのような温かいお言葉は勿体ないです……っ。私は、ただの出来損ないですから……っ」
私は旦那様の紡ぎ出した甘い空間を、おどおどした言葉で見事に跳ね返してやった。
(さあ、今日のところは旦那様の負けよ! 諦めてさっさと仕事に戻りなさーーい!!)
私のそんな頑なな態度を前にして、旦那様は「へぇ~……」と、低く妖しく唇を綻ばせた。
すると、旦那様は底意地の悪い笑みを浮かべたまま、それこそ互いの吐息が触れ合うほどの超至近距離まで顔を近づけてきたのだ。
「……つれないねぇ、紗夜ちゃんは。……まあ、いいさ。焦らなくても、可愛いお嫁さんの『素顔』は、これからじっくり時間をかけて暴いていくからね?」
あまりの近さに心臓を激しくドキドキさせながらも、私は自分がとんでもない窮地に立たされていることを思い知り、内心で頭を抱えた。
(……わ、私は絶対に『素顔』なんて見せないんだから!……っていうかさっきから本当に距離が近すぎるのよ!そんな色気を滲ませた顔で私を見ないで~!!)
その後、私のパニック寸前の反応にようやく満足したのか、旦那様はニヤニヤと楽しそうに笑いながら、「またね~!」と軽快に部屋を出ていった。
旦那様の気配が完全に去ったのを見届けてから、私は押し入れの隙間から恐る恐る出てきた琥珀にガシッと抱きついた。
「……琥珀ぅ~~!!もう嫌、何なのあの人は!間違いなく私のことをからかって楽しんでるわ~!」
「……きゅ~?」
私は釈然としない謎の敗北感に悶えながら、琥珀の温かいもふもふに思いきり顔を埋めた。当の琥珀は、主人の荒ぶりようを不思議そうに首を傾げて見つめている。
けれど……私は、旦那様とのこのやり取りが、自分の中でどこか「特別で、少し楽しい時間」に変わりつつあることに、薄々気づき始めてもいた。
互いの本性を探り合うという奇妙な攻防の中で、私と旦那様の距離は、私の意図とは裏腹に、けれど確実に縮まり始めているのだった。
読んでいただき、ありがとうございます!
面白いと思ったら星やブックマークをお願いします!




