第2話:望むところの婚約破棄
できれば毎日投稿したいと思っていますが、日数があくこともあると思います!
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炎の精霊により、赤々と燃え盛る大広間。
そこには豪華な椅子にふんぞり返る織斗が、床に膝をつく私を、冷酷な眼差しで見下ろしていた。
「お呼びでしょうか、織斗様……」
私はわざと指先をガタガタと震わせ、今にも泣き出しそうな声を絞り出す。
(……相変わらず無駄に部屋を暖めやがって。エコって言葉を知らないのかしら、この馬鹿は)
しかし心中では、これみよがしにドヤ顔で魔力を解放している織斗に、冷ややかなツッコミを入れていた。
すると、織斗がパチンと指を鳴らして周囲の炎を大きく揺らし、冷酷に本題を告げた。
「紗夜、お前との婚約を破棄する」
(……は?)
私はその言葉に、一瞬だけ硬直した。
「精霊の加護なき出来損ないなど、我が篝家の次期当主の妻に相応しくない。お前のような、泥をすする無能が私の隣に立てると思うな」
私の硬直を「絶望した」と勘違いしたのだろう。織斗はこれでもかと勝ち誇り、辛辣な罵倒の数々を次々と私に言い放っていく。
(……え、ちょっと待って。婚約破棄? 今、婚約破棄するって言ったわよね、この男!?――やったわ! この馬鹿から合法的に解放されるのね!!)
ようやく思考が追いついてきた私は、内心で狂喜乱舞していた。
けれど、ここでニヤけては全てが台無しだ。
「……そ、そんな!? 私、これからどうしたら……っ」
私はガタッと大きく肩を揺らし、両手で顔を覆って床に深くうつむいてみせた。
声を殺して肩を小刻みに震わせ、あたかも「世界の終わりを迎えた絶望の令嬢」を完璧に熱演する。
「そんなものは知らん! 今までこの家で生かしてやっただけでも、ありがたいと思え!」
織斗の冷酷な言葉を皮切りに、周囲で見物していた親族や使用人たちからも、「可哀想に」「当然の報いだわ」という冷ややかな嘲笑が漏れ聞こえてくる。
――しかし。
顔を覆った手の隙間で、私はニヤニヤと歪みそうになる口元を必死に隠していた。
一応、形だけでも涙を滲ませるために、一生懸命「もし、このまま織斗と結婚させられていた場合の地獄の未来」を想像して目を潤ませる。
だが、そんな小細工すら必要ないほど、心の奥底では万歳三唱の大歓喜の嵐が吹き荒れていた。
(やったーーー!! 神様仏様精霊王様ありがとう!! これで合法的にこのクソ実家と縁が切れる!! 自由だーーー!!)
織斗の妻にでもなれば、一生「無能な道具」として幽閉され、陰湿な親族に囲まれて終わるはずだった。その最悪極まりない未来を、向こうから勝手に消滅させてくれたのだ。圧倒的な感謝しかない。
(……うふふ、これで私が今までノートに書き溜めてきた、夢の隠居スローライフが一気に近づいてきたわね!)
「我が篝家の婚約者でなくなったお前には、もうこの屋敷に居場所などない! 明日には出て行ってもらうから、その覚悟をしておけ!」
続けて織斗は、これ以上ないほど勝ち誇った顔で実家追放の宣告をしてきた。
「……はい、織斗様。すべて、仰せの通りにいたします……っ」
私は今にも消え入りそうな、蚊の鳴くような震え声で承諾する。
しかし、床に伏せた私の心の中では、元気いっぱいに両手を振り上げてジャンプしていた。
(は~い、わっかりました~!! 言われなくても明日一番に出ていきま~す!……よし、これで第一段階クリア! 待っててね、私のスローライフ!)
私は髪に隠れた顔の裏で不敵に微笑み、輝かしい未来への期待を限界まで膨らませるのだった。
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