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一般人になりたい隠し事令嬢と、暴きたい旦那様 〜チャラ男な最強当主の執着から逃げられない〜  作者: 天野 はるか
第2章:私の隠密行動 vs 旦那様の鋭い目

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第18話:一瞬だけ光る眼光

この作品を読んでいただき、ありがとうございます!


第一部の作成が終わりましたので、投稿を毎週月曜日・金曜日・土曜日の週3回に変更いたします!


30話まではこの頻度で投稿していきますので、是非読んでいただけると嬉しいです!!

「……んふふ! 昨日のうちに物は全部元の場所に戻しておいたから、これで万事解決ね! りつさんにはちょっと悪いことしちゃったけど、これでようやくのんびりできるわ~!!」


 私はピクシーを無事に逃がせたことに大満足し、自室で琥珀こはくとのんびりもふもふタイムを堪能していた。


 ――しかしその時、突如として旦那様の緊張感のない声が廊下に響き渡った。


「紗夜ちゃん~!ちょっといいかな~?」


(……嘘でしょ、また不意打ち!?毎度毎度、どうしてこの男は足音も気配もしないのよ!!)


 私は瞬時に琥珀をぽーいと押し入れへ放り投げ、一瞬で「おどおどした令嬢」に切り替えた。


「……は、はい……っ!だ、旦那様、どうされたのですか……?」


 昨日の紛失騒ぎの件かもしれないと内心で警戒を払いながらも、私はいつものように身を縮めて襖を開け、出迎えた。


 旦那様はいつものヘラヘラとした笑顔のまま、部屋に入るなり用意してあった座布団へ勝手に腰を下ろした。


「いやぁ、今朝ね、昨日なくなったはずの律の万年筆や僕のキセルが元の場所で見つかってさ~! 本当に良かったよ~!……あ、ところでさ……」


 そこで旦那様は表情からヘラヘラとした締まりのない笑みを消し、底意地悪く、ニヤリ笑っていた。


「……ピクシー(精霊)ってさ、キラキラした金属とか、音が鳴るものが大好きなんだよね~。紗夜ちゃん、知ってた?」


 昨日自分が作った「特製おもちゃ」の仕様をピンポイントで突かれ、私は思わずドクンと心臓を跳ね上がらせ、身を強張らせた。


(……え、ちょっと待って!? ピクシーの好きな物ってそんなに有名なの!? 私は知らなかったんだけど……。でも、これなら私は実家で精霊の教育なんて受けていない「無能」って設定だから、いくらでも誤魔化せるはず……!)


 私は迫りくる怪しげな空気を一蹴すべく、きょとんとした表情を作り、わざとらしくとぼけてみせた。


「……ぴ、ぴくしー……ですか……?すみません、私は実家で高度な教育は受けてこなかったので、そのような精霊のお話はよく分からないのですが……」


 伏し目がちに無知を装い、これで綺麗に受け流せたはず――そう思ったが、旦那様は楽しそうな笑みを浮かべたまま、容赦なく話を続けた。


「……へえ~? かがり家では精霊の基本も教えないんだねぇ。でもさ……」


 旦那様は、座布団からぐっと私の方へと顔を近づけ、さらに笑みを深めてこう言い放った。


「……ピクシーって、元々は遠い異国の伝承に出てくる精霊なんだよね~。一般的な精霊術の本には載ってないはずなんだけど。……ねぇ紗夜ちゃん、僕も律も昨日から一度も精霊のことは話していないんだけど、どうしてそれが「精霊の名前」だって分かったの?」


「……あ……」


 その言葉を聞いた瞬間、私の思考は完全にフリーズした。全身の血の気が引いていくのが分かる。


(……え、嘘、ピクシーって精霊術の本に載ってないの!?……ヤバい、どうしよう、どう言い訳すれば――っ!!)


 私が脳内で必死に冷や汗を流しながら、なんとか誤魔化そうと考えを巡らせていた、その時だった。


 目の前にいる旦那様の、あのチャラチャラとしたいつもの笑顔が、ふっと完全に消失した。


 前髪の隙間から覗く彼の瞳が、ゾッとするほど冷徹で、こちらの全てを見透かすような鋭い大人の眼光に変わっていることに気づき、私はハッと息を呑んだ。


 部屋全体の空気が一瞬で凍りつき、肌を刺すような圧倒的な重圧プレッシャーが、容赦なく私にのしかかってくる。


 これまでに感じたことがないほどの強者の覇気に、本気で冷や汗が止まらなくなっていると、旦那様はさらに距離を詰め、私の耳元のすぐ近くで、低く艶やかな声で囁いた。


「――紗夜ちゃんはさ、今までしっかりとした教育を受けてこなかったみたいだけど、ずいぶんと物知りだねぇ」


 至近距離から鼓膜を揺らす、旦那様の鋭く、そして恐ろしいほどに色気のある声。


 私は恐怖と、近すぎる大人の男の色気に、色んな意味で心臓が破裂しそうなほどバクバクと激しく脈打っていた。


(……ち、近い!っていうかこの男、やっぱりただのチャラ男なんかじゃないわ……!まるで昨日のこと、全部気づいているみたいじゃない……!?)


 退路を完全に断たれ、脳内が大パニックを起こす中、私はこの絶体絶命のピンチを切り抜けるための言い訳を、必死になって絞り出そうとするのだった。

読んでいただき、ありがとうございます!

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