第13話:律とのお茶会(?)
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第一部の作成が終わりましたので、投稿を毎週月曜日・金曜日・土曜日の週3回に変更いたします!
30話まではこの頻度で投稿していきますので、是非読んでいただけると嬉しいです!!
私は昨日、旦那様が持ってきてくださったお菓子の器を返すために、律さんが籠もる事務室を訪れていた。
琥珀にはもちろん、押し入れの秘密基地でお留守番をしてもらっている。
「……し、失礼します……っ」
私が小さくノックをして静かに部屋の中に入ると、そこには山のように積まれた書類を、恐ろしい速度で淡々と処理している律さんの姿があった。
「……あ、あの、昨日は美味しいお菓子をありがとうございました……っ」
私はいつものようにおどおどとした態度で、律さんに声をかける。
「……いえ。私は特段何もしておりませんので。当主様が手配したことを、私もつい先程聞いたばかりですし……」
律さんは眼鏡を指先で押し上げながら冷淡に応じたが、私が器を綺麗に洗ってから返却したことに気づくと、驚いたように少しだけ目を丸くした。
「……それにしても、あの人はまた仕事を放り出して紗夜様のもとへ行ったのですね。まったく、仕事を終わらせてからにしてくださいと、あれほど言っているというのに……」
気を取り直したように、律さんは珍しく深いため息を吐きながらそう言った。
(……やっぱりサボりだったのね、あのチャラ男当主!! もっと言ってやってください、律さん!!)
私は律さんの言葉に、心の中で激しく同意しながらも、おどおどと申し訳なさそうに謝る素振りを見せた。
「……あの、律さん。旦那様はお忙しい中、わざわざ私のもとに来てくださったのです……。その、ご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ありません」
律さんは私の言葉を聞いた瞬間、驚きで動きを止めた。
主のチャラさと身勝手さを重々理解しているはずなのに、健気にも旦那様を立てようとする私の態度に、律さんは静かに感銘を受けたようだ。
(……なんと立派なお方だ。それに比べて我が主は……)
そんな律さんの様子を盗み見ながら、私は打算的なことを考えていた。
(…よし、ここでアピールすればもう少し好感度を上げられるかしら?)
そして私はさらに律さんに話しかける。
「……あの、もしよろしければ、お茶を淹れましょうか……? ずっと書類仕事ばかりで、あまり休憩なさっていないようですし……」
そう言いながら、私は実家での極貧生活の中で独自に編み出した「疲れが劇的に取れる最高の一杯」を淹れて、律さんに差し出した。
「……では、お言葉に甘えて。いただきます」
律さんはお茶を口に含むと、その完璧すぎる味わいに、再び驚愕して眼鏡の奥の目を見開いていた。
(……精霊の力はなくても、このお方の所作や気配りは申し分ないほど完璧だ。篝家も、もったいないことをするものだ……)
その後、私達はお茶を飲みながら、屋敷の管理や予算のやり取りなどについて話していた。
その会話の中で私達は、私が実家での極貧生活で身につけた、無駄を徹底的に排除する効率的な考え方と、律さんの無駄を省き、完璧を求めるという仕事観で意気投合していた。
すると律さんは今まで見せたことのないような穏やかな微笑みを浮かべながら、私を真っ直ぐに見つめて褒めてくれた。
「……紗夜様は、ご実家でのことで色々と噂されているようですが、非常に聡明で素晴らしいお方ですね。……正直、我が主にはもったいないくらいですよ」
その言葉を聞いた瞬間、私は脳内で律さんを称えていた。
(……よく言ったわ、律さん!! 本当にその通りよ! あのチャラ男に私なんて勿体なさすぎるわ!!)
そう考えながらも表面上はポッと頬を赤らめて、恥ずかしそうにうつむいてみせた。
「……そ、そんな、滅相もないです……! 精霊の力が一切ない私をこれほど大切にしてくださる、優しい旦那様に私は救われておりますから……っ」
心にもない殊勝なセリフを口にしながら、私は最高に有能な味方の信頼を勝ち取れたことに、心の中で小さくガッツポーズを決めていた。
その後、自室に戻った私は、さっそく押し入れから出てきた琥珀を抱き締め、「律さんを味方に引き入れたわよ!」と大喜びで報告し、大満足の笑顔でもふもふな相棒と心ゆくまで戯れるのだった。
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